PAIN REHABILITATION
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最新号
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症例報告
  • 荘加 美月, 高橋 啓
    2026 年16 巻1 号 p. 41-48
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/02
    [早期公開] 公開日: 2026/03/15
    ジャーナル オープンアクセス
    【緒言】脊椎破裂骨折術後の強い疼痛と,それに伴う恐怖回避思考や破局的思考といった心理的要因は,患者のADL やQOL を低下させることがある。そのため,術後急性期には感覚的な疼痛緩和だけではなく,心理面へのアプローチも重要となる。本報告では,TENS を併用したOT 介入が疼痛,精神心理面,ADL に与えた影響を検討する。 【方法】症例はL2・L3 破裂骨折の70 歳代女性で,術後,薬物療法のみでは改善困難なNRS8 の強い疼痛と,高い恐怖回避思考・破局的思考を呈し,離床困難であった。ADL は最大介助であった。術後22日目より,主治医の許可のもとTENS を併用し,本症例の目標であったトイレ動作の自立を達成するため,基本動作練習・ADL 練習を実施した。 【結果】TENS 導入後,安静時痛はNRS8 から5 へと即時的に軽減し,離床意欲が向上した。除痛を図りながらADL 練習を反復した結果,術後30 日目には動作時痛はNRS3,心理面においても改善を認めた。FIM 運動項目は91 点へと向上し,目標であったトイレ動作をはじめADL は自立に至った。 【結論】TENS を併用したADL 練習は,術後の急性痛を緩和した。そして,感覚的な疼痛軽減により動作ができるようになったという成功体験を本症例にもたらし,恐怖回避モデルの悪循環を断ち切る契機となった。この体験が自己効力感を高め,主体的なADL 練習を促したと考える。本介入は,術後患者の疼痛緩和のみならず,心理面の改善と早期ADL 獲得を促す上で有効な手段となり得る可能性が示唆された。
  • 高橋 啓, 坂 直樹, 石橋 裕
    2026 年16 巻1 号 p. 49-58
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/02
    [早期公開] 公開日: 2026/03/15
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】頸椎症性脊髄症(Cervical Spondylotic Myelopathy:以下,CSM)術後では,しびれや感覚障害が生活機能に影響することが多く,非薬物的介入として経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)の応用が注目されてきた。近年,患者の自覚するしびれに刺激を同調させる「しびれ同調TENS」が報告されているが,亜急性期のCSM 術後における効果は十分に検討されていなかった。本報告では,亜急性期CSM 術後患者に対し,しびれ同調TENS を併用した作業療法(Occupational Therapy:以下,OT)介入の経過を,シングルシステムデザインを用いて検討することを目的とした。 【方法】対象は70 代女性1 例とし,ABA’B’ デザインを用いた。A 期およびA’ 期では通常OT を実施し,B 期およびB’ 期では20 分間のしびれ同調TENS を併用したOT を実施した。主要評価項目はしびれ強度(Numerical Rating Scale:以下,NRS)とし,副次評価項目として感覚機能,巧緻動作,上肢使用量・質,日常生活活動,転倒自己効力感,疾患特異的QOL,カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:以下,COPM)を評価した。分析は視覚的分析に加え,効果量Tau-u を算出した。 【結果】B 期においてしびれ強度は右手指でNRS4 から0,左手指で9 から6 に低下し,Tau-u は右0.65,左0.75 と大きい効果量を示した。A’ 期においても改善傾向は概ね維持された。感覚機能,巧緻動作,上肢使用量・質に加え,日常生活活動,自己効力感,疾患特異的QOL,COPM も向上を認めた。 【考察】しびれ同調TENS を併用した介入期において,しびれ強度の低下および主観的なしびれの感じ方の変化が時間的に対応して認められたことから,感覚入力の調整がOT 介入の文脈の中で機能した可能性が示唆された。一方で,亜急性期はCSM 術後の自然回復が進行する時期でもあり,改善の一部には自然経過の影響が含まれている可能性があった。 【結語】亜急性期CSM 術後患者に対するしびれ同調TENS を併用したOT 介入は,しびれ軽減と多面的な評価指標の改善と時間的に対応した変化を示した。20 分という比較的短時間で実施可能な介入として,臨床実践における一助となる可能性が示された。今後は,多事例での検討や対象群を設定した比較研究が求められる。
総説
  • 今井 亮太
    2026 年16 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/02
    ジャーナル オープンアクセス
    運動器疾患に対する手術療法は,多くの患者に機能回復と疼痛緩和をもたらす。一方,手術療法は,組織治癒に必要な期間を超えて疼痛が持続する「術後遷延性疼痛(Chronic Post-Surgical Pain: CPSP)」が一定割合で生じ,生活の質(Quality of Life: QOL)の低下と医療経済的負担が問題となっている。国際疾病分類第11 版(ICD-11)では,CPSP が慢性疼痛分類に位置づけられ,研究が加速する中で,性別や年齢,疼痛強度,心理社会的要因などのリスクファクターが整理されつつある。しかし,現時点での最大の課題は,CPSP の判定基準(判断時期,疼痛強度,痛みによる生活への支障,質の変化など)が不明確なことである。そのため,CPSP の有病率が大きく変動し,研究間の比較や臨床実装を困難にしている。また,医療制度や文化,教育制度などによっても有病率は異なるため,世界で示されている知見のすべてを本邦に当てはめるのは難しいかもしれない。真の治療対象とすべき患者層を同定するためには,疼痛強度だけでなく,多面的アウトカムに基づく標準化された評価枠組みの確立が急務である。 本稿では,CPSP の定義,疫学,リスクファクターに関する最新知見を概説し,定義の不統一がもたら す疫学推定の乖離という課題を整理した上で,今後の臨床研究および評価手法の展望を論じる。
  • 古賀 優之
    2026 年16 巻1 号 p. 7-15
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/02
    ジャーナル オープンアクセス
    脳卒中や脊髄損傷,多発性硬化症などの中枢神経疾患では,中枢神経系の損傷や機能障害に伴って多様な疼痛が生じる。しかし臨床場面では,疼痛の有無や強度の把握に留まり,病態機序に応じた評価や介入に十分結びついていないことも少なくない。本稿では,脳卒中後疼痛をモデルとして,中枢神経疾患に伴う疼痛を,①感覚神経系の損傷に伴う神経障害性疼痛,②運動神経系の障害に付随する侵害受容性疼痛,③不活動や心理社会的要因,学習性不使用に伴う痛覚変調性疼痛の3 側面から整理した。これらの病態は同一時点で混在し,さらに急性期から亜急性期,慢性期へと進行する中で,優位となる機序や出現する症状が変化するという特徴を有する。一方,在宅復帰や復職を目指す中枢神経疾患患者のリハビリテーションでは,日常生活動作獲得に重点が置かれることも多く,質問紙等を用いた詳細な疼痛評価をその中に組み込むことは容易ではない。このような課題に対し,疼痛の質的特徴や感覚所見に基 づく機序推定の視点を提示し,必要に応じて詳細な評価へとつなげる段階的評価の重要性についても論じた。中枢神経疾患罹患後の疼痛は固定的な診断カテゴリーとして捉えるのではなく,神経ネットワーク再編過程において時間経過とともにその構成要素が変容する現象として理解し,病態仮説を適宜更新しながら適切な介入戦略の立案および慢性化予防を行っていくことが重要である。
  • 浦上 慎司, 大住 倫弘
    2026 年16 巻1 号 p. 16-24
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/02
    ジャーナル オープンアクセス
    脳卒中後疼痛は,患者の約43% に生じ,リハビリテーションの阻害因子となる。本総説では,脳卒中後疼痛の多角的なメカニズムを整理し,痛みの性質に基づくサブグループ化が予後予測や個別化治療に果たす役割を検討することを目的とした。脳卒中後疼痛は大きく,肩関節亜脱臼などを原因とする「筋骨格系疼痛」と,中枢神経系の病変による「中枢性神経障害性疼痛」に大別される。前者は不適切な運動麻痺管理により長期化し,下行性疼痛抑制系の破綻を伴う痛覚変調性疼痛へ移行するリスクを持つ。後者は視床や脊髄視床路の損傷に起因し,感覚過敏(アロディニア等)と感覚鈍麻が混在する複雑な病態を呈する。近年の研究では,疾患名による分類よりも,患者が訴える「痛みの性質」に基づく分類が病態理解に有用であるとされる。実際,痛みの性質を基に分類した我々のサブグループ解析では,脳卒中後疼痛患者が4 つのクラスターに分類された。具体的には,冷痛や痺れ,アロディニアを特徴とするクラスターは,中枢性神経障害性疼痛の要素が強く,12 週間の経過でも痛みが遷延する難治性の予後が示された。一方,運動時痛を特徴とし,神経障害性疼痛の指標が低いクラスターは,筋骨格系疼痛の要素が強く,一般的な運動療法開始2 週目以降に有意な除痛効果が認められた。つまり,痛みの性質に基づいた評価は,病態メカニズムの推定と予後予測を可能にする。例えば,異常感覚を示すような患者に対しては,物理療法や多職種連携による薬物療法の併用が不可欠であり,運動時痛が主症状である患者に対しては,二次的損傷を防ぐポジショニングと適切な運動療法が有効である。このように,画一的なアプローチではなく,痛みの性質に応じた個別化リハビリテーション戦略の構築が,患者のQOL 向上に寄与すると期待される。
  • 萬福 允博, 壬生 彰, 西上 智彦
    2026 年16 巻1 号 p. 25-32
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/02
    ジャーナル オープンアクセス
     がん治療の進歩により,がん患者は増加し,疼痛,倦怠感,身体機能低下などの症状が長期に残存し,日常生活障害や生活の質(Quality of Life: QOL)の低下などに影響することが重要な課題となっている。がん関連疼痛の有病率は約40%で,中等度以上の疼痛も約30%に認められるが,依然として疼痛管理は不十分とされている。背景には,がんの進行・転移に伴う疼痛と治療関連疼痛が併存し,機序と臨床像が多様化していることや医療者による疼痛の過小評価がある。本総説では,がん関連疼痛を「がん性疼痛」と「がん治療後疼痛」に分類し,評価と治療の実践的枠組みを整理した。がん性疼痛では骨・内臓転移など重篤転帰につながる病態の迅速なトリアージが最優先となる。一方,がん治療後疼痛には術後慢性疼痛,薬物療法後疼痛(化学療法後末梢神経障害,アロマターゼ阻害薬誘発性筋骨格系症状),放射線治療後疼痛が含まれ,中枢性感作や心理社会的要因の関与が示されている。がん関連疼痛の評価では,まず骨・内臓転移など重篤転帰につながる病態をトリアージし,レッドフラッグ所見と再発リスク層別化に基づいて画像検査の適応と緊急度を判断する。その上で,適応の乏しい反復的画像検査は,不安を助長し得る点を踏まえ,適切な評価に基づき重篤病変の除外を行った後,治療歴,疼痛の時間経過,神経学的所見,全身症状を統合し,「がん治療後疼痛」,「非がん性疼痛」の影響を評価する。さらに,疼痛強度と能力障害,心理的要因,中枢性感作および中枢性感作関連症状を段階的に評価する。がん関連疼痛に対する治療では,鎮痛剤治療に加えて,非薬物治療として,リハビリテーション,疼痛教育,自己管理支援を統合した集学的介入により,機能障害と活動制限の最小化を目指す。本総説は,多様ながん関連疼痛に対する臨床意思決定を支援する評価・治療の整理を目的とした。
  • 中楚 友一朗, 西原 真理, 城 由起子, 井上 雅之, 名取 霞, 牛田 享宏
    2026 年16 巻1 号 p. 33-40
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/02
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,慢性疼痛は単なる症状ではなく独立した疾患概念として整理され,ICD-11 において「慢性一次性疼痛」が定義された。慢性一次性疼痛に該当する疾患群は臨床現場において「対応が難しい痛み」として語られることも少なくなく,長期経過や予後因子は十分整理されていない。本稿では,その代表例である線維筋痛症(FM)および複合性局所疼痛症候群(CRPS)を対象に,1 年以上の縦断研究を概観し,長期予後の特徴と予測因子について整理した。FM の長期経過は症状の持続性を基盤としつつも,改善と再燃を含む変動性を示し,一部では有意な改善が認められる。ストレスや心理社会的因子,運動習慣などが予後に関連することが報告されている。CRPS においても症状の持続は少なくないが,回復の経過は個人差を認め,不安や機能障害などの初期状態が長期的な経過に影響することが報告されている。そのため早期にどのように関わるかが重要である。これらの知見は,慢性一次性疼痛が一様に固定 化する病態ではなく,可変性を有することを示唆している。一方で,高精度の予後予測モデルは確立されておらず,単一の指標のみでは経過を十分に説明できないことも示されている。さらに,様々な病態が混在することで,予後予測を困難にしている可能性もある。予後の評価自体も疼痛強度のみならず,機能回復や社会参加など多次元的である。今後は,多面的データに基づく層別化と予測枠組みの構築を進め,それを個別化された介入戦略へと橋渡しする研究が求められる。臨床で頻繁に問われる「この痛みはどうなりますか」という問いに対し,「痛みがゼロになることは少ないが,症状は変化し,軽減しうる。できることを共に探していく」という姿勢が,長期予後研究を踏まえた現実的かつ希望を失わない対応となり得る。
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