2台の超音波光変調器 (ULM) を並列的に配置した光学系に,コヒーレント光を通すと,それぞれの超音波の発振周波数の差を光の稔り周波数とする信号が容易にえられる.
まず,第1のULM
1を通過した回折スペクトルのうち,1次光と零次光を光ヘテロダイン検出をおこなう2光波とする.それぞれの光波が再び第2のULM
2に入射して,再び回折されるが,ULM
1を出た1次光については,ULM
2通過後直進する零次光をとる.また,ULM
1を出た零次光については,ULM
2通過後その1次光をとる.いま,ULM
2の超音波周波数をULM
1のそれより低くとると,ULM
2をある許容範囲内で,ULM
1に対して相対的に傾けることにより,両光波は検出器面上で重畳することができる.また,両光波は,それぞれULM
1およびULM
2の超音波の周波数だけ周波数偏倚をうけることになるので,光の唸り周波数は,それぞれの超音波の周波数差となる.この唸り信号を光電検出器で検出すると,その出力電圧は,入射光強度に比例し,それぞれのULMにおける音圧,2光束のなす角,および検出器前のスリット.幅に関係することを解析的に示すとともに,これらの関係が実験的に明らかにされた.また,稔り信号の位相は光路の媒質のゆらぎによって変動するが,collinearな光学系を用い,その上,光路をガラス管で蔽うなどの方法を講ずれば,ゆらぎによる位相変動を十分小さくすることができる.
本装置の特徴は,光学部品が少ない簡単な光学系で,比較的容易に安定した位相をもつ光の唸り信号がえられることであり,また,高い周波数の超音波を用いても,二つの振動子の周波数を与えられた許容範囲内で適当に組合せれば,いまの場合,光の稔り周波数は,これらの超音波周波数の差とするものであるから,比較的低い稔り周波数を任意に選ぶことができる点である,このことは,媒質による定常的な比較的低い周波数編倚や位相変動を研究する唸り分光
11, 16)の装置として役立つものと思われる.
最後に実験装置の面で,御配慮いただいた本学の池田教授に感謝の意を表します.
抄録全体を表示