産業連関分析はLCA(ライフサイクルアセスメント)で広く利用されてきたが,廃棄段階(EOL)の評価は不十分だった.これを補うため,EOL段階を含むWIO(廃棄物産業連関分析)が開発された.一方,金額ベースの産業連関表を物量フローに変換するWIO-MFAは,MFA(マテリアルフロー分析)と産業連関分析を統合し,より詳細な物質流動解析を可能にした.静的分析に留まるWIO-MFAに対し,時間軸に沿って製品廃棄やリサイクルを追跡する動的MFAツールとしてMaTraceが開発された.本稿では,WIOからMaTraceまでの研究の流れとその意義を論じる.
本論文は,産業連関分析を環境経済分析に適用した筆者の研究を概観したものである.まず,その基礎として経済構造変化と化石燃料消費の関係を数量的に定式化し,誘発係数および要因分解手法により,投入構造変化と最終需要構造変化が化石燃料消費に与える影響を分析する.次に,DPG分析にCO2排出の要因を加えたモデルを構築して,投入,最終需要,貿易,排出係数に関する要因分析を行う.最後に,ROWを外生的に扱う国際産業連関表においてROW排出係数を推計するモデルを提示し,CO2排出にかかる国際収支分析を行い,先進国が途上国に対する貿易に伴うカーボンリーケージを数量分析する.
環境要素としての水と経済活動との関係を水誘発,バーチャルウォーター(VW; Virtual Water),ウォーターフットプリント(WF; Water Footprint)といった概念を用いて分析した.地域内産業連関表,地域間産業連関表,地域間国際産業連関表の各産業連関表を用いて,神奈川県,日本の関東地域,東アジア(日中韓)の各地域の水誘発,VW,WFを分析した.全体的な傾向として,大都市圏は,農産物や製造業品の移輸入を通じ他地域の水を間接的に使用していることが明らかになった.
慶應義塾大学産業研究所における産業連関表を用いた環境分析の歩みを振り返り,今後の展望を示すものである.研究は1980年代の酸性雨への関心から始まり,レオンティエフ教授の助言を得て進展した.活動は,緩和策のライフサイクル評価,国際産業連関表による世界モデル構築,中国での技術導入や植林の実践という3方向に展開された.一方で,排出係数の安定性や事業所データの不規則性に基づく投入係数の限界など方法論的課題を指摘する.環境問題が政治化する中で,複雑な現実をとらえるモデルの重要性を説いている.
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