臨床試験実施にあたり、研究対象者からのインフォームド・コンセント(IC)取得は必須である。しかし、脳卒中超急性期など治療可能時間が限られている疾患では適時に適切なICを得ることは困難であり、患者の状況によっては家族が代諾者となり得る。本研究は、医療上の緊急事態において臨床試験参加の代諾者となった場面を想定し、一般市民の臨床試験参加に関する意識を調査し、今後の医療者による意思決定支援の一助とすることを目的とした。調査対象は20才以上の一般市民とし、「医療従事者およびその家族」「医療上の緊急事態(脳出血、心筋梗塞など)における意思決定に関わった経験がある者」を除外基準とした。臨床試験参加可否判断の理由の自由記述についてテキストマイニングを行った。参加に肯定的な群では、頻出語として『可能性』『助かる』、特徴語として『藁にも縋る』『治療法』が抽出された。参加を決められない群では、頻出語かつ特徴語として『わからない』が抽出された。参加に否定的な群では、頻出語として『実験』『不安』、特徴語には『信用できない』が抽出された。患者家族による臨床試験への参加の決断は、患者が助かる可能性への期待、臨床試験に関する不明感による判断困難、臨床試験への不安や不信による拒否感等、多様であることが示唆された。医療者は、一般市民の臨床試験に対する捉え方を考慮した上で、適切な意思決定を支援することが必要だと考えられた。
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