応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
91 巻, 3 号
『応用物理』 第91巻 第3号
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Science As Art
今月号の概要
総合報告
  • 宇宙物質の分析・解析による太陽系の起源と進化の解明
    圦本 尚義
    2022 年 91 巻 3 号 p. 134-143
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    宇宙物質の中には,約46億年前の太陽系開闢(かいびゃく)時の現象を記録しながら形成され,当時の姿のまま保存されている粒子が残っていることがある.その粒子の化学組成,構成鉱物,同位体組成をサブミクロンの解像度で分析し,その結果を解析することにより,形成当時の物理化学環境とその時間変動を特定できる.本稿では,太陽系最古の物質CAIを例に取り,走査型電子顕微鏡法による化学組成分析・後方散乱電子回折,2次イオン質量分析・同位体顕微鏡法による同位体分析・年代分析,原始太陽系環境を模擬した室内実験によるCAI形成基礎実験により複合解析した結果から,太陽系の起源と進化をどう解明していくかを説明する.

解説
  • 井田 次郎
    2022 年 91 巻 3 号 p. 144-150
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    極低電力エレクトロニクス応用に向け,非常に急峻(きゅうしゅん)なオンオフ特性をもつ“PN-Body Tied SOI-FET”と命名した電子デバイスを提案している.現在の集積回路で使われている電子デバイス(MOS-FET)がもつ物理限界を,はるかに凌駕(りょうが)する急峻な特性を5~6桁の電流領域で示す.この電子デバイスの着想と動作原理,研究状況を紹介する.極低電力CMOS回路応用に向け,NMOS/PMOSの動作,さらに,CMOSインバータ特性を示す.特に,インバータ特性では上辺下辺とも直角に見える伝達特性を確認している.これは0.1V以下の極低電圧でも回路動作する可能性を示唆する.また,環境電磁波発電への応用研究も示す.通常のダイオードでは困難な微小振幅(10mV)での整流を確認している.さらに,最近行っている単デバイス・ニューロン機能への展開も紹介する.極低電力集積回路の基本デバイスとするには,まだ,重大な課題も抱えているが,このデバイスが示す興味深い特性に関心をもっていただければ幸いである.

研究紹介
  • 青柳 里果
    2022 年 91 巻 3 号 p. 151-154
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)は最表面2nm以下の化学情報や100nmの高い空間分解能で化学イメージングが可能な手法であり,生物試料から有機材料,電子材料まで幅広く応用されている.しかし,TOF-SIMSスペクトルおよびイメージングデータは解釈が難しいうえ,データ量が膨大なため,データ解析手法の応用が必要とされる場合が多い.これまでは主成分分析や比負値行列因子分解などの多変量解析がTOF-SIMSデータ解釈に応用され,多くの成果を上げてきた.近年は他の分野での応用で成功を収めているスパースモデリングや機械学習もTOF-SIMSデータの解析に応用されるようになった.それら最新の研究成果の中でも機械学習によるスペクトル予測について詳しく紹介する.

  • 影島 博之, 秋山 亨, 白石 賢二, 植松 真司
    2022 年 91 巻 3 号 p. 155-159
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    シリコン(Si)の熱酸化過程は,①酸化性分子の酸化膜中拡散,②界面での酸化性分子とSiの反応,③反応に伴う界面での格子間Si原子の発生と輸送と酸化吸収,④酸化された部分の体積膨張と粘性流動と変形,の4つの過程から成っており,これらの過程全てが④によって発生する応力分布の影響を受けて抑制されたり促進されたりし,それがまた応力分布自体に影響を与え,酸化過程全体の進捗(しんちょく)も左右する.平坦なSiの熱酸化ではこのような複雑さは目立たず一見①と②だけで簡便に理解できるように見えるが,Si立体ナノ構造の熱酸化になるとその複雑さがたちまち露見する.本稿では,Si熱酸化過程のこのような微視的な観点からの全体像に関して我々の研究を中心に紹介する.

  • 重里 有三, 岡 伸人
    2022 年 91 巻 3 号 p. 160-163
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    酸化インジウム(In2O3)系,酸化亜鉛(ZnO)系,酸化スズ(SnO2)系,酸化チタン(TiO2)系などの酸化物系透明導電膜(TCO膜)はさまざまな平面型表示素子や光・エレクトロ二クスデバイスに幅広く応用されている.高性能なTCO成膜のためには結晶構造・結晶性や化学量論組成比の精密制御が必要不可欠である.本稿では筆者らが取り組んできたさまざまな工夫をした直流スパッタ成膜プロセスに関して解説する.金属ターゲットを用いた反応性直流スパッタプロセスにおいて,直流放電のインピーダンスやプラズマ発光強度をin-situでモニタし,その値を高速でフィードバックすることで酸素流量をPID制御すれば,作製する酸化物薄膜の化学量論組成比を連続的に精密制御することができる.この手法により反応性スパッタによる高性能TCOの成膜方法を確立するとともに,幅広く電気特性や光学特性が系統的に異なる膜を作製し,TCOの物性に関する研究に役立てることができる.

  • 唐橋 一浩, 伊藤 智子, 浜口 智志
    2022 年 91 巻 3 号 p. 164-168
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    プラズマを用いたエッチング反応は多くの活性種の関与する複雑な反応であるが,エッチング反応を理解し制御することでさまざまな材料に対する微細加工が可能となる.そのためには,プラズマの生成する反応性イオンやラジカルのエッチング表面反応に関する基礎データの取得および表面反応モデルの構築が重要となる.本稿では,反応性イオンビーム実験,数値シミュレーション,および機械学習による効率的なエッチング基礎データの蓄積に関して紹介する.

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