近年の人工宝石市場の拡大に伴いCVDダイヤモンドの大型化,低価格化が急速に進んでいる.物質中最大の熱伝導率や高い絶縁破壊電界を持つダイヤモンド半導体も,来る応用需要に合わせるようにデバイス研究が世界的に加速されており,ダイヤモンドを次々世代パワーデバイス材料として実用化するための基盤技術が整いつつある.本稿では水素終端表面チャネルを用いたデバイス技術の進展と,プレーナ型MOSFETの大電流動作や高速スイッチング特性,さらに高耐圧化に向けた課題と展望について概説する.
近年の生成AIの爆発的な普及に伴い光通信ネットワークの更なる高速化が求められているが,その進化はシングルコアの光ファイバでは限界を迎えつつあり,マルチコアファイバを用いた空間分割多重方式への移行が注目されている.マルチコアファイバの光源として1.55µm帯量子ドット面発光レーザーを用いることで,高速化だけでなく省電力化や低コスト化の両立も可能である.本稿では,光通信ネットワークや,これまで検討されてきた長波長帯面発光レーザーについて我々の実験結果も含めて紹介する.
近年,素手でも触ることができる低温大気圧プラズマが多く開発され,全世界的に医療,農業,水産業に応用しようというプロジェクトが多くの国で実施され,実用化に向けた取り組みが始まっている.本稿では,特に低温大気圧プラズマを利用した農業応用研究の歴史と近年の国内外の動向について解説し,今後の研究動向を展望する.
氷は私たちにとって最も身近な物質の1つでありながら,その成長の“現場”で何が起きているかについては十分に理解されていない.本研究では,独自に開発した高分解光学顕微鏡を用いて,過冷却水中で成長する氷界面の様子を直接観察した.その結果,氷の成長界面で1分子ステップが自発的に寄り集まり,より高い段差を形成する「ステップバンチング現象」が起こることを発見した.さらに,寄り集まったステップ同士の衝突をきっかけに結晶欠陥が生成し,ステップが渦を巻いて成長する「渦巻成長」も確認した.これらは,氷に限らず他の多くの物質に共通する結晶成長の階層性を示すものであり,結晶成長機構の理解に新たな視点を与える.
2次元物質の半導体である二硫化レニウムを用いた新しい電子デバイスについて紹介する.特に光照射で電荷密度を制御することで多値メモリとして動作する不揮発性メモリや,光照射によって被検出分子の選択性を持たせた有機分子センサデバイスについて述べる.
光ポンピング磁気センサ(OPM)は,液体ヘリウム冷却が不要なため,SQUIDの代替として注目される超高感度センサである.本稿では,その発展について解説した後,代表的なOPMの方式であるSERF型とスカラ型について,その特徴について実験結果を踏まえながら述べる.
2022年11月のChatGPTの発表から数えると,生成AIが世間を騒がせるようになってから3年ほどの時間が経過した.今,生成AIでは何ができ,将来,何ができるようになるのだろうか? 本稿では,ニューラルネットやカーネル法など従来の機械学習から,トランスフォーマーと拡散モデルによる生成AIへの発展を概観し,文章・画像・動画・音声・プログラム生成と材料開発・AlphaFoldなどの科学応用を紹介する.さらに,物理法則を取り込んだ世界モデルとPhysical AIの可能性を論じるとともに,著作権やアラインメント,自殺リスクなどの社会的・倫理的課題を整理し,応用物理学と社会への影響と今後の展望を考察する.