ハードディスク装置(HDD)の磁気記録方式は,長手磁気記録,垂直磁気記録,エネルギーアシスト磁気記録と大容量化,高密度化を実現するために変遷してきた.その中で信号処理方式も振幅検出,ピーク検出,PRML,繰り返し復号と進化し,記録再生系の特性を補い,情報の信頼性を損なうことなく高密度化に貢献してきた.本稿では,MRヘッドの採用と共にHDDの急激な面密度向上を支え,磁気記録の信号処理において基本となるPRML方式と現行HDDにも採用されている繰り返し復号方式について解説する.
モータの電力消費が増加する中,エネルギー効率の向上が喫緊の課題となっており,高効率モータの開発が重要視されている.永久磁石はそのキー部品であり,現在はネオジム磁石が主流である.しかし,ネオジム磁石の耐熱性を向上させるために添加される重希土類元素(例:ジスプロシウム,テルビウム)は,資源供給の不安定性という課題を抱えている.このような背景から,重希土類を使用しない代替磁石として,サマリウム(Sm)系磁石が注目を集めている.本稿では,Sm系磁石の中で高温環境で優れた性能を持つSm-Co系,今後高磁力化が期待されるSm-Fe系それぞれにおける最近の研究開発の進展について概説する.
超短パルスレーザーはパルス幅が極めて短いため,従来のレーザーでは不可能であった高品質加工を実現する.またピーク強度も極めて高いため透明材料にも非線形吸収を生じさせることができ,複雑な3次元マイクロ・ナノ構造の構築を可能にする.さらにレーザー光を整形することにより,加工の高度化が図れる.本稿では,筆者が開発した超短パルスレーザーによる透明材料の3次元加工技術,複合加工技術,ビーム整形加工技術を解説する.さらに開発した技術を3次元マイクロ流体デバイス,高感度分析チップ,ガラス貫通穴作製に応用した例について紹介する.
固体量子センサは磁場・温度・圧力等を高感度・高空間分解能で測定可能な新規センサとして注目されている.ダイヤモンド中の窒素‐空孔複合欠陥(NVセンタ)を使用した量子センサのさまざまな応用研究が進められている.パワー半導体用母材として実用化されている炭化ケイ素(SiC)中にも量子センサとして機能する欠陥が存在する.それらはSiCパワー半導体内部を直接,高感度・高空間分解能で観察可能という他の量子センサにはない利点を持っている.本稿では,シリコン空孔量子センサによるSiCパワー半導体内部直接センシング技術について最新の研究動向を紹介する.
蛍光ナノダイヤモンド中の窒素‐空孔(NV)中心は,室温動作可能な量子センサとして注目されている.本稿では,蛍光ナノダイヤモンドを用いた量子センシング研究の進展を概観し,生体計測への応用を中心に紹介する.細胞や線虫などの生体内温度計測をはじめ,磁場・化学環境センシングの可能性,さらにオンチップデバイスとの融合を取り上げる.スピンコヒーレンス時間の向上などを目指した高品質材料の開発やその課題と展望についても論じ,生命科学などへの新たな展開を展望する.
高出力・高繰り返しレーザーの開発は,慣性核融合や高強度光科学など次世代応用に不可欠である一方,利得媒質に生じる熱の制御が大きな課題となっている.筆者らは,伝導冷却アクティブミラー方式を採用して独自の基幹技術を開発し,実証システムにより10J,100Hzという世界最高水準の出力を得ることに成功した.さらに現在,より大口径のレーザーシステムを構築中である.本稿ではその開発状況と将来展望について紹介する.