日本歯周病学会会誌
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31 巻, 4 号
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  • 野村 典生
    1989 年 31 巻 4 号 p. 979-996
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    生後20日目のゴールデンハムスターを高ショ糖含有飼料で飼育し, 塩酸テトラサイクリン (TC) 連日投与群 (TC群) と非投与群 (Diet-2000群) に分け, 飼育15, 29, 43, 57, 71日目に屠殺し, 下顎第1臼歯の歯槽骨吸収度, 歯肉縁上プラーク堆積度, 歯肉縁下細菌叢を検索した。TC群では, 右側第1臼歯舌側の歯肉縁上プラーク堆積度は低値を示した。左側第1臼歯の歯槽骨吸収度は緩慢であった。左側第1臼歯の歯肉縁下総菌数もほぼ一定数であったが, バクテロイデス, アクチノマイセス分離数は経時的に減少を示した。Bacteroides asaccharolyticus (Ba) を抗原としたIgG抗体価の上昇はTC群, Diet-2000群とも観察されず, Baとハムスターの歯周疾患との関連性は薄いことが示された。TC投与により歯肉縁下細菌数が抑制され, 縁上プラーク堆積及び, 骨吸収も抑制された。
  • 飯島 敏
    1989 年 31 巻 4 号 p. 997-1020
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    純金属9種 (純金, 純白金, 純銀, 純パラジューム, 純銅, 純ニッケル, 純亜鉛, 純インジューム及び純錫) を用い, これら純金属粉末を歯周組織内に埋入した際の歯齦組織に及ぼす影響を検索する目的で, ラット上顎左側臼歯部根面に小窩を形成, 純金属粉末を埋入し病理組織学的に検索した。その結果, 1) 純金, 純パラジューム及び純インジュームに関する実験では歯周組織に炎症性細胞浸潤は認められず, これら金属には付着する細胞もみられなかった。2) 純白金及び純錫では金属体へのマクロファージの付着が認められ, 若干の組織への影響がみられた。3) 純銀では金属体は多核巨細胞に取り込まれ, 金属の溶解現象を生じていた。4) 純亜鉛では金属体は結合基質に取り囲まれ, 周囲結合組織とは膜様構造で分離されていた。5) 純銅及び純ニッヶルでは周囲に著しい炎症性細胞浸潤がみられ, 特に好中球, リンパ球の金属体への付着が認められ, 組織為害性は大であった。
  • 渡辺 一夫
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1021-1046
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    市販の銀合金を用い, 銀合金削片が歯周組織内に迷入した際の歯周組織への為害作用及び, 銀合金中のCuの含有量の相違による影響を検索する目的で, ラットの上顎左側臼歯部歯根面に小窩を形成し, 銀合金削片を填塞して病理組織学的に検索した。その結果, 市販の銀合金の歯齦組織における為害作用は, 銀合金削片より溶出したAg元素により生じたものと考えられたが, いずれの銀合金においても歯齦組織に対する著しい組織為害性は認められなかった。また, Cuの含有量が25%以下の銀合金では, Cuによる歯齦組織への為害性は認められなかった。また歯齦組織内での銀合金の溶解現象は, その多くが多核巨細胞内において生じていた。
  • 病理組織学的ならびにオー・トラジオグラフィによ-る観察
    宮本 美彦, 林 英昭, 鴨 井 久一
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1047-1059
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究はBone ceramic・コラーゲンゲル合材 (BC) 移植後の歯周組織再生過程および骨芽細胞の代謝活性の検索を目的とした。ラットの両側上顎第1臼歯, 第2臼歯部に人工的骨欠損を作成した。左側を実験側とし, BC合材の填塞を行ない歯肉弁を復位させた。右側は反対側とし填塞を行なわず歯肉弁を複位させた。1週, 3週, 5週, 7週, 14週後に屠殺し, 病理組織3H-prolineによるオートラジオグラフィーにより観察し, 以下の結果を得た。
    1. 病理組織による検索
    BC合材移植後1週において歯肉結合織の炎症性細胞浸潤は比較的軽度であった。移植後3週ではBC合材は結合織中に存在し, 一部は再生骨基質と直接的結合を呈していた。移植後5週においてHAPは再生骨基質に包埋される形で観察され, 結合織中に存在するHAP辺縁には異物巨細胞反応が認められた。移植後7週, 14週ではHAPは線維性組織を介することなく直接再生骨基質と結合していた。歯肉結合織の膠原線維束の再生が高度となり, その配列は一定化する傾向を示した。
    2. オートラジオグラフィーによる検索
    移植後経週的に槽間中隔の根尖部付近から全体に拡がる3H-prolineの取り込みが認められたが, BC合材周囲の再生骨基質または歯肉結合織には3H-prolineの取り込みは認められなかった。
    その結果, BC合材は明らかな骨組織の誘導をはかることは困難であるが, 歯周組織において, 再生骨組織内に封入されて骨再生の核となりえることが認められ, 歯周外科治療における歯槽骨の生理的形態の修復には有用な骨移植材であることを示唆するものである。
  • 脱灰掻爬セメント質に対する歯肉付着について
    山口 十紀夫
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1060-1071
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    近年, 露出セメント質深層へのエンドトキシン浸透の疑問視や深層セメント質は形態的にはほとんど変化していないことなどから, 歯周疾患歯セメント質の取り扱いに再検討の機運がみられる。そこで本研究では, 歯肉剥離掻爬手術後の新生歯肉に対して, より為害性りない適切な根面を提供するため, セメント質は表層だけの掻爬にとどめ, その後クエン酸を塗布した根面状況に対する歯肉付着様式を組織学的に検索した。
    実験動物には雑種成犬15頭を用い, 術後1, 2, 3週に光顕的, 電顕的に観察した。その結果, クエン酸塗布例では,付着上皮の下方増殖はほとんど認められなかった。脱灰セメント質には, 細胞が密に平行に配列していたが, 脱灰セメント質線維と細胞間には, 新生コラーゲン線維の形成がみられ, さらに, 新生コラーゲン線維と脱灰セメント質コラーゲン線維とのinterdigitationが認められた。これらの所見より, セメント質表層を掻爬後, クエン酸塗布を施した根面処理法によって, 線維性付着を早期に確立するためのより適切な根面状況が得られることが示された。
  • ヒト末梢血リンパ球の応答性
    岡田 年以, 原田 泰, 伊藤 博夫, 野崎 剛徳, 恵比須 繁之, 木村 重信, 岡田 宏
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1072-1080
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Actinomyces viscosus T 14 V株の超音波破砕上清 (Av. sup) は, マウス脾細胞に対してはT細胞非依存性に多クローン性B細胞活性化 (PBA) 作用を有することが明らかとなっている。本実験では, Av. supのPBA作用についてヒト末梢血リンパ球 (PBL) を対象に, 特にそのT細胞依存性に関して検討を行った。
    その結果AV. supは, 十分に精製したヒトPBL B細胞単独群に対しては細胞分裂や免疫グロブリン (Ig) 産生を誘導できなかった。しかし, これにヒトPBL T細胞を添加することで細胞分裂およびIg産生の誘導が観察されたことから, ヒトPBLに対してはAv. supの示すPBA作用がT細胞依存性に発現されることが明らかとなった。またさらに, この系に単球-マクロファージ系細胞を添加することによってAv. supの示すPBA作用が増強されることから, ヒト末梢血B細胞に対するAv. supのPBA作用には, 各種の免疫担当細胞間の相互作用が深く関連していることが示唆された。
  • 特にインターロイキン6について
    鎌形 有祐, 宮坂 信之, 井上 裕子, 橋本 純子, 飯田 正人
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1081-1087
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患における歯周組織の炎症にインターロイキン-6 (interleukin-6, IL-6) が関与している可能性について検討した。歯肉を採取して培養し, IL-6活性の測定に供した。IL-6活性はSKW6-CL4細胞株のIgM産生誘導能によつて測定した。初診時に採取した歯周炎歯肉および歯肉炎歯肉培養上清中のIL-6活性は, 健康歯肉に比較して有意に高い値を示した (P<0.001) 。初診時に比較して初期治療後に採取した歯周炎歯肉培養上清中のIL-6活性は有意に低下していた (P<0.001) 。歯周炎歯肉培養上清中のIL-6活性を歯肉を採取した部位の歯周ポケット長および歯槽骨吸収率によって比較したが, 有意な差は認められなかった (P>0 .05) 。実験的歯肉炎歯肉培養上清中のIL-6活性は健康歯肉に比較して有意に高かった (P<0 .01) 。以上の結果から歯周炎および歯肉炎歯肉におけるIL-6の強い産生が歯周組織の炎症に関与する可能性が示唆された。
  • 裸出象牙質面に対するハイドロキシアパタイト移植の影響について
    廣畠 英雄, 小川 哲次, 河口 浩之, 寿賀野 泰司, 河内 美穂, 佐藤 裕紀, 白川 正治, 岡本 莫
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1088-1100
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ハイドロキシアパタイト (HAP) 移植後の裸出象牙質面に対する上皮性ならびに結合組織性付着の再生過程を組織学的に検討した。
    ウィスター系雄性ラット20匹の上顎第1臼歯の近心および口蓋側部に約1×1mm歯槽骨を削除して裂開状骨欠損を形成し, 根面のセメント質を完全に削除して象牙質を裸出させた。同欠損部にHAP (粒子径100~300μm焼成温度900℃) を移植した。対照には同様の歯槽骨欠損を形成し, HAP移植を行わなかった。術後8週まで経時的に光顕ならびに電顕により観察し, 以下の知見を得た。
    1. HAP移植群では, 再生付着上皮は術後2週時に裸出象牙質面に形成され, 上皮の下方増殖が対照群に比べて少なかった。2. HAP移植群では, 新生セメント質の形成を伴う結合組織性再付着が2~4週でみられ, 対照群に比べ獲得量が多い傾向にあった。3.超微的に裸出象牙質面に付着するコラーゲン線維束は, HAP周囲の新生線維と連続性を有していた。
  • 第1報付着と侵入について
    五味 一博, 上條 照恵, 川崎 文嗣, 染谷 匡慶, 李 偉力, 新井 高, 中村 治郎
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1101-1109
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患により生じた骨欠損に対し, セメント質形成や歯根膜形成に働くと思われる歯根膜由来細胞を人工骨補填材に付着させたハイブリッド体の生体内での挙動を研究する第一歩として, 多孔性ハイドロキシァパタイト(P-HAP) と歯根膜細胞とのハイブリッド体作製, およびP-HAP上での歯根膜細胞の付着と侵入状態の観察を行なった。ヒト歯根膜細胞を培養しP-HAPに付着させ, 培養3, 14日目の細胞の付着状態をSEM観察した。また, リモデリング体を作製しP-HAP内への細胞の侵入について検討した。この結果, P-HAPへの細胞の付着は良好であり, 培養日数が増すに従い細胞がP-HAPを皮膜状に覆う様子が認められた。また, 細胞が気孔を通して顆粒内部に侵入していた。このように培養日数を増すことにより十分な細胞が顆粒に付着, 侵入することから, ハイブリッド体を生体内に用いた場合, 付着させた細胞がある一定期間移植部位に存在し, その細胞の機能, 特性を発起しうると思われる
  • サル根分岐部骨欠損填入後の病理組織学的観察
    向中野 浩, 本郷 興人, 浅野 元広, 川浪 雅光, 加藤 熈
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1110-1118
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    人工骨移植材として試作されたCaO-P2O5-MgO-SiO2-CaF系結晶化ガラスが歯周治療に応用可能であるかどうかを知る目的で, 2頭のサルの14歯に分岐部II級骨欠損を作製し, 8部位に結晶化ガラス顆粒を填入し, 6部位は何も填入せずコントロールとした。移植後2, 4, 8週での歯周組織の変化を, 臨床的および病理組織学的に観察し, 次の結果を得た。填入部位での異常な反応は臨床的にも, 病理組織学的にも認められなかった。臨床診査では,コントロール群, 填入群に著明な差は認められなかった。X線写真では, 8週後, 顆粒と周囲組織との境界が不明瞭となった。病理組織学的観察の結果, 術後2, 4週においいて, 填入群では, コントロール群に比べ, 骨再生が著明に生じた。しかし, 8週後では, 両群に著明な差は認められなかった。
  • 本郷 興人, 向中野 浩, 浅野 元広, 川浪 雅光, 加藤 熈
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1119-1129
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    生体新素材であるCaO-P2O5-MgO-SiO2-CaF系結晶化ガラス人工歯根の歯周組織への適合性を検討する目的で, サル2頭を用いて実験を行った。サル上下顎の計8部位に人工歯根インプラントを行い, 6部位は1週目に歯冠補綴して咬合させ, 2部位はコントロールとして歯冠補綴せずに, 4~12週の観察期間で臨床的, 病理組織学的に観察した。その結果,8歯根中7歯根は臨床的に良好に経過し, 強固に植立していた。しかし1例のみは5週後に自然脱落した。
    病理組織学的には, 人工歯根は完全に骨に取り囲まれ, そのほとんどは骨結合の形で骨と結合していた。インプラント頸部付近は結合組織が密に取り囲み, さらに天然歯に類似した上皮性付着が形成されていた。
    インプラント後早期(1週目)に歯冠補綴しsingle standingの状態で咬合に関与させたが, 術後の治癒は阻害されなかった。これらの結果から, 今回用いた結晶化ガラス人工歯根は歯周組織に対し良好な親和性を有し, 人工歯根として有用な材料であると考えられた。
  • 飯野 守康, 高松 隆常, 水上 裕太郎, 坂東 省一, 加藤 義弘, 仲川 弘誓, 小鷲 悠典, 加藤 熈
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1130-1137
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    習慣性tapping時の咬筋活動・咬合接触・顎運動を同時に記録する高松らの方法で, silent period (SP) ・初発咬合接触滑走時間について, 正常咬合者 (正常者) と早期接触を有する患者 (早期接触者) 各々3名について比較検討し咬合異常の診査の基礎資料を得た。
    結果1.左右咬筋のSPの発現率は正常者が95~100%, 早期接触者は34~53%であった。2.SPの潜時は正常者の左咬筋で8.9±1.3msec右咬筋で13.9±2.2msec, 早期接触者の左咬筋で12.4±2.6msec右咬筋で13.9±8.2 msecであった。3.SPの持続時間は正常者で左咬筋12.4±2.6msec右咬筋で11.1±3.7msec, 早期接触者の左咬筋9.1±1.7msec右咬筋11.1±5.6msecであった。4.初発咬合接触滑走時間は正常者で10.1±4.8msecですべて30 msecより短く98%が15msec未満であり, 早期接触者は34±18.2msecで15~80msecに60%を占めた。
    このデータは, 早期接触者の咀嚼系異常の診査, 診断に有用と考えられる。
  • Bruxism自覚者と無自覚者の睡眠中のBruxismの観察
    加藤 義弘, 仲川 弘誓, 稲場 昭人, 坂東 省一, 高松 隆常, 小鷲 悠典, 加藤 熈
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1138-1145
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Bruxismは歯周疾患の重要な修飾因子の1つとして考えられているが, 客観的に診断する方法は確立されておらず, 問診を中心とした診査に頼らなければならないのが現状である。本研究は, 被験者を問診によりBruxism自覚群と無自覚群に分け, 夜間睡眠中のBruxism筋活動をテレメーターによる筋電計を用い, 1夜と, 7夜における筋活動の出現頻度・持続時間について比較し, 問診によるBruxism診査法の実態について検討した。
    その結果, 1夜の観察では, 両群の被験者全員に夜間睡眠中Bruxism様筋活動が認められ, 筋活動頻度および持続時間とも両群間に統計学的有意差は認められなかった。さらに7夜にわたる観察でも, 毎夜睡眠中Bruxism様筋活動が認められ, その程度は個人差が大きいが, 肉体的, 精神的ストレスが強い日には, 持続時間がきわめて長い筋活動が出現することが観察された。
    本実験の結果は, 問診を中心としたBruxismの診査法は, Bruxismの有無を正確に把握することが困難なことを示しており, より客観的なBruxism診断法の確立が必要と思われる。
  • 第1報睡眠中の筋活動などを自宅記録するシステムの開発
    戸田 郁夫, 加藤 熈, 田西 和伸, 樋口 幸男, 平中 良治, 浅野 元広, 坂上 竜資, 川浪 雅光
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1146-1152
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,夜間睡眠中のbruxismの実態を解明するために,日常臨床に応用できる客観的なbruxismの診査・診断するシステムを開発することである。本システムは記録装置と再生分析装置とからなり,記録装置は,筋電計.加速度計・小型マイクを組み合わせ,左右の咬筋の筋活動・上下の歯の咬合接触・grinding音を同時に記録できるように設計した。被験者には25~50歳の男性6名を選び,本装置の操作方法を指導し,自宅に装置を持ち帰り,各々5日間繰り返し測定を行った。その結果,このシステムにより,自宅で夜間睡眠中の筋活動・咬合接触・grinding音を同時記録できることが分かり,歯周病患者のbruxismの実態の解明や客観的診断に役立つと思われた。
  • 第2報非選択培地下での歯肉縁下細菌叢について
    鶴田 圭伊子, 青山 旬, 宮城 昌治, 森下 真行, 岩本 義史
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1153-1160
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    思春期における歯肉炎の菌叢の特性を明らかにする日的で, 非選択培地を用い歯肉溝内細菌叢を検索した。8名の歯肉炎を有する中学生を対象に, ペーパーポイントを用いて歯肉縁下プラークを採取し, 血液寒天培地による嫌気培養後, 釣菌, 分離同定を行った。同時に選択培地培養ならびに位相差顕微鏡観察を行つた。その結果, 培養菌の74%が分離同定された。歯肉縁下菌叢はActinomycesを主体とするグラム陽性菌が56%を占め, ついでB. intermedius(9.7%)が優勢であった。選択培地に比し, 血液寒天培地においてはActinomyces , Capnocytophagaの培養比率が有意に高かった。また, 分離同定菌中69%が選択培地の対象菌であった。
    以上のことより, 思春期における歯肉炎の菌叢構成は成人の歯肉炎の菌叢に類似することが推察される。さらに, 6種類の選択培地の使用により, この時期の歯肉炎の菌叢の優勢菌を把握しうると考えられる。
  • 上田 雅俊, 寺西 義浩, 山岡 昭, 井上 純一, 由良 博, 福島 久典, 佐川 寛典, 森野 与史緒, 河野 慈圓, 楠 憲治, 小西 ...
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1161-1169
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    成人性歯周炎患者の初診時および初期治療後の臨床所見と位相差顕微鏡および培養による歯周ポケット内細菌との関連性を検討し, つぎのような結論を得た。すなわち, 臨床観察項目の内, PI値を除いたGCF量, GI値, PDおよびGBIは初診時に比較して, 初期治療後は低下傾向を示した。一方,位相差顕微鏡による歯周ポケット内総微生物数および総微生物に占める運動性微生物(M & S)の構成率は, 両者ともに, 初診時と比較して, 初期治療後に低下していた。また, PI値以外の臨床観察項目, すなわち, GCF量, GI値およびPDと総数生物数およびM & Sの構成率との問に相関性が認められた。他方, 歯周ポケット内細菌の培養による総微生物数および黒色色素産生性Bacteroides (BPB) 数は,それら数値のばらつきは大きかったが, 全体的には各培地ともに初診時と比較すると, 初期治療後では総微生物数およびBPB数ともに低下傾向を認めた。
  • 田中 憲二, 鈴木 邦治, 藤川 謙次, 伊藤 公一, 村井 正大, 野口 俊英, 山田 章三, 河原 傳, 吉井 佐織
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1170-1181
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ストリップス型歯周病薬 (LSD, テトラサイクリン10%含有)の臨床応用の検討のため, 以下の試験を試みた。4mm以上のポケットを有する46症例92部位を対象とし, LSD投与群とプラセボ投与群 (テトラサイクリン未含有ストリップス) による臨床症状 (プラーク・歯石・発赤・腫脹・ポケットの深さ・出血・排膿・動揺・挿入時の痛み・疼痛) の比較を挿入1, 2, 3週後に行なった。またLSD投与1, 2, 7日後の歯周ポケット内TC残量検査を行ない以下の結論を得た。
    1.プラセボ投与群に比較し, LSD投与群に臨床症状の改善が多く認められた。
    2.出血, 発赤, 排膿はLSD投与群において一部統計学的に有意に改善した。
    3. LSD投与後, 歯周ポケット内のTCの残存量が徐々に減少し, 7日後では認められなかった。
    4. LSDの歯周治療での効果が認められ臨床応用できる可能性が示唆された。
  • 横田 誠, 久保 浩二, 瀬戸口 尚志, 保坂 均, 町頭 三保, 末田 武
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1182-1196
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は初期治療中の各歯面におけるプラーク付着率と再評価時のポケット減少の反応性との関係について調査したものである。被験者は平均年齢39.2歳,成人性歯周炎に罹患していた39名である。全患者はPCRが10%に到達した後,初期治療中にPCR 10%以下を維持した極めて良好にモチベートされた患者よりなる。全測定歯面5638部位で初診時と再評価時のポケット測定(頬側遠心面a,頬側中央面b,頬側近心面c,舌口蓋側遠心面d,舌口蓋側中央面e,舌口蓋側近心面f)それにPCRの各歯面の付着率を調査した結果は次のようになった。
    1) 初期治療期間中のプラーク付着率は14.73±19.21%である。
    2) 初期治療期間中,低いプラーク付着率を示した歯は,54 45,21 12,である。
    3) 高いプラーク付着率を示した歯は,7 7, 76 67である。
    4) 高いプラーク付着率で良好なポケット減少を示した歯と歯面は,5 5(初診時,3mm群,a),4 4(初診時, 3mm群,5mm群,f)である.
    5) 高いプラーク付着率で不良なポケット減少反応を示したのは,7 7(初診時,3mm群,a, b, d) 7 7(初診時,3mm群,f)である。
    6) 正常なポケット減少反応は初期治療中プラーク付着率が25%以下であればおこる。
    7) PCRを良好に保つことだけでなく部位ごとのプラーク付着率を良好に保つことが重要である。
  • 歯ブラシ頸部の長さと毛の先端形態の異なるナイロン毛歯ブラシについて
    福島 將人, 栗原 健二, 黒米 譲二, 稲玉 圭輔, 谷下田 昭夫, 東海林 良彦, 鈴木 丈一郎, 渡辺 一郎, 塩野 宗則, 渡辺 孝 ...
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1197-1206
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    スクラッビング法に適した歯ブラシについて第5報として毛の先端形態と頸部の長さの違いがブラッシング圧とプラーク除去効果に与える影響について比較検討した。今回は毛の先端形態 ラウンドタイプ, テーパータイプ と頸部の長さ 30mm, 40mm の異なる4種類の歯ブラシを試作した。実1験は, 被験者12名にスクラッビング法によるブラッシングを行なわせ, 前後のプラークのスコアーを測定し, プラーク除去率を算出した。ブラッシング圧は, 渡辺のブラッシング圧測定装置を用いて測定した。その結果, ブラッシング圧は頸部が40mmの方 301 .6±84.1g/cm2 が30mm 294.4±74.8g/cm2 よりも, 先端形態がテーパー型の方 316 .7±90.4g/cm2 がラウンド型279.6±61.7g/cm2 よりも高くなった。しかしながら, ブラッシング圧及び測定全歯面, 遠心面におけるプラー ク除去率に関して, 4つの歯ブラシ間には推計学的に有意差は認められなかった。
  • 申 基テツ, 荒木 久生, 前田 聡, 宮田 隆, 池田 克已
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1207-1219
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の最終処置をコーヌステレスコープ義歯で補綴した場合, その支台歯や歯周組織にどのような経時的変化が起こるかを歯周診査のうえから検討することを目的に, 歯の欠損をもつ歯周疾患患者13名にコーヌステレスコープ義歯を装着し, 義歯装着時と装着30ヵ月後とで比較した。
    その結果, 支台歯の清掃状態や炎症状態, 歯周ポケット深度には, 大きな変化が認められた症例は少なく, また,支台歯の動揺度でも, 動揺の減少した支台歯が全体の85.2%と高率を示し, 動揺の増加したものは認められなかった。また, エックス線診査では, 歯根膜腔や歯槽骨吸収については改善の傾向を示すものが多く認められた。
    これらの結果はメインテナンスのうえからみても良好で, 特に, コーヌステレスコープ義歯の優れた清掃性や二次固定による残存歯周組織の保護効果などが示唆された。
  • 若年者における歯周疾患とその意識との関連性について
    中島 啓次, 栗原 千里, 川永 利隆, 栗橋 豊, 大沢 一茂, 小野寺 修, 下山 雅通, 渡辺 幸男, 池田 克已
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1220-1241
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    川越市下の若年者3, 886名を対象に, 口腔清掃の習慣や歯周疾患に関する自覚症状等についての問診表による意識調査と, プラークの付着, 歯石の沈着, 歯肉の炎症, う蝕, 歯列不正およびプロービングデプスについての口腔内診査を行い, 両者の関連性について検討した。
    1.意識調査の結果, 歯磨きの回数については, 83.1%の者が毎日複数回歯を磨く等, 口腔清掃の習慣は向上してきている。
    2.歯周疾患に関連する自覚症状については, 歯磨き時の出血と答えた者が18 .4%で最も高い割合を示した。
    3.歯周疾患の進行と年齢の関連性については, 13歳で最高値を示した。また, 歯周疾患が進行するにしたがい,男子の占める割合が高くなった (X2-test: α<0.01) 。
    4.口腔内診査の結果, 歯磨きの回数の減少と歯周疾患の進行の間には有意な関連性が認められた (X2-test: α< 0.001) 。
    5.歯磨き時の出血と歯肉の腫脹の自覚症状と歯周疾患の進行との間に強い関連性が認められた (X2-test: α< 0.001) 。
    6.プラークの付着, 歯石の沈着, う蝕および歯列不正の状態の悪化と歯周疾患の進行との間に関連性が認められた (X2-test: α<0.001) 。
  • 深井 浩一, 加藤 まり, 三上 格, 大滝 晃一, 長谷川 明, 関 直樹, 高木 みどり, 片桐 正隆
    1989 年 31 巻 4 号 p. 1242-1253
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    初診時3歳の男児で, 長期にわたり原因不明とされた周期的に強度の歯肉発赤と感冒様症状を繰り返す症例を経験した。症例は治療の経過より歯科において周期性好中球減少症の可能性があると診断された。
    患者は乳歯列時に強度の歯槽骨吸収を伴う辺縁性歯周疾患に罹患し, 過半数の乳歯の喪失を余儀なくされたが, ブラッシング指導を含む治療後の永久歯列移行時点では歯槽骨に吸収を認めずに経過している。
    本症例の好中球減少時の症状は付着歯肉全域にわたる歯肉発赤が特徴的であり, これに発熱など感冒様症状が伴う場合も多かった。
    末梢血中での好中球数は周期16~21日での増減を示した。また好中球減少時に代償的な単球, リンパ球の増加を認める場合もあり, また好中球数の改善した時期の歯肉発赤部においてもリンパ球と形質細胞を主体とする円形細胞浸潤を認めた。
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