応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
94 巻, 2 号
『応用物理』 第94巻 第2号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
今月号の概要
解説
  • 片山 司
    2025 年 94 巻 2 号 p. 62-67
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    ペロブスカイト型強誘電酸化物は幅広く電子デバイスに実用されており,近年では,機能向上のために高結晶性・高配向性の強誘電薄膜の剝離技術が利用されている.本稿では,アカデミックの分野で注目されている水溶性犠牲層を利用した酸化物自立膜の化学的剝離技術について紹介する.特に,剝離時に発生するクラックを抑制し,ミリメートルサイズの機械的運動が可能な酸化物自立膜の作製に関する我々の研究成果を述べ,さらに,得られた強誘電酸化物自立膜の優れた光アクチュエータ特性についても説明する.

  • 発見から最新の研究動向まで
    木村 薫
    2025 年 94 巻 2 号 p. 68-74
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    準結晶は,数学と物理学や化学との学融合で生まれた概念です.準結晶の最初の報告から40年の間に,物理学と化学と材料工学の学融合を目指した研究室で行われてきた,金属分野と半導体分野の学融合や,最近ではデータ科学との学融合で生まれたマテリアルズインフォマティクスにおける最新の研究動向までを紹介します.金属結合‐共有結合転換という概念が生まれ,正20面体クラスター固体の統一的描像が構築され,重く強固なクラスターが弱く結合した固体という熱電性能向上の設計指針が提案され,準結晶半導体の存在の有無が解明されようとしています.

研究紹介
  • 萩原 学
    2025 年 94 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    積層セラミックコンデンサ(MLCC)に用いられる誘電体セラミックスには,高い比誘電率に加えて,微細構造を精密に制御することで得られる高い絶縁破壊強度が求められる.液相合成法の1つである水熱法は,分散性に優れた誘電体微粒子の合成に有効であり,その粒子を焼結することによって微細なグレインを持つ緻密なセラミックスを作製できる.本稿では,筆者が研究を進めているチタン酸ビスマスカリウム系材料を例に,水熱法を活用した誘電体セラミックスの開発事例を紹介する.

  • 横型熱電モジュールの実現に向けて
    後藤 陽介, 臼井 秀知, 村田 正行, 李 哲虎
    2025 年 94 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

    従来の熱電モジュールは,温度差と発電方向が同じ「縦型」構造のために,電極・熱電材料の界面部分が高温になることで元素拡散などの反応が起きてしまい劣化するという課題を抱えている.これに対し,温度差と発電方向が直交する「横型」熱電モジュールは,電極界面を高温熱源と空間的に分離可能であることから,優れた耐久性を有すると期待できる.本稿では,横型熱電モジュールを実現するために,1つの材料中でキャリア極性(p型・n型)が方向によって変化する「ゴニオ極性材料」について紹介する.特に,我々が最近ゴニオ極性を観測したMg3Sb2およびMg3Bi2を例として,電子軌道の異方性に着目した材料開発について焦点を当てる.

  • 種村 拓夫, 小松 憲人, 相馬 豪
    2025 年 94 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

    波長以下の誘電体構造を2次元平面上に高密度に配置したメタサーフェスは,入射光の波面に加えて偏波状態も自在に制御できる薄い光学素子である.筆者らは,光の全ての自由度を活用するコヒーレント光通信用デバイスに誘電体メタサーフェスを適用することで,従来の導波路型素子やバルク光学部品では困難なさまざまな機能を持つ受信器をコンパクトに実現できることを提案・実証している.本稿では,これらの基本的な原理と実験結果を紹介し,今後の展望を述べる.

  • 杉本 泰, 藤井 稔
    2025 年 94 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    物質は光の電場と磁場に対して異なる応答を示すため,円偏光状態の光をナノ粒子に照射すると,一般に光のヘリシティ(円偏光の回転方向)は保存されない.ところが,光の電場と磁場に等しく応答する電磁双対性を持つ“dual”なナノ粒子では,全方向において散乱光のヘリシティが保存されナノ粒子表面に円偏光の近接場が形成される.円偏光の近接場はキラル分子の円偏光二色性を増強する技術などへの応用が期待される.本稿では,可視~近赤外波長域に低次のMie(ミー)共鳴を有する直径100~200nmの結晶シリコンのナノ粒子が特定の波長で“dual”な粒子として振る舞うことを示す結果を紹介する.さらに,筆者らが開発したシリコンナノ粒子のコロイド溶液において,光のヘリシティが保存されることを示した研究成果を紹介する.

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