日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
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小講演
  • 二瓶 正登, 澤 幸祐
    セッションID: L-005
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    エクスポージャー療法は不安症を始めとする多くの臨床心理学的問題に高い効果を示す介入技法である。エクスポージャー療法は古典的条件づけにおける消去手続きの援用であると考えられていることから,介入効果の促進や介入後の再発を防止する手法の開発において,消去の効果を促進するdeepened extinctionや消去後の反応回復を減少させる多文脈消去といった古典的条件づけの消去手続きに関連する知見との橋渡し研究が積極的に行われている。しかしながら,そうした手続きの有効性は認められているものの,それらがなぜ効果的かを包括的に説明する基礎心理学的モデルは存在しなかった。そこで本発表では発表者が構築した文脈類似性モデルを取り上げ,従来説明が難しかった消去に関する諸現象がどのように説明可能かを示す。また,実際の消去手続きに関する個体・個人データと文脈類似性モデルの当てはまりの検討も行う。加えて,文脈類似性モデルが提案する新たな介入技法についても説明を行う。これらの議論を踏まえ,文脈類似性モデルが古典的条件づけおよびエクスポージャー療法の説明基盤として従来の体系よりも有用である可能性を考察する。

  • 西川 泰夫, 高砂 美樹
    セッションID: L-006
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    心の哲学史上のみならず自然科学的実験心理学成立以降現状においても心観(ならびに行動観など)の前提となる認識の枠組み(視点,パラダイム)の間の対立解消が図られてきたが解決にはなおほど遠い。典型例は心身二元論と一元論間にみられる。二元論から生じる難問,心身問題を解消する試みの結果精神物理学や新たな数理論理的究明,一方には心身医学がもたらされた。他方,一元論の内部では唯心論からの霊魂論をはじめ,意識・無意識論の対比は現状にも残る。唯物論(機械論)からは新たな動物観や行動論が提起された一方,認知科学(新たな心の科学)とその両輪となる人工知能(AI)研究が生まれた。これを可能にしたコンピュータ(情報処理装置)に脳を重ね,心をこの上で走るソフトウエアとみなす観点が提唱された。さらに現行の心理学の立ち上げの手本,古典物理学自体は相対性理論や量子力学への展開に伴い観測問題など,従来の決定論とは全く異なる非決定論や不確定性論の観点をもたらした。さらにカオスや複雑性の科学をもたらしている。この事態で心理学内部の未解決の諸課題の解消や心理学の大統一は可能か。心理学自体を再検証し今後への道程を模索する。

  • 菊池 理紗, 福田 由紀
    セッションID: L-007
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    これまでの文章産出では,読み手がその文章を読めば完結する一方向的な文章を対象に研究が主に行われてきた。しかし,日常生活の中で,私たちは他者と文章を用いてやり取りを行なっており,情報化社会が進展した現在では,その頻度や重要性が高まっている。よって,文章産出研究の分野においても,文章を用いたやり取りに関する実証的研究がなされ,その知見が蓄積されることが望まれる。それにより,文章産出研究の対象が広がり,その知見を応用する機会も高まるであろう。本講演では,他者との書き言葉によるコミュニケーションを「やり取りを前提とした文章」と定義し,産出される文章の好ましさの解明を目的とした複数の実証的研究を紹介する。具体的には,読み手と書き手の双方の立場における文章の好ましさの要因を特定し,書き手に提示する情報の種類が産出される文章に与える影響について検討した研究群である。なお,本研究の対象は,公私共に利用できるメールの文章とし,書き手に言語表現に対する熟考を促すため,場面は公的なものに限定している。これらの研究を踏まえ,やり取りを前提とした文章産出における好ましさに関して,総合的な見地から考察する。

  • 郭 霞, 積山 薫
    セッションID: L-008
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    楽器演奏訓練は多感覚(聴覚,視覚,体性感覚)情報と注意,細かい運動制御,記憶の検索と保存,感情などの情報統合を必要とする複雑な認知活動であり,訓練に関連する脳の可塑性の研究において貴重なモデルとなっている。これまでの先行研究では,楽器訓練経験が子どもや若年者のみならず,高齢者の認知機能や脳にも大きな影響を与えることを報告しているが,その因果関係にまで踏み込んだ知見は乏しい。特に,高齢者における楽器訓練が機能的磁気共鳴画像化法(functional Magnetic Resonance Imaging:fMRI)を用いた脳活動に及ぼす効果の検証はほとんど行われていない。本講演では,神経心理学的検査やfMRIを用いて,発達的変化の大きい子どもと高齢者を対象に,楽器演奏訓練の効果についてランダム化比較試験により検討した研究結果を報告する。

  • 八賀 洋介, 坂上 貴之
    セッションID: L-009
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    複数選択肢から個体が繰り返し選択を行う並立強化スケジュール事態では,セッション全体の各選択肢への反応比が強化比に対応する,いわゆるマッチング法則で選好が記述できることが示されてきた。しかし,強化間時隔(IRI)に注目して分析をした場合,強化直後には強化子提示を受けた選択肢側への選好が一時的に強まった後,時間経過とともに減衰し,セッション全体の選好水準へ戻る選好パルスという現象がみられる。この微視的な現象をめぐる実験的検討は,強化説,弁別説(Davison & Baum, 2006),誘導説(Hachiga, et al., 2014),アーティファクト説(McLean, et al., 2014)を生み,関連分野を含む選択行動についての議論を活性化してきた。本講演では,選好パルスに関わるこれまでの実験的研究を総括し,各説の妥当性を吟味することで,IRI中の選好変容の要因を考察する。

  • 下司 忠大, 小塩 真司
    セッションID: L-010
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    Dark Triad特性とはマキャベリアニズム,自己愛傾向,サイコパシー傾向の3 特性の総称であり,冷淡で利己的な特徴を中核としたパーソナリティ特性である。Dark Triad特性はPaulhus & Williams(2002)により提唱されて以降,主に短期的な配偶戦略を背景とした進化心理学的解釈が試みられてきた。しかし,実証的な知見ではDark Triad特性の個人差と生涯の出生人数の個人差との関連は必ずしも高いものではなく,短期的な配偶戦略を背景とした進化心理学的理論ではDark Triad特性を十分に説明できない可能性がある。そこで本発表では,Dark Triad特性を冷淡で利己的な特徴を巧みに隠して自己利益を実現するような戦略的な特性であると捉え,戦略的な観点からの理解を試みる。本発表では他者操作方略,対人葛藤方略,外顕性・関係性攻撃,コーピングスタイルなどとの関連を検討した結果を報告し,Dark Triad特性における自己利益を実現するための戦略性を議論したい。

  • 長峯 聖人, 外山 美樹
    セッションID: L-011
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    Nostalgiaは,代表的な混合感情の1つとして近年様々な検討が行われている。その理由の1つは,nostalgiaが幅広く心理的適応へ寄与するからである。nostalgiaは多くの年代で経験されるものであり,高齢者において特に経験されやすいものとして認識されているが,青年期の個人においても頻繁に経験されることが分かっている。これは,nostalgiaが青年期における自己形成に関わるからであると考えられる。しかし,nostalgiaが青年期における自己形成へどのように影響するかについて,実際に検討を行った研究は少ない。そこで本講演では,nostalgiaが持つ影響の中でも特に「自己」への影響に焦点を当て,先行研究のレビューを行うと共に,著者が行った研究を紹介していく。「自己」に関する具体的な指標として本講演では,「自尊感情」,「本来性」,「自己連続性」,「アイデンティティ形成」に着目する。本講演で扱う内容は,1つの感情としてのnostalgiaの機能の詳細を明らかにするものとともに,青年期におけるnostalgia体験の重要性を提言するものであるともいえるだろう。

  • 高橋 徹, 熊野 宏昭
    セッションID: L-012
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    うつ・不安に対するマインドフルネスの有効性が示されているが,その作用機序の統一的な理解はなされていない。演者はこれまで,思考や感情に反応しないスキルが,マインドフルネスによるうつ・不安両方の改善を説明することを明らかにしてきた(Takahashi et al., 2019)。さらに,雑念の有無を推定する脳波の機械学習モデルを用いて,瞑想中に雑念から素早く呼吸に戻れることが,反応しないスキルの基盤にある可能性を見出してきた。これらの知見を,世界に関する内部モデルと現実の差異を最小化するという原理で,知覚や行動を説明できるとする予測符号化モデルの観点から解釈する。そして,脳はベイズ推定によって外界を推定しているという仮定に基づき,現在の感覚入力に重みづけ(感覚入力の精度が高い),過去の経験から形成される予測に重みづけない(事前分布の精度が低い)状態として,マインドフルネスを再定義することを提案する。

  • 永野 惣一, 藤 桂
    セッションID: L-013
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    個人が職業人として成熟するための方策として,自身のキャリアに対するリフレクションの重要性が注目されてきた。これを促進する要因として従来では,キャリアカウンセリングやメンタリングなど,専門職および身近な他者との関わりに焦点が当てられてきた。一方で,職場外の対人関係や交流頻度の少ない間柄にある他者との交流がもたらす効果に着目した検討は乏しい。講演者は,弱い紐帯との交流がキャリア・リフレクションに及ぼす影響に着目し,対面およびSNSを通した交流が,自身のキャリアに対する肯定的な視点からの再評価を促進する可能性について一連の実証的研究を行ってきた。小講演では,その研究成果について(1)キャリア・リフレクションは主として4つの側面から構成されること,(2)キャリア・リフレクションにより,現職に対するワーク・エンゲイジメントの向上にもつながること,(3)交流頻度の少ない間柄である弱い紐帯との交流は,キャリア・リフレクションを促進する効果を持つことが横断的・縦断的調査のいずれからも示されたこと,(4)その効果は対面での交流のみならずSNSを介した交流からも示されたこと,の4点から紹介する予定である。

  • 土元 哲平, サトウ タツヤ
    セッションID: L-014
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    転機はある人のキャリアにとって重要な意味を持つ,特定のきっかけや経験の結びつきを指す。本研究では,①著者の転機において得られたキャリア支援経験を記述的に理解すること,②教員志望学生の転機におけるキャリア支援についての示唆を得ることを目的とし,オートエスノグラフィー(AE)研究を行った。AEとは研究者が「有する文化」を探究するための研究アプローチである。序論では転機研究の展開,AEの方法論的志向,心理学(特に文化心理学)とAEとの接点について検討した。これらのレビューを踏まえて,研究者が持つ独自の観点を分析的に深め,自己の経験を他者の経験にも転用可能なものとしていくために,異なる理論・方法論的視座を持つ3つの質的研究法を用いた実践研究を構成した。具体的には,複線径路等至性モデリング,インタビュー,TAEステップを用いたAEを行った。最後に,本研究における理論的・実践的知見を統合し,学生の「能動的・社会関心駆動型」のキャリア選択を促すための「転機を促すキャリア支援」モデルを構築・提案した。

  • 中田 友貴, サトウ タツヤ
    セッションID: L-015
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    日本の刑事司法制度はここ30年で,被害者の権利の拡充や捜査技術の向上などのため,大きな改革がいくつかされてきた。特に2016年の改正では,一連の冤罪や捜査不正の発覚もあり,取調べを中心に取調べ可視化や司法取引制度などの新たな制度が導入された。しかし国外の社会心理学的知見によれば,その問題点が指摘されていたにも関わらず,それらの制度は導入され,実施されている。たしかに国外の研究ではそれぞれの国家の刑事司法制度を前提としており,日本の刑事司法制度とは異なるものである。よって刑事司法制度に関しての問題点について実証的な検討を行い,制度の妥当性を検証する必要がある。そこで本報告では,裁判員制度に関して様々なバイアスの影響が司法判断に及ぼす可能性について検討を行った。また取調べ可視化制度,司法取引制度という冤罪の防止や捜査の高度化のために導入された制度について,市民の判断などを介して冤罪の助長する可能性を検討した。これらの結果を踏まえて,それらの制度における妥当性と刑事司法における心理学的研究のあり方について提言する。

一般研究発表
1.原理・方法
  • 平林 義彦, 﨑山 ゆかり, 川中 普晴
    セッションID: PA-001
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    Kestenberg Movement Profile(KMP)は,Laban Movement Analysisを基盤にアンナ・フロイトによる児童精神分析の理論等を加えて発展させた運動分析技法である。KMPでは,日常動作のような自然な動きからその特徴の記譜を元に図を作成し,そのパターンを分析することで被験者の行動を評価する。そのため,身体の動きを心理療法的に用いるダンス・ムーブメントセラピーの分野では,言語能力が限られている乳幼児を対象とした発達支援のための技法として,欧米諸国を中心に用いられてきた。しかしながら,記譜に基づく図の作成は全手作業のため,豊富な経験と知識,さらには多大な時間と労力が必要となる。その結果,日本国内ではKMPの普及は進んでおらず,心理学系の研究者にもKMPが認知されてないのが現状である。一方,先行研究では成人の心理的現象の評価にも有用であることが報告されており,乳幼児の発達支援のみならず他の分野にも展開できる可能性は高い。本発表では,KMPについて概説するとともに,筆者らが開発している自動分析のためのシステムについて簡単に紹介し応用の可能性について考察する。

  • 福市 彩乃, 菅村 玄二
    セッションID: PA-002
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    痛みや眠気の測定法としてVisual Analogue Scale(VAS)がある。VASは,紙での実施が一般的で,手軽にオンライン質問紙が作成できるGoogleフォームに追加できるものは見当たらない。筆者らは,Googleフォームに埋め込み可能な「動画」を応用したVAS(O-VAS)を制作し,男女21名に,1日のうちの4時点で,ラジオボタン(11件法)や数値入力(101件法),紙媒体のVASと併用して主観的眠気を評価してもらい,比較した。その結果,1試行目をのぞき,O-VASはラジオボタン,数値入力,紙のVASとおおむね0.9以上の高い相関を示し,特に数値入力との間で最も安定して高い相関が示された(rs>.94)。一方で,従来の紙のVASはラジオボタンとの間で最も安定して高い相関が示された(rs>.98)。また,O-VASはラジオボタンと数値入力よりも有意に回答しにくいことが示された(ps<.05)。O-VASは数値化しにくい構成概念を評定する際の代替法として用いることができる可能性が示唆された一方で,回答のしやすさの面で課題が残された。

  • 福留 広大, 武田 知也
    セッションID: PA-003
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    逆転項目は回答者の慣れを防ぎ調査への積極的な関与を促す方法とされる。しかし,逆転項目は反応バイアス,すなわち研究者が意図しない回答者の特定の傾向を測定する要因となる。なぜなら逆転項目であることを理解し意味を考慮した上で回答するかは回答者に委ねられており,そこに個人差による説明が想定されるためである。本研究は個人の思考傾向である認知的熟慮性が逆転項目による反応バイアスに影響を与えるか検討した。大学生192名が自尊感情尺度(Rosenberg, 1965;山本ら,1982),認知的熟慮性検査(CRT;Frederick, 2005;原田ら,2018)に回答した。分析はCRTの高群と低群について自尊感情尺度の1因子モデル及び2因子モデル(逆転項目,順項目)の確認的因子分析,多母集団同時解析(高群,低群)を行った。その結果,自尊感情尺度はCRTの正答数によらず2因子モデルの適合度が高く,因子間相関はCRTの正答数で有意に異なっていた(低群 r=.613;高群 r=.851)。認知的熟慮性の高さは逆転項目による反応バイアスを低減する可能性,また,個人の自己評価に関与している可能性が示唆された。

  • 尾崎 由佳
    セッションID: PA-004
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    経験サンプリング法(ESM)とは,一日数回×数日間にわたって繰り返し自己報告を求めるという調査手法である。スマートフォンの普及にともないESMの実施が容易になったことから,近年,大きな注目を集めている。exkumaは,ESMのために開発されたソフトウェアである。通信アプリLINEを通じたシグナリング(回答タイミングの通知)と,Webブラウザで回答データ収集を行うという特徴を持つ。本研究では,exkumaを用いてESM調査を実施し,シグナリングの効果検証を行った。調査1には大学生306名が参加した。4回×5日間にわたるシグナリングに対して,有効回答は81 %と高い回答率が得られた。調査2には国内の20歳~69歳の成人145名が参加し,4回×7日間のシグナリングに対して90 %の有効回答が得られた。また,調査1・2に共通して,調査時間帯(9時~21時)内にシグナル送信時刻が均等に分布しており,従来の疑似ランダムによる方法よりも適切に無作為化されたシグナリングが行われていることを確認できた。これらの結果はいずれも,exkumaによるシグナリングの有効性を示唆している。

  • 村上 始, 須永 直人, 星野 貴仁, 舘岡 大貴, 平塚 将, 原口 僚平, 山下部 駿, 竹村 和久
    セッションID: PA-005
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    規範的行為の焦点理論(Focus theory of normative conduct;Cialdini, Reno, & Kallgren, 1990)が状況依存的焦点モデル(Contingent focus model;竹村,1994)と同様の心理的なメカニズムを想定しているとすることで,規範的行為の焦点理論を状況依存的焦点モデルの数理モデルで表せることを示す。これにより,状況依存的焦点モデルで考えられてきた焦点パラメータ(意思決定者の焦点化の程度を表すパラメータ)に関する一連の推定法を,規範的行為の焦点理論に関する先行研究のデータに対して適用可能となる。このような分析を通して,人の様々な意思決定現象をより統一的な視点から説明できるようになると考えられる。本発表では,状況依存的焦点モデルを基本理論として,規範的行為の焦点理論の数理モデルおよび焦点パラメータに関する推定を先行研究のデータを用いて実施した結果を分析例として示す。そして状況依存的焦点モデルとその焦点パラメータに関する推定法の汎用性およびその応用可能性について報告する。

  • 島田 大祐, 片平 健太郎
    セッションID: PA-006
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    系列依存性とは,各個人の現在における行動が以前にした行動に影響を受けるという傾向を指す。系列依存性は,物理量の知覚(Holland & Lockhead, 1968)から,WEB上における商品評価(Vinson et al., 2019)まで,幅広い認知的活動に存在することが知られている。一方,質問紙調査における回答の系列依存性が存在するかどうかについて,直接的な検討はされていない。しかし,回答の系列依存性を無視すると,測定対象の構成概念(例:個人特性)の測定に悪影響を及ぼす恐れがある。そのため本研究では,質問紙における回答の系列依存性が存在するかどうかを明らかにすることを目的とする。この目的を達成するため,日本語版Big Five尺度(和田,1996)を用いたWEB調査を実施した。回答データ(N=1834)に階層自己回帰モデルを当てはめた結果,各参加者が直前の項目において高い値を回答したとき,現在の項目でも高い値を回答しやすいことが示された。この結果から,質問紙における回答に正の系列依存性が存在することが示唆される。当日はさらに,質問項目の呈示順や回答ラベル数を操作した追加調査の結果も報告する。

  • 川津 茂生
    セッションID: PA-007
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    心理学は意識を脳から解明することの困難さの故に,絶望的な隘路に陥った。三人称の脳から一人称の意識の生成を解明するのは不可能に見える。現代では,それらの対立する人称を二人称によって媒介させる方向性が提唱されて来ている。それは,精神と物質の二元論的対立が,人称的三位一体において統合的に把握される可能性を示唆している。この理解によれば,実在は基本的に三人称の物質のみではなく,一人称,二人称を含めた三つの人称のそれぞれが基本的実在とみなされ,その上で,それらの三位一体構造こそが存在の根源的在り方として把握されることになる。心理学の隘路の突破は,二元論から人称的三位一体論へのパラダイムシフトによって可能となるであろう。

  • 立花 良, 松宮 一道
    セッションID: PA-008
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    一般向けVRヘッドマウントディスプレイ(VR HMD)が普及し,心理学においても基礎研究から応用研究まで広く注目されている。PythonによるVR実験も可能であり,心理学研究法にも新たな展開が見られる。しかし,刺激の厳密な時間精度(安定した呈示時間と呈示遅延)を要する心理学実験において,こうしたVR環境がどこまで正確な精度を持つかは国際的に未解明である。本研究ではVR HMDとPythonによる最先端VR環境を駆使し,視聴覚刺激の時間精度を体系的に実証した。実験1で視覚,実験2で聴覚を検討し,厳密な呈示時間と遅延を検討した。実験3では視聴覚同時呈示を検討し,視聴覚間における呈示のズレを検討した。結果から,視覚では一貫して18 ms(誤差1 ms)の遅延がある一方,聴覚の遅延はHMDによって異なり38または57 ms(誤差4 ms)であった。視聴覚間のズレもHMDによって異なるが19または39 ms(誤差3 ms)と安定し,視聴覚同時呈示によって精度は低下しなかった。呈示時間は視覚と聴覚ともに正確(誤差1 ms以下)であった。本研究から視聴覚刺激の時間精度が解明され,VR実験への精度指標値を提供できた。

  • 山下 裕子, 山本 哲也
    セッションID: PA-009
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    メンタルヘルス不調を予防するためのアプローチとして,VRセルフカウンセリング(VR-SC)の効果が期待される。VR-SCとは,VR空間で自分自身と相談相手のアバターを入れ替わりながら,自分の悩みについて話し合う方法である。先行研究ではフロイトとのVR-SCの効果が示されているが,本研究では,自分を大切に思ってくれている人物(親密他者)とのVR-SCの有効性を検討した。大学生・大学院生60名を,親密他者VR-SC群,フロイトVR-SC群,統制群に分類し,介入効果の比較を行った。群×時期の分散分析の結果,介入後に両介入群の悩みの苦痛度が有意に低減していた(ps<.01)。これに加えて,親密他者VR-SC群は,介入後に他2群よりも不安症状が低減していた(ps<.10)。さらに,介入後に親密他者VR-SC群のみ参加者全員が,悩み事が改善したと報告した。これらの結果は,親密他者の視点から自分自身を受容・肯定し,あたたかい態度で相談に乗ることで生じたと考えられる。以上より,親密他者とのVR-SCがメンタルヘルスの維持・向上に効果的であることが示された。

  • 金築 優
    セッションID: PA-010
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    知覚制御理論(perceptual control theory:PCT;Powers, 1973)と自由エネルギー原理(free energy principle:FEP;Friston, 2010)は共に,計算論的に行動の機能を説明する理論である。PCTとFEPは,ある程度の共通点もあるが,異なる点も多々あり,この2つの理論を比較することによって,両理論における新たな研究課題を見出すことが期待される。PCTは,脳は制御する対象を特定化する役割を果たしていると考えるが,FEPは,脳はサプライズを最小化させる役割を担っていると考えている。PCTにおける制御の特徴は,行動によって知覚を制御すると捉える点である。一方,FEPにおいて,予測(prediction)が重要な役割を果たしており,予測誤差の最小化が重視される。PCTは,予測なしに,制御が可能であることを主張する。FEPは,知覚と運動によって,予測誤差を最小化させていると主張する。予測の定義をどのように捉えるかによって,両理論がオーバーラップする部分は異なってくると考えられる。

  • 菅沼 慎一郎, 浦野 由平, 河合 輝久
    セッションID: PA-011
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    心理学の量的な研究実践の多くでは帰無仮説検定が用いられている。慣習的に.05という有意水準が用いられており,p値が.05を上回るか下回るかが焦点となる。一方近年,p値にまつわる様々な問題が注目を集めており,心理学研究においてp値がどのように報告され,用いられているのかは重要である。そこで本研究では,我が国における心理学分野の代表的な論文誌として心理学研究,教育心理学研究,社会心理学研究の3つを取り上げ,報告されているp値の分析を行なった。2019年度に刊行された論文の中で,相関分析・カイ二乗検定・t検定・分散分析の4つの分析においてp値を報告した95本の論文を対象とした。報告されたp値のうち,有意あるいは有意傾向と報告されている0<p≦.10のp値を収集し,計1758個のp値を得た。このうち,0から.05までを.01刻みで分割したところそれぞれの個数は1423,106,66,55,47となり,0に近いp値が非常に多くなっていた一方で,.05の直下で報告数が増加する現象は確認できなかった。考察として,報告されているp値の傾向と背景を議論し,課題と展望について述べた。

  • 宮崎 聖人
    セッションID: PA-012
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    強化学習モデルとは,ヒトの行動選択の過程を数理的に表現するモデルであり,代表的なものにQ学習モデルがある。強化学習モデルを考える利点の一つは,主体が採用している学習メカニズムの情報を得られることである。しかし,これまで強化学習モデルは人間の手で作られてきたため,実際のメカニズムを反映したモデルを見落としている可能性がある。そこで本研究では,遺伝的プログラミングを用いて強化学習モデルを探索するAIを開発し,研究者のモデル構築をサポートすることを目指す。ところで,AIが強化学習モデルを探索できると一口に言っても,それがどのような条件下で可能かによって,実用性は大きく異なる。本研究では,AIの開発可能性を高めるために,「パラメータが特定の値をとり,選択されなかった行動の価値は更新されない」という特殊な条件下でのモデル探索を目指す。具体的には,Q学習モデルから人工的にデータを生成し,そのデータからAIが正しくQ学習モデルを探索できるか否かを検討する。開発したAIでモデル探索を行った結果,AIは正しくQ学習モデルを探索できた。今後は,より一般的なモデルを探索できるようAIを改良する予定である。

  • 鈴木 朋子
    セッションID: PA-013
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,小児医学領域において開発された乳幼児分析的発達検査法に焦点をあて,開発者である小児医学者,遠城寺宗徳の実践との関係を論じる。遠城寺宗徳は,1942年に九州帝国大学教授に着任した人物であり,治療教育や学校保健など教育や心理との協働を説いた人物である。遠城寺は戦前の2回目の渡欧の際に,ウィーン大学小児科の治療教育部において主任を務めるアスペルガーの実践に影響を受け,1953年に九州大学小児科に治療教育部を設置した。また,教育学者の平塚益徳,心理学者の牛島義友とともに「教育と医学の会」を組織し,慶應通信社より「教育と医学」を刊行した。遠城寺式乳幼児分析的発達検査法は,脳性小児まひについての文部省科学試験研究費による研究成果の一環として発表された。牛島式乳幼児発達検査を基礎として,脳性まひ児などの障害児も利用可能なように開発されており,1957年に試案作成,1958年に報告書が出され,1960年に慶應通信より『遠城寺式乳幼児分析的発達検査法』として刊行された。その後,1977年に改訂版,2009年に改訂新装版が出版された。

  • 金城 光, 熊本 颯雲, 中澤 佳音
    セッションID: PA-014
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    質問紙では,回答者の心理的負担を考慮し,質問文のワーディングは明快で簡潔な表現とし,否定表現を避ける,特に二重否定は避けることが望ましいとされている(平井,2003;Krosnick and Presser, 2010)。しかし,実際には逆転項目などで質問文に否定が含まれることや,回答の選択肢に「あてはまらない」などの否定が含まれることは多い。また,質問文と選択肢双方に否定を含む組み合わせの場合は,結果的に二重否定となる。金城ら(2019)は,質問紙の質問文や回答選択肢に否定が含まれる場合に高齢者群と若者群両群での反応時間の遅れを確認し,質問内容によっては判断に歪みが出る可能性を報告した。一方で,社会的望ましさによる回答の偏りを抑制するために質問文に否定を利用する効用も考えられる。そこで,本研究は心理学領域の質問紙における否定の利用実態を調べるために文献調査を行った。方法は,幅広い心理学領域が網羅されている『心理測定尺度集I~Ⅵ』(サイエンス社)に掲載されている全ての尺度について,質問文の否定利用の割合,および,回答選択肢の分類から否定表現の種類と利用の割合を調べた。

  • 田崎 勝也
    セッションID: PA-015
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,インターネットを利用した調査(Web調査)の近年の興隆に鑑み,謝礼の見返りに協力するモニターの回答行動がWeb調査と紙面調査では異なるのか,反応バイアスの発生頻度に着目して検証した。田崎(2020)は2,000名のWeb調査データに対して,Weijters et al.(2008)の因子モデル(RIRSMACS)により反応バイアスを数量化した。分析の結果,5件法で3を回答する中間反応バイアス(MRS)が顕著だった。またMRS因子はsatisficing因子と相関があり,スタイルとして3を選ぶ者と手抜き回答として3を選択する者の双方が示された。本研究では別のモニター515名に紙面調査を実施し同一項目に対する回答を得た。RIRSMACSによる分析で,最も顕著だった反応バイアスは1や5を好意的に選ぶ極端反応傾向(ERS)だった。一方調査ツール間の反応バイアスの差は,紙面調査はWeb調査に対して4や5を選択する黙従反応傾向(ARS)とERSが高く(それぞれz=19.42, p<.001,z=3.35, p<.001)MRSは低かった(z=-15.23, p<.001)。

  • 平石 界, 三浦 麻子, 樋口 匡貴, 藤島 喜嗣, 中村 大輝, 須山 巨基
    セッションID: PA-016
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    心理学研究の低い再現性が指摘されてから約10年が経過した。その原因の1つとして,斬新で有意な研究を好むジャーナルによる出版バイアスが指摘されてきた。個々の研究者が,そうしたジャーナルの嗜好に(科学的に不適切な形で)対応したことが,公刊される知見を歪めてきたという説明である。しかし再現性危機の責任はジャーナル編集者と査読者だけに求められるだろうか。そもそも心理学界には斬新で意外性のある有意な結果を重視する文化があり,編集者や査読者もそれに倣ってきただけかも知れない。この問題を検討するために,日本心理学会ならびに日本社会心理学会の年次大会における発表論文のメタ分析を実施した。両学会の年次大会では2段組1ページの発表論文の提出が求められるが(日心は2019年まで),事実上,発表前のピアレビューは行われていない。大会発表論文で報告されたp値の分布を見ることで,査読が存在しない状況下で,研究者による自発的な出版バイアスが生じてきたか検討する。対象は2013年と2018年の社会心理学系の実験研究とした。その他の詳細は https://osf.io/6mdx8 を参照されたい。

  • 大塚 幸生, 上田 祥行, 齋木 潤
    セッションID: PA-017
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    近年,心理学で報告されている結果が,「西洋の,教育を受けた,工業化された,豊かな,民主主義の」社会からサンプリングされた参加者に偏っていることが指摘されている。本研究では,心理学における研究領域にもこのような偏りが見られるのかを定量的に検討した。これまでに出版された視覚探索およびストループテストに関連する研究の要旨をテキストデータ,著者の所属機関の地域および出版年をメタデータとして構造トピックモデルを実施した。その結果,視覚探索やストループテストのような心理課題は,刺激や条件などの課題に関する単語から構成されるトピック,臨床研究に関する単語から構成されるトピック,神経科学に関する単語から構成されるトピックで構成されることが示された。また,ストループテストの課題に関する単語から構成されるトピックの中には北中米の地域で出現確率が高いものが見られ,臨床研究に関するトピックの出現確率はヨーロッパの地域で高いことが示された。さらに,神経科学に関するトピックの出現確率は年々上昇していることが示された。これらの結果は,心理学の研究領域においても地域差および研究のトレンドが存在することを示唆している。

  • 田畑 智章
    セッションID: PA-018
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    ワークライフバランス(WLB)の研究分野では,職場の生産性評価や従業員満足などにおいて定量的に扱うものがいくつか見られるものの,個人もしくは組織の WLBの状態そのものを定量的に捉える研究はほとんど見られない。これに対して田畑らはWLBの状態を定量的に捉えるモデルとして,貸借対照表を援用したワークライフバランスシート(WLBS)を提案し,その有効性を確認した。本研究では,WLBSに対し,貸借対照表の財務分析指標のアナロジーからWLBのある状態に対する指標を作成し,その有効性を確認することを目的とする。

2.人格
  • 櫃割 仁平, 野村 理朗
    セッションID: PB-001
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    COVID-19パンデミックが示すように,私たちは不確実性と曖昧さの時代を生きている。本研究では,従来の曖昧性に関するパーソナリティ特性尺度の課題とされてきた再現性を改善したMultidimensional Attitude toward Ambiguity Scale(MAAS)(Lauriola et al., 2016)の日本語版を開発した。これは,曖昧さへの不快感,道徳的絶対主義/分裂,複雑性・新規性希求という3つの下位尺度を評価するものである。原著者の許諾を得て,かつ逆翻訳により作成したMAAS-Jを検証するために,347名の参加者(女性147名,男性200名,M=39.07,SD=10.58)に,のオンラインでの回答をもとめた。結果,日本語版は,内部一貫性,再検査信頼性,構成概念妥当性が十分あるいは良好であることが明らかになった。また,曖昧性に対する態度といくつかの尺度との間に相関や,日本人と原版で調査対象とされたイタリア人のスコアの間に差があることが新たに分かった。当MAAS-Jが,日本国内で活用されるとともに,内外での異文化比較研究に積極的に活用されることが期待される。

  • 大下 眞穂, 細越 寛樹
    セッションID: PB-002
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    援助要請スタイルを媒介変数または調整変数と仮定し,自己志向的完全主義(SOP)が心理的ストレス反応に及ぼす影響を検討した。229名を対象に質問紙調査を行い,多次元自己志向的完全主義尺度(MSPS),援助要請スタイル尺度,心理的ストレス反応尺度(SRS-18)への回答を求めた。共分散構造分析の結果,MSPSのPS,CM,Dは援助要請スタイルを介して心理的ストレス反応を促進,抑制することが示され,援助要請スタイルの媒介効果が明らかになった。しかし,援助要請スタイルを介さない直接的影響もみられた。クラスタ分析で得られたSOPの4クラスタと援助要請スタイルの3クラスタを独立変数,SRS-18の下位尺度得点を従属変数に二要因分散分析を行った。交互作用は非有意で,援助要請スタイルの調整効果は示されなかった。主効果は,SOPは全従属変数で有意,援助要請スタイルは抑うつ・不安で有意だった。多重比較の結果から,PSの心理的ストレス反応への影響はSOPのバランスに左右され,CMとDは単独で精神的不健康の要因になること,十分な自助努力が伴わない援助要請は抑うつ・不安を悪化させることが示唆された。

  • 上野 雄己, 平野 真理, 小塩 真司
    セッションID: PB-003
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では日本人を対象に,居住地域の影響を考慮した,レジリエンスと運動習慣(1回30分以上の運動を週2回以上実施,1年以上継続;厚生労働省,2013, 2018)の関係を検討することを目的とした。分析データは,株式会社NTTデータ経営研究所より実施された「人間情報データベースFY18-02」であり,分析対象者は日本人13,072名(男性6,976 名,女性 6,096名;平均年齢49.28 歳,SD=14.14,15-90歳)であった。居住地域の集団レベルの運動習慣の変数を投入したランダム切片・傾きモデルは,他のモデルと比較して,AICとDevianceともに値が小さく,モデルの適合も最も良好であった。具体的には,社会人口統計学的要因や生活習慣,病歴を統制しても,個人レベルの運動習慣がレジリエンスに正の関連が示され,居住地域レベルの運動習慣がレジリエンスに対しても関連が確認された。すなわち,運動習慣が高い日本人ほどレジリエンス得点が高いのに加え,運動習慣が高い地域に所属する日本人ほどレジリエンス得点が高い傾向にあることが明らかとなった。

  • 太幡 直也, 佐藤 広英, 金森 祥子, 野島 良
    セッションID: PB-004
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    プライバシーに関する関心の高まりを反映し,自他のプライバシーへの意識(プライバシー意識)が着目されている。プライバシー意識には年齢差があることが示唆されている。Tabata, Sato, & Ninomiya(2021)は,大学生と高齢者に,プライバシー意識尺度(太幡・佐藤,2014)に回答するように求めた。そして,高齢者は大学生に比べ,「他者のプライバシー意識」が低く,「他者のプライバシー維持行動」が高いこと,「自己のプライバシー意識/維持行動」には差はみられないことを報告した。本研究では,幅広い年齢を対象に,プライバシー意識に対する年齢の影響を検討した。調査会社のモニターを対象としたウェブ調査により,17歳から69歳の日本人男女1870名を対象に,プライバシー意識尺度(太幡・佐藤,2014)に回答するように求めた。年齢を説明変数,プライバシー意識尺度の下位尺度を目的変数とする回帰分析の結果,Tabata et al.(2021)と整合する結果が得られた。すなわち,年齢が高いほど,「他者のプライバシー意識」が低く,「他者のプライバシー維持行動」が高かった。

  • 加藤 伸弥, 泉 明宏, 藤森 和美
    セッションID: PB-005
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    他者の苦境を自らの快とする感情はシャーデンフロイデと呼ばれる。本研究では,性格傾向としてのシャーデンフロイデの感じやすさが,既存のいじめを許容・肯定する態度にいかなる影響力を示すものであるのかについて,加害者モデルと観衆・傍観者モデルに別けて検討を行った。また,本研究では,特性としてのシャーデンフロイデに関して,当該他者を社会的に苦しめるという観点から,より悪質性の色濃いシャーデンフロイデを「悪性シャーデンフロイデ」,自虐などに近しく,悪質性が前景に立たないシャーデンフロイデを「良性シャーデンフロイデ」と名付けている。いじめへの許容的な態度を従属変数にした分析において,加害者モデルにおいても,観衆・傍観者モデルにおいても,悪性シャーデンフロイデのみが有意な影響力を示唆した。

  • 猪石 有希, 池田 一成
    セッションID: PB-006
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    泣きは生得的な愛着行動である一方,発達に従って,人は泣きを抑制するようになる。泣きの抑制には,泣きたいという動機をもちつつも泣くことが困難な状態があり,これは非適応的側面を有している可能性がある。本研究では,泣き行動,泣きに対する動機づけ,それらに発達初期から影響を与えると考えられる愛着傾向と感情抑制傾向の関係を明らかにし,泣きの抑制を規定する要因について検討した。成人の学生201名に対しweb上で質問紙調査を行った。用いた質問紙はACI-B,Crying Index,ECR-GO,NESSおよびPESSであった。なお,ACI-BとCrying Indexは邦訳を行った。共分散構造分析の結果,愛着傾向と泣きに対する動機づけは,「泣きを抑える能力」を低めるよう予測した。愛着傾向では,「親密性回避」が「泣きの困難さ」を高めるだけでなく,「泣きに対する嫌悪」を介して「泣きの困難さ」を高めるよう予測した。また愛着傾向にかかわらず,「泣きを抑える能力」は「泣きの困難さ」を高めるよう予測した。本研究を通して,これまでに経験的に議論されていた,泣きの抑制と愛着傾向について,実証的に検討することができた。

  • 山田 一成, 榊原 圭子
    セッションID: PB-007
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    これまで特性的楽観性については,主に大学生を対象に,1因子構造と2因子構造の両方が想定・報告されてきた。そこで本研究では,成人を対象とする公募型Web調査を実施し,改訂版楽観性尺度(LOT-R)の日本語版(坂本・田中,2002)の因子構造について検討した。公募型Web調査(割当法)は一都三県在住の登録モニターを対象に,2021年2月に実施された。有効回答者は520人,最終的な分析対象者は485人であった(男性240人,女性245人;平均年齢45.95歳,SD=13.62)。日本語版LOT-Rの6項目(α=.65)について探索的因子分析(EFA:最尤法,プロマックス回転)を行ったところ,2因子解が得られたが,共通性が著しく低い項目が認められた。そこで,その項目を除外して同様のEFAを行ったところ,明瞭な1因子解と α 係数値の向上が認められた(α=.73)。こうした結果は,日本語版LOT-Rについては,項目文の修正によって安定した1因子構造が得られる可能性があることを示唆している。

  • 榊原 圭子, 山田 一成
    セッションID: PB-008
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,改訂版楽観性尺度(LOT-R)の日本語版(坂本・田中 2002)について,確証的因子分析による因子構造の確認および外部尺度との関連性による構成概念妥当性を検討した。確証的因子分析では,日本語版LOT-Rの6項目について,1因子モデルと2因子モデルでの検証を行ったところ,両モデルでパス係数が著しく低い項目が確認された。そのため当該項目を除いた5項目で同様の分析を行った結果,1因子モデルと比較して2因子モデルで,より良好な適合度を得た。しかし,2因子間での相関係数は.72と高く,それぞれが独自因子であるかの判別は困難であった。次にLOT-Rの楽観性尺度および悲観性尺度と人生満足感尺度,パーソナリティ特性,後悔尺度(後悔・追求者尺度)との相関係数を算出した。その結果,楽観性尺度および悲観性尺度と各外部尺度との相関にはほぼ同様の傾向が見られた。これらから,少なくともLOT-Rについては,悲観性および楽観性の2因子は異なる概念を測定するものではなく,LOT-Rが1因子構造である可能性が推察された。

  • 今城 希望, 越川 房子
    セッションID: PB-009
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,見捨てられ不安と親密性の回避の高さを不安定な愛着傾向とし,ネガティブ関係コーピングを取りやすいことを対人ストレスコーピングの選択の失敗として,仮説「不安定な愛着傾向は,対人ストレスコーピングの選択の失敗を介して精神的健康を下げる」を検証することを目的とした。大学生・大学院生計214名に対し,親密な対人関係体験尺度の一般他者版,対人ストレスコーピング尺度,GHQ30を実施した。共分散構造分析によるパス解析から,標準化推定値が5 %水準ですべて有意であり適合度指標も十分なモデルを得た。見捨てられ不安と親密性の回避から,それぞれネガティブ関係コーピングへの有意な正のパスと,ネガティブ関係コーピングから精神的健康への有意な負のパスが確認された。また,見捨てられ不安と親密性の回避から,それぞれ精神的健康への直接の有意な負のパスも確認された。以上から,仮説は支持された。また,不安定な愛着傾向が直接原因となり精神的不健康状態をもたらすという因果関係も明らかになった。今後は,検討する精神病理を具体的に絞り,不安定な愛着傾向を素因とする素因ストレスモデルについて検討を深める必要がある。

  • 古賀 有里子, 伊原 良奈
    セッションID: PB-010
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    パイロット養成課程においては,パイロット候補者全員が課程を修了(Ⅰ:課程修了者)できる訳ではなく,罷免となる者もいる。罷免者は主に2種類おり,規定の技量に達することができずに罷免される者(Ⅱ:技量罷免者)と,途中で課程継続を辞退する者(Ⅲ:課程辞退者)である。本研究では,パイロット候補者の性格に着目し,課程修了者と罷免者の性格に差異があるのかを検討した。課程履修前のパイロット候補者295名に対して,Web上で公開されているInternational Personality Item Pool(IPIP)の中から5因子性格理論に基づく項目の性格検査を実施した。彼らが最初に履修する課程の修了状況を確認し,性格検査から得られた因子及び下位因子の平均得点差を3群間で比較検討した。Ⅱ群は,外向性,誠実性の因子得点がⅠ群よりも低かった。Ⅲ群は,神経症傾向の下位因子得点がⅠ群よりも高く,外向性,協調性の下位因子得点がⅠ群よりも低かった。Ⅱ群及びⅢ群,すなわち罷免者に共通して,外向性に関する得点が修了者よりも低い傾向にあった。最初の課程を修了する者と罷免者との間に,性格特性において差異がみとめられた。

  • 鈴木 杏依子, 倉重 乾, 田中 恒彦
    セッションID: PB-011
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    鈴木・倉重・田中(2020)では,完全主義傾向には文脈依存的な者とそうでない者がいることが明らかになった。そこで,完全主義傾向が文脈依存的に変動する者としない者において認知処理特性に違いがあるかについて検討した。【方法】学生46名(男性12名,女性34名)を対象に記憶再認課題と解釈バイアス課題を実施した。記憶再認課題は,Besser et al.(2008)が実施した課題を翻訳し,単語の選択等一部を修正して使用した。解釈バイアス課題は,Yiend et al.(2011)が実施した課題を翻訳し,完全主義部分を使用した。【結果】認知バイアス課題得点を説明変数,鈴木他(2020)の研究での分類に基づく完全主義のタイプを目的変数として重回帰分析を行った。結果,記憶再認課題得点と完全主義のタイプとの関連は確認できなかった。一方,解釈バイアス課題では完全主義尺度(大谷・桜井,1995)の自己志向的完全主義(SOP, △ R2=.36)と社会規定的完全主義(△ R2=.22),総合得点(△ R2=.22)において,二分法的な解釈を反映する文が完全主義のタイプに有意に影響を及ぼすことが明らかになった。

  • 吉田 みなみ, 二村 友希, 金城 光, 森本 浩志
    セッションID: PB-012
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,自己認知の複雑性(自己複雑性,self-complexity:SC)と思考内容の感情価との関連について,大学生44名のデータを用いて検討した。自己認知の複雑性については,自己意識検査(林・堀内,1997)を用いて指標Hと肯定的自己認知の複雑性(P-SC),否定的自己認知の複雑性(N-SC)の3指標を算出した。思考内容の感情価については,まず「あなたが考えるアルバイトとは何か」とのテーマについて自由記述で回答を求めた。そして,2名の評価者が,得られた記述内容の感情価を,江崎他(2013)の3種類の感情極性(ポジティブ:喜・好・安,ネガティブ:哀・怒・恐・厭,ニュートラル:驚)に基づいて分類した。いずれにも分類されない記述は「感情価なし」とした。そして,各調査対象者の各感情価(ポジティブ,ネガティブ,ニュートラル,感情価なし)の記述の個数をカウントした。相関分析の結果,自己認知の複雑性の3指標(H,P-SC,N-SC)と得点と,4種類の感情価の個数との間に有意な相関は見られなかった。この結果から,自己認知の複雑性と思考内容の感情価との間には関連が見られないことが示唆された。

  • 森脇 愛子
    セッションID: PB-013
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,Big Five性格特性とSNS利用上のストレス体験との関連を縦断調査によって調べた。大学生20名(男性10名,女性10名)を対象とし,第1回目には,Big Five尺度短縮版(並川ら,2012)への回答を求め,4週間後の第2回目では,SNSストレス尺度(岡本,2017)への回答を求めた。相関関係を調べた結果,外向性と「閲覧強要ストレス」(r=-.61, p<.01),「投稿拡散不安ストレス」(r=-.65, p<.01)「社会的比較ストレス」(r=-.49, p<.01)との間に,有意な負の関連が認められた。情緒不安定性では,「背伸びストレス」を除く次元との有意な正の相関関係が認められ,誠実性については,「過剰な繋がりストレス」(r=.41, p<.01)および「SNSと現実のギャップストレス」(r=.51, p<.01)との間に,調和性については「背伸びストレス」との間に有意な正の関連が認められた(r=.35, p<.05)。以上の結果は,大学生の心理的適応のための心理教育などに役立てることが可能ではと考える。

  • 萩原 千晶, 下司 忠大, 小塩 真司
    セッションID: PB-014
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,自己を蔑ろにして他者を重要視するパーソナリティ特性である,非緩和共同性の年代差と男女差を検討することであった。分析対象者は39,888名(男性18,080名,女性21,808名;15~19歳1,571名,20~29歳5,449名,30~39歳6,925名,40~49歳8,762名,50~59歳7,664名,60歳~9,517名)であった。分析対象とした尺度は,日本語版改訂非緩和共同性尺度(Revised Unmitigated Communion Scaleを邦訳した尺度)であった。年代と性別を独立変数,個人年収と学歴,婚姻状況を共変量とした共分散分析を行った。まず,どの年代においても女性の方が男性より非緩和共同性の得点が有意に高かった。また,年代と性別の有意な交互作用効果がみられた。非緩和共同性は男女ともに若い年代において高く,緩やかに低下し,女性においては再度高齢の年代において高い得点が示された。女性の得点の高さは,非緩和共同性の特徴が反映されたと考えられた。また,若い世代の得点の高さは社会的要因,高齢女性の得点の上昇は社会的要因と進化的要因が考えられた。

  • 浅山 慧, 外山 美樹
    セッションID: PB-015
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    自己連続性は,自己が経時的に同一の存在としてつながっているという感覚を意味する概念である。自己連続性には,自己の安定性と物語性という2つの観点による捉え方があるが,捉え方によって自己連続性の機能がどのように異なるかはまだ明らかになっていない。そこで本研究では,自己連続性と他の変数(精神的健康,自己形成)との関連が,自己連続性の捉え方によってどのように異なるのかを検討することを目的とした。大学生200名を対象にweb調査を実施し,精神的健康(人生満足度,不安・抑うつ)と自己形成(自己概念の明確性,過去受容,継時的比較志向性)を従属変数とし,自己連続性(High,Low)とその捉え方(安定性,物語性)の交互作用を検討した。その結果,不安・抑うつを従属変数とした場合に交互作用に一定の効果が認められた。具体的には,自己連続性を自己の物語性の観点から捉えた場合には不安・抑うつとの間に負の関連が示されたが,自己の安定性の観点から捉えた場合には関連が見られなかった。この結果から,自己連続性の機能は,自己の安定性と物語性のどちらに基づくものかで異なることが示唆された。

  • 松本 明生
    セッションID: PB-016
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    Fields et al.(2015)は遅延価値割引の激しい者はストレス経験をした際,ストレスを軽減するための衝動的な対処行動(コーピング)が出現しやすくなると述べている。本研究では,遅延価値割引とコーピングとの関連について検討することを目的とした。調査対象者の大学生129名のうち,データに欠損のない男性64名(M=18.7歳,SD=1.6),女性55名(M=18.4歳,SD=0.6)が分析の対象となった。遅延価値割引の測定には簡易版の遅延価値割引質問紙(佐伯,2017)を用い,上昇系列と下降系列で配置した用紙が半数ずつになるよう配布した。コーピングの測定には神村他(1995)が作成したTAC-24を用いた。スピアマンの順位相関係数を遅延価値割引質問紙から算出されたk値とTAC-24の8下位尺度との間に求めたところ,k値はカタルシス(ρ=-.19)と情報収集(ρ=-.18),計画立案(ρ=-.23)の3尺度との間に有意な負の相関が認められた(すべてp<.05)。これらの結果からは,遅延価値割引が激しい者は直面する問題に接近しようとするコーピングの選択が少なくなることが示唆された。

  • 片岡 春奈, 福井 義一
    セッションID: PB-017
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    完全主義はセルフ・ハンディキャッピング(SH)に直接的に影響を及ぼすことが報告されている(Aker et al., 2018)が,その背後には自己呈示欲求が関与している可能性があると思われる。完全主義と完全主義的自己呈示の全下位尺度間および後者の全下位尺度とSHとの間にそれぞれ有意な相関がある(Hewitt et al., 2003)ことから,本研究では完全主義がSHに及ぼす影響における完全主義的自己呈示の媒介効果を検討した。大学生を対象に質問票調査を行った。データには,一連の研究(例,片岡・福井,2019)と一部重複がある。分析の結果,自己志向的完全主義からSHの「やらない」因子へは負の,社会規定的完全主義からSHの「やれない」因子へは正の直接効果がそれぞれ有意であったのに加えて,完全主義的自己呈示の不適応的側面(「不完全性の露見への忌避」や「不完全性の秘匿」)を介した間接効果が見られた。ブートストラップ法(標本数5000)の結果,いずれの間接効果も有意であった。本研究から,完全主義がSHに及ぼす影響は,完全主義的自己呈示の不適応的側面によって部分媒介されることがわかった。

  • 西岡 美和, 小松 孝至, 向山 泰代, 酒井 恵子
    セッションID: PB-018
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    日常場面の具体的な行動から擬態語により他者の性格が把握される過程について,大学生(女子)に対する面接調査を行い,擬態語性格尺度(小松・酒井・西岡・向山,2012)の下位尺度別に分析してきた(日心81回・82回大会発表)。本発表では,「几帳面さ」の下位尺度に関する分析結果について報告する。擬態語性格尺度への自己評定と親しい友人についての友人評定とを求める質問紙調査に参加し,面接調査に協力した大学生(女子)33名に,友人評定で「あてはまる」と評定した擬態語について,その友人の特徴を表す具体的エピソードや,その特徴についての協力者の考えなどを尋ねた。そのうち,「几帳面さ」に含まれる擬態語(きちんとする・ちゃんとした・しっかり・きっちり・しゃきっとした,(反転項目)がさつ・ちゃらんぽらん)について尋ねた16名の回答を分類整理した。その結果,①基準に沿った行為と目標達成(基準を達成しようとする志向性),②表出されない思考の深さ(深く思考を巡らし,準備する傾向),③語り手自身との対比に基づく評価(自分にはない好ましい性格としての評価とともに違和感の表明もある)3点にまとめることができた。

  • 戴 琦, 小塩 真司
    セッションID: PB-019
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的はナルシシズムとストレスコーピングとの関連を検討することである。日本語版Five-Factor Narcissism InventoryとGeneral Coping Questionnaireを用いて,東京にある大学に在籍する大学生210名に対して質問紙調査を実施した。重回帰分析を行った結果,FFNI-SF-JにおけるLack-of-Empathy, Reactive-AngerとThrill-Seekingといった3つの因子はGCQにおける感情表出の間,Acclaim-Seekingと情緒的サポート希求の間,Arroganceと認知的再解釈の間,Acclaim-SeekingとManipulativenessといった2因子と問題解決の間,それぞれ有意な正の相関が見られた。これらの結果から,同情心に欠ける,スリルを楽しむ,あるいは反応的怒りが激しいナルシシストは情動焦点型対処を,傲慢で,他人を自分の思い通りに操るナルシシストは問題焦点型対処をとりがちであると考えられる。また,賞賛獲得欲求が強いナルシシストは問題焦点型と情動焦点型対処の両方を使うことがわかった。

  • 矢野 康介, 大石 和男
    セッションID: PB-020
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity;以下,SPSと略記)とは,種々の環境刺激に対する敏感さ,反応性を表す生得的な特性である。統計的手法を用いた研究から,個々人をSPS低群・中群・高群の3群に分類する試みが行われている。個人の発達や健康を予測する要因は,各群において異なることが示唆されているものの,基礎的知見の蓄積は十分とは言えないのが現状である。本研究では,状況や出来事の意味への認知的な変化による感情調整を表す概念である,認知的感情制御に注目し,各群における精神的健康との関連を検討することを目的とした。本研究では,大学生532名が2時点の縦断調査に参加し(3ヶ月間隔),①SPSの測定尺度であるHSP-J10,②認知的感情制御の測定尺度であるCERQ,③精神的健康の測定尺度であるK10に回答した。なお,①②は1時点目の調査においてのみ使用された。K10における時点間の潜在差得点を算出し,CERQの各下位尺度との関連を,SPSの程度に基づく群ごとに検討した。その結果,SPS高群においてのみ,肯定的再評価が精神的健康の低下と関連することが示唆された。

  • 岡村 季光, 林 伯修, 李 鵬遠, 鍾 慧于, 陳 福士, 新井 一郎, 多根井 重晴
    セッションID: PB-021
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,居場所(安心できる人)とプライバシー意識の関係を日台別に検討することが目的であった。日本大学生134名(男性61名,女性73名)及び台湾の大学生92名(男性37名,女性55名)を対象に検討した。第1に,各場面における「安心できる人」評定得点を用いて,国別にクラスター分析(K-means法)を行った結果,両国とも同様の傾向であった。具体的には,安心できる人の評定が全体的に平均的であった群を“平均群”,他者の評定が低かった群を“他者低群”,他者の評定が高かった群を“他者高群”と命名し居場所(安心できる人)評定による分類(以下,居場所分類)を行った。第2に,プライバシー意識尺度の各下位尺度得点について,2(国)×3(居場所分類各群)の分散分析を行った結果,自己のプライバシー意識/維持行動得点において日本に比して台湾の方が得点は高く,日本において“他者低群”が“他者高群”に比して得点が高かった。他者のプライバシー意識得点において“他者高群”が他群と比して得点が低かった。他者のプライバシー維持行動得点において台湾に比して日本の方が得点は高く,“他者高群”が他群と比して得点が高かった。

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