日本歯周病学会会誌
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30 巻, 1 号
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  • - 病理組織学およびオートラジオグラフィーによる検討-
    林 英昭, 鴨井 久一
    1988 年 30 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究はhydroxyapatite (HAP) 顆粒およびtricalcium phosphate (TCP) 顆粒移植後の歯周組織再生過程および骨芽細胞の代謝活性の検索を目的とした。ラットの両側上顎臼歯部に人工的骨欠損を作成し, HAPおよびTCPを移植し, 反対側を対照側とした。1週, 3週, 5週, 7週, 14週後に屠殺し, 病理組織, 3H-prolineによるオートラジグラフィーにより観察し, 以下の結果を得た。
    1. 病理組織による検索
    HAP移植群では, 移植後3週においてHAPは結合織中に存在し, HAPの一部は再生骨基質と直接結合していた。移植後5週においてHAPは再生骨基質に包埋される形で観察され, 結合織中に存在するHAP辺縁には異物巨細胞反応が認められた。移植後7週, 14週ではHAPは線維性組織を介することなく直接再生骨基質と結合していた。TCP移植群では, 移植後3週においてTCPの一部は再生骨基質と直接結合していた。膠原線維束の垂直的結合が認められたTCPも観察された。また顆粒辺縁には多数の異物巨細胞が認められた。さらに, 移植後5週において再生骨基質はTCPを包埋する形で歯冠側方向に成長していた。歯肉結合織の膠原線維束の強固な再生が認められた。
    2. オートラジオグラフィーによる検索
    HAP移植群, TCP移植群, 対照群いずれも, 移植後経週的に槽間中隔の根尖部付近から全体に拡がる3H-prolineの取り込みが認められたが, HAPおよびTCP周囲の再生骨基質また歯肉結合織には3H-prolineの取り込みは認められなかった。
    その結果, HAP, TCPはいずれも明らかな骨組織の誘導をはかることは困難であるが, 歯周組織において, 再生骨組織内に封入されて骨再生の殻となりえることが認められ, 歯周外科治療における歯槽骨の生理的形態の修復には有用な骨移植材であることを示唆するものである。
  • - 歯根膜-咬筋反射について-
    大場 浩二
    1988 年 30 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    5人の被験者に歯根膜を含めた歯周組織への電気刺激を行い, 咬筋EMG中に誘発される反射性応答と知覚する感覚との関係について調べ, 以下の知見を得た。
    感覚発現閾値で約8msecの潜時を持つ興奮性反射応答 (ER) が平均77%出現したが, 抑制相 (SP) は平均24%であった。電気刺激部位を浸潤麻酔すると感覚及び各反射は消失した。咬合力0kg (安静時) ではERは出現せず, 咬合力の増加に伴いERは増大した。咬合相, 閉口相ではERが出現したが, 開口相では出現しなかった。以上の結果から歯周組織への電気刺激で咬筋EMG中に出現するERは歯根膜に存在する受容器からの入力で発現する「歯根膜― 咬筋反射」であることが考えられる。またこの反射の閾値は感覚の発現閾値と一致し開口反射よりも低く, 更にこの反射の発現には咬筋筋活動が必要であることから咀嚼時や咬合時に咬筋筋活動を調節する役割を有していると思われる。
  • 鮫島 義明
    1988 年 30 巻 1 号 p. 33-53
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    specific-pathogen-free (SPF) ラットを用いてグラム陰性桿菌の歯周病原性を検討できる動物モデルを確立する目的で, Wistar系SPFラットの上顎第二臼歯に縫合用絹糸を結紮した後, Eikenella corrodensq 1073-Rを口腔内に接種し, 惹起される歯周病変を細菌学的ならびに病理組織学的に検索した。また, 免疫抑制剤であるcyclophosphamide (Cy) を投与したラットでも同様の検索を行い, 免疫抑制がこの実験的歯周炎の発症と進展に及ぼす影響について検討した。
    その結果, 結紮処置後にE. corrodensを接種する動物モデルを用いることにより結紮処置による歯周病変が進行し, さらにCyを投与することによってE. corrodens接種による歯周病変の進行がより顕著となることが明らかになった
  • とくに分泌型IgA量について
    今井 直巳
    1988 年 30 巻 1 号 p. 54-81
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    臨床的に歯周疾患がどのような機序で発症, 進展していくかを解明するための一助として, 歯周疾患患者の非刺激全唾液中に存在する分泌型IgA量 (S-IgA量), 血清型IgA量, アルブミン量, および唾液の且owrateを考慮したS-IgA量, 血清型IgA量, アルブミン量, そして血清中に存在する各種免疫グロブリン量 (IgG, IgA, IgM), 補体量 (C3) について, 健常者群と患者群との各測定値の比較, および臨床所見との関係について各種の検討を加えた。なお, 唾液中の各成分の測定については, Electroimmuno-assayにより, 血液中の各成分については, Single radial immuno diffusion法によって測定した。
    唾液中の血清型IgA量, アルブミン量およびflowrateを考慮した血清型IgA量, アルブミン量は, 患者群において有意に多く, Plaque IndexおよびGingival Indexと有意な相関を認めたが, 唾液中のS-IgA量, flowrateを考慮したS-IgA量は, 両群間に有意な差が認められず, 患者群においては, 臨床所見との問に有意な相関が認められなかった。一方, 健常者群においては, Gingival IndexとS-IgA量との問に負の相関が認められた。また, 血清中の各種免疫グロブリン量 (IgG, IgA, IgM) および補体量 (C3) は, 両群問に有意な差が認められず, また, 健常者群において, GingivalIndexと補体量 (C3) との間に有意な相関が認められたものの, その他は両群ともに臨床所見との間に有意な相関が認められなかった
  • 4. 側方運動における咬合接触領域の変化についてStudy of Occlusal Contact Area by Occlusal Adjustment
    三宅 唯夫, 宮田 隆, 申 基テツ
    1988 年 30 巻 1 号 p. 82-98
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    側方運動時における咬頭干渉領域の形態的観察を目的に, 画像解析装置を中心としたシステムを用い, 咬合接触面積 (OCA), 上下顎咬合面間距離 (LG1°) および咬合接触部位とその形態を測定した。被験者は, 側方運動時に作業側で咬頭干渉の認められない者10名 (健常者群) と作業側で咬頭干渉の認められる者10名 (患者群) とし, この両者を比較検討し, 以下の結論を得た。
    1. 側方運動時の咬合接触状態は, 健常者群では犬歯誘導やグループ誘導が多く, 患者群では作業側の歯がすべて接触するタイプや不揃いに接触するタイプが多く認められた。
    2. 側方運動に伴うOCAおよびLG1° の変化量は, 健常者群と比較して患者群では大きくなる傾向が認められた。
    3. 側方運動に伴う左右側歯列のOCAおよびLG1° の左右差は, 健常者群と比較して患者群では大きくなる傾向が認められた。
  • -骨膜床と裸出骨床との比較検索-
    名和 右悟
    1988 年 30 巻 1 号 p. 99-109
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    遊離歯肉移植術の受給側における骨膜の有無が, その治癒起点においてどのような影響を及ぼすかを検索するために, 21頭の成犬を用い, その付着歯肉部に受給側として, 骨膜床と裸出骨床を隣接して設け, これに自家遊離歯肉の移植を行い, 術後の変化について, 病理組織学ならびに臨床的比較検討を行った。その結果, 臨床的には術後2週日まで移植片周辺部に発赤および腫脹がみられた。また, 骨膜床と裸出骨床との比較においては, 裸出骨床の方がやや収縮傾向が大きかった。一方, 病理組織学的には, 術後2週日までは骨膜床側に比べ裸出骨床に炎症傾向が強いほかはとくに大きな相違はなかったが, 術後3週目になると, 歯槽骨の吸収程度に明らかな相違がみられ, 骨膜床側に比べ裸出骨床側歯槽骨表面の吸収が顕著にみられた。しかし, 術後3ヵ月目においては組織像に相違はなく, どちらも治癒していた。
  • 第7報Fibronectinによるハイドロキシアパタイト結晶の成長阻害について
    竹内 宏, 田島 一範, 山中 武志, 土居 誠司, 金久 純也, 森 哲彦, 古橋 達, 土井 豊, 藤井 輝久
    1988 年 30 巻 1 号 p. 110-113
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    fibronectinがmetastable calcium phosphate中のhydroxyapatite結晶成長を極めて低濃度で阻害すること, およびこの際の阻害機構として, 反応溶液中のcalciumイオンの結合とhydroxyapatite種結晶への吸着の両面性のあることが判明した。また, 電顕的観察によってhydroxyapatite結晶への吸着は定常的なものではなく, 吸着と解離を反復しながらやがて固着して行くことがうかがえた。
  • 第8報Fibronectinによる歯垢由来細菌の凝集及びHydroxyapatiteへの吸着に及ぼす影響
    田島 一範, 山中 武志, 土居 誠司, 森 哲彦, 古橋 達, 金久 純也, 竹内 宏, 佐藤 勝
    1988 年 30 巻 1 号 p. 114-122
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ペリクルおよび歯垢形成におけるフィブロネクチン (FN) の役割を明らかにするために, FNの口腔内細菌の凝集とハイドロキシアパタイト (HAp) への吸着に及ぼす影響について検索した。すなわち, 好気的又は嫌気的に培養した歯垢細菌をヒト血漿FN溶液中に懸濁させ, 異なった菌濃度, FN濃度での凝集程度を, および同様の系にHAp粉末を混ぜ, HApへの菌の吸着程度を調べた。その結果, 菌濃度とは無関係にFNにより凝集が促進され, そのピークは, 好気性サンプルでは3×23μg/ml, 嫌気性サンプルでは3×22μg/mlのFN濃度にあり, それ以下でも, 以上でも凝集は弱くなる傾向を示した。一方, HApへの菌の吸着もFNにより促進され, 好気性サンプルを用いた場合, ピークは3×23μg/mlFN濃度にあり, 嫌気性サンプルでは3×22μg/mlFN濃度にあった。以上の結果から, FNはCa++反応性, 細菌凝集性唾液タンパクと同様に, ペリクルおよび歯垢形成に直接関与していることが強く示唆された。
  • - フィプロネクチンの応用-
    川西 文子, 谷川 昌生, 東 富恵, 岡本 莫
    1988 年 30 巻 1 号 p. 123-132
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病罹患歯露出根面に対する処理の一つとして, クエン酸により裸出した根表面膠原線維に対してフィプロネクチンを応用してその影響を検討した。ルートプレーニング後にクエン酸処理 (pH1.0, 3分間) し, プラズマフィプロネクチン (PFN 0.25, 0.5, 1.0, 2.0mg/ml) に10分間浸漬した歯根表面の形態学的観察と各々の処理歯根への培養線維芽細胞の付着数を測定した。その結果, クエン酸+PFN処理の表面像はクエン酸処理のものと同様に多数の膠原線維が裸出していたが, その線維の直径が太い傾向が認められた。また付着細胞数においては0.25mg/ ml PFN処理歯根面ではクエン酸処理のみとの間に有意差は認められなかったが, 0.5mg/ml以上のPFN濃度のものでは有意な増加を認めた。以上のことより, ルートプレーニング後にクエン酸処理を行い, さらに0.5mg/ml以上の濃度のPFN処理を加えると, 線維芽細胞の付着促進に有効であることが示唆された。
  • 第2報歯周炎患者の免疫機構, 重度進行性歯周炎における末梢血リンパ球の解析
    竹内 宏, 山中 武志, 土居 誠司, 田島 一範, 金久 純也, 澁谷 俊昭, 岩山 幸雄, 上田 雅俊
    1988 年 30 巻 1 号 p. 133-141
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    16歳から27歳までの重度歯周炎患者14例と健常人の末梢血リンパ球subsetをフローサイトメトリーとモノクローナル抗体を用いて検索した。この結果, 患者リンパ球において, OKT-3, 0KT-4陽性細胞が健常人と比較して1%の危険率で低下しており, 逆にLeu-16陽性細胞では1%の危険率で増加を認めた。しかしながら, OKT-4/OKT-8比は患者, 健常人間で有意差を認めなかった。同時に行った血清免疫グロブリンの定量結果では, IgG, IgM, IgAともにnormal rangeではあるが増加を示し, IgGでは健常人との間で1%の有意差を認めた。以上のことから, 若年者に発現する重度歯周炎において, T cell陽性率の総体的な低下とB cell陽性率の上昇, ならびにこれに呼応して免疫グロブリン量の増加することが明らかとなり, これらが, 発症と速やかな病機の進行に密接に関係することが示唆された。
  • 篠原 啓之, 西川 聖二, 吉村 明彦, 笠原 信治, 木戸 淳一, 筒井 英士, 浜崎 章弘, 幸田 直彦, 永田 俊彦, 石田 浩, 若 ...
    1988 年 30 巻 1 号 p. 142-147
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患に罹患した患者から, 臨床的に炎症歯肉, 健常歯肉と診断された歯肉組織片を採取し, 含まれる各ポリアミン量をシリカゲル薄層クロマトグラフィーを用いて分離し, 定量した。
    炎症歯肉組織のスペルミジン, スペルミン量は健常歯肉のそれと比較して有意な差は認められなかったが, プトレッシン量は炎症歯肉で約2倍に上昇していた。
  • 神津 優, 増永 浩, 松江 美代子, 松江 一郎
    1988 年 30 巻 1 号 p. 148-156
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, 歯周疾患の進行を動的に捉えるファクターを検索する目的で, 3ヵ月の実験期間中に惹起された, 高度に進行した歯周炎に至るさまざまな病態像を呈するサルを用いて, Disease activityを表すパラメーターとしては何が有効であるかを解明した。
    その結果, 正常状態と軽度な歯周疾患との病態像の差異を比較すると, アルカリフォスファターゼ比活性値の差が大きく変化しており, 同様にβ-グルクロニダーゼ比活性値は, 骨吸収を伴う高度な歯周疾患において高値を示し, これらの酵素は, 初期, 或いは進行した病変のDisease activityを反映している事が示唆された。酸性フォスファターゼ比活性値については, 歯周疾患の活性度のパラメーターとして特徴的な変化を示さなかった。
  • 佐藤 巌雄, 辰巳 順一, 岩川 吉伸, 藤橋 弘, 池田 克已
    1988 年 30 巻 1 号 p. 157-163
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    近年, 骨由来のマクロファージ (Mφ) 走化活性促進作用因子が骨吸収機序解明のうえで注目されてきている。
    著者らは, とくに慢性辺縁性歯周炎で認められる骨吸収を指標にその骨由来因子を検索する目的で本実験を行った。すなわち, ラット下顎骨骨片を培養した培養上清 (Bone-sup) を用い, それがラット腹腔Mφ 機能に及ぼす影響について, 特に走化活性の変化について検討をした。ラット腹腔Mφ は1%オイスターグリコーゲンにより誘導し, 一方Bone-supは, stimulant添加および無添加のものを作製し, 実験に供した。
    その結果, Bone-supはラット腹腔Mφ に対し, active controlとして用いたFMLPと同程度あるいはそれ以上のchemoattractant作用さらに走化機能亢進作用を有することが認められ, 骨構成細胞を含む骨成分からの因子が, 細胞機能に影響を与えることが示唆された。
  • -In vitroでの検討-
    辰巳 順一, 栗原 徳善, 高橋 常男, 下山 雅通, 唐見 和男, 池田 克巳
    1988 年 30 巻 1 号 p. 164-171
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    牛焼成骨を歯槽骨欠損部へ臨床応用するにあたり, まずこの骨補填材の骨への親和性を明確にするため骨芽細胞様細胞を分離し, in vitroで検討を行った。この骨芽細胞様細胞は, 胎仔マウス頭蓋冠よりコロニー分離法により分離したもので, この細胞を35mmディッシュに, 2×104個ずつ播き, この上に牛焼成骨, Hydroxyapatite, およびβ-Tricalcium phosphateの3種の骨補填材を静置し, その親和性と石灰化に関する影響を観察した。21日間培養後の結果では, 3種の骨補填材とも細胞に対する親和性は良好であった。しかし, 石灰化は, 牛焼成骨, β-Tricalcium phosphateで著明に認められたが, Hydroxyapatiteの周囲ではあまり観察できなかった。
  • 塚本 晃也, 川浪 雅光, 内山 純一, 木葉 篤, 三木 恒夫, 岩並 知敏, 加藤 熈
    1988 年 30 巻 1 号 p. 172-181
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本実験の目的は, 歯周ポケット内への歯肉縁下プラークの形成のプロセスや細菌叢を検索することである。被験歯はポケットの平均が6.0mmの抜去予定の歯周炎罹患歯11歯とし, 実験開始時にフラップ手術を行ない, 根面を徹底的に清掃しプラークフリーの状態とした。被験者にはブラッシングを行なわせ, 手術後6週に抜去し, SEMを用いて観察した。
    その結果, 縁下プラークは縁上プラークから連続して形成され, 歯肉縁下に孤立して形成されているものはなかった。縁下プラークの根尖方向への形成程度は, 平均で隣接面の頬側0.35mm, 中央部0.67mm, 舌側0.65mmであり, 隣接面中央部と舌側は比較的大きな値を示した。縁下プラークの細菌叢は, 球菌や桿菌が主体をなし, スピロヘータはほとんど認められなかった。
    今回の観察結果より, 縁下プラークの形成の抑制には, 縁上プラークのコントロールが重要であると考えられた。
  • 前原 玲子, 日野出 大輔, 寺井 浩, 佐藤 誠, 中村 亮, 松田 尚樹, 田中 敏之, 杉原 邦夫
    1988 年 30 巻 1 号 p. 182-190
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    テトラサイクリン系抗生物質が, Bacteroides gingivalis, ヒト好中球およびヒト歯肉線維芽細胞由来コラゲナーゼ活性におよぼす影響について比較検討を行った。
    B. gingivalis培養上清, 好中球のホモジネートおよび歯肉線維芽細胞の培養液より抽出した粗酵素をコラゲナーゼとして用い, 14Cで標識した仔ウシ腱コラーゲンを基質として活性測定を行った。
    B. gingivalisのコラゲナーゼ活性は, 塩酸テトラサイクリン, 塩酸ミノサイクリンともに反応系50μg/mlの濃度で50%以上阻害された。
    一方, 好中球のコラゲナーゼ活性は, 塩酸ミノサイクリンによって塩酸テトラサイクリンよりも強く阻害されるが, 歯肉線維芽細胞由来の酵素は, 両抗生剤によってほとんど阻害を受けなかった。また, 塩酸ミノサイクリンによるB. gingivalisのコラゲナーゼ活性阻害は, 反応液中のカルシウム濃度によってほとんど影響を受けなかったが, 好中球の酵素はカルシウム濃度に対して依存性が強く, 生理的濃度付近 (2mM) で, 塩酸ミノサイクリン50μg/mlによって70%の阻害を認めた。
  • LS-007による治療方法の臨床的検討
    栗本 桂二, 磯島 修, 直良 有香, 穴田 高, 小林 芳友, 小林 充治, 新井 英雄, 高柴 正悟, 難波 秀樹, 横山 雅之, 光田 ...
    1988 年 30 巻 1 号 p. 191-205
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    塩酸ミノサイクリン (MINO, 日本レダリー, 東京) を用いて歯周炎の局所治療法を確立するための研究を行なってきた。
    本研究は, MINOを2% (力価) に含有する軟膏製剤 (LS-007) を臨床的に用い, その有効性, 安全性ならびに有用性をもとに用法を検討したものである。
    4mm以上のポケットを有する辺縁性歯周炎患者45名の119歯を被験歯とし, LS-007とそのプラセボ, および市販のミノマイシン錠 (日本レダリー) を用い, 微生物学的および臨床的に用法を検討した。
    その結果, LS-007の局所投与は歯周病治療において, 臨床的有効性, 安全性および有用性があると結論した。
  • 軟膏基剤との二重盲検比較試験
    村山 洋二, 野村 慶雄, 山岡 昭, 上田 雅俊, 堀 俊雄, 三辺 正人, 梅本 俊夫, 石川 烈, 浦口 良治, 上野 一恵, 渡辺 ...
    1988 年 30 巻 1 号 p. 206-222
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    塩酸ミノサイクリンを用いて歯周炎の局所治療法を確立するための研究を行ってきた。
    本研究は, これまでの研究結果を再確認し, さらに塩酸ミノサイクリン軟膏 (LS-007) の有用性を客観的に評価するため, LS-007軟膏基剤 (PL) を対照薬剤とする二重盲検比較試験を実施したものである。なお, 本研究では, LS-007投与による歯周ポケット内微生物種の変化もあわせて検討した。
    得られた成績は, 臨床症状の改善および微生物学的効果を示すものであったので, LS-007の局所投与は歯周炎治療において, 有用性の高い薬剤と結論した。
  • 上田 雅俊, 山岡 昭, 前田 勝正, 青野 正男, 鈴木 基之, 長谷川 紘司, 宮田 裕之, 鴨井 久一, 楠 公仁, 池田 克巳
    1988 年 30 巻 1 号 p. 223-235
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    塩酸ミノサイクリン (MINO) を2% (力価) 含有する歯周炎局所治療剤 (LS-007) を歯周ポケットに1週間隔で4回連続して投与する群と, 2週間隔で3回連続して投与する群の二群に分け, 46名の歯周炎患者に投与し, その臨床的有効性, 安全性, 有用性ならびに細菌学的効果を検討した。
    その結果, 両群ともに歯肉炎指数, ポケットの深さなどの臨床症状がLS-007投与後に有意な改善を示すのと同時に, 歯周ポケット内に生息するB. gingivalisをはじめとした歯周病原性細菌であるとされているものを効果的に消失せしめた。また, 安全性では軽度の不快感が1例に認められたのみであった。一方, それらの細菌に対するMINOおよび他の抗生物質のMICを測定した結果, MINOは他剤よりも強く幅広い抗菌性を有することを認めた。
    以上の結果より, LS-007は歯周炎治療において臨床的ならびに細菌学的に有効かつ安全で有用性の高い製剤であることが確認できた。
  • 2. テトラサイクリン固定化架橋コラーゲンフィルムの局所投与の効果
    三辺 正人, 竹内 佳世, 友松 栄子, 植松 厚夫, 大林 洋子, 三浦 志保, 堀 俊雄, 梅本 俊夫
    1988 年 30 巻 1 号 p. 236-247
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    テトラサイクリン固定化架橋コラーゲンフィルム (TCフィルム) およびテトラサイクリン未固定のプラセボフィルムを歯周疾患患者11名の4mm以上の歯周ポケットを有する33被検歯に1週間隔で4回局所投与し, その臨床的および細菌学的効果について検討した。その結果, TCフィルム投与群では, (1) 投与開始時に比較して, 4週目, 7週目において, 各臨床的指数値の有意な減少が認められた。特に, Gingival indexとBleedingの出現率については, プラセボ投与群と比較して, 4週目において, 有意な減少が認められた。 (2) 歯周ポケット内総菌数は, 経時的に減少傾向を示し, 黒色色素産生バクテロイデスおよびスピロヘータの総菌数に対する比率は, 投与開始時に比較して, 4週目, 7週目において有意な減少が認められ, プラセボ投与群と比較して, スピロヘータの比率は, 4週目, 7週目ともに有意に減少した
  • 村本 達也, 田口 智, 朝妻 八男, 本間 修平, 土田 和由, 原 耕二
    1988 年 30 巻 1 号 p. 248-254
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    軽度から中等度の歯周炎罹患者に対する初期治療がもたらす咬合音の変化について検討を行った。臨床パラメータには歯肉炎指数・歯周ポケットの深さ・歯の動揺度を, 咬合音の分析には咬合音持続時間と咬合音波形形態を採用した。初診時診査, プラークコントロールの後, 全顎にわたるスケーリング・ルートプレーニングを行い, 術後1週, 1ヵ月, 3ヵ月の時点で再び初診時と同様の診査を行った。その結果: 1) 咬合音持続時間は, 歯周組織の炎症の改善とあいまって減少し, 初診時と術後の各時期の間には統計学的有意差が認められた。2) 動揺歯を有する軽度から中等度の歯周炎罹患者で, 咬合性因子に特に問題がない場合, その咬合音持続時間は初診時で平均13.4 msecと健常者の6.9 msecより大きいが, 術後には8.3~8.9 msecに減少し健常者の値に近づくことが認められた。
  • 稲田 芳樹, 上田 雅俊, 山岡 昭, 稲田 條治
    1988 年 30 巻 1 号 p. 255-261
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    従来よりローリング法実験用として考案されているブラッシングマシン・すなわちブラッシング面を回転させるのではなく, 今回, ローリング法本来の動作, すなわち歯ブラシを回転させてローリング法をin vitroで再現できるブラッシングマシンを試作し, その動きがヒトにおけるブラッシング動作を再現しているか否かを検索した。すなわちヒトおよびブラッシングマシンにローリング法を行わせ, 歯ブラシの頸部に貼布した三軸ストレインゲージのひずみ波形を検索した結果, 試作したローリング法用ブラッシングマシンのひずみ波形は, ローリング法に熟達した被検者におけるローリング法の場合と同様に, 歯ブラシの頸部のa方向のひずみ波形とc方向のひずみ波形が逆方向であり, さらに主ひずみの方向もで正の勾配を示し, 正確なローリング法が再現されていることが確認できた。
  • 第1報舌側転位を有する歯列不正と各種ブラッシング法
    岸 正之, 山川 雅子, 渡辺 いく子, 吉井 佐織, 夏目 美穂, 水野 克己, 野口 俊英
    1988 年 30 巻 1 号 p. 262-271
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病患者の有する様々な歯周組織の形態, 歯列異常に適したブラッシング法を検討する第一歩として, 歯列不正を有する模型で各種のブラッシング法によるプラーク除去効果を調べた。正常歯列および舌側転位のみられる下顎小臼歯部の天然歯列より印象採得し, 作製した模型に人工プラークを塗布し, 各ブラッシング法を行なって, プラーク残存率を比較した。その結果, プラーク除去効果は, 正常歯列では, スクラビング法, フォーンズ法, チャーターズ法, スティルマン改良法の順であった。一方, 舌側転位のみられる不正歯列では, スクラビング法とフォーンズ法が, 他の2方法より有意にプラーク除去効果が高かった。そのうち, スクラビング法は, 不正歯列では, 正常歯列に比べて有意にプラーク除去率は低下したが, フォーンズ法は, 歯列状態による有意差はなく, 正常歯列と同様なプラーク除去効果を示した。
  • - 根分岐部病変罹患歯の分割後の歯体移動-
    松原 重俊, 藤川 光博, 福士 真美, 加藤 義弘, 藤井 健男, 中島 康晴, 坂東 省一, 加藤 熈
    1988 年 30 巻 1 号 p. 272-278
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 根分岐部病変に罹患した大臼歯を分割したのち, 近遠心移動したい場合に比較的容易に歯体移動できるMTMの方法を確立することである。人工歯-6を根分割後, 骨吸収の状態を想定し根尖から11, 8, 4mmのtypodont用wax中に埋入し, 3組の実験モデルを作製した。矯正装置は, Dentaurum社製piston screwにguidewireとtubeを組み合わせた装置とwireとtubeとcoil springを組み合わせた自家製装置を用い, CEJ部で2mm歯間離開するように矯正力を加えた。その結果, 1) piston screwは, 矯正力の調整は容易だが単独で用いると著しく傾斜移動し, 骨吸収が進むにつれ臨床上の歯頸部の離開度は小さくなった。2) piston screwにguide wireを1個組み合わせると歯体移動し, 歯頸部の清掃性は改善され, 臨床応用可能であった。3) coil springを用いた装置は, 矯正力の調整がやや困難であるが, 歯体移動し十分臨床応用が可能と思われた
  • 黒木 清志, 竹内 敏郎, 中間 洋一, 瀬戸口 尚志, 田方 義弘, 横田 誠, 末田 武
    1988 年 30 巻 1 号 p. 279-286
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, グレーシータイプのスケーラーの刃部と歯面との適合性の程度を調べ検討することである。市販の6社のグレーシータイプのスケーラーと歯周疾患により抜去された被検歯90本を用いた。スケーラーは, 上方からの刃部の長さと曲率半径, 側方からの刃部の角度と曲率半径を調べた。被検歯は, セメントエナメルジャンクション (CEJ), CEJより2mm根尖側 (CEJ') において上方からの各歯面の曲率半径, 側方からの各歯面の曲率半径とその円弧の角度を調べた。その結果, 上方及び側方からのCEJ, CEJ'におけるスケーラーの刃部と歯面との適合性は点接触であった° なお, 上方からのスケーラーの刃部の形態は, ほぼストレートに近いものであった。
  • - 凍結乾燥豚真皮, フィブリン糊, 吸引精密圧接器によるプレートの応用-
    長谷川 明, 大滝 晃一, 松村 政昭, 浅見 浩之, 斉藤 長俊
    1988 年 30 巻 1 号 p. 287-291
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    口腔領域における遊離歯肉移植手術は, 確立された手技として, いくつかの目的で行われている。その際口蓋歯肉採取後の創面に対しては注意のはらわれることが少ないが, 実際の手術に当っては, 当惑する問題の1つである。
    われわれは, 口蓋歯肉採取後の創面に対して, 凍結乾燥豚真皮 (アロアスクD ®) を生体接着剤であるフィブリン糊で接着し, この上に吸引精密圧接器 (スターバック ®) で作製したプレートを装着する処置法を行っている。
    この方法によって, 口蓋歯肉採取部の創面は容易に止血され術後の疹痛も少なく, 食物摂取時の刺激からも解放され, 創の治癒は一層, 促進される。
  • 移植材としての臨床応用
    石田 ひとみ, 勝谷 芳文, 村橋 慶宣, 山村 早百合, 堀田 善史, 堀口 優美, 田中 龍男, 村上 純一, 白木 雅文, 岩山 幸雄
    1988 年 30 巻 1 号 p. 292-299
    発行日: 1988/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    gnanule状, block状Hydroxyapatite (HAP) を歯周炎患者の骨欠損に応用し, その有用性を臨床的に検討した。予後観察対象は慢性辺縁性歯周炎を有する患者23名, 30部位であった。初期治療終了後, フラップ手術を行ない, granule状, block状HAPを充填した。予後観察は, 術前, 術後1週, 3, 12, 24, 36ヵ月とし, ポケット深さ, 臨床的付着位置の測定, 口腔内カラー写真, 非規格X線撮影を行なった。
    1. 術後12ヵ月以降はgranule状, block状HAPともに安定した成績が得られた。
    2. granule状, block状HAP間に予後観察の結果, 著明な差はみられなかった。
    以上の結果よりgranule状, block状HAPともに臨床上有用な材料であると思われる。
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