1分子酵素反応検出に基づくデジタルバイオ分析法は,微小リアクタ技術を用いて生体分子を高感度で定量的に計測する新しいバイオ分析法である.2005年に初めて報告されて以来,その汎用(はんよう)性の高さからさまざまな種類のデジタルバイオ分析法が開発されている.代表例は,デジタル酵素結合免疫吸着測定法(デジタルELISA)である.主に,疾患マーカやウイルスの超高感度検出を目的として開発された.その後,新しい微小リアクタ技術の出現により,測定対象は単純な酵素から膜トランスポータ,あるいは無細胞遺伝子発現のような複雑なシステムへと拡大している.さらに,酵素分子の不均一性や分子間個性を評価する手法も開発され,その適応範囲は単なる高感度検出の枠を超えて広がっている.本稿では,デジタルバイオ分析法の基本概念を紹介し,さまざまなデジタルバイオ分析法を紹介する.最後に,デジタルバイオ分析法の今後の展望について述べる.
フェーズフィールド(PF)法は,連続体モデルに基づき,各種材料における内部組織形成を計算する手法である.過去約40年の発展過程を経て,現在,材料組織の主要解析法の1つに成長した.この間,計算熱力学(CALPHAD法)の確立,および材料組織情報を活用した材料特性計算も各分野にて同時進展したため,これら一連の解析手法は,現在,材料設計全般を支える強力な体系へと進化しつつある.他方,昨今発展著しいデータ駆動科学における解析手法は,一般に順問題の計算体系を,逆問題も含め縦横に活用する手法の集大成と見ることができる.本稿では,PF法を軸足に,以上を連携させた次世代の材料設計について展望する.
放射線イメージング技術は,医療や産業分野での非破壊検査に不可欠な技術である.本稿では,ワイドバンドギャップ半導体を用いた放射線センサ技術の現状と未来展望について論じる.特に,今後の技術発展に向けて,より原子番号が大きい材料や低エネルギーX線に対応可能な材料の開発が必要とされており,それらの研究動向について詳述する.それに対して直接変換型としては半導体が使われているが,放射線の種類やエネルギーに対応するさまざまな半導体が用いられている.本稿ではその中でもワイドバンドギャップ半導体を用いた放射線イメージングデバイスを中心に,現状と未来展望を議論する.
本稿では,植物体内における光合成産物の葉から各器官への輸送(転流)をリアルタイムで非侵襲的に可視化できるPositron-Emitting Tracer Imaging System(PETIS)を活用した研究例を紹介する.具体的には,イチゴを対象に,植物体への光照射時間の長さが果実への転流にどのように影響を与えるかを明らかにした.PETISにより,従来の方法では難しかった詳細な転流プロセスの解析が可能となっている.光合成産物がどのように各果実に分配されるかを可視化することで,栽培管理における新たな指針を提供し,収量や品質の向上に寄与する技術の発展が期待される.
ナノポア計測とは,ナノサイズの穴を通る単一生体分子をラベルフリーで検出し,解析する技術である.ナノポアは,タンパク質ナノポアと固体ナノポアに大別される.これらのうち,タンパク質ナノポアを基盤としたナノポアDNAシーケンサは,次世代シーケンサとして注目されている.一方で,近年,後発であった固体ナノポアの研究進展が目覚ましい.本稿では,固体ナノポア加工法を概説し,筆者が独自に開発したレーザーエッチング破断法を紹介する.
昨今のAI技術の発展に伴う高性能コンピューティングのニーズに対し,メモリの大容量化・低消費電力化・広帯域化はますます重要となってきている.一方,従来の2次元的な微細化によるメモリ容量の増加や,プロセッサとメモリを別チップで構成するアーキテクチャは困難を迎えてきている.本稿では,これらの困難を打破するために筆者が取り組む,酸化物材料を中心とする3次元集積メモリデバイスの研究について紹介する.具体的には,HfO2系強誘電体材料をメモリ要素とし酸化物半導体をチャネル材料とするメモリデバイスの研究動向を紹介する.
生成AI全盛の時代,AIツールをフル活用して研究成果を爆上げしようぜ! という意気込みを持っていないと研究業界での生き残りは難しいように思います.研究職でなくてもAIツールの活用は必須でしょう.そのような思いで,研究に役立つAIツールのいくつかを紹介します.