気体や液体の中を電場や磁場の作用のもとで流動・拡散し,ときには‘反応’も行なう低エネルギーの電子やイオンの群れ (swarm) の振舞いを調べる,いわゆるスウォーム研究の進歩とその応用について,電子スウォームを中心に概説する.このような研究は,電子やイオンの衝突過程の有力な研究手段としても,宇宙科学,放射線科学,放電工学,気体レーザーなどの応用的諸分野で出合う複雑な巨視的な現象を微視的な諸過程と結びつける橋渡しとしても,きわめて重要である.また,流動,拡散などのスウォーム現象は,最も単純な非可逆過程として,それ自体,物理学的にも興味深い.古い歴史を誇るこの分野は,また最近,世界的に急速な発展を遂げた.その一端を紹介するとともに,今後の誤題を考えたい.
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