バイオイオントロニクスは,従来のバイオエレクトロニクスにイオニクスの概念を融合し,生体親和的かつ応答性に優れた情報・治療インタフェースを実現する新領域である.本稿では,イオン輸送の基礎理論から,電気二重層や疑似容量などの界面現象,さらにナノチャネルによる神経模倣機能,柔軟な記憶デバイス,刺激応答型治療パッチに至るまで,最新の応用展開を体系的に解説する.
超伝導ジョセフソン接合は巨視的量子状態がもたらす非線形インダクタと見なされることから,量子技術の核心の1つであり,例えば超伝導量子コンピュータでは無数のジョセフソン接合が使用されている.最近,高温超伝導体単結晶に内在する積層ジョセフソン接合により周波数変調テラヘルツ波放射が実証された.半導体を基盤とするテラヘルツ光源では,周波数変調は原理的に困難であり,超伝導デバイスの独自性が発揮されている.今後の研究の進展により,超伝導技術がテラヘルツ高速通信の有力な選択肢となる.
新たな診断・治療を創出する次世代の医療技術として,体内埋め込み型のバイオデバイス技術の研究開発が進められている.近年,体内デバイス研究の進展において,安全性と機能性を両立させるデバイス材料・プロセス技術が重要な役割を果たしており,機能性バイオマテリアルの開発が,次世代体内医療機器の創出に向けたデバイスおよびシステムの研究開発を牽引(けんいん)している.本稿では,生体適合性に加え,体内で優れた機械的・光学的・電気化学的特性を示す,より高度な機能性を有する材料開発が進むバイオマテリアル研究の視点より,次世代の体内埋め込み型医療機器の研究開発について展望する.
Talbot-Lau干渉計を用いた中性子位相イメージングにより,金属積層造形物の内部空隙を非破壊で評価する手法を開発している.アルミニウム合金,チタン合金の立方体試料を対象に,レーザーパワーと走査速度を変化させて製作した試料の中性子散乱像を取得し,既存のアルキメデス法よりも高感度に密度差を検出でき,空隙形状の定量的評価も可能であることを確認した.さらに,インコネル718の引張試験と散乱像コントラストを比較したところ,機械特性との相関が認められ,散乱像から造形物の強度分布を直接評価できる可能性が示された.本手法は,金属積層造形品の品質保証や製品リードタイム短縮への応用が期待される.
氷の中に僅かに存在するプロトンが伝導することで,氷は“p型半導体”的性質を示すことが知られてきた.また,プロトン伝導が不活性となるため,極低温の氷は絶縁体であると考えられている.近年,マイナス220℃以下の氷に紫外線と電子線を同時照射すると負電荷が伝導されることが初めて見いだされた.すなわち,氷は“n型半導体”のような電気的性質も持つ.筆者らは,実験・理論化学的研究に基づき,OHラジカルによる電子捕獲で生成するOH−(プロトンホール)をキャリヤとし,OH−が近傍のH2Oからプロトンを引き抜くことでOH−が氷中を伝搬する「プロトンホールトランスファー機構」を負電荷伝導機構として提案した.
本稿では,磁性ナノ薄膜にひずみを加えることで物性を自在に操るスピン・エラストロニクスの研究を出発点に,材料の垣根を越え,ナノ薄膜のエラスティックな性質を生かした次の材料科学―ナノ・エラストロニクス―創成に向けた構想を紹介する.高感度・高耐久なデバイス実証や実用化,生体センシングや無電源モニタリングなどの次世代技術,そして,巨大な物性制御や機能をビルトインした材料設計まで,その多様な可能性を論じる.
太陽電池の動作原理を半導体ダイオードの観点から解説する.短絡電流密度,開放電圧,曲線因子,直列抵抗,シャント抵抗などの基本的な太陽電池パラメータについて図解する.タンデム太陽電池とキャリヤ選択輸送層,さらには建物一体型,移動体搭載,営農,水上設置などの多用途展開に必要な太陽電池モジュールの付加価値について紹介する.