中赤外フォトサーマル顕微鏡(MIP顕微鏡)は,分子振動に由来する中赤外光の吸収を,可視光顕微鏡を用いて高い分解能で可視化する新しい計測技術である.本稿では,MIP顕微鏡の原理とその歴史的背景に加え,筆者らが開発を進めてきた中赤外フォトサーマル定量位相イメージング(MIP-QPI)技術について解説する.特に,ビデオレートでの高速化学イメージングや,100nmに迫る高空間分解能化を実現した最新の研究成果を紹介するとともに,生細胞内での熱拡散や熱泳動現象を直接可視化することによって開かれる,生命科学分野における新たな展開の可能性について記述する.
電子の反粒子である陽電子を用いて材料中の空孔,空隙を感度よく非破壊で検出することができる.試料の伝導性,温度などについての制約が無く,金属,半導体,絶縁体などへ適用できる.また,表面近傍の欠陥深さ分布を得ることも可能である.本稿では,陽電子消滅の原理について説明した後,イオン注入した半導体,高誘電率薄膜,またSiO2膜の空孔型欠陥や空隙の焼鈍特性を評価した結果について紹介する.
磁気冷凍は,磁性体材料と磁場をかけるマグネットさえあれば手軽に1Kを下回る極低温が得られる.そのため近年再注目され,極低温磁気冷凍に有効な希土類化合物が続々と見いだされている.よい材料を見いだすためには,膨大な基礎研究を背景とする希土類元素の持つ4f電子の特性の理解に加え,ヘリウム4ではアプローチしにくい2K以下の物性測定が必要となる.本稿では,4f電子系の物性物理学に基づいた材料探索の方向性を示し,我々が行っている現実的な性能評価方法について紹介する.
本稿はプラズマを表現する最も基本的な物理量である電子密度・温度の計測法の1つである,レーザートムソン散乱(LTS)法に関するものである.同手法はしばしば難しい計測の代表例として挙げられるが,その実態はどのようなものであるか,通常の論文には書きづらい準備段階に焦点を当てた内容を述べる.筆者のこれまでの経験を踏まえ,計測が特に難しい領域についても示す.
組合せ最適化問題をイジングモデルの基底状態探索問題に変換し,イジングモデルを模擬する物理実験でその低エネルギー状態を探索するイジングマシンの研究が活発化している.コヒーレントイジングマシン(CIM)は,縮退光パラメトリック発振器(DOPO)の離散化した位相をスピンと見立て,それらを測定・フィードバックにより結合した光イジングマシンである.本稿では,10万スピンのイジングモデルを表現可能な超大規模CIMを中心に,NTTにおけるCIMの最近の進展について述べる.
多結晶セラミックスにおいて,内部の散乱源を極限まで取り除く透明セラミックス技術は,特に高出力レーザー分野での応用が期待されている.しかし,複屈折を持つ非立方晶材料では,結晶粒界で屈折散乱が発生するため,レーザー品質の透明化は依然として困難である.この課題を解決できれば,新たなレーザー材料や装置の創出,さらにはその先の応用技術の発展を後押しすると期待される.本稿では,非立方晶材料の透明セラミック化に関する手法とその現状について概説し,筆者らが取り組んでいる微結晶粒で構成される透明セラミックスの研究成果を紹介する.
本稿では,初心者向けに計算機(コンピュータ)のしくみを概説します.コンピュータの構造としくみ,CISCからRISCへのアーキテクチャの変遷,熱密度問題とマルチコア化,フォン・ノイマン・ボトルネック,GPUなどの話題を取り上げます.