【緒言】変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis:膝OA)の有病者数は2,500 万人であり,加齢に伴い有症率は上昇する。膝OA の痛みが長期化すると,求心性情報が入力される大脳皮質が再編成され,運動イメージ想起能力が低下することで,疼痛が増悪しうる。脳の再編成による疼痛に対しては,標準的なリハビリテーションによる効果が得られにくく,運動イメージに着目した治療が報告されている。一方で,効果的な運動イメージ治療の内容や適応基準,疼痛と関連する運動イメージの種類は不明である。本研究では,疼痛に関連する運動イメージの種類を調査した。
【方法】膝OA と診断されて高位脛骨骨切り術目的に入院した者のうち,研究目的・内容の理解困難,デー
タ不備,研究参加に関して同意を得られなかった者を除外した27 名を対象とした。運動イメージ評価には,Timed Up and Go test(TUG)とTUG をイメージするのにかかる時間であるiTUG との所要時間差の絶対値であるiTUG-gap,2 回測定したiTUG-gap の変化量,Kinesthetic and Visual Imagery Questionnaire-10(KVIQ-10)を採用した。疼痛評価には疼痛強度(VAS)とShort-Form McGill Pain Questionnaire 2(SF-MPQ-2)を用いた。心理的因子として,破局的思考(PCS),運動恐怖(TSK),不安・抑うつ(HADS),自己効力感(PSEQ)を評価した。カルテから年齢,性別,関節軟骨損傷重症度,罹患期間を抽出し,Trail Making Test パートB を用いて認知機能を評価した。相関分析を用いて,運動イメージと他の項目との関連を調べた。
【結果】iTUG-gap およびiTUG-gap 変化量とVAS との間に有意な正の相関を認めた。KVIQ-10 とVASの間には相関がみられなかった。iTUG-gap と,SF-MPQ-2 のすべての痛み表現,持続的な痛み,感情的表現との間に,有意な正の相関があった。
【結論】疼痛強度とiTUG-gap 関連評価が関連し,持続的な痛みおよび感情的表現とiTUG-gap との間に正の相関を認めた。膝OA 患者の疼痛には,単関節の運動イメージよりも実動作のイメージが関連し,痛みの性質によって運動イメージとの関連度合が異なるとわかった。
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