今年の秋季学術講演会は,名城大学でハイブリッド開催されました.2009年以降の秋季講演会の中では,今回が最多の有料参加登録者数(7000名弱)と企業展示数を記録したそうです.さらに,秋季講演会の有料参加登録者数が春季講演会のそれを初めて逆転したということで,記録づくしの講演会となったようです.特に,「基礎講座」で取り上げている「半導体」関連への関心が高く,「社会を変えるワイドギャップ半導体の現状と将来」には現地・オンラインを合わせて700名近い参加者がありました.ポスター会場では活発な議論が行われる中,多くの企業展示が並び,さらには会場の一部では学生が企業説明を受けている様子が見られるなど,さまざまなイベントが進行している様子が印象的でした.このように,名古屋の厳しい残暑にも負けないぐらい,熱い議論が随所に見られた講演会でした.以下,それぞれの会場や懇親会などでのホットな様子をご覧ください.
先端電子デバイス製造においてプラズマプロセスは重要な役割を担っている.プラズマからのイオン・電子・ラジカルと電子デバイス材料との反応制御により原子スケールの加工精度を実現している.一方で,微細化した電子デバイスのスケールがプラズマと接する反応領域のスケールに迫り,プラズマ誘起ダメージ(など)が新たな問題となっている.プラズマ誘起ダメージは,電子デバイス開発において集積回路の信頼性を決定する主要課題であり,プラズマ源開発から集積回路設計にわたる幅広い分野における共通の研究対象である.本稿では,その研究の歴史,本質的機構を概観したあと,1つの機構を例にその分析技術,将来展望について述べる.
有機物質における熱輸送特性の理解はいまだ進んでおらず,物性研究としても黎明(れいめい)期にある.我々は,有機分子の単結晶,ナノ薄膜,自己組織化単分子膜を対象とし,共有結合と分子間力が熱輸送に与える影響の違い,π-stack構造における熱輸送特性,界面熱抵抗に対する官能基依存性,水素結合の熱輸送への有効性などの観点から,有機物質における熱輸送を体系的に理解する研究に取り組んできた.本稿では,これら一連の成果に加えて,分子レベルの熱伝導イメージング手法についても解説し,有機物質における熱輸送現象の基礎的理解の深化と,有機熱マネージメント材料の設計指針を提示する.
白色光源やLEDなどの発光デバイスは光技術を扱ううえで重要なツールであり,その微細化技術は電子デバイスと同様に,省エネルギー化,集積化,フレキシブル化につながるトピックとなっている.その中で,カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンなどのナノカーボン材料は,マイクロ・ナノ熱発光デバイスの開発において有力な材料候補となっている.本稿では,新たなマイクロ熱発光デバイスとして,CNT配向膜による偏光熱発光デバイスを紹介し,加えてマイクロ熱発光デバイスの実用手法として提案した高分解赤外分析の研究について述べる.
本稿では,螺旋(らせん)状の波面を持つ光渦ビームを用いた新たなプラズマ流速計測法を紹介する.従来法では原理的に不可能であった光軸と直交する流れの測定を,光渦による方位角ドップラー効果を利用することで可能にした.RFプラズマ中のアルゴン準安定原子の流れに対して,光渦レーザー吸収分光(OVLAS)法によって流速を定量的に評価した.さらに,光渦の強度分布に非対称性を導入した非対称光渦レーザー誘起蛍光(aOVLIF)法により,1方向からのレーザー入射のみで3次元流速ベクトルを決定できる可能性を示した.
SiCパワーデバイスは高い省エネルギー性能を示すが高コストである.高コストの原因の1つにバイポーラ劣化というデバイス劣化現象がある.これは結晶内の基底面転位(BPD)が積層欠陥(SF)へと拡張することでデバイスの性能が劣化する現象である.我々はその劣化の対策として,高エネルギーのH+やHe+注入によりSiC内に点欠陥を導入し,SFの拡張を防ぐ手法(SF-KHIITM法)を確立した.SF-KHIITM法により将来的にはSF拡張の完全な抑制が期待でき,その結果省エネルギーなSiCパワーデバイスの広範な普及へとつながると考えられる.
波長3~10µm帯の中赤外波長帯は環境ガス,可燃性ガス,一酸化炭素,二酸化炭素などの基準振動の強い吸収が存在するため,光学式ガスセンサの使用波長として有望である.この波長帯の半導体レーザー,LED,量子型受光デバイスにはバンドギャップ0.4eV以下のナローギャップ材料が適している.将来,半導体集積技術によって中空導波路などと集積化することで,超小型ガスセンサの実現も期待される.本稿では,ナローギャップ材料の結晶成長技術,材料の特徴や,デバイスの例について紹介する.
CMOSイメージセンサの技術進化により,デジタルイメージングは急速に発展し,私たちの生活に欠かせないものとなった.持続的な画素微細化と高機能化によって,画質向上と新たな応用分野の開拓が続いている.本稿では,CMOSイメージセンサの積層構造に注目し,最新技術とその応用例について解説する.