日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
選択された号の論文の1004件中151~200を表示しています
2.人格
  • 本郷 亜維子
    セッションID: PB-022
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    ライフイベントの問題対処にユーモアを使用した経験が心理的Well-beingに与える影響を調査し,ストレスの程度やユーモアの形態による違いを検討することを本研究の目的とした。成人912名(女性431名,男性481名,M=44.93歳,SD=13.82)に対しライフイベント30項目を提示し,経験,未経験,ユーモアの不使用,使用したユーモアの形態,心理的Well-being尺度(岩野他,2015)の回答を求めた。全項目から同種のライフイベントを5ペア抽出し,各ペアでユーモア使用を説明変数,Well-beingを目的変数とした階層的重回帰分析を行った。その結果,死に関する項目ペアのストレス得点上位項目でのみ攻撃的,自嘲的ユーモア使用による環境制御への有意な負の影響がみられ,一部の深刻な問題に対処する場合,ユーモアの使用が不適応である可能性が示唆された。その他の項目ペア(恋愛婚姻関係解消,借金,障害や病気,仕事のミス)では得点上位より下位の方がユーモア使用の有意な正の影響が多くみられたことからユーモア使用によるWell-beingへの効果は概ねストレスが低い場面で発揮されていると推測する。

  • 李 佳奇
    セッションID: PB-023
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    感覚処理感受性と学校適応感についての関係を検討するため,インターネットで,中国の成人322名(男性118名,女性167名)に,(1)感覚処理感受性(Highly Sensitive Person Scale:HSPS中国語翻訳版,李・串崎,2021)18項目7件法,(2)学校適応感(石田,2009)12項目5件法,(3)居心地の良さ(大久保,2005)6項目5件法,(4)学校不適応感(串崎,2021)2項目5件法で,回想法による調査を実施した。その結果,男女ともに,「美的感受性」から学校適応感に対する正の標準偏回帰係数が有意であり,「易興奮性・低感覚閾」から「授業適応感」と「教師適応感」に対する負の標準偏回帰係数が有意であった。女性では,「易興奮性・低感覚閾」から「友人適応感」に対する負の標準偏回帰係数が有意であった。男性では,「易興奮性・低感覚閾」から「居心地の良さ」への負の標準偏回帰係数が有意であった。例えば,ソーシャルサポートなどの介入により,高い易興奮性による不快感を改善することで,学校適応感を高めることが示唆された。

  • 蔡 孔人, 近藤 清美
    セッションID: PB-024
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    先延ばしは「行う必要のある課題を不必要に遅らせる非合理的な行動である」と定義される。先延ばしにかかわる要因として,ストレスや自己コントロール力などの内的要因が多く挙げられているが,外的要因についての研究は少ない。本研究は睡眠の質に影響する就寝時間と起床時間及びスマートフォンゲーム時間とゲーム機時間を外的要因として,先延ばしとの関連について検討を行った。研究対象は,都内A私立大学生189人である。使用した尺度は,一般的先延ばし尺度日本語版,就寝時間,起床時間,スマートフォンゲーム時間,ゲーム機時間であり,授業時間後に質問紙調査を行った。その結果,先延ばし傾向と「就寝時間」,「起床時間」との間に正の有意な相関が認められ,「スマートフォンゲーム時間」,「ゲーム機時間」と有意な相関はみられなかった。これらの結果から,就寝時間と起床時間の両方が遅いほど,先延ばし傾向が高く,ゲームを行う時間の長さは先延ばし傾向とは関連がないことが示され,先延ばし傾向に睡眠習慣が外的要因として重要であることが明らかになった。

  • 堀 結以花, 依田 麻子
    セッションID: PB-025
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究の目的は,謝罪行動をよくとる人のパーソナリティ並びにwell-beingとの関連を明らかにすることであった。まず予備調査にて謝罪行動を成人がどのようにとらえ,どんな時に謝罪行動をとるのかを調査し,質問紙「謝罪行動得点」を作成した。そしてwell-beingは「主観的良好状態尺度」を用い,パーソナリティ傾向は「短縮版Big Five」を用い測定した。調査対象者はgoogleフォームに回答した105名(M=22.04歳,SD=3.43歳)であった。謝罪行動得点3因子(自分原因・過失・不可抗力)それぞれに対するBigFive5因子の影響を調べるために階層的重回帰分析を行った。その結果自分原因を目的変数とした際は情緒不安定性と(R2 =.065, β=.076, p <.05),過失を目的変数とした際は調和性と(R2 =.070, β=.069, p <.05),不可抗力を目的変数とした際は調和性と(R2=.105, β =.178, p <.05)有意であった。一方主観的良好状態1因子に対する謝罪行動得点3因子の影響を調べるために階層的重回帰分析を行ったが,いずれも有意でなかった。

  • 白井 利明
    セッションID: PB-026
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    アイデンティティ地位と時間的指向性タイプが大学生にとって何を意味するかを明らかにするため,大学1年生21名に対してアイデンティティ地位尺度(加藤,1983, 1997)と時間的指向性質問項目(白井,1997)に回答を求めた後に解説を示したところ,アイデンティティ地位は57.1 %が同意したが,時間的指向性タイプでは85.7 %と高かった。次に,自分と同じ地位同士及びタイプ同士で集まり,共通性と多様性と本質を話し合うよう求めた。その結果,アイデンティティも時間的指向性も,それぞれの地位やタイプが示す特徴が現れた。たとえば,「モラトリアム地位」は「今,自分なりの目標や信念を探求している」との解説に対して「共通するのは目標を持とうとすること。性格は真面目が本質」と述べ,「ネガティブな現在指向」は「今が楽しければよいと今にしがみついている,あるいは何も考えずに生きている」という解説に対して「ネガティブと名前をつけられているが,自分たちはポジティブ。死なへんかったら何でもいい」と述べた。

  • 孫 怡, 神崎 真実, 土元 哲平, 破田野 智己, 肥後 克己, 鈴木 華子, サトウ タツヤ, 安田 裕子, 岡本 尚子, 矢藤 優子
    セッションID: PB-027
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究は,コロナ禍という社会状況下において,乳幼児を持つ母親の個人要因(気質・性格特性)が自粛期間中の母子QOL(Quality of Life)にどのような影響を及ぼしたのかを検討した。「いばらきコホート調査」の一環として,2020年9月に大阪府茨木市に在住の0-3歳児を持つ母親78名を対象に,COVID-19の感染拡大に伴う育児環境の変化に関するWebアンケートを実施した。自粛期間中(2020年4月~5月)の家庭生活状況および母子のQOLなどについて調べた。以前「いばらきコホート調査」で収集した母親の気質・性格データと合わせて分析した結果,母親の気質・性格特性(e.g., 自己志向性,ネガティブ感情傾向,敏感性)と自粛期間中のQOL全体得点および各領域(心理,身体,社会,環境)得点との間に,有意な関連が見られた。多変量共分散構造分析の結果,母親の「自己志向性」が自粛期間中の「不安」,「家庭生活充実度」及び「相談相手の有無」を介して母親のQOLに間接的な影響を与えていたことが示された。また,母親の感情的知覚敏感性が母親のQOLを介して,子どものQOLに影響を及ぼしていたことも示唆された。

  • 横山 理佳, 岩滿 優美, 津川 律子
    セッションID: PB-028
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では,大学生・大学院生の感情抑制傾向が生きがい感や気分状態に与える影響について検討する。大学生・大学院生を対象に,基本属性,生きがい感スケール,感情抑制傾向尺度,短縮版POMS2を無記名で回答する質問紙調査を行い,返信をもって研究参加の同意とみなした。本研究は北里大学医療衛生学部倫理審査委員会の承認を得ている。返信のあった107名(平均年齢±SD=21.70±1.36歳)を対象に,陰性感情抑制得点と陽性感情抑制得点の中央値から2群(低抑制群と高抑制群)に分類し(p<.05),各尺度得点について2群間で比較した。分析の結果,陽性感情抑制では,低抑制群が高抑制群と比べて,生きがい感,POMS2の活気-活力,友好で有意に高く,TMD得点,抑うつ-落込み,疲労-無気力では有意に低かった(p<.05)。一方,陰性感情抑制では,高抑制群は低抑制群よりPOMS2の抑うつ-落込みで有意に高く,活気-活力,友好では有意に低かった(p<.05)。以上より,現代大学生・大学院生では,陰性感情抑制傾向が気分状態に,陽性感情抑制傾向が生きがい感や気分状態に影響を与えることが示唆された。

  • 平石 博敏
    セッションID: PB-029
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    許しは,他者の行動の意図や感情の状態を読み,その行動の受容可否判断が必要で,共感能力など様々な認知能力が必要とされる。許し傾向は精神的な健康に関係するが,許し行為は精神的な健康とは関係ないという報告もあるため,許し行為,許し傾向,性格等の質問紙の結果を分析した。右利きの24名(M=21.7歳,SD=1.04)にJ-TRIM,J-PAM,J-TFS,POMS2,NEO-FFI,WAIS-IIIを行った。分析にはRを用い,平均値の差の分析はtテストと分散分析,相関分析はピアソン相関,多重比較はボンフェローニ補正を用いた。WAISの結果から,参加者群は視覚より聴覚情報処理に優れ,言語能力が高かった。J-TRIMの結果から侵害に対する態度,J-PAMの結果から謝る傾向にそれぞれ男女差が無い一方,J-TFSの結果から男性は女性よりも積極的に許す性格であった。NEO-FFIの結果から,ポジティブで,物事を判断する際に周囲との関係性を踏まえる傾向だった。POMS2の結果から過去一年間の気分に男女差は無かった。今後,これらのデータを平静時のGABA,VBM,許し行為による脳活動と関連付けて分析を行う。

  • 島井 哲志, 谷向 みつえ, 久保 信代, 宇惠 弘
    セッションID: PB-030
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究を含む一連の研究の目的は,母親の主観的幸福感や人格的強みとボンディングや子育て効力感等の子育てに関する変数との関連から,ポジティブな子育ての知見を得ることであった。第一子が0歳児から8歳児までの母親450名(子の年齢各50名)を対象としたWEB調査を実施した。母親の平均年齢は35.9±5.7歳(22ー50歳),第一子の性別は男児210名,女児240名であった。調査内容は,主観的幸福感(島井ら,2004),人格的強み(島井ら,2018),ボンディング(Yoshida, et al., 2012),アダルト・アタッチメント・スタイル(以下,ECR-RS,古村ら,2016),ケアギビング(大久保,2018),子育て効力感(北岡,2012),身体接触(山口,2003を一部改変),人口統計学的変数であった。主観的幸福感と人格的強み(4因子)について,子どもの性差と年齢差を調べたところ,性差は見られず,子どもの年齢が上昇するに従って尺度得点は減少する傾向にあったが,主観的幸福感(0歳>7歳),人格的強みの統制力因子(1歳>8歳)を除き,年齢差は見られなかった。

  • 谷向 みつえ, 久保 信代, 宇惠 弘, 島井 哲志
    セッションID: PB-031
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    アタッチメント理論におけるケアギビング・システムは,相手を助けたり保護する行動を動機づける内的作業モデル(Bowlby, 1982)であり,親のケアギビング行動は子どものアタッチメント行動に直に影響すると考えられている。大久保(2018)はケアギビングの個人差を過活性戦略と不活性戦略の 2 次元から測定する日本語版ケアギビング・システム尺度(CSS-J)を作成した。ここでは子育て中の母親のケアギビング・システムと主観的幸福感,人格的強み,ならびにボンディング,アタッチメントとの関連について検討した。人格的強みとケアギビングの不活性因子は有意な負の相関(-.182~-.362)を示し,過活性因子と有意な相関はなかった。また,CSS-J 両因子と主観的幸福感は負の相関(-.356~-.302)を,ボンディング(.182~.331)と ECR-RS(.173~.502)とは有意な正の相関を示した。強みの人間力,対人力はケアギビングの不活性傾向を抑制しケアや共感性の高い行動と関連があり,主観的幸福感と良好なアタッチメントやボンディングは何れもケアギビング IWM の安定性と関連があることが示唆された。

  • 久保 信代, 宇惠 弘, 谷向 みつえ, 島井 哲志
    セッションID: PB-032
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究ではポジティブ心理学の人格的強みに注目し,子育て効力感と人格的強みの関係性を明らかにし,教育的応用への知見を得ることを目的とした。0~8歳の子どもを養育中の450名に対し,人口統計学的変数,子育て効力感(北岡,2012),人格的強み(島井ら,2018)を調査した。子育て効力感は,人格的強みとの間で正の相関を示した。子育て効力感の一部の下位尺度は,長子年齢との間に有意な相関を示した。育児サポートの有り無しによって2群に分けて解析を行った場合,後者では,長子年齢と子育て効力感に加え,人格的強みとの間にも負の相関が見られた。このような傾向は前者には見られなかった。年齢間での比較では,特に6歳児において,ピーク時年齢との間で有意に,子育て効力感および人格的強みともに低かった。子どもの年齢の上昇に伴って,特に育児サポートが無い環境では,様々な育児イベントに関連した育児ストレスも高まると考えられ,これが子育て効力感および人格的強みの自認を低下させていると推測される。教育および介入において自身の強みを認識させるとともに,必要なサポートを得られるようにすることが,子育て効力感の改善に重要だろう。

  • 宇惠 弘, 谷向 みつえ, 久保 信代, 島井 哲志
    セッションID: PB-033
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    養育者による子どもへの身体接触の多さは,子どもの精神発達や身体発達にプラスの影響を与えることが示されている(Field, 2001)。本研究では,子どもとの身体接触の多さと,養育者の主観的幸福感や人格的強みとの関連について検討することを目的とした。身体接触の尺度得点(山口,2003を一部改変)について,子どもの性別による差は見られず,年齢(0歳~8歳)による差は見られた(F(8,441)=3.41, p<.01;Bonferroni, 2歳>7歳,8歳,p<.05;3歳>7歳,8歳,p<.10)。また,身体接触の尺度得点と主観的幸福感との相関はr=.33であり,人格的強みとの相関は,知力因子r=.32,統制力因子r=.31,人間力r=.36,対人力r=.26であった。さらに,年齢別で相関を求めたところ,0歳と2歳の子どもの養育者では有意な相関が見られず(r=-.05~.27),4歳と8歳の養育者では有意な相関が見られ(r=.33~.57),子どもの年齢が上がるに従い,身体接触の多さと主観的幸福感や人格的強みとの関連が示された。

  • 喜入 暁, 押尾 恵吾
    セッションID: PB-034
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    社会的に望ましくない傾向を示しがちなパーソナリティ群として,Dark Triadが挙げられる。Dark Triadは,マキャベリアニズム,ナルシシズム,サイコパシーを指し,冷淡さや他者操作性を共通の特徴として示す。このような特徴は,他者を欺いて自分の利益を高める行動につながる。しかし,他者を欺くためには,ある程度批判的な思考や認知能力が必要となると考えられる。また,そのような能力は,何かを学習する際に,深い学習方略の使用を促すかもしれない。そこで本研究では,Dark Triadが深い学習方略を使用すること,また,その関連を批判的志向能力および知能が媒介することを検証した。分析の結果,Dark Triadのうち,マキャベリアニズムにおいて正の媒介効果が示されたが,サイコパシーでは負の媒介効果が示された。また,媒介効果は示されなかったものの,ナルシシズムは深い学習方略の使用と正の関連を示した。これらの知見は,マキャベリアニズムは物事を計画的に実行し,そのために熟慮する一方で,サイコパシーは後先考えない衝動性に特徴づけられるという知見を支持すると考えられる。

  • 稲垣 勉, 澤海 崇文, 澄川 采加
    セッションID: PB-035
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    グリットは学業や将来におけるポジティブな結果を導く非認知能力と考えられており,「情熱」と「粘り強さ」から構成され,「興味の一貫性」と「努力の粘り強さ」などとも呼ばれる。本研究ではソーシャルサポートがグリットに及ぼす影響について検討するため,大学生88名を対象に回想法による調査を行った。グリットの測定には,従来から用いられている質問紙の他に,潜在的測度であるSingle-Target IATを併用し,グリットの顕在的・潜在的側面との関連を検討した。回答者の性別を統制した上で,顕在的・潜在的グリットを目的変数,両親のソーシャルサポートを説明変数とした共分散構造分析を行ったところ,母親のソーシャルサポートと,顕在的な「努力の粘り強さ」との間に正の関連がみられた。顕在的・潜在的な「興味の一貫性」や,潜在的な「努力の粘り強さ」に対しては,両親のソーシャルサポートとの関連はみられなかった。

  • 巻田 晴香, 及川 昌典, 及川 晴
    セッションID: PB-036
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    防衛的悲観主義とは,「過去の似たような状況において良い成績を収めていると認知しているにも関わらず,これから迎える遂行場面に対して低い期待を持つ認知的方略」のことである(外山,2011;Norem&Canter, 1986)。防衛的悲観主義者は,適応的な楽観主義者である方略的楽観主義者と同等の優れた成績を残す(Norem&Illingworth, 1993)という点では適応的だが,精神健康については,自尊感情の低さや抑うつの高さ(e.g., 清水・中島,2018)など,方略的楽観主義者よりも劣るとの指摘もある(Canter&Norem, 1989)。本研究では,防衛的悲観主義者の精神健康に関して,これまで焦点が当てられていなかった,過敏型・誇大型自己愛傾向について調査を行った。大学生138名への質問紙調査の結果,防衛的悲観主義者は,誇大型自己愛傾向については,真の悲観主義者よりも高かったが,方略的楽観主義者と有意な差は見られなかった。過敏型自己愛傾向については,方略的楽観主義者よりも高かった。以上より,防衛的悲観主義者の自己愛傾向は,高い過敏型自己愛傾向と誇大型自己愛傾向を持つことが分かった。

  • 友野 隆成
    セッションID: PB-037
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    新型コロナウイルスの感染拡大は,いつ頃終息するのか見通しがたたない先行き不透明なものである。本研究では,先行き不透明で曖昧なWithコロナ社会への心理的適応に資する知見を得るために,曖昧さ耐性と新型コロナウイルス恐怖の関連についての検討を行った。本邦における2回目の緊急事態宣言発令中の期間(2021年1月8日~2月7日)に,日本全国のインターネットリサーチ会社登録モニター664名(M=45.98, SD=15.25)を対象として,曖昧さ耐性と新型コロナウイルス恐怖の関連についてのweb調査を実施した。男女別に相関分析を行った結果,男女とも曖昧さ耐性と新型コロナウイルス恐怖の間に有意な負の相関が示され,曖昧さ耐性が高いほど新型コロナウイルスに対する恐怖の程度が低いことが示された。また,相関係数の有意差検定の結果,男女で相関係数の大きさに有意差が認められ,男性と比較して女性の方が曖昧さ耐性と新型コロナウイルス恐怖の間の関連が強いことも併せて示された。以上のことから,曖昧さ耐性は特に女性において新型コロナウイルス恐怖の抑制要因として機能する可能性が示唆された。

  • 今泉 修, 松本 聡子, 山﨑 洋子, 西口 雄基, 大森 美香, 藤原 葉子
    セッションID: PB-038
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    自由意志信念とは「自身の意志で自身の行為を選択できる」という信念を指す。統合失調症者は,自身の行為を自身で操っている感覚が減じることで,作為体験などの陽性症状を呈することがある。先行研究は,陽性症状が強い統合失調症者は自由意志信念が弱いことを示した。本研究は,病理群から得た知見を健常群に般化できるかどうかを明らかにするために,統合失調症と類似したパーソナリティである統合失調型パーソナリティと自由意志信念の関連を検討した。女子大学生における横断的質問紙調査の結果,先行研究に反して,陽性統合失調型パーソナリティではなく,対人関係の問題や感情鈍麻を含む陰性統合失調型パーソナリティが弱い自由意志信念を予測した。この結果は共学大学において男女とも含めた追試によって再現された。以上の結果は,健常群における統合失調型パーソナリティによる自由意志信念の阻害が,病理群における自由意志信念の阻害とは異なることを示唆する。健常群では,陽性症状様の体験が病理群の陽性症状に比べて弱く,むしろ陰性症状様の体験が自由意志信念を阻害するかもしれない。

  • 吉田 幸江, 倉成 宜佳, 三島 瑞穂
    セッションID: PB-039
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    人格適応論は,クライアントの適応タイプに合わせて,適切な領域を選択しコンタクトすることにより防衛を回避し,早い段階でラポールを形成することに役立てられる。この理論は臨床現場のみならず様々な分野で活用されている。本理論を使ったメンタルヘルス研修やコミュニケーション講座など多人数を対象に実施する際,自身の適応タイプ理解促進に,質問紙が大いに役立つと考えられる。現在の質問紙は米国で開発された質問紙の和訳版であり,一対一で使用する専門機関向けのものである。新たに日本で尺度作成を試み,パーソナリティに関する日本と欧米との文化的差異を考慮し,日本人により回答しやすい項目表現にすることによって,日本人にとって回答しやすいものになると同時に,各タイプ特徴の理解も深まると考えられる。本研究は,人格適応論の理論に則り,多人数を対象に実施可能な,日本で使用しやすい日本人向けの人格適応論尺度を作成する試みである。

  • 松木 祐馬, 下司 忠大
    セッションID: PB-040
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    態度の安定性は個人が特定の対象(例えば,原子力発電所の再稼働など)に対して有する態度強度の構成要素の一つとして扱われてきた。また,個人の態度がどの程度変わりやすいのかという態度の安定性の個人差を検討した研究は,他者からの説得を受けた際にその説得によってどの程度態度を変えやすいかという被影響性の文脈で扱われることが主であった。このような背景から,Xu et al.(2020)は他者からの説得がなされなくとも態度は経時的に一定程度変化し得るものであり,このような態度の相対的な安定性の個人差を測定することの有用性を指摘し,個人の態度の安定性を測定する尺度(Personal Attitude Stability Scale:PASS)を開発した。本研究の目的は,Xu et al.(2020)によるPASSの日本語版尺度を作成し,その信頼性・妥当性を検討することである。PASSの10項目についてバックトランスレーション法によって翻訳を行い,調査を行った結果,先行研究と同様の因子構造を示すとともに,十分な内的一貫性が示された。今後は,他尺度との関連や行動指標との関連を検討し,妥当性について検証する必要がある。

  • 福島 治
    セッションID: PB-041
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    自己愛,マキャベリアニズム,サイコパスのようなダークな性格は,いずれも自己観の不安定さがみられると指摘されてきた。本研究では,これらのダークトライアドとBigFive特性の自己評定値に関する個人内変動との関連を検討した。大学生参加者277名がDTDD-JとRosenberg自尊心尺度に回答した後,およそ一カ月間の経験サンプリング法によりTIPI-Jの評定を行った。ダークトライアドの全体得点と自尊心を説明変数,各特性の平均値と個人内分散の大きさを目的変数として,混合効果位置スケールモデルのWinBUGSを使ったベイズ統計により分析した。ダークであるほど外向性と開放性の平均値が高く,協調性は低かった。また,個人内分散はすべての特性でダークトライアドの得点が高いほど大きかった。ダークな性格の人は,BigFive特性の自己評定値が不安定であることが示唆された。自尊心は,それが高いほど神経質性は低く,他の特性は高かったが,誠実性の分散が大きかったほかは特性の分散とは関連がみられなかった。個々のダークトライアドを説明変数とした分析も実施し,ダークな性格の個々の効果についても議論された。

  • 斎藤 聖子
    セッションID: PB-042
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    我々は同じだけの時間を過ごしていても,時に時間を長く感じたり短く感じたりすることがある。そのような時間に対する主観的な感覚は主観的時間と呼ばれ,従事している課題や感情状態,うつ病などの精神疾患など様々な要因に影響されることが分かっている。本研究では,決定場面において時間を必要とする優柔不断と時間認知についての関連を検討した。実験参加者(大学生20名)は,直前に行った課題の遂行時間を回答する時間見積もり課題と時間再現課題を行った。時間見積もり課題では遂行時間をVASで回答させ,時間再現課題では直前の課題と同じ時間が経過したら反応する課題であった。2つの課題の時間は4種類(12 s/14 s/16 s/18 s)あり,それぞれ2回ずつ計8試行行った。2つの課題終了後に優柔不断尺度に回答した。時間認知と優柔不断尺度との相関を検討した結果,時間見積もり課題では優柔不断尺度の下位因子である熟慮と課題の推測時間に正の相関が認められた。一方で時間再現課題では,尺度と推測時間に関連は認められなかった。このことから,優柔不断な人は遂行時間を言語報告する場合,実際の時間より長いと回答することが明らかになった。

  • 川北 輝, 平上 湧喜, 伊藤 啓介
    セッションID: PB-043
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    COVID-19状況下において,感染予防対策の一環として不要不急の外出の自粛が求められた。一方,緊急事態宣言前後の人口動態分析では,外出者が大幅に減った地域もあれば,変動率が低い地域もみられた。そこで本研究では,どのようなパーソナリティ要因がコロナ禍における外出自粛行動に影響を及ぼすのかを検討するために,悲観性と同調志向に焦点を当てた。また,悲観性が高い人は外出を自粛する傾向にある(仮説1),同調志向傾向が高い人は外出を自粛する傾向にある(仮説2)という仮説を立てた。得られたデータを分析した結果,悲観性と外出自粛行動において有意な差がみられた(χ2(1)=3.91, p=.048, ϕ=.19)が,同調志向では有意な差がみられなかった。したがって,仮説1は支持されたが,仮説2は支持されなかった。仮説1が支持された理由として,外出した場合の誹謗中傷やCOVID-19に感染することへの恐怖,事態に対する諦めといった傾向が考えられた。また,仮説2が支持されなかった理由として,政府やメディア等で外出の自粛が強く推奨されていたため,同調志向の有無に限らず外出を自粛していたのではないかと考えられた。

  • 山根 隆宏, 伊藤 俊樹, 岡崎 春奈, 加藤 佳子
    セッションID: PB-044
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    目的:日本語版Behavioral Emotion Regulation Questionnaire(BERQ)を作成し,その因子構造と測定不変性を検討した。方法:20歳から69歳の500名(男性252名,女性248名;平均年齢45.8±13.5歳)を対象にオンライン調査を行った。調査内容は日本語版BERQであった。結果と考察:全サンプルおよび男性・女性のサンプルにおいて確認的因子分析を行った結果,適合度は良好であり,原版(Kraaij & Garnefski, 2019)と同様の5因子構造(Seeking Distraction, Withdrawal, Active Approaching, Seeking Social Support, Ignoring)が確認された。性別による多母集団同時分析を行ったところ,配置不変モデル,弱測定不変モデル,強測定不変モデルのいずれのモデルも適合度は良好であった。そのため,制約条件の厳しい強測定不変モデルを採用した。結論:日本語版BERQは原版と同様の因子構造を有し性差を検討できる尺度であることが確認された。今後は信頼性と妥当性の検証をしていく必要がある。

  • 加藤 佳子, 伊藤 俊樹, 岡崎 香奈, 山根 隆宏
    セッションID: PB-045
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    日本語版Behavioral Emotion Regulation Questionnaire(BERQ)を作成し,その妥当性と信頼性を検討した。方法: 20歳から69歳の500名(男性252名,女性248名;平均年齢45.8±13.5歳)を対象にオンライン調査を行った。調査内容は行動型情動調整方略,抑うつ,不安,Well-being,認知型情動調整方略であった。結果と考察:下位尺度のクロンバックの α 係数は.80から.88であり高い信頼性が確認された。一方,再検査信頼係数は.53から.68であり,BERQの原版と同様,低い値であった。つまり人格特性としての安定性は見られないが,ストレスイベントへの対処方略としては緩やかな一貫性があることが示された。抑うつ,不安,Well-being,Cognitive emotion regulationとの関連も示唆された。結論:日本語版BERQの妥当性と信頼性を確認できた。今後は,どのような行動型対処方略が抑うつや不安,Well-beingに影響するかを検討し効果的な対処方略への示唆を得ることが期待される。

  • 津田 恭充
    セッションID: PB-046
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    謙虚であることは人生に良い影響を及ぼすと仮定されているが,実際には謙虚と主観的幸福感との間に有意な相関はみられない。一方,控えめであるという点で謙虚と類似している過剰適応(特に自己抑制)は主観的幸福感と負の相関を示すことが明らかにされている。このことから,謙虚と主観的幸福感に正の相関がみられないのは,謙虚の測定時に自己抑制が混入し,それが謙虚と主観的幸福感の関連を相殺しているためであると考えられる。そこで本研究では,過剰適応を統制することで謙虚と主観的幸福感の関連をより明確にとらえることを目的とした。大学生123名を対象に,謙虚,過剰適応,主観的幸福感を調査した。重回帰分析の結果,仮説どおり,謙虚は主観的幸福感と正の関連を示した(β=.319, 95 %Cl[.118,.519],p =.002)。一方,過剰適応の自己抑制的な側面は主観的幸福感と負の関連を示した(β=.334, 95 %Cl[.-557, .-110],p=.004)。謙虚と自己抑制は控えめであるという点で類似しているものの,その主観的幸福感との関連の仕方は正反対であった。このことは両者を区別することの重要性を示唆している。

  • 能渡 綾菜, 能渡 真澄, 望月 聡
    セッションID: PB-047
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    先行研究では,「なりたくない自分」として望ましくない自己が用いられてきた。しかし,その内容には「自信がない」といった個人的経験に基づくものから,「人を傷つける」といった非倫理的なものまで含まれる。本研究は,個人にとってより苦痛となる「なりたくない自分」に焦点を当てた忌避自己を概念化し,その測定法を開発することを目的とした。大学生140名を調査対象者とし,望ましくない自己および忌避自己の内容,現実自己との一致度,その他尺度への回答を求めた。まず,自己指針ごとに自由記述データをカテゴリー化した結果,いずれも同様の7カテゴリーに分類された。また,χ2 検定の結果,非倫理的な姿に関する記述数について,忌避自己で少なく,望ましくない自己で多いことが示された。続いて,望ましくない自己および忌避自己との一致を独立変数,自己嫌悪感,自尊感情,自己受容を従属変数とした重回帰分析を行った。その結果,望ましくない自己との一致は自尊感情や望ましい自己の受容と負の関連をもつことが示された。その一方で,忌避自己との一致は自己嫌悪感と正の関連を,望ましくない自己に囚われない因子と負の関連をもつことが示された。

  • 青木 多寿子, 萩原 真琴, 梅本 菜央
    セッションID: PB-048
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    内的世界で課題とは直接関係のない思考をするマインドワンダリング(MW)は創造性に関わるとされる。本研究では自己形成を創造的なプロセスと想定し,自己嫌悪場面での自己変容の4つのタイプ(自己変容,否定性回避,否定性受容,自己嫌悪とらわれ)とMWの 関係を調べた。その際,MWの他の内言(空想),自分らしくある感覚である本来感との関係も合わせて比較検討した。参加者は大学生,大学院生計257名である。本来感は自分らしくある自己変容との関係が想定されるため高群と低群に分け,自己嫌悪場面の4つの反応様式をそれぞれ従属変数,内言を独立変数とする重回帰分析を行った。その結果,本来感高群ではMWが4つの反応様式すべてに正の影響を及ぼしていた。一方,本来感低群ではMWは否定性回避,否定性受容,自己嫌悪とらわれに正の影響を及ぼしていたが,自己変容には影響していなかった。これらの結果から,本来感高群において,MWは自己の多様な側面に触れ,自己形成という創造的な思考を促進することが示唆された。一方,本来感低群ではMWはネガティブな働きをするのみで,新たな自己を創造する自己形成にはつながらないことが示唆された。

3.社会・文化
  • 黒田 起吏, 高橋 茉優, 亀田 達也
    セッションID: PC-001
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    メンバー全員が集団意思決定に参加(投票)する場合,多数決は高い正答率をもたらす。しかし,投票がコストを伴い,そのため投票しない誘因がある場合でも,集合知が成立するかは不明である。本研究では「能力に自信がある人は,投票せずに個人として意思決定したほうが利益が見込めるため多数決に参加しない」と予測し,実験室実験を行った。参加者は知覚課題に取り組み,個人として回答するか,投票して多数決に従うかを選んだ。また,実験結果をもとにシミュレーションを行い,メンバー全員が投票した場合の多数決精度を計算した。分析の結果,自信のない参加者ほど投票しやすいことがわかった。この投票バイアスの結果,本実験での多数決は,全員が投票した場合(シミュレーション結果)よりも一貫して劣っていた。また,課題が難しい場合,投票する人数が多いとむしろ正答率は下がった。個人の自発的な選択から生じる投票バイアスに対して多数決が脆弱である可能性を,本研究は示唆している。

  • 大和田 智文, 渡野邉 真也
    セッションID: PC-002
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    近年,外集団に対するヘイトクライムが深刻な社会問題となっている。こうした社会問題を踏まえ,本研究では,集団同一視の程度と行動価の違いが,内集団および外集団の行為者に対する態度および印象評定にどのような違いをもたらすかを検討した。大学生81名を対象に質問紙調査を実施した結果,行為者に対する対人場面およびSNS上での肯定的・否定的態度および印象評定に,集団同一視および行動価による違いがみられたが,行為者の所属集団(内集団 vs.外集団)による違いはみられなかった。このことは,外集団に対するネガティブな態度の顕在化が,評定者自身の所属集団への同一視の程度と関連して生じている一方で,行為者の所属集団が必ずしも関連しているわけではないことを示唆する結果といえる。したがって,ヘイトクライムといった外集団に対するネガティブな態度の顕在化の検討に際し,今後はさらに評定者側の特性(たとえば,個人志向性 vs.社会志向性など)に着目する必要があるものと考えられる。

  • 佐藤 広英, 太幡 直也, 金森 祥子, 野島 良
    セッションID: PC-003
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    インターネット上のサービスを利用する際,プライバシーポリシー(以下,ポリシー)を確認し,同意することが求められる。従来,ユーザーがポリシーを確認せず,内容を理解することなく同意する傾向があることが指摘されている(Cate, 2010;金森他,2017)。本研究では,情報プライバシー(ネット上の自己情報に関するプライバシー懸念;佐藤・太幡,2018)と情報セキュリティに関する知識がポリシー理解を促進するかどうかを検討した。調査会社のモニターを対象としたウェブ調査を行った(N=665)。初めて利用するECサイトで会員登録する場面を想起させ,架空のポリシーを読むように求めた。その後,ポリシーの客観的理解度および主観的理解度,情報プライバシー(佐藤・太幡,2013),情報セキュリティに関する知識(Cookieなど,ポリシー内のセキュリティ用語の知識の有無)に関する質問項目に回答するよう求めた。その結果,情報プライバシーの得点が高い者ほどポリシーの客観的理解度が高いこと,情報セキュリティに関する知識の得点が高い者ほどポリシーの主観的理解度および客観的理解度が高いことが示された。

  • 今井 芳昭
    セッションID: PC-004
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究の目的は,Keltner et al.(2003)の影響力接近/抑制理論を始めとする諸理論の指摘に基づき,他者に影響を与えることによる認知パターンへの影響を明らかにすることであった。彼らが開発した,影響/被影響体験想起方法として「今までに他者に影響を及ぼした/影響を受けたエピソード」を書かせる条件,統制条件の他に,新たに「リーダーとして集団をまとめるためのメンバーへの対応方法」を書かせる条件を設けた。従属変数は,感情状態,影響力感,コントロール感をはじめとする8変数であった。Freeasy社の1,800人を4条件に割り当て,エピソードを70文字以上記述した447人を分析対象とした。従属変数の尺度構成後,多変量分散分析を行ったところ,実験条件の主効果が認められた。多重範囲検定の結果,影響力感についてリーダー条件>被影響条件,統制条件の有意差が認められ,コントロール感については,リーダー条件>統制条件という結果であった。しかし,他の従属変数を含め影響体験群と被影響体験群との間に有意差は認められず,欧米圏で指摘されているような認知パターンの相違は認められなかった。

  • 外山 美樹, 長峯 聖人
    セッションID: PC-005
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    目標達成に関する進捗の捉え方としては,これまでに進んだ距離に視点を向ける「to-date(これまで)」フレームと,目標までの距離に視点を向ける「to-go(これから)」フレームがある。Koo & Fishbach(2008)は,目標の重要性が高い場合(研究1では,必修科目の場合)は,「to-go」条件の方が「to-date」条件よりも試験勉強に対する動機づけが高いことを示した。また,外山・長峯(2020)は,これらの効果において制御焦点が調整変数となりうるのかどうかを検討した結果,促進焦点(promotion focus)の個人は「to-go」フレームの方が「to-date」フレームよりも,防止焦点(prevention focus)の個人は「to-date」フレームの方が「to-go」フレームよりも目標追求に対する動機づけが高いことが示された。本研究では,客観的な指標(行動指標)を用いて検討した。実験参加者は大学生75名であった。本研究の結果より,仮説が支持され,目標の重要性が高い場合における進捗フレームが目標追求に及ぼす影響において,制御焦点が調整することが示された。

  • 中田 栄
    セッションID: PC-006
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究は創造的な表現を促す英語の音楽劇によって,異文化理解を促し,自発的な発見や気づきを促すことを目的とする。大学生が日本に在住する米国籍の幼児・児童および教師と共に音楽劇づくりに参加し,自らが演じているイメージを客観的にみる経験,自らの演技を他者の立場から客観的にみる経験,自らの描いたイメージを表現し,自らの演技で何を伝えられたかを客観視する過程を考察した。さらに自らの演技を振り返り,他者の立場から伝えたいメッセージを客観視することを促し,他者にどのような影響を与えたかを振り返り,自己評価する過程を考察した。メタ認知の過程で異文化理解の視点につながることが示唆された。英語の音楽劇を通じて,対話的に異文化理解とコミュニケーション能力に対する自己効力を高める活動やメタ認知の活性化に役立った。文化によって異なる考え方を理解し合うために英語の音楽劇で自らの考えや演じ方を客観視することを通して,メタ認知化を促し,対話的に理解していく方法を論じた。相手の行動の意味を考え,自らの働きかけが効果的であったかどうかを相手の立場から客観的に考えることを促すことによって,メタ認知が活性化された。

  • 山上 尚彦
    セッションID: PC-007
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    アニメ・漫画・ゲーム等を好む「オタク」と呼ばれる人々の心理社会的特性に関する実証的な研究は少ない。本研究は,オタクの不適応的認知とソーシャルサポートが特異的にオタクのインターネット依存を予測するかどうか検討した。そのためにオンライン上で質問紙による横断的調査を実施し,1115名が回答した。質問紙は,不適応的認知,ソーシャルサポート,SNS依存,全般的な病的インターネット使用,オタク的コンテンツに関係する病的インターネット使用に関する尺度と,オタク判別用の項目によって構成された。その結果,オタクはオタクでない人々に比べて病的インターネット使用と不適応的認知が高く,ソーシャルサポートが低い傾向が認められた。回帰分析の結果,オタクにおいてはインターネットに関連した不適応的認知が病的インターネット使用を高めやすい傾向が示唆された。また,オタクでない場合にはソーシャルサポートの欠如はSNS依存を予測しない一方,オタクの場合には家族および面識の無い友人からのサポートの欠如がSNS依存を上昇させる傾向が示唆された。以上の結果から,オタクには特有のインターネット依存モデルがある事が示唆された。

  • 岡部 倫子
    セッションID: PC-008
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    世界経済のサービス経済化に伴い,サービスを提供する企業が増加し,サービス就業者人口も増加傾向にある。世界のサービス就業者の働き方は,景気変動や就業者の労働意識の多様化などに伴い大きく変化している。2019年の国際比較では,日本の第三次産業(サービス業)の就業者が全体に対する割合は71.5 %であり,イギリス,カナダ,アメリカ及びフランスが日本よりも高く,ドイツが日本と同水準である。しかしコロナ禍で,世界のサービス就業者の失業が報道された。原因の一つは,サービス就業者の業務が対人サービスであることが多く,テレワークが困難なことが考えられる。しかし,企業や組織には様々な変更が求められており,雇用関係も例外ではない。業界の外部環境は不確実性の度合いを高めており,このよ うな外部環境に適応しながら,持続的な経営成果を上げることは,企業にとっては挑戦的課題である。企業内では,コスト削減のプレッシャーがあり,雇用関係 の変更が実施されているのである。他方で,サービス就業者は,コスト削減と雇用関係の変更に伴い,心理的契約違反などを知覚する可能性が高い。本研究の目的は,米国のサービス就業者の意識調査である。

  • 渡邉 創太, 本郷 笑理果
    セッションID: PC-009
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    集合時刻への遅刻は社会的に望ましくない行為とされるが,大学の授業や友人との待ち合わせなど,集団規範が弱い状況ではより生じやすいと考えられる。本研究は,集団規範が弱い状況で社会的プレッシャーの提示が遅刻を低減するか調べるため,自主的な実験参加場面を設定し,実験参加者を無作為に「統制群」「社会的プレッシャー群」「事前呼び出し群」の3群に割り振った上で,実験の集合場所への到着時間と,架空の場面での集合場所への到着予定時間との差の大きさを3群間で比較した。全参加者に対し前日に実験の日時・場所を記載したアラートメッセージを送ったが,それらに加え,社会的プレッシャー群には遅刻が他の参加者への迷惑となるため時間通りに来るよう依頼する文を,事前呼び出し群には実験開始5分前に来るよう依頼する文を記載した。結果,事前呼び出し群の到着時刻は到着予定時刻よりも早かったのに対し,社会的プレッシャー群の到着時刻は到着予定時刻と差が見られず,また統制群の到着時刻とも差が見られなかった。これらの結果は,集団規範が弱い状況においては社会的プレッシャーを与えても遅刻低減効果は限定的である可能性を示唆する。

  • 宮川 裕基, 谷口 淳一, 新谷 優
    セッションID: PC-010
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    Neff et al.(2021)は状態水準のセルフコンパッション(SC)を測定する尺度(SSCS)を開発し,その因子構造を検討した。その結果,SCという一般因子と6つの下位尺度(特定因子)からなるBifactorモデルを探索的構造方程式モデリング(ESEM)により検討したBifactor ESEMが最適なモデルであった。本研究では,バックトランスレーション法によりSSCS-Jを作成した。一般成人596名(男性296名,女性300名。平均年齢40.0歳,SD=11.1)を対象にNeff et al.(2021)同様にBifactor ESEMを含めて9つのモデルを検討した。その結果,Bifactor ESEMのモデル適合度は良好であった(CFI=.991, TLI=.970, RMSEA=.051 with 90 % CI[.046,.066])。また,18項目の全体得点の分散の94 %が全般因子と特定因子により説明されていた(ω =.94)。さらに,その分散の87.3 %が全般因子により説明されていた。以上に加えて,Bifactor ESEMモデルに関して性別による測定不変性も確認された。

  • 三浦 麻子, 小森 政嗣
    セッションID: PC-011
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    社会心理学において,居住環境に存在する社会資本や文化資本の充実度は人の行動に影響する状況要因のひとつとして重要視されてしかるべきであるが,それをどのように測定するかは悩ましい問題である。本研究では,これらの指標として位置情報ゲームのPOI(Point of Interest)情報を用いるのが妥当かどうかを計算社会科学的なアプローチで検討した。具体的には,ある地域で位置情報ゲーム「ポケモンGO」のPOI「ポケストップ」がどの程度設置されているかを,その所在地の緯度経度情報に基づいて算出した密度で指標化し,これと当該地域の市民を対象とした社会調査で得られる主観的評価との関連を求めた。2020年度大会では大阪府を対象としたWeb調査データを用いた分析結果を報告したが,今回は兵庫県赤穂市を対象とした郵送調査のデータを用い,回答者の現住所を用いることでより空間解像度を高めて検討した。大阪府データの分析では居住環境に対する満足度との間に有意な相関が認められたが,同様の結果は再現されず,主観的指標との相関は見いだされなかった。

  • 元吉 忠寛
    セッションID: PC-012
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    新型コロナウイルス感染症の流行により,ホテルや旅館,安全な親戚や友人知人の家に避難するという分散避難が推奨された。これまでは学校の体育館などの避難所に避難することが多かったが,安全な親戚の家,知人や友人の家,ホテルや旅館が避難先として選択肢に入るようになった。避難所の居住性・快適性は避難行動の促進の要因となることが予測される。2020年9月6日から7日にかけて接近した台風10号は,特別警報の発表も予想され九州では大きな被害が出ることが心配された。本研究では,台風接近時の人々の避難行動の実態と意識について把握することを目的とした。九州の7県の住民,男女各100名,合計1400名を対象として,自宅が持ち家(一戸建て)で,自宅が浸水することが「ある」または「わからない」と回答した者を対象とした。避難をした187名のうち指定された避難所に避難した者は67名(35.8 %),親戚の家に避難した者は52名(27.8 %),ホテルや旅館に避難した者は35名(18.7 %)だった。避難先で困った点,よかった点などについて検討がされた。

  • 竹橋 洋毅, 田中 里奈, 安藤 香織, 梅垣 佑介
    セッションID: PC-013
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    新型コロナウイルス感染症は人のつながりを阻害しているように思われるが,対人関係の構築・維持・縮小について検討した研究は報告されていない。本研究では,コロナ禍における対人関係意図の規定因として,対人的な動機づけである親和願望とコロナ禍の終息についての信念であるコロナ観を想定した。コロナ観としては,コロナ禍の終息を信じるアフターコロナ観と,コロナ禍の継続を信じるウィズコロナ観の二つを想定した。本研究では,二度の縦断的なインターネット調査を実施し,最終的に1257人のデータを分析対象とした(うち男性615名。年齢の平均は45.5歳,SDは13.6)。その結果,親和願望は身近な人々との密接な関係,人々との交流の我慢と正に相関し,関係縮小と負に相関した。アフターコロナ観は密な関係と正に関係し,ウィズコロナ観は交流我慢と正に相関した。縦断データの分析から,コロナ観と対人関係意図の間には相互に強化しあうという長期的な影響がみられた。このような信念と行動の相互強化過程は,近年の信念の働きに関する先行研究の知見と一致する。最後に,これらの知見がもたらす基礎的および理論的な示唆について議論した。

  • 清水 佑輔, 竹内 真純, 唐沢 かおり
    セッションID: PC-014
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    高齢者が,高齢者および若者に対して保持する態度および,それに影響を及ぼす要因について,包括的に検討されてこなかった。本研究では,社会的アイデンティティ理論に基づき,自分が高齢者よりも若く,高齢者と若者の中間である「中年」に所属していると感じる程度である中年アイデンティティ,および年相応の「高齢者」に所属していると感じる程度である高齢者アイデンティティに着目した。日本人高齢者を対象にオンライン調査を実施した(N=301)。参加者の年齢が中年/高齢者アイデンティティを予測し,中年/高齢者アイデンティティが,それぞれ高齢者/若者への態度を予測するというモデルについて,ベイズ的共分散構造分析を用いて検討した。その結果,中年アイデンティティは高齢者および若者への肯定的態度と正の関係を持ったが,高齢者アイデンティティは,いずれに対しても顕著な効果を持たなかった。また,参加者の年齢は,中年アイデンティティに対して顕著な効果を持たなかった一方,高齢者アイデンティティと正の関係を持った。本研究の知見は,実年齢よりも若い世代にアイデンティティを帰属させることを目指す実践的介入等に応用できると考えられる。

  • 鈴木 公啓, 野村 竜也
    セッションID: PC-015
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究は,コミュニケーション場面において男性と女性のどちらの外見のロボットを選好するか,また,そこに平等主義的性役割態度が関連しているか明らかにすることを目的とした。調査対象は成人男女1000名(男性500名,女性500名)であり,web調査にて倫理的配慮をおこない実施した。コミュニケーション場面は,鈴木他(2019)で用いた場面から抽出して用いた。それぞれの場面において,同性と異性のどちらに対応して欲しいか「同性タイプのロボットに対応してほしい」「どちらもでもかまわない」「異性タイプのロボットに対応してほしい」の選択肢から回答を求めた。また,平等主義的役割態度スケール短縮版(SESRA-S;鈴木,1994)への回答を求めた。分析の結果,特にロボットのジェンダーをを選好しない人はどちらかのジェンダーを選好する人よりもジェンダー平等志向が高いことが示された。このことから,そもそもジェンダーバイアスが低い人はロボットに対してもジェンダーバイアスを持ちにくく,ロボットの側を特定のジェンダーにしてもそれが偏見を増長させることはない可能性が示唆された。

  • 村上 幸史
    セッションID: PC-016
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    二者間における携帯メールやLINEのやりとりを調べると,送受信の時間と文字数につりあいが成り立つことが示されている。とりわけ,全てのやりとりで必ずしも早い返信がなされている訳ではないことも示されている。本研究では,このつりあいの背景にあると考えられる返信の意識に関する要因の影響力について検討した。40歳以下の者を対象にした携帯メールとLINEの利用に関するweb調査を行った結果,つりあいの意識に影響する要因はそれぞれ異なっており,早いつりあいの意識に関しては「早く返信することへの負担」や「早い返信への感謝」,「関心の付与」の項目が影響していた。これに対して遅いつりあいの意識に関しては「返信することの面倒さ」が影響していた。また長さ(文字数)へのつりあいの意識に関しては,「長い返信に対する感謝」と「短い返信への怒り」,そして「送受信のつりあい時間に関する意識(早さと遅さの双方)」が共通して影響していた。このようにつりあいの背景にある重要な要因として,早さや長さという「労力」に対する感謝を感じることの影響が示唆された。

  • 宮崎 弦太
    セッションID: PC-017
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    親密関係で恩恵をやり取りするときの理想とされる共同的動機は,相手が自分に対して応答的でない場合,相手から搾取されるリスクや相手の自分に対する低い関心によって自己が心理的に傷つくリスクを高める。その場合,共同的動機を弱め,ギブアンドテイクの交換的動機を強めるほうが,本人の主観的幸福感の低下を防ぐことができると予測される。また,相手とのやり取りに安心できない関係において,交換的動機により恩恵提供への動機づけが維持されることは,パートナーの主観的幸福感の低下を防ぐ働きもすると考えられる。本研究は,夫婦ペアを対象にした日誌法調査により,配偶者の応答性の知覚に応じて家事における共同的動機と交換的動機を調整する程度を測定し,それらが夫婦の主観的幸福感に及ぼす影響を検討した。その結果,配偶者の応答性知覚の低さに応じて共同的動機を弱める傾向の強さは本人とパートナーの主観的幸福感に影響していなかった。一方,配偶者の応答性知覚の低さに応じて交換的動機を強める傾向の強さは本人の主観的幸福感を高めることが明らかになり,交換的動機の柔軟な調整が夫婦関係における幸福の維持に寄与している可能性が示された。

  • 横田 あさぎ, 福留 広大
    セッションID: PC-018
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,表出・不表出の概念を含んだ日本語Buss-Perry攻撃性質問紙(安藤ら,1999)を参考に,表出されない軽蔑や批判的な共感を含んだより広い意味でのインターネット攻撃性を測定可能な尺度を作成した。また,新尺度と仮想的有能感との関連性を検討した。探索的因子分析の結果(大学生,N =53),5因子22項目が抽出された。それぞれ,信念(α=.686),見下し(α=.746),敵意(α=.614),短気(α=.606),正義(α=.601)と命名した。新尺度とネット荒らし尺度(増井・田村,2019)の相関から,弱いながら収束的妥当性が確認された(r=.432)。新尺度と許し尺度(加藤・谷口,2009)における「寛容さ」の相関から,弁別的妥当性が確認された(r=-.209, p=.132)。また,新たに作成した尺度と仮想的有能感(速水,2004)との間に有意な正の相関が示された(r=.681;信念:r=.593;見下し:r=.538;敵意:r=.486)。新尺度は不表出の概念も含んでおり,インターネット攻撃性には他者軽視や自分の有能感を維持する側面も含まれているのではないだろうか。

  • 井奥 智大, 綿村 英一郎
    セッションID: PC-019
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    理解知覚とは,「他者が自己を理解してくれている」というメタ知覚を指し,集団間関係にポジティブな効果をもたらすと報告されている。これまでの研究は,内外集団が一つの政治構造に共存する場合を対象としていたが,別々の政治構造にいる集団間においても理解知覚の効果が見られるかどうかは検証されていない。そこで本研究では,集団間関係における理解知覚の効果を共存環境と分断環境で比較した。共存環境としては日本人と在日中国人の関係,分断環境としては日本人と中国に住む中国人の関係を調べた。日本人536名を対象にオンライン調査を実施した結果,どちらの環境においても理解知覚の効果があり,外集団が理解してくれていると認知しているほど外集団への好意が高く,ポジティブな関係を持ちたいと考える傾向が強かった。なお,この効果はデモグラフィック特性や集団間接触を統制しても認められた。分断環境にいる集団間でも理解知覚の効果があるということが本研究で明らかになったことにより,文化や政治経済が異なる集団同士でも互いに対しての認識がその関係性に重要な役割を果たすとの可能性が示唆された。

  • 水野 智美, 徳田 克己, 西館 有沙
    セッションID: PC-020
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    【目的】幼児のいる家庭において,童話昔話の絵本の所有率が激減しているが,WEB上の動画コンテンツが充実し,幼児が童話昔話にふれる機会に変化がみられる(徳田ら,2021)。そこで幼児のももたろうの知識は,何に影響を受けているのかを明らかにする。【方法】回答者:幼児の保護者642名。手続き:無記名による自記式質問紙を用いた。ももたろうの知識を問う項目は3項目であり,回答者が子どもに質問し,子どもが答えた通りに記入した。正解の合計点(1項目1点)を従属変数,絵本の読み聞かせの有無,動画視聴の有無等を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った。調査期間は2020年9~10月。【結果】R2=0.24**であり,「子どもの年齢」(β=0.34**),「ももたろうの絵本の読み聞かせの有無」(β=0.25**),「絵本(ももたろうに限らず)を子どもが読む頻度」(β=0.16**)であった。幼児の誤答を見ると,視覚的,聴覚的な情報は覚えていたが,正確な言葉を覚えていないケース(例えばももたろうと鬼退治に行った動物の答として「カラフルなとり」「ケーンと鳴くとり」と答えるなど)が散見された。

  • 小森 めぐみ, 田戸岡 好香
    セッションID: PC-021
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では「有能メタステレオタイプを知覚すると,メタステレオタイプの出どころとなる外集団の能力評価が相対的に低下し,外集団への援助が促進される」という仮説をもとに,オンラインでシナリオ実験を行った。具体的にはタイ人をターゲットとし,「タイの人々は日本人を有能だと思っている」または「人柄がよいと思っている」という情報を呈示した後に,タイの水害に対して災害救助車両と災害救助隊をどの程度派遣するべきかをたずねた。統制条件としてメタステレオタイプを呈示せずに派遣判断を行う条件も設けた。操作チェックの結果,呈示されたメタステレオタイプ情報に基づいたメタステレオタイプ知覚が生じていたが,援助意図の程度は条件間に有意差が見られなかった。事後的な分析として,国際間の相互依存の必要性の認知と事前のタイ人に対するポジティブイメージを要因として加えた分析を行った。その結果,相互依存の必要性を低く認知し,タイ人にポジティブなイメージを抱いていない場合,有能メタステレオタイプ情報が呈示されると,人柄メタステレオタイプが呈示された場合や統制条件と比べて,災害救助車の派遣台数が有意に多かった。

  • 横井 良典, 中谷内 一也
    セッションID: PC-022
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    近年,「人工知能(AI)が人間の仕事を奪う」,「AIが人間を打ち負かす」といったことが議論されている。人間がAIに競争で負けとき,その敗因をどう推察するのかという原因帰属が検討されなければならない。なぜなら,原因帰属は将来の取り組み,感情,自尊心といった多くの変数に影響するからである。AIに負けたときの原因帰属を検討するために,大学生74名を対象に実験室実験を行った。AIと戦うAI条件,人間と戦う人間条件を設けたが,条件に関わらず,参加者はAIと対戦した。人間条件の参加者は事前に「別の参加者と戦います」と教示された。競争課題として,棒取りゲームというオリジナルの課題を使った。このゲームでは,参加者は必ず負けるように仕組まれていた。ゲーム終了後,参加者が敗因をどこに帰属しているのかを測定した。また,同じ相手に再挑戦したいかどうかを行動反応として選択させた。分析の結果,AI条件,人間条件に関わらず,参加者は自身の能力が最も大きな敗因であると帰属していた。再挑戦の選択に関しては,AI条件,人間条件ともに,再挑戦したい参加者の割合は少なかった。

  • 孫 暁強, 木藤 恒夫
    セッションID: PC-023
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
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    本研究では化粧における日本人女性の世代間の違いを検討した。対象は20代から60代の女性計250名とするWEB調査を行った。化粧行為に関する調査内容は,意識,行動,習慣,金額,生活場面における化粧の程度,親から(親として)の干渉,心理的効果であった。その結果,1)20代,30代の世代は中高年世代より「魅力向上・気分高揚」,20代は60代より「必需品・身だしなみ」の意識が高かった。2)日焼け止め以外の化粧品の使用頻度に世代差がなかった。3)習慣については世代差がなく,化粧開始年齢は60代が比較的に遅かった。4)化粧品額には世代差がなかった。5)パーティー等に出かける時は,「ファンデーション」は40代,「フルメイクに近い」は50代が多く,「フルメイク」は20代が多くて50代と60代が少なかった。家にいる時では,「フルメイク」は比較的に20代が多かった。6)化粧開始時の親から(親として)の干渉については,「娘が中高生の時に化粧をすることを認める」以外では世代差はなかった。7)心理的効果には世代差はなかった。これらの結果は,日本人女性の化粧行為においては世代差があまりないことを示した。

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