日本列島では,台風,豪雨,地震,噴火などによる災害が頻発している.このような災害から身を守るためには,過去の災害状況を把握し,起こりうる災害リスクを理解し,防災意識を高めることが大切である.その際,災害を引き起こす自然現象の特徴を知ることは有効であり,自然現象を科学的に理解する際に分析技術が必要である.本稿では,内陸型地震を引き起こす活断層がいつ・どこで・どれくらい動いたのかを明らかにする技術として,放射性炭素年代測定,テフラ分析,ルミネッセンス年代測定,UAVレーザ計測,メタンガス測定,地中レーダ探査,帯磁率測定について紹介する.
窒化物半導体は,青色LEDさらに緑色LEDを実現させ,3原色を完結すべく赤色発光へと研究開発が広がっている.発光層となるInGaNは可視光のみならず紫外から赤外まで可能性を持つ材料である.赤色LEDやレーザーダイオードがInGaNで実現すると3原色が1つの材料系のデバイスで発光可能となり,マイクロLEDディスプレイなどの集積デバイスの低コスト化や高性能化が期待される.それら赤色発光素子実現には,高In組成でのInGaNの結晶性低下など結晶成長に関する課題がある.本稿では,近年のInGaN結晶成長技術の進展と赤色発光素子開発の現状について解説する.
光無線給電(OWPT)は,指向性の高いレーザーなどのビーム光源と太陽電池を用いて,配線を用いずに,長距離・小型かつ効率的に電力を供給する技術である.電磁ノイズを発生せずに,複数のIoT端末やドローン,電気自動車,ロボットなどのモビリティ,水中から宇宙など多様な環境や用途への応用が期待される.近年の光源・受電素子・関連周辺技術の進展により一部で実用化が始まっており,本稿ではその基本原理と構成,応用事例,技術的課題と将来展望について解説する.
溶液を用いて大気圧下で機能膜を合成する手法の開発は環境負荷低減などの観点から着目されている.中でもミストCVDはさまざまな薄膜を容易に合成することができたり,従来手法ではなかなか合成できない薄膜を合成できたりなどする.そのため,ミストCVDを利用する研究者や研究機関は日本国内だけにとどまらず,世界中で増加している.本稿では,ミストCVDについて説明し,反応炉内におけるミスト液滴の状態調査に関する研究について述べる.また,ミストCVDを有効に活用できそうな領域の1つを,本稿を読んでいただいている読者にのみいち早く伝える.
ゼオライトなどのミクロ多孔体に代表されるナノ空間を有する材料は,ナノ空間への入り口となる調整可能な分子に近い大きさや形状の細孔,内部に広がるナノ空間に由来する高い比表面積などを有するため,分子篩(ふるい)能や優れた吸着特性を示す.その用途は触媒,センシング,バイオ,分離など,多岐にわたっており,特に,分離の分野では,ミクロ多孔体を利用した吸着材や分離膜などの分子レベルの分離を実現する技術が発展してきた.本稿では,我々の開発しているミクロ多孔体を用いた吸着材や分離膜などの分離技術およびそのユーザビリティやサステナビリティに対する取り組みについて紹介する.
本稿では,GPUなどのAIプロセッサの性能を引き出すにはHBMなどのメモリ技術の進展が不可欠であることなど半導体メモリの重要性を議論し,ワーキングメモリからストレージメモリに至るメモリ階層の必要性を示す.次にワーキングメモリとストレージメモリの代表技術であるDRAMとNANDメモリの基礎から最新技術動向を述べる.最後に,近年不揮発ワーキングメモリという新メモリ分野を構築しているスピントロニクスを活用したMRAMを概説する.本稿を通じて,半導体メモリの未来を感じていただければ幸いである.