本文は圓管内の亂流が斷面上一様な温度分布を有しない場合に就いて,管軸に沿ふ温度變化を求める一計算法を示したものである.先づ§1に於て,管の内外に於ける熱の移動が,管壁に接して存在する層流部分の温度勾配に基く傳導によつて行はれるものと考へ,管軸に沿ふ湿度變化を求める基本關係式を導いた.次いで此の式の計算に必要な層流部分の温度勾配を知るために,§2に於て此の部分の温度曲線を求めると共に,§3の計算に必要となる速度曲線を求めて置いた.其の結果層流部分の温度曲線が直線なることを知つたが,この直線の勾配を定めるためには,層流部分の厚さを求めなければなちない.所が此の厚さの計算式として從來與へられたものは等温流に對するものであるから,本研究の如く非等温流の場合は温度によつて變化する粘性係數を如何にとるかが問題となる.そこで§3に於て之に對する一つの考察方法を詳述した.§4に於ては§2, 3の結果を用ひて層流部分の温度勾配を求め,之を§1の基本關係式に代入して,圓管内の亂流の管軸に沿ふ温度變化を與へる計算式を導いた.最後に§5に於て計算値と實驗値とを比較し,本計算法が或程度の妥當性を有することを確めた.尤も適當な實驗資料を得難かつたので,詳細な檢討を行ひ得なかつたことは遺憾とする所であり,更に今後の研究に俟ちたいと思ふ.
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