非可換統計性を持つ粒子の探索およびその量子応用を目指して,固体物理でのマヨラナ粒子に関する研究が活発に行われている.本稿ではマヨラナ粒子を実現するためのさまざまな実験舞台の中でも超伝導体と半導体の接合に注目し,超伝導体と半導体の接合におけるマヨラナ粒子の基本的な事項,これまでの研究の発展,そして現在の潮流に関して概観する.
生成AIの発展により増大する電力を抑えつつ高い演算性能を実現する技術として,光電融合に基づく光演算が注目されている.Siフォトニクスと化合物半導体などの異種材料を組み合わせることで,高効率な光位相シフタ,低消費電力光電変換素子,高感度光パワーモニターが実現され,大規模光演算回路の可能性がさらに広がっている.本稿では,光電融合技術の進展,光演算回路の原理や光演算回路に求められる要素技術や最新成果を概説し,光演算による新たな計算基盤の創出に向けた課題と展望を述べる.
核磁気共鳴という基礎的な物理現象を用いた画像法(MRI)は,生物の生体内部を生きたまま画像化する非侵襲的な方法として広く臨床で使われている.特にGd3+含有キレート分子を造影剤として用いた場合,不対電子を7つ有するGd3+に配位した水分子の緩和時間が大きく変化し,MRI画像のコントラストが向上し,疾患の検出に大きく貢献する.本稿では,造影剤の物理化学的な作用機作,Gd3+キレート剤の健康への懸念,新世代造影剤に関して概説する.
3次元磁化構造は基礎・応用の両面から注目を集めているが,磁気シグナルの弱さや軟X線の低い透過率により,実験的観察は困難であった.近年,軟X線タイコグラフィの発展により,位相コントラストを利用した高分解能イメージングが可能となり,3次元磁気イメージングへの応用が進んでいる.本稿では,軟X線のプリエッジ領域を用いたタイコグラフィによる,磁性体内部の3次元磁化構造観察についての研究を紹介する.
スキルミオンはトポロジカルスピン構造を有し極めて低い電流密度で駆動できるなどの特徴を持ち,次世代スピントロニクスへの応用が期待されている.その実空間での直接観察にはナノメートルオーダの空間分解能が求められ,さらに立体的構造を有するスキルミオン紐を知るためには3次元観察が要求されている.それに対し我々は高空間分解能を持つ透過型電子顕微鏡のローレンツ顕微技法および微分位相コントラストトモグラフィ法を駆使し,スキルミオン紐およびその融解過程の観察を行った.本稿ではこれらの手法によりスキルミオン紐の3次元ベクトル場をマッピングし,その融解過程を観察した結果について紹介する.
伸縮可能な材料を用いて,基板の機械的伸長により反射ビームを動的に制御するサブテラヘルツ波帯異常反射ストレッチャブルRIS(Reconfigurable Intelligent Surface)を開発した.試作サンプルの機械的試験から200%以上の伸長が可能であることを示した.このRISの反射特性の評価のため,ミリ波サブテラヘルツ波帯CATR評価装置を開発し,これを用いて,140GHz帯において基板伸長による反射ビームの動的制御が可能であることを実験的に示した.さらに,データセンタ内の実環境下を想定し,キャリヤ周波数140GHz,64QAM,7GBaudの変調波を用いた無線通信実証実験を行い,30°から45°の異なる方向からの入射波に対しても,基板伸長により,所望方向に42Gbpsのエリアを作成できることを実証した.
物理学などの自然科学や製造業などの産業分野における多くの問題は,深層学習以外のデータ分析手法を用いる方が効果的に解決できる場合が多い.これは,少量の貴重なデータからドメイン知識を活用しつつ適切に情報を抽出し,得られた結果を解釈する必要があるためである.本稿では,そのような目的に有用な機械学習の基礎的手法と,深層学習の理解にも資する機械学習の基本概念について概説する.