私たちの体にはたくさんの種類のイオンや神経伝達物質が存在し重要な役割を担っている.これらを直接可視化することができれば,これまで未知の現象を解明できるのではないかと考え,CMOS技術とバイオセンサ技術を融合したイオンイメージセンサの開発を進めている.この技術を神経伝達メカニズムの解明や疾患の原因解明,創薬に向け,細胞外微小環境で複雑に絡み合う複数種類の化学情報を同時に可視化・解析する細胞外イメージング技術として発展的に展開している.
超音波の放射力を用いると物体を浮揚,移動,変形させることができる.本稿では特に,この現象を利用した非接触搬送技術と光学レンズを紹介する.超音波を時間的,空間的に制御することによって微小物体や液滴を非接触で搬送することが可能であり,本技術の細胞マニピュレーションへの応用展開が期待される.また,超音波により人間の目の水晶体のように自身の形状が変化して焦点距離を制御可能なレンズは,今後の電子デバイスの小型・薄型化に貢献できる.
空中超音波フェーズドアレイの登場は,空中触覚および音響浮揚の研究分野が大きく変化するきっかけとなった.また学術研究としてだけではなく,スタートアップを生み出して産業化への道を進んでいる.筆者は始まりから現在までその様子を見てきた.本稿ではこの技術の歴史背景や関連事項にも触れながら,最近の動向および今後の展望について述べる.
最近,我々はパルスレーザー堆積法(PLD)により,グラファイト基板上にモット絶縁体の量子ワイヤを作製する新しい方法を開発し,ストライプ,ジャンクション,ナノリングといった構造を実現した.これらの単結晶ワイヤは厚さが1単位格子で,幅が正確に2~4単位格子であり,長さは数µmに及ぶ.また,分光測定と理論計算から,強い電子相関がこの系に存在することが明らかになった.さらに,今回の発見は,原子スケールの非平衡反応拡散過程によるチューリング・パターン形成の可能性を示唆しており,純1次元的な量子細線におけるエキゾチックな状態の実現へ新しい道を提供している.
電子材料を柔軟にすることで,皮膚と一体化するようなウェアラブルデバイスや人間の皮膚のようなロボット用電子人工皮膚が実現できる.特に伸縮性共役高分子材料は,低ヤング率,生体適合性,透明性などの特徴があり重要である.本稿では,筆者が開発してきた伸縮性共役高分子材料とそれを用いたデバイス応用について紹介する.具体的には,伸縮性導電性高分子による透明センサアレイと伸縮性半導体高分子によるワイヤレス超柔軟デバイスについて紹介する.
日本は海洋資源が豊富な島国である.ナノポアは,海洋エネルギーの1つである塩分濃度差だけで極めて高効率に発電できる革新的なデバイスとして近年注目を集め,その研究開発競争が加速している.本稿では,ナノポア発電の原理から最先端の研究開発動向までを,ナノポアの数・サイズ・配置を自在に制御可能なマルチナノポア加工技術を基軸に展開している筆者の研究内容を交えながら紹介する.
主に大学院生や若手研究者に向けて,研究費予算の申請書の書き方を,申請書を審査する立場からアドバイスしてみます.審査員はとても忙しいので短時間で審査します.そのときの審査員の目と心の動きを意識して申請書を書けば,採択率が上がること間違いありません.また,申請書のネタを,日頃から少し広い視野をもって意識的に集めて準備することを勧めます.