超伝導体中の単一磁束量子(SFQ)を情報担体とする超伝導ディジタル回路は,超高速動作と極めて低い消費電力を両立できることから,半導体集積回路を凌駕(りょうが)する性能を実現しうる次世代ディジタル集積回路技術として期待されている.これまでにマイクロプロセッサの動作実証を含む多くの成果が報告されてきた.本稿では,これらの超伝導ディジタル回路技術の動作原理と最近の進歩を概説するとともに,近年加速する新たな展開について紹介する.
生体模倣システム(MPS)はヒト由来細胞と微細加工デバイスを統合し,臓器機能をin vitroで再現する評価技術である.本稿では,創薬における臨床予測性向上と動物実験代替・削減の推進の観点からMPSの国際・国内動向を概観し,品質,運用,計測,翻訳,普及の観点から課題を整理した.そのうえで材料・デバイス研究への期待を述べたい.
近年の計測技術の高度化により,材料・デバイス研究では空間・時間・エネルギーに広がる高次元かつマルチモーダルなデータが日常的に取得されるようになった.一方で,「測れること」と「理解できること」の間には新たな隔たりが生じている.本稿では,計測を逆問題として捉え,不確実性を含めて解析・判断へとつなぐ「計測インフォマティクス」の基本概念と方法論を概説する.分光計測や電子顕微鏡計測の具体例を通じて,物理モデルとデータ駆動解析の融合が高次元計測データの解釈と活用に有効であることを示し,研究開発から製造プロセスへの展開と将来像について議論する.
テラヘルツ帯(およそ0.1-10THz)の広視野,広周波数帯域の観測によって,宇宙の成り立ちや巨視的な構造進化を解明することは,現代の観測天文学のフロンティアである.筆者らは高感度で大規模化に適した超伝導カイネティックインダクタンス検出器(KID)をみずから開発して独創的な装置(DESHIMA,GroundBIRD,南極カメラ)を実現し,国内外の高地の望遠鏡に搭載して宇宙観測を行っている.本稿では,これらのプロジェクトを中心に,KIDの研究開発とその魅力について紹介する.
再生医療など細胞を積極的に扱う分野の進展に伴い,細胞機能を適切に発揮させるためには,細胞と生体との界面で生じる反応を精密に制御することが重要となっている.人工材料では表面改質が有効であるが,細胞そのものに対しても同様に表面を改質する技術が求められている.本稿では,人工ナノ材料であるポリエチレングリコール‐リン脂質複合体を利用した細胞表面修飾法と,DNAの相補対形成を基盤とした細胞操作技術について紹介し,細胞操作への応用可能性を示す.
ダイヤモンドと異種材料を集積することにより新たな機能デバイスの実現が期待される.我々は直接接合技術の一種である表面活性化接合法によりダイヤモンドとさまざまな半導体を接合し,その基礎物性から応用にわたる研究を行っている.本稿では,ダイヤモンドとSi,窒化物半導体の接合を対象に,接合に対する熱処理効果の研究,デバイス検討の現状を紹介するとともに,今後の方向性を展望する.
深層学習モデルに入力された情報がネットワーク内を順伝播(でんぱ)し,得られた出力と正解データとの差(誤差)を基に誤差逆伝播法によってモデルが学習する過程,ならびに画像データに含まれる特徴の抽出・分類機構に焦点を当て,深層学習の基本モデルである全結合型ニューラルネットワークと畳み込みニューラルネットワークを解説する.最後に,分類AIの応用例として,数値シミュレーションで生成した画像の学習データから実験で観測した画像の解析を可能とする事例を紹介する.