ヒトの体内には多種類の元素が存在するが,存在割舎が0.01%以下の微量でも,不可欠な元素としてさまざまな機能を果たすものがある.ヒトにおける必須微量元素として広くコンセンサスか得られている9種の元素, Fe, Zn, Cu, l, Go, Se, Mn, Mo, Cr について,健康に及ぼす影響を概説した.必須元素は欠乏すれば生体に悪影響を与えるが,過剰でも障害を生じる.ここでは, Zn, Fe, Cu, Se を中心にヒトにおける存在量,分布と機能,体内への取り込み,欠乏症と過剰症を示した.生体微量元素の知見が広く得られるようになったのは,分析手法の発展によるところが大きい.しかし,ヒト血清中濃度についても,すべての元素の正常濃度範囲がわかっているわけではなく,過不足を評価するための指標に関するさらなる研究が必要とされている.
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