応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
94 巻, 5 号
『応用物理』 第94巻 第5号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
今月のトピックス
解説
  • 雨倉 宏
    2025 年94 巻5 号 p. 237-243
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル フリー

    多くの固体において数十MeVを超える高エネルギー重イオンが通過すると,その直線的な軌跡に沿って円柱状の損傷領域(イオントラック)が形成される.イオントラックの形成機構として現在最も支持されているのが非弾性熱スパイク機構である.イオンからのエネルギー付与によりその軌跡に沿って固体温度が上昇し,融点を超えて融解した領域が急冷され,イオントラックを形成すると考えられている.一方ダイヤモンドは準安定相であるため,加熱されても融解せず安定相である黒鉛に変わるため,上記モデルは直接適用できない.これまでダイヤモンドではトラックは観測されなかったが,我々はC60イオンを照射することによりトラックの形成に成功した.熱融解以外で初めて形成されたイオントラックでの知見を基に,イオントラック形成機構の現状の認識を紹介する.

最近の展望
  • 飯田 琢也
    2025 年94 巻5 号 p. 244-248
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    近年,誘電泳動や磁気泳動,光ピンセットなどの電磁場が物質に及ぼす力を用いたマイクロ・ナノ物質の運動制御の研究が盛んである.本稿では,光圧効果と流体効果の相乗作用を利用し,生体試料を誘導・濃縮し,さまざまな生化学反応を広範囲で加速する「光誘導加速システム」に関する最新の研究動向を紹介する.特に,抗原抗体反応の光誘導加速による疾患マーカーの高感度・迅速測定法に関する適用例を中心に,微生物検査,遺伝子検査への適用例についても概説し,幅広いバイオ分析への応用と医療・食品・環境問題などの社会的課題への実装に向けた展望について述べる.

  • 田中 香津生
    2025 年94 巻5 号 p. 249-253
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,中高生が自主的にテーマを設定して長期探究を行う機会が増えた一方,放射線計測分野は機器や探究サポート体制の不足から取り組みが難しかった.そこで発足した「加速キッチン」では,オンラインで検出器を貸与し,大学生メンターが長期にわたって伴走する仕組みを整備.DiscordやNotionを使った週次報告や遠隔支援,加速器施設・大学・海外団体との連携によるビーム実験や国際共同測定など,多角的な探究環境を提供している.これにより,中高生が放射線や宇宙線をはじめとする物理分野で主体的に研究を継続でき,幅広い学術アウトリーチや次世代人材育成の新たな可能性が生まれている.

研究紹介
  • 馬越 貴之
    2025 年94 巻5 号 p. 254-258
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    近接場光学顕微鏡は,金属探針の先端で生成した微小な近接場光でナノスケールの光学観察を実現する超解像顕微鏡である.ラマン計測や赤外吸収計測,発光スペクトル計測など,さまざまな光計測技術をナノスケールに落とし込めることが特長の1つである.近年は空間分解能の向上も著しいが,それ以外の観点からも近接場光学顕微鏡の分析能を高めるような新技術が多く報告されている.本稿では,近接場光学顕微鏡におけるユニークな新技術ついて,筆者の研究成果を交えて紹介する.

  • 許 斌, 塩見 淳一郎
    2025 年94 巻5 号 p. 259-263
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    情報技術が急速に発展し電子デバイスの集積度が増大する中で,発熱密度の上昇がさらなる技術発展のボトルネックの1つとなっており,それを緩和する熱マネージメント技術への要求が一段と高まっている.熱マネージメントには,構成要素の高熱伝導化,要素の接続部の高熱伝導化,それらを組み合わせた伝熱設計など,さまざまな戦略があるが,これらの成否を左右する要因として最も重要なのが「界面熱抵抗の低減」である.本稿では,東京大学熱エネルギー工学研究室において共同研究者とともに実施してきた最近の取り組みについて紹介する.特に,界面におけるナノスケールの熱伝導のメカニズムと制御性および,それに基づいて効果的に界面熱抵抗を低減する新しいアプローチを議論する.

  • 矢吹 智英
    2025 年94 巻5 号 p. 264-268
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル フリー

    沸騰熱伝達は,他の伝熱形態と比較して高い熱伝達率を有しており,CPUやパワー半導体などの高発熱密度体の冷却への応用が期待されている.しかしながら,なぜ沸騰が高い熱伝達率を持つかを明確に答えることは今でも難しく,熱伝達メカニズムには不明な点が残されている.熱伝達メカニズムの正しい理解は,高性能伝熱面や沸騰熱伝達の数値計算予測技術の開発などにおいて不可欠である.本稿では,高速度赤外線カメラを用いた熱輸送分布の詳細観察によって明らかになった沸騰の熱伝達メカニズムについて紹介する.

基礎講座
Coffee Break
  • 本田 隆行, 門田 英子
    2025 年94 巻5 号 p. 275-278
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル フリー

    全国的にも珍しい,どこにも属さない“野良”科学コミュニケーターとして活動されている本田隆行さん.「科学コミュニケーター」という言葉は社会的に少しずつ耳にするようになってきたものの,何者かと聞かれるといまだハテナが浮かびがちです.そこで,現在に至るまでの経緯や具体的な活動内容などを伺いました.「伝える」「伝わる」の先に科学と社会をつなげる「実践型」の科学コミュニケーションについて,2017年日本サイエンスコミュニケーション協会奨励賞の初代受賞者でもある本田さんに語ってもらいました.専門外に対する研究内容の伝え方を模索する研究者やその卵の皆さんに,ぜひご一読いただけたらと思います.

追悼
編集後記
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