濡れ現象は自然界に普遍的に存在し,工業プロセスにおいても重要な役割を果たしている.本稿では,固体/流体相互作用に焦点を当て,濡れ現象の基礎(表面張力,液滴形状,毛管力,濡れモデル),撥水・撥油界面の設計戦略(超撥水/超撥油表面,リキッドマーブル),およびその最先端応用についてまとめた.関連式は高校範囲の熱力学のみを利用し,一般例も含めて初心者でも直感的に理解できるように簡潔に解説している.
緑の車というと,まるでその色が物体そのものの特徴であるかのように思える.しかし実際には,色というのは物体から目に届く反射光を基に脳内で作り出される感覚である.照明が変われば反射光も変わり,それに伴い物体の色の見えも変わるはずである.しかし,朝に駐車した車に夕暮れ時に戻っても,同じ緑の車として認識できるのはなぜだろう.これが,照明環境によらず安定した色知覚を保つ,色の恒常性と呼ばれる現象である.私たちの視覚系は,時間や場所によって照明環境がさまざまに変わる中,いかにして堅固な視覚世界を作り出しているのだろうか.本稿では,この色の恒常性を支える優れた情報処理機構について解説する.
均一な熱輻射(ふくしゃ)環境において熱電発電するメタマテリアル熱電変換を報告する.ゼーベック効果に基づき駆動する熱電変換は,熱電素子上の温度勾配が消失する均一な熱輻射環境下では駆動しない.均一な熱輻射環境における熱電発電を実現するために我々は,熱輻射吸収メタマテリアルを利用した.熱輻射メタマテリアルは環境中の熱輻射を吸収し,局所的な熱に変換する.その局所的な熱は,メタマテリアルの基板と接触する熱電変換素子に伝導伝搬して素子上に温度勾配を誘起し,熱電発電が駆動する.メタマテリアル熱電変換の発電特性を報告するとともに,この機構を応用した,非放射冷却についても併せて紹介する.
本稿ではこれまでにない超小型な光パルス計測器の開発に向けた研究について紹介する.デバイスはシリコンフォトニクスを用いて製作され,ミリメートルスケールのチップに集積される.導波路型光検出器アレイで構成されるオンチップ光相関計を製作し,これを用いたピコ秒パルスの相関波形計測を実証した.さらに,このオンチップ光相関計と波長可変フィルタを用い,ソノグラム法と呼ばれる短パルス計測法による光パルスの複素振幅波形の計測を実証した.本研究により,実験室環境以外でも使える,使い勝手のよい光パルス計測器を実現できると期待される.
東京電力福島第一原子力発電所の事故後,廃炉に向けて炉内部の放射線モニタリングシステムのための太陽電池を用いた放射線検出素子(SRDs)の研究開発を進めている.SRDsは,放射線の付与エネルギーによって生成される電子正孔対が,内蔵電位により外部回路へ電流として出力される原理を利用している.高レベルな放射線環境での使用を想定して,高い放射線耐性を持つ太陽電池材料であるInGaP,CIGS,CdTeおよび,HOIPなどが候補として選定されている.本稿では,InGaP太陽電池を例に,放射線検出システムの開発,可視光を用いたダイナミックレンジ推定方法の開発や,中性子線の検出に関する取り組みについて紹介する.
タイムドメインリフレクトメトリ(TDR)は,高周波伝送路においてインピーダンス整合していない部分から高周波信号の反射が生じることを利用した,古くからある測定法である.昔は地質調査のような大きなスケールの測定に用いられてきたが,近年,計測機器の性能向上によって小さなスケールの計測が可能となり,LSIの性能調査などに利用されている.我々は,この手法が過渡インピーダンス測定に用いることができるという発想をもって,これまでいくつかの電子デバイスの時間分解動作解析に挑戦してきた.本稿では本手法で有機薄膜トランジスタ(TFT)や有機薄膜太陽電池の動作解析を行った結果について紹介する.
本稿は,理工系の論文執筆に必要となる基本的な文章の書き方について解説したものである.日々の研究活動で書くメモや報告書などの短い文章から始め,情報不足や理由の欠如など,初心者が陥りやすい問題点を取り上げる.また長文の執筆において有用な,3部構成(導入・本論・展開)や本論の構成(問題・手段・結果)といった文章構成の型を解説する.最後に,パラグラフ・ライティングにのっとった読みやすい文章を,箇条書きを活用して素早く書く手法を紹介する.