現在,政府では「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成30年3月6日閣議決定)に基づき,GDP統計の精度向上を目的として,2025年度現行の国民経済計算の推計手法から産業連関表の供給・使用表(SUT; Supply and Use Tables)体系への移行を進めている.SUTへの移行のためには現行の推計体系との変更点を明確にした上で,新たな推計体系を構築することが必要であるが,移行後の供給表に対応する現行の産業別商品産出表(V表)の推計手法は各省庁によって分担されており,一貫した推計手法に関する解説及びその再現のための資料等が存在しない. 本稿では,各種資料等を収集して明らかになったV表の推計手法に基づいて,経済センサス-活動調査の個票データから直接に供給表(S表,ただし本稿で輸入は考察対象から外す)を推計した.また,現行の推計手法において,欠損値の扱いなどの処理規則が定められていないために推計誤差が生じていることを明らかにし,現行の推計手法の管理・公開手法における不透明性に関して検討した.