日本歯周病学会会誌
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27 巻, 4 号
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  • サルにおける実験的研究
    水野 利昭
    1985 年 27 巻 4 号 p. 739-756
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    この研究の主目的は, 口呼吸と歯垢形成との関連を明らかにすることである。そのためにオスのカニクイザル2頭を用い, 鼻呼吸と口呼吸を反復して行わせ, それぞれの期間中の歯垢の形成量を規格写真などで比較した。その結果, 口呼吸により歯垢の形成量が有意に増加した観察部位は, 7部位のうち5部位であった。すなわち上顎中切歯の唇面と口蓋面, 上顎臼歯部の口蓋面, 下顎中切歯の唇面と下顎臼歯部の頬面である。最も特徴的な歯垢形成を示した部位は, 上顎中切歯の唇面であり, ここでの歯垢形成は鼻呼吸期間では隣接面と歯頸部から始まったが, 口呼吸期間では切縁付近から形成され始めた。口呼吸により歯垢形成が促進された原因は, (1) 舌や口唇による歯面への機械的自浄作用の低下, (2) 口呼吸による歯面の乾燥と湿潤との反復があったと思われる。
  • 奥田 一博
    1985 年 27 巻 4 号 p. 757-770
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は歯周ポケットからの排膿を periodontal disease activity のひとつのパラメーターと考え排膿のあるポケット (以下P (+)) と排膿のないポケット (以下P (-)) 間の歯肉縁下プラーク細菌叢のうち, とくに Spirochetes, Black-pigmented Bacteroides, Fusobacterium nucleatum の総菌数に対する割合を比較検討することにある。辺縁性歯周炎罹患者に臨床的診査を行い排膿の有無以外のパラメーターのばらつきは極めて少ないことが確認できた7名について1人につき平均4部位より縁下プラークを採取し暗視野顕微鏡, 嫌気培養法を用いて同定を行った。その結果, 総菌数は107~108のオーダーで得られP (+), P (-) 間で差は認められなかった。 Spirochetes はP (+) で13.1%, P (-) で6.0%, Black-pigmented Bacteroides はP (+) で23.9%, P (-) で6.0%を占めそれぞれ有意差があったが Fusobacterium nucleatum はP (+) で18.3%, P (-) で9.3%で部位, 個体差が大きく有意差は認められなかった。
  • 山下 薫
    1985 年 27 巻 4 号 p. 771-778
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    歯周炎罹患歯肉リンパ球の分裂能を調べるため, PHA, Con A, PWM各種マイトーゲンに対する幼若転換を測定した。成人性歯周炎患者 (AP) 4名, 重度進行性歯周炎患者 (RPP) 3名 (17~62歳) から歯周手術および抜歯時に歯肉を採取した。歯肉リンパ球は Mackler らの変法, コラゲナーゼ処理および Ficol-gradient 処理にて抽出を行った。10% FCSを含むRPMI 1640培地200μl中に2×105濃度となるようリンパ球を調製後, 至適濃度のマイトーゲンのPHA, ConA, PWMに対する幼若転換を3H-thymidine の取り込みで測定した。同様に, 末梢血リンパ球を抽出しPHA, Con A, PWMに対する幼若転換を測定した。
    その結果, 歯肉リンパ球の反応はマイトーゲン刺激および未刺激の場合でも, 末梢血リンパ球と比べて低かった。末梢血リンパ球の未刺激の場合, RPP群の反応はAP群の反応と比較して低下していたが, PHA刺激では両者の反応性は同じであった。
    一方, 歯肉リンパ球での未刺激の反応はAP群, RPP群間で差は認められず, PHA刺激の場合RPP群でのリンパ球の反応が亢進していることが認められた。
    以上のことより, 歯肉リンパ球の反応は, 末梢血リンパ球と対応せず, 歯周炎の病型により分裂能に変化がみられることが示唆された。
  • ブラッシング圧とプラーク除去効果との関係について
    渡辺 孝章
    1985 年 27 巻 4 号 p. 779-794
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    本研究では, ブラッシング圧とプラーク除去効果との関係を解明する目的で Transducer を利用した圧測定装置に種々の改良を加え, FM radio 発信装置を連動させた Telemetry system による新しいブラッシング圧測定装置を開発し一連の2つの実験を行なった。
    実験1では Transducer をブリッジの Pontic 部に取り付け, 軟, 中, 硬毛の3種類の歯ブラシと5通り (スクラッビング法, ローリング法, フォーンズ法, 横みがき法, 縦みがき法) のブラッシング方法を用い, 顎模型上での圧の測定には10人, 口腔内での測定には3人の被験者を用いた。
    その結果, 歯ブラシ別による圧の変化に関しては, 軟毛から硬毛になるに従い圧が高く, ブラッシング方法別では, スクラッビング法 (1243g/cm2), フォーンズ法 (846g/cm2) で高い圧の値を示した。
    実験2では Acrylic stent を利用した圧測定装置を用いブラッシング圧とプラーク除去効果について比較検討した。ブラッシング方法はスクラッビング法とローリング法で各々, 軟, 中, 硬毛の歯ブラシを用い, 被験者12人を用いて口腔内で実験を行なった。
    その結果, スクラッビング法 (74%) の硬毛で圧が高く, プラーク除去効果も高い値を示した。また, ロー法リング (70%) でも同様の結果が得られ, 歯ブラシの毛先が硬くなるに従い歯面が直接受ける圧が高くなり, プラーク除去率も高くなることが明らかになった。
  • 1. 世代別にみた免疫グロブリン保有細胞の比率
    原 宜興, 吉村 祥子, 前田 勝正, 赤峰 昭文, 相田 宜利, 青野 正男
    1985 年 27 巻 4 号 p. 795-806
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎の発症年代によって, 免疫反応が異なるのではないかと考え, ペロキシダーゼ抗-ペロキシダーゼ (PAP) 法を使用した免疫組織学的手段により, 歯周炎罹患歯肉における免疫グロブリン保有細胞の動態を検索した。なお対照には, 臨床的健康歯肉と歯肉炎罹患歯肉を用いた。その結果, 免疫グロブリン保有細胞の主体をなすのはIgG保有細胞で, 以下IgA, IgM, IgE保有細胞の順であった。36歳以上の症例 (中高年層) と対照群との比較では, IgG, IgE保有細胞が歯周炎に多く, IgM保有細胞は対照群に多かった。35歳以下の症例 (若年層) と対照群の比較では, IgG, IgA, IgE保有細胞が歯周炎に多かった。また若年層と中高年層の比較では, IgE保有細胞が若年層に多かった。
  • 井下 英二, 天野 敦雄, 玉川 裕夫, 埴岡 隆, 雫石 聰, 常光 旭
    1985 年 27 巻 4 号 p. 807-815
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    Bacteroides gingivalis の歯周組織への付着機構の一端を明らかにする目的で B. gingivalis 381株の培養上清に存在する菌体外赤血球凝集素を部分精製しその性状を調べた。精製は培養上清を粗標品とし, 超遠心処理, セファロースCL-4Bによるゲル濾過, アルギニン-アガロースによるアフィニティークロマトグラフィーにより行った。部分精製標品のもつ赤血球凝集活性は, 糖によっては阻止されず, アルギニンやその誘導体によって特異的に阻害された。また, ヒト耳下腺唾液由来のプロリン含量の多い糖タンパク質, トランスフェリンやα1-酸性糖タンパク質などによっても強く阻止されたが, ウシ顎下腺ムチンはその糖鎖を取り除くことにより, またウシ血清アルブミンはグアニジル化することによりその阻止効果はさらに増強された。このことから, B. gingivalis 381株の菌体外赤血球凝集素の活性の阻止には, 阻害物質の糖鎖部分ではなくペプチド鎖部分が関与し, 特にペプチド鎖中のアルギニン残基が係わっていることが示唆された。
  • 遠藤 英昭, 堀内 博
    1985 年 27 巻 4 号 p. 816-823
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    白血球が殺菌作用を行う時産生するスーパーオキサイドアニオン (O2-) は, スーパーオキサイドジスムターゼ (SOD) によって分解が促進され, それ自体では殺菌作用の小さいH2O2へと分解される。歯周病病原性 Bacteroides gingivalis がこのSODを持っているかどうかを知る目的で, その菌体を超音波破砕した後, 硫酸ストレプトマイシン処理, 硫安塩析等の抽出操作を行い, チトクロムC法とポリアクリルアミドゲル電気泳動上のNBT還元試験によってSOD活性を検出した。
    その結果, B. gingivalis は75%飽和硫安塩析までの抽出物で蛋白1mg当り27単位の酵素活性を示した。また, ポリアクリルアミドゲル電気泳動上では, 3つの活性部分に分かれ, 最も強い活性を示す部分は, Cu-Zn SODと Escherichia coli で強い活性を示す部分の間に位置していた。
  • 第2報 フッ化ナトリウムおよびクロールヘキシジンの嫌気性菌に対する発育抑制効果ならびに併用効果について
    川崎 傳男, 飯田 正人
    1985 年 27 巻 4 号 p. 824-830
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    う蝕原性細菌 St. mutans や歯周炎に関係深い嫌気性菌 Bacteroides, Fusobacterium, Actinomyces に対する NaF とクロールヘキシジン (CH) の発育抑制及び両者の併用効果が in vitro 実験で検討された. MIC (最小発育阻止濃度) の判定は日本化学療法学会に定められた方法に従っておこなわれた。又併用効果は checker boad 法に準じて測定された。
    St. mutans, Bacteroides, Fusobacterium に対する NaF のMICはほとんどの菌株で360ppm以下であった。一方 Actinomyces に対するMICは, 6株中4株は2880ppmFと高い値を示した。CHのMICに関して, St. mutans は1.56μg/mlであり Bacteroides, Fusobacterium, Actinomyces は大多数の菌株で25μg/ml以下であった。
    NaF とCHの St. mutans, Bacteroides, Fusobacterium, Actinomyces に対する併用効果を検討したところ, 相加効果が確認された。
  • 佐藤 巌雄, 藤橋 弘, 岩川 吉伸, 中村 安隆, 西本 正純, 丸本 淑子, 池田 克已
    1985 年 27 巻 4 号 p. 831-836
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    骨吸収に, 単球が関与している報告は少なくないが, その詳細な機序については, 明らかではない。さきに著者らは, 合成ハイドロキシアパタイト (HA) を用いた in vitro で骨吸収試験 (合成HAからのカルシウム解離活性) を行ない, 単球のもつ骨吸収能の一端を明らかにしている。ここでは, 歯垢 (Dental plaque: DP) あるいは Phytohemagglutinin (PHA) によって刺激した歯周疾患々者の末梢血白血球の培養上清が, 合成HAからのカルシウム解離活性を著明に亢進させたことから, 単球の骨吸収能にリンホカイン (特に, 破骨細胞活性化因子, Osteoclast activating Factor: OAF) の関与のあることを示唆した。
  • 第3報 Microdensitometer の走査 Aperture size およびX線入射角度の Wiener spectrum におよぼす影響について
    三辺 正人, 田村 利之, 児玉 利朗, 菅谷 彰, 古郷 辰二, 友松 栄子, 斉藤 康裕, 鹿島 勇一, 堀 俊雄
    1985 年 27 巻 4 号 p. 837-845
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    実験的に骨変化の状態を再現し, マイクロデンシトメーターの走査アパチャーサイズを種々に変化させた時の骨梁パターンの変化と, ウィーナースペクトルの変動および空間周波数との相関性について検討を行った。また, 平行法撮影用の口腔内X線規格撮影装置を用い, X線入射角度を変化させた時の骨梁パターンの変化についても検討を行った。結果として, 走査アパチャーの高さを小さくすると走査部位の再現性が低下し, 幅を小さくすると骨梁パターンの認識能が低下した。また, ウィーナースペクトル法による骨梁パターンの解析には, X線入射角度の変化を3°以内におさえる必要があることが解った。
  • 汚染セメント質に関する電子顕微鏡的観察
    西村 和晃, 高田 耕平, 野口 吉広, 永石 真幸, 林 正純, 白井 義英, 山田 実, 山口 十紀夫, 山岡 昭
    1985 年 27 巻 4 号 p. 846-855
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    滑沢化された根面への新付着は根尖側部のごく一部に限られることから, citric acid の塗布をはじめとした種々の根面処理が試みられている。さらに最近, エンドトキシンはさほど深部に浸透するのでなく, 主にセメント質表層に吸着, 局在するものであるという考えから, 汚染セメント質そのものの取り扱い方についても再検討の機運がみられる。今回そういった理由から, 歯周疾患歯セメント質を再調査する目的で, 歯周疾患歯5本さらにコントロールとしての健全歯 (便宜抜去歯) 2本, 計7本を被験歯とし, 割断セメント質面をセメント-エナメル境直下より, ポケットを経て上皮付着部までSEMで観察, その後同試料でTEM試料を作成, SEM観察部と対比しながら詳細に観察した。
    その結果, 口腔内露出部セメント質は過石灰化した表層部はもとより深部セメント質まで変化が起こっていた。それに比べポケット対応部のセメント質の変化は表層のごく一部に限られ, 深部セメント質はほとんど変化はみられなかった。このことはセメント質の存在が新付着に好影響を与えると考えられることから, 歯周疾患歯に対しても深部セメント質の保存を一考する価値があるように思われた。
  • 小西 圭一, 紺野 純一, 松井 とし子, 向中野 浩, 内山 純一, 石川 純
    1985 年 27 巻 4 号 p. 856-868
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    歯周疾患に対するブラッシングの主日的は, その最大の原因であるプラークを除去することである。しかし, 歯肉縁下プラークに対するブラッシングの効果について着目した研究はきわめて少ないのが現状である。そこでまずブラッシングによって実際にどの程度の縁下プラークが除去できるかを, 患者の抜去予定歯32歯の128歯面を対象に観察した。その結果術者自らバス法を用いてブラッシングした場合, 最高3.85mm, 平均2.22mmの縁下プラークが除去可能であり, またそれはポケットの深さやGIに影響されなかった。次に深さ平均5.4mmのポケットを有する抜去予定歯7歯に対して, バス法を用いたブラッシングを一定期間行なった場合, 歯周ポケット内細菌叢がどのように変化するか暗視野顕微鏡を用いて観察した。その結果, ブラッシング前後で歯周ポケット内細菌叢, 特に Coccoid cells と Spirochetes の割合に有意な変化を認めた。
  • 崎戸町平島の歯周疾患に関する調査結果
    國松 和司, 中野 さゆり, 山田 晶, 岡本 行人, 永松 敬, 清水 満廣, 浦 浩二郎, 小鷲 悠典, 加藤 伊八
    1985 年 27 巻 4 号 p. 869-880
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    長崎県の小離島の一つである平島の全住民を対象として, 口腔疾患の検診およびアンケート調査を行った。そのうち特に歯周疾患に関する調査項目について報告する。また, 我々が先に調査報告したもう一つの小離島である江ノ島の調査結果との比較も試みる。
    (1) 喪失歯数は, 男性では40歳以降, 女性では20歳以降で増齢と共に増加し, 全国平均を大きく上回っていた。(2) PIは, 1~2に分布しており一定の傾向はみられなかった。(3) GIは増齢と共に増加した。(4) probing depth は, 低年齢層に比べ高年齢層に高く, 頬側近心部の方が中央部より高い傾向を示した。(5) SBIも probing depth と同様に, 頬側近心部の方が中央部より高い傾向を示した。(6) アンケート調査より, 口腔清掃に対する意識の程度は, 江ノ島住民より平島住民に低い傾向がみられた。
  • 鈴木 祐平, 熊谷 俊也, 茂木 久和, 米田 栄吉, 堀内 博
    1985 年 27 巻 4 号 p. 881-889
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の新たな検診指数であるWHOのCPITNを用い, 女子中高生1,195人について疫学調査を行なった。CPITN用ポケット探針を用い, 口腔内6分画の各部位を Index Teeth についてCDDE0~4 (健康, 歯肉出血のみ, 歯石, 浅いポケット, 深いポケット) の評価値で測定した。被検者1人平均の測定時間は1分30秒以内であった。
    高校生は中学生に比べ, 歯石の付着量が多く有病者率に有意差を認めた。被検者のうち85%程度の者は何らかの病変を持ち, 歯周処置 (TN I~TN III) の必要性が認められた。部位による比較では, 下顎は上顎より多くの病変がみられたが, 左右差は認められなかった。歯周ポケットの形成は上顎臼歯部に最も多く, 歯石の付着は下顎前歯部で最も多かった。う蝕状態 (A~D) が進行するにつれて, CPITN値は高い値を示す傾向にあった。CPITNは簡便で実用的な検診指数であり, 疾患の進行度や治療の必要性に対して, 中高生でも理解し易い点でも有用であった。
  • 第2報 プラーク付着状態について
    玉井 憲二, 上野 益卓, 岡部 秋彦, 佐藤 昌司, 三上 格, 河野 昭彦, 深井 浩一, 高橋 克弥, 大滝 晃一, 長谷川 明
    1985 年 27 巻 4 号 p. 890-901
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    歯周疾患患者の来院時の状態を把握するために, 当科に来院した患者200名 (男性100名, 女性100名) の初診時のプラーク付着状態を検討し, 疾患の進行度との関係, また歯周疾患患者質問調査表によって把握された資料との関連性について検索した。それにより以下の結果を得た。(1) 初診時 O'Leary らによる plaque control record (P. C. R.) の平均は62.9%で, 患者の7割以上のP. C. R. が50%を越えていた。(2) 男女的有意差は認められなかった。(3) 年齢的には増齢に伴いP. C. R.が高くなる傾向を示した。(4) 疾患の進行度との関連性は認めなかった。(5) 咀嚼障害, 食片圧入を自覚する患者のP. C. R. が高い傾向を認めた。(6) 過去の治療経験との関連性は認められず, かえってP. C. R. の平均が高かった。(7) ブラッシングの回数が多くなる程, P. C. R. は低くなった。(8) 歯ブラシの交換頻度などの口腔衛生観念が高い患者ほど, P. C. R. が低くなる傾向を認めた。
  • 光学的サブトラクション法を用いた研究
    米良 豊常, 岡野 友宏, 石川 烈
    1985 年 27 巻 4 号 p. 902-911
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    初期治療による歯肉の炎症の軽減が, どのように歯槽骨の改善に影響を及ぼすかについて, 骨の変化を明瞭に描出できるサブトラクション法を用いて検索した。38部位の被験部位について, 初診時, 口腔清掃指導 (TBI) 終了時, スケーリング終了後1ヵ月, 3ヵ月, 6ヵ月に規格X線撮影, 及びペリオトロンによるGCF量測定を含む診査を行なった。被験部位の炎症の程度として, 初診時のGCF量により, 軽度群, 中等度群, 重度群の3群に分類した。このいずれの群ともにGCF量はスケーリング終了後6ヵ月にはひと桁となり, 炎症の消退が示された。一方, 歯槽骨の改善は重度群ほど高い頻度で出現し, その改善も明瞭であった。歯肉の炎症は歯槽骨に対して, 直接的な影響を及ぼしていることが示唆された。
  • 唾液用試験紙 (サリバスター Bld) による検討
    山岡 昭, 今井 久夫, 上田 雅俊, 池田 克巳, 楠 公仁, 渡辺 幸男, 中尾 俊一, 上田 五男
    1985 年 27 巻 4 号 p. 912-922
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    唾液検査法として, 簡便で信頼度も高いといわれている試験紙, サリバスター Bld (唾液潜血試験紙) を用い, 歯周疾患患者57名 (歯肉炎患者20名, 歯周炎患者37名) を対象に臨床症状の変化と試験紙の値との関連性について検討を行なった結果, 歯周治療に伴なう臨床症状の改善により, サリバスター Bld 値も低下の傾向がみられた。すなわちプラークコントロール, スケーリング・ルートプレーニング後では, 歯肉炎患者のサリバスター Bld 値とPCR値, PD値, GCF量の間に, 歯周炎患者ではサリバスター Bld 値とPD値, GBI値との間に相関性が, また, 治療途中においては, 歯肉炎患者のサリバスター Bld 値とGCF量, 歯周炎患者ではサリバスター Bld 値とGI値, GBI値およびGCF量との間にそれぞれ相関性が認められた。
  • 徳本 圭伊子, 土田 和範, 河村 誠, 中村 正一, 長谷川 健二, 岩本 義史
    1985 年 27 巻 4 号 p. 923-930
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    25~57歳の歯周炎を有するボランティア8名を対象に, 水性基剤にテトラサイクリンを配合した軟膏 (TG軟膏) および基剤のみのプラセボを, 2週間に8回, ルートキャナルシリンジを用いてポケット内に直接投与し, その効果を, 2日, 1週間, 2週間, 4週間後に細菌学的に検索した。また臨床的にも検討を加えた。
    その結果, TG軟膏を局所投与した部位は, 2日日から全菌数が有意に減少した。さらに spirochetes の割合の有意な減少と, coccoid cells の割合の有意な増加が見られ, 菌叢が有意に変化していた。これに対しプラセボ投与部位では, 全菌数は1週間目と2週間日で有意な減少が見られたものの, 4週間日では初診時と差のないレベルに戻っていた。spirochetes, coccoid cells の割合は実験期間中有意差がなく, 菌叢は変化しなかった。
    臨床的には, TG軟膏投与群は, 4週間日までに歯周に関する各指標の改善が見られた。
  • 撮影装置の作製と臨床応用
    小林 則之, 佐藤 寿祐, 杉田 裕一, 小高 博, 吉永 英司, 保母 良基, 鴨井 久一
    1985 年 27 巻 4 号 p. 931-938
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    歯周組織の経日的変化をとらえる方法として, 口腔内規格写真撮影装置を試作し, 精度の検定と, 臨床への応用を試みた。はじめに規格写真の精度の検定を行うため, 5名の口腔内を4回繰返して撮影を行い, 計20枚のプリントの面積を測定し, 変動率を求めた。その結果, 平均1.52%であった。
    次に本装置を用いての臨床への応用として, 人に実験的に歯肉炎を起し, その間 (3週間) における歯肉の二次元的形態変化の観察を行った。同時に他の臨床的診査項日である, PlI, GI, GCF, スティップリングの観察を行った。その結果, PlI, GI, GCFは経日的上昇が起り, 14日日で, 被験者全員に炎症が認められた。スティップリングの消失は認められなかった。下顎左右中切歯間歯間乳頭部における面積の経日的変化は Test side と Control side の間に有意の差は認められなかった。
  • 横田 誠, 浜田 敦子, 田中 みどり, 末田 武
    1985 年 27 巻 4 号 p. 939-948
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/07/16
    ジャーナル フリー
    本症例は18歳女性で, 全歯列が重症の病周炎に罹患していたわが国では極めてまれなる症例であった。20歳の姉と17歳の弟は, どちらとも限局型の若年性歯周炎に罹患していた。患者には通常のプラークコントロールとクロールヘキシジンによる含漱を1日2回行わせた。初診から4週間はミノマイシン1日200mgを全身投与した。その後ミノマイシンの使用を中止して, プラークコントロールだけを継続し, 歯石除去及びルートプレーニングを開始した。初診から1ヵ月間のプラークコントロールと抗生物質の効果は, 付着レベルが予想以上改善された。その後の非外科的処置によって, 更に歯周組織の改善が引きおこされた。これは重症の若年者に対する抗生物質だけの効果と, その後における非外科的処置の有効性を示唆した。
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