固液界面における電気化学反応のメカニズムの解明は,燃料電池やリチウムイオン電池といったエネルギー関連デバイスの高効率化と長寿命化に不可欠である.筆者と共同研究者らは古典溶液論と密度汎関数理論を統合した新しい電気化学界面シミュレーション技術を開発し,これに反応経路自動探索法を組み合わせることで,固液界面での複雑な電気化学反応の解析を可能にした.本稿では,これらの新規シミュレーション技術の概要と,電極と電解液界面での分子解離吸着反応の反応経路を系統的に探索する研究例を紹介する.
コンピューティング需要の爆発的な増大とニーズの変化に伴い,ポストムーア時代を意識した革新的なコンピューティング技術の開拓が進められている.その中に,先端的なフォトニクス技術に基づくニューラルネットワークの研究があり,高性能かつ低消費電力なAIアクセラレータへの展開が期待されている.本稿では,光ニューラルネットワークの特徴や最近の研究動向を紹介しつつ,今後の展望について述べる.
イメージセンサは機械の目の役割を果たし,スマートフォンや自動運転車などの最先端技術の中核を担っている.これらの技術において,高速/暗所撮像を可能とする高感度なイメージセンサの創出が求められている.一方,一般的なイメージセンサでは,色抽出を行う光吸収型カラーフィルタが全画素上に集積されているため,受光量が本質的に制限されており,高感度化における課題となっている.そこで我々は,画素上において3色分離を実現する光透過型メタレンズを考案し,それらを活用したフィルタフリーのセンサ構成を提案している.本稿では,我々が創出した色分離メタレンズを紹介し,そのイメージセンサ高感度化における有効性について述べる.
マシンビジョンの発展に伴い,人間には知覚できない高次元データを用いた画像解析が可能になり,画像検査への応用研究が精力的に行われている.中でもハイパースペクトルカメラは,波長情報を肉眼以上の精度で取得可能であり,食品・農業・化学・医療などの分野において高い有用性が示されている.しかし,既存のハイパースペクトルカメラは分光に伴う感度・シャッター速度の大幅な低下や,システムの大型化が課題となり,産業的に広く普及するには至っていない.本稿では,筆者らが開発した,圧縮センシング技術を用いた超高感度ハイパースペクトルカメラの概要と,ユーザビリティが高いディジタルカメラへの実装・性能評価について紹介する.
リチウムイオン電池が自動車をはじめとするモビリティに搭載されるようになり,電池に要求される性能はより高くなってきた.電極/電解液界面の相間イオン拡散ダイナミクスを制御するうえで,現状の不働態膜技術に加えて,活物質表面を設計し,イオンや電子をより高効率に輸送する反応場を電極/電解液界面に形成するという本質的な課題に対する技術提案が必要になってきた.本稿では,高耐久性化と高出力化の両立を念頭に,筆者らの取り組んできた,リチウムイオン電池電極材料の相界面制御に関する研究成果を概要する.
金属表面の窒化は酸素を含まない窒素雰囲気中で行う必要があり,空気中では,酸化物が優先的に形成してしまい,結果として窒化物層は得られない.本稿では,この理解を覆す実験結果を紹介する.ナノ秒パルス発振レーザー光を凸レンズで集光してからチタン材料表面に照射すると,空気中であってもその表面には,酸化物ではなく,膜厚数マイクロメートルの,TiNとTi2Nから成る皮膜を形成できる.他方,集光しないで照射すると,通常どおり酸化物皮膜が形成してしまう.集光して照射した場合では,チタン表面にレーザー誘起プラズマの発生が確認され,瞬間的に発生するこのプラズマの効果により,空気中での窒化物層形成が達成される.
researchmapは36万人以上の日本の研究者が参加する業績管理・公開用の共通プラットフォームである.国立情報学研究所がその研究開発を,科学技術振興機構がサービス提供を担っている.本稿では,researchmapについて概説した後,researchmapの主要な機能,特に2019年に投入されたAI機能とその精度について紹介する.最後に,researchmapの効果的な活用方法を解説する.