地上望遠鏡による天体観測においては,短時間露光の像は大気のゆらぎによって乱され,スペックル状の画像となる.大口径の望遠鏡を用いても,空間分解能としては,10cm程度の望遠鏡と同程度の像しか得られない.最近,このように劣化した画像から,もとの画像の情報,あるいはもとの画像そのものを回復する方法が,いろいろと提案されている.これらの方法の多くは,統計的な手法に基づくものであり,計算機科学のめざましい発展に支えられて,実現できたものである.統計的な画像回復法は,天体画像のみならず,他の分野における画像回復への応用も可能であり,今後の進展が,おおいに期待されるところである.本解説では,天体画像応用を主として,いくつかの統計的画像回復法について述べる.
抄録全体を表示