日本歯周病学会会誌
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31 巻, 2 号
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  • 岩井 勝美
    1989 年 31 巻 2 号 p. 343-359
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    多くの歯周外科処置は, 骨膜の血管新生能, 線維形成能に基づいて行われ, 骨膜への対応が臨床的にもその処置の成否を左右すると考えられている。本研究の目的は, 歯周領域における骨膜の微細血管構築を再認識し, 創傷治癒にかかわる骨膜血管網の役割, ならびに修復過程における血管動態を血管鋳型標本を用いて詳細に観察することにある。本研究においては, 健康な歯周組織を有する雑種成犬30頭を用い, 上顎左側の付着歯肉, 歯槽粘膜領域を対照領域とし, 骨膜血管網の基本形態を観察した。さらに上顎右側付着歯肉の一定の位置を実験領域として, 6×6mmの歯肉を部分層で剥離除去し, その修復過程を術後5, 7, 14, 21, 28日の各期間に観察した。その結果, 歯肉と歯槽粘膜における組織構造の相違が骨膜の血管網形態においても認められ, 骨膜血管網からも歯肉・歯槽粘膜境が容易に判断できた。また, 歯肉が部分層で除去された際, 歯肉骨膜血管網は歯肉再生ならびに骨の吸収, 添加に伴う旺盛な血管新生の基盤として働くことが明らかになった。
  • 神山 章
    1989 年 31 巻 2 号 p. 360-379
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    歯周病における診断指標を探求する目的で, 歯周炎患者の初期治療前後における歯肉縁下プラーク甲の6橦類の歯周病原性細菌の検出とそれらに対する血清IgG抗体価の変動を調べた。臨床的に炎症程度が高いと判断された部位のプラーク中にはBactmides gingivalis (Bg) が高い比率で存在していた。初診時に約80%の歯周ポケットから検出されたBgやBacteroides internzedius (Bi) は, 初期治療によって検出率および検出部位率が有意に減少した。そして, 抗Bg抗体価および抗Bi抗体価は, 初期治療後には初診時と比較して有意に減少した。さらに初期治療に対する臨床指数の改善度によって推定した疾病活性度と細菌検出率との関係を検討した結果, 改善度の高い部位では低い部位よりも, 初期治療後のBgの検出率が有意に低かった。以上より, 歯周治療に際してプラーク中のBgの検出率と抗Bg抗体価が診断指標の一つとなる可能性が示唆された。
  • 小林 則之, 鴨井 久一
    1989 年 31 巻 2 号 p. 380-402
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    口腔常在微生物の歯肉の炎症における役割を検討する目的で, 歯肉縁上プラークより分離, 純培養したStreptococcus sanguisの3株と, 臨床的に健康歯肉を有する被験者 (5名) の末梢血多形核白血球におけるルミノール依存性化学発光および同被験者の末梢血白血球による貪食能を調べた。
    その結果, 血漿を除去した白血球で化学発光を起こしたり貪食される供試菌株や, 化学発光, 貪食が見られない供試菌株があった。非働化血清を添加した白血球では, 化学発光, 貪食が増加する供試菌株や, 化学発光, 貪食が見られない菌株があった。血清を添加した白血球では, 3株とも化学発光は増加したが, 末梢血で貪食を観察すると貪食されない供試菌株があった。
    以上のように, 臨床的に健康歯肉を有する者より分離された口腔常在微生物の一種であるStreptococcus sangnisでも宿主に抗体を産生させたり, 補体を活性化させたりしていることが示唆された。
  • 米村 隆司
    1989 年 31 巻 2 号 p. 403-423
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎における多形核白血球 (PMNL) の役割を明らかにする目的で, 歯周炎患者のPMNLを対象に, フローサイトメトリーを用いて貪食能および過酸化水素 (H2O2) 産生能について, また, モノクローナル抗体を応用したELISA法によってIL-1産生能について検討を行った。その結果, 若年層の患者において末梢血PMNLの貪食能の低下が約半数の症例で認められ, また, この低下は歯周治療により改善を認めなかったことから発症機序との関連性が示唆された。末梢血PMNLのH2O2産生能は歯周炎の重症度に相関して亢進しており, 歯周治療に伴い健常者群の値に近づくことから局所の病状との関連性が示唆された。歯周炎患者の歯肉溝滲出液中PMNLにおいて特にIL-1β の高い活性が認められ, また, ある種の歯周病関連細菌の全菌体刺激により末梢血PMNLのIL-1β 産生が誘導された。以上のことから, PMNLが種々の機構を介して歯周炎の発症や進行に深く関与している可能性が示唆された。
  • 粉末食飼育の影響
    岩川 吉伸, 佐藤 巌雄
    1989 年 31 巻 2 号 p. 424-433
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ヒトにおけるChediak-Higashi (C-H) 症候群は, 特に口腔領域においては, 著明な歯肉の発赤や腫脹, 歯槽骨の吸収による歯の動揺や移動などを主症状とする歯周炎の併発が報告されている。今回著者らは, 本症候群のモデル疾患動物であるbeigeマウスを用い, いわゆる「歯周症」の発症機序の一端を解明すべく, 辺縁歯肉に影響を及ぼしやすい飼料, 特にその材型の差による影響を介して実験を行った。
    結果, beigeマウスおよびheteroマウスを24週間にわたって固型食飼育した実験群では, 歯周組織に著明な組織学的変化は認められなかった。一方, 8週間の固型食飼育後4週間の粉末食飼育を行った実験群では, beigeマウスの歯根中央部付近に歯槽骨の窩状の吸収像が認められた。しかしheteroマウスでは変化はほとんど認められなかった。またbeigeマウスの好中球, マクロファージおよびリンパ球の細胞活性は, heteroマウスに比較しその貧食殺菌能, 走化能およびDNA合成能のいずれにも著明な低下が認められた。この結果から, beigeマウスは粉末食という非常にマイナーな条件変化に対し歯槽骨吸収が認められたことは, 生体防御に関与する白血球の検機能低下と歯周組織破壊, 特に歯槽骨吸収との関連性が示唆された。
  • 田中 裕子
    1989 年 31 巻 2 号 p. 434-461
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は歯根面の脱灰処理が線維芽細胞様細胞の歯根面への付着様式, 細胞の増殖および機能発現にいかなる影響をおよぼすかをin vitroで経時的に観察したものである。矯正的理由で抜去されたヒト抜去歯のセメント質片および象牙質片を (1) 非脱灰 (2) クエン酸脱灰および (3) EDTA脱灰の三群に分けた。さらに対照群として, 培養用plastic sheet群を加えた。各群試料上にヒト歯根膜由来線維芽細胞様細胞を培養し電子顕微鏡学的観察を行いその結果, 非脱灰群に比べて脱灰群では歯質のコラーゲン線維の露出がみられ, そのコラーゲン線維を基質として, 細胞の付着性が促進し, 層状化も強く, 多量のコラーゲン線維の形成が認められた。また, これらの傾向はセメント質よりも象牙質で強く認められ, さらにクエン酸脱灰を行った象牙質上に培養した細胞でEDTA脱灰と比べて強い機能発現がみられ, 歯周治療時に歯根面の結合組織性付着を促進するためには, 付着面がクエン酸脱灰象牙質であることが最も望ましいことが示唆された。
  • 歯肉剥離掻爬術後のfibronectinとlamininの局在
    仲谷 寛, 鴨井 久一
    1989 年 31 巻 2 号 p. 462-490
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉剥離掻爬術後の創傷治癒過程におけるfibronectinとlamininの動態を検索した。ラット上顎口蓋側の歯肉剥離掻爬を行い, 術後12時間, 1, 3, 5, 7, 14, 28, 56日後に屠殺し, 病理組織学的に, またfibronectinとlamininの局在を間接螢光抗体法にて観察した。その結果, (1) 肉芽組織に一致してfibronectin強陽性所見が認められた。 (2) 根面部分においては, 結合織線維が根面に対し平行に赤行する場合は根面にそってfibronectinの陽性所見が観察されたが, 再付着所見が認められるときには根面にfibronectinは観察されなかった。 (3) 再生する上皮細胞の先端付近の基底膜相当部には, lamininの局在は観察されなかった。以上のことから, fibronectinは結合組織の再生, さらに線維性付着の再生に際してprovisional matrixとしての役割を果たしていることが, またlamininは上皮結合組織間の維持, 安定に役割を果たしていることが示唆された。
  • Picrosirius-polarization methodによるI型コラーゲンとIII型コラーゲンの改造について
    鎌田 真理子, 鴨井 久一
    1989 年 31 巻 2 号 p. 491-520
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉の炎症性破壊におけるI型コラーゲンとIII型コラーゲンの動態を明らかにする目的で, 歯石形成食RC 16をプラーク付着因子とし, 高蔗糖含有飼料Diet 2000と糞食によりラット臼歯部に実験的辺縁性歯周炎を惹起させた。その歯間乳頭部の所見を64週まで経週的に, picrosirius-polarization methodならびに透過型電顕により病理組織学的に検索した。その結果, 64週後では上皮付着部は根尖側1/2にまで移動し, 形質細胞を主体とする高度の細胞浸潤が観察された。線維破壊部位では, I型コラーゲンの破壊減少に伴い, III型コラーゲンの相対的増加と微細線維の出現を認めた。また, 病巣から離れた部位では, 新生III型コラーゲンの絶対的増加と幼若な新生コラーゲン線維を思わせる微細線維の出現を認めた。以上により炎症の進行過程においては, 歯肉のコラーゲン線維では型別変化を伴い, 均衡をとりながらその破壊と新生が移行している事が示唆された。
  • 村上 純一
    1989 年 31 巻 2 号 p. 521-534
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯肉組織におけるヘパリチナーゼの影響を明らかにする目的で, イヌの歯肉溝にペーパーストリップスを挿入し, そこに実験群としてヘパリチナーゼを, また対照群として酵素を含まない溶液だけのもの, および失活酵素を用い, 毎日1回, 20分間浸み込ませ, 3, 10, 14日後の歯周組織の変化を病理組織学的に検討した。その結果, 酵素塗布3日群と対照群との間に著明な差は認められなかったが, 酵素塗布10日群および14日群において, 上皮間隙の拡大と好中球の浸潤ならびに, 上皮下結合組織における好中球を中心とした炎症性細胞の浸潤が認められた。さらにトレーサーとして3H-Dextranを使用しヘパリチナーゼの上皮透過性に対する影響を調べた結果, 酵素塗布群は対照群に比べ, 約2倍の3H-Dextranの取り込みを示した。またオートラジオグラフィーの所見においても対照群に比較して酵素塗布群で3H-Dextranを示す銀粒子を明らかに多く認めた。螢光抗体法によって組織内での細菌由来ヘパリチナーゼの局在について検討した結果, 螢光陽性部位は, 歯肉上皮において歯肉溝上皮側のみに存在し, 口腔上皮側では認められなかった。さらにその存在部は歯肉溝上皮上層部の細胞間隙の拡大した部位に多く認められた。
    以上の結果より, 細菌由来ヘパリチナーゼは, イヌ歯肉溝上皮に存在し, 上皮細胞間マトリックスであるヘパラン硫酸を分解することによって, 上皮本来の防衛能を低下させ, 細菌産生物質の上皮透過性を高め, 歯肉炎症発症に関係することが示唆された。
  • 呉 啓燮
    1989 年 31 巻 2 号 p. 535-550
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本実験は, サルを用いて, 外科的に付着歯肉を除去したモデルを作り, 絹糸を歯頸部に結紮することにより, プラークを堆積させ, 付着歯肉の有無が, 歯周組織への炎症の拡がりに, どのような相違があるかを調べた。その結果, 歯肉の炎症は, 実験群において対照群に比べて早期に認められ, その程度は, 経時的に強くなる傾向がみられ, 更に, 実験群においては, アタッチメントの喪失を伴う辺縁組織の退縮が, 12週でみられた。組織学的には, ノッチより上皮の最根尖側細胞迄の距離は, 術前のレベルから根尖側へと, 5週と12週で実験群においてより長くなっていた。更に, 歯槽骨の吸収の程度は, 5週と12週で実験群において著しく, 対照群と統計学的な有意差がみられた。
    以上の結果より, 歯周組織での炎症が下層組織へ波及する過程に対して, 付着歯肉を形成する組織構造が, 一定の防禦的役割を果たしていることが示唆された。
  • 永石 真幸
    1989 年 31 巻 2 号 p. 551-572
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    移植材を填入した際, その使用が対応根面上へのセメント質形成を促進し得るか否かを検索する目的でtricalcium phosphate (TCP), 凍結粉砕サル脱灰骨 (脱灰骨) およびhydroxyapatite (HA) をニホンザルの人工的骨欠損部へ填入し, 骨再生と共にセメント質形成過程を比較検討した。 その結果, 各週とも2週例では, 欠損部内は線維性結合組織によって満たされていたが, 吸収性のTCPあるいは脱灰骨を填入した群においては, 他の群に先駆けて根面上にcementoid均質層が認められた。 殊に, 脱灰骨填入例では石灰化傾向をも示していた。4週例において, かなりの部分が骨再生した対照群でも根面上にセメント質形成が見られたが, TCPあるいは脱灰骨填入例に比べて劣っていた。 一方, 非吸収性HA填入例においては, 骨再生がかなり遅れ, 根面上へのセメント質形成も他の群よりも劣っていた。 以上のことからセメント質形成には, 近接部での骨再生も密接に関与するものと思われるが, それ以上に移植材の吸収, それと表裏一体となって生じてくる新生骨の添加, すなわち吸収, 添加と言う現象が根面上へのセメント質形成をより促進させ得るものと考えられた。
  • 静電容量と臨床所見の関連について
    若尾 徳男, 吉永 英司, 沼部 幸博, 鴨井 久一
    1989 年 31 巻 2 号 p. 573-582
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉溝滲出液の静電容量を測定し, 歯周疾患の診査を行う目的で, 歯肉溝に挿入可能なセンサを有する測定器を製作した。
    歯周疾患に罹患した患者を被検者として, パーソナルコンピュータで測定器を制御し, 0.1秒に1回, データを採取した結果, 測定部位の歯肉炎指数が高いほど測定値が大きく, 測定値の増加傾向も長く続くことが示され, 安定性から判断し, 一定時間経過後の測定値で滲出液量を表現する場合には10秒間が望ましいことが示された。
    10秒間に滲出した歯肉溝滲出液の静電容量と臨床所見の相関を500部位について測定し検討した結果, 歯肉炎指数, 歯垢指数, 歯肉出血指数, 歯肉溝の深さの順で相関が強く, 本測定法は歯肉の初期の炎症を検知することに有効であることが示唆された。
  • 砥石とシャープニング方法が刃部形態および-被切削試料の表面粗さに及ぼす影響
    音琴 淳一
    1989 年 31 巻 2 号 p. 583-592
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    砥石およびシャープニング方法の差異がスケーラーの切縁と被切削試料の表面性状におよぼす影響について検討した。研削用試験機を用い, 砥石は1) インディァストーンファイン (ISF), 2) アーカンサスストーン (AS), 3) カーボランダムストーン (CS), 4) ISF使用後ASおよび5) CS使用後ASを用い, シャープニング方法は, 片側運動のPULL, PUSRストロークと往復運動 (RE) を組み合わせたシャープニングを行った。次にシャープニングしたスケーラーは被切削試料に対するインスツルメンテーションを行った。SEM写真にて切縁の粗さ, wire edgeの評価を行い, 被切削試料の評価を表面粗さの計測とSEM観察にて行い, 以下の結論を得た。 1. 切縁の粗さは, ISFおよびPUSH使用時に大きかった。2. wire edgeの数は, ISF, CSおよびPUSH使用時に多かった。3. 被切削試料面の表面粗さはISF, Cs使用時に大きく, AS使用時には小さく, また最初の10ストロークで半減した。
  • 野田 美由紀
    1989 年 31 巻 2 号 p. 593-607
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    本研究はX線写真上の残存歯槽骨レベルと, 実際歯根に付着している歯根膜面積の関係を明らかにし, X線写真像から根表面に付着した歯根膜線維付着部面積を推測する可能性を検討するために, 実験を行った。
    実験にはhuman skullより合計34歯を, そして重度歯周疾患に罹患していると診断された患者60人 (165歯) を対象とした。各々Xeroraradiograph撮影を行い, そしてXeroradiograph上での残存歯槽骨におおわれた歯根面積の割合を表すα値を求めた。
    抜去した歯より, 実際歯根表面に付着していた歯根膜線維の割合を表すβ値を求めた。α値とβ値を検討した結果, Xeroradiograph上の歯槽骨におおわれた歯根面積の割合 (α値) と, 実際歯根表面に付着した歯根膜線維付着部面積の割合 (β値) の間には, 高い相関関係が存在し, α値よりβ値を算出する信頼性の高い回帰方程式が求められた。
  • 浜口 茂雄
    1989 年 31 巻 2 号 p. 608-632
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    隣接面接触点直下のプロービングでは, プローブ傾斜のために誤差を生じる。本研究では, 適切な歯間部歯周ポケット測定方法を確立する目的で, その誤差を補正した歯間部用プローブを開発し, 以下の結論を得た。
    1. 隣接面接触点直下にプローブ先端が到達するために必要な傾斜角度は, 大臼歯部で最も大きく約30度であった。
    2. 歯間部用プローブと, 従来型プローブの2種類を同一部位に使用した結果, 平均で0.56mmの誤差が存在した。
    3. 歯間部における頬舌的歯槽骨吸収形態の予測は, 頬舌的に3点の歯周ポケットを測定することにより, ある程度可能であった。
    4. 歯間部での歯周組織破壊の最も著明な部位は, 隣接面接触点直下とは限定されず, 歯群別により重篤な組織破壊部位は異った。以上から, 歯間部における適切な歯周ポケット測定方法は, 歯間部用プローブと従来型プローブを併用した頬舌的に3点の測定であり, この考えを応用した1歯に対して8点を測定する8点法により, 正確で詳細な歯周組織破壊状況の診査が可能になるものと考えられた。
  • 小倉 信哉, 米良 豊常, 峯岸 大造, 林 成忠, 浦口 良治, 石川 烈
    1989 年 31 巻 2 号 p. 633-639
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯周治療後のセメント質の再生の過程を経時的に観察するために硬組織ラベリング法を応用し, その効果を検討することであった。
    3頭の日本猿の左右両側の下顎大臼歯および小臼歯の近心隣接面部に実験的歯周炎を惹起し, 4週後にスケーリングおよびルートプレーニングを行なった後, テトラサイクリン, カルセイン, アリザリンコンプレクソンの各ラベリング剤を投与した。非脱灰研磨標本作製後, 螢光顕微鏡, コンタクトマイクロラジオグラフィー (CMR) およびトルイジンブルー染色によって組織学的な観察を行なった。
    硬組織ラベリング剤を応用することにより, 螢光顕微鏡下でセメント質の再生過程を経時的に観察することができた。また, 再生されたセメント質の存在はCMRとトルイジンブルーによる観察によっても裏付けられた。
    さらに, 歯根面の処置後2週という短期間の観察でセメント質の再生が観察された。
  • 1. 位相差顕微鏡による培養細胞の形態学的観察および細胞増殖について
    吉本 由紀子, 原 宜興, 安部 達也, 赤峰 昭文, 前田 勝正, 青野 正男
    1989 年 31 巻 2 号 p. 640-650
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    生体新素材の一種であるCaO-P2O5-MgO-SiO2-CaF系結晶化ガラスの細胞親和性の有無を調べる目的で, 4種類の樹立細胞を用いてin uitroにおける検索を行った。方法は, 8日間の位相差顕微鏡による形態学的観察と増殖曲線の作製により, 倍加時間および飽和密度を対照と比較した。その結果, 培養開始24時間以内に結晶化ガラスに付着する細胞が見られ, また形態学的に細胞障害性を示す所見は見られず, 良好な親和性が観察された。次に倍加時間は全細胞が対照よりも短く, 飽和密度は少なくとも対照の80%には達し, 増殖能に関しても問題はないものと思われた。以上の結果からCaO-P2O5-MgO-SiO2-CaF系結晶化ガラスは, 骨移植材やインプラント材として欠かすことのできない性質である細胞親和性を有していると考えられた。
  • 2. 培養細胞と結晶化ガラス界面の透過型電子顕微鏡的観察
    原 宜興, 吉本 由紀子, 安部 達也, 前田 勝正, 赤峰 昭文, 青野 正男
    1989 年 31 巻 2 号 p. 651-657
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    生体活性新素材であるCaO-P2O5-MgO-SiO2-CaF系結晶化ガラスの細胞障害性の有無と, 各種細胞の付着を観察するために, ヒト線維肉腫由来のHT-1080, ヒト歯肉癌由来のCa9-22, ヒト骨肉腫由来のNYおよびマウス骨芽細胞由来のMC3T3-E1の4種類の細胞を, substrateとして実験群には結晶化ガラスを対照群にはポリスチレン・カバースリップを用いて培養し, その界面を超微形態的に観察した。その結果, 4種類の細胞共に細胞死や細胞障害を表す所見はみられなかった。また, Ca9/22の実験群および対照群, NYの実験群において, CaO-P2O5-MgO-SiO2-CaF系結晶化ガラスとの界面に連続する基底板様の構造物が観察された。さらにMC3T3-E1の対照群および実験群では, 一部に不連続ではあるが観察された。一方HT -1080には, 明瞭な構造物は認めなかった。これらの所見を参考にすると, 超微形態的にみてもCaO-P205-MgO-SiO2-CaF系結晶化ガラスの生体親和性は良好で, その様式は異なっても, 本素材結晶化ガラスと各種細胞の付着も期待しうるのではないかと考えられた。
  • 伊藤 公一, 荒井 法行, 音琴 淳一, 村井 正大
    1989 年 31 巻 2 号 p. 658-666
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    要抜去と診断されたヒト歯周疾患罹患歯18歯を実験に供した。14歯の両隣接面にスケーリング, ルートプレーニングを施し, いずれか一方をRP処理歯根面とし, 他方にクエン酸 (pH1.0, 3分間) 処理を行いCA処理歯根面とした。なお, 未処置歯4歯をコントロールとした。4週後に抜去した歯の歯根象牙質への細菌侵入に関して光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡による組織学的な観察を行い, 以下の結論を得た。
    1. 未処置歯面にはセメント質が認められ, 象牙細管に細菌侵入はなかった。
    2. RP処理歯根面で10面中5面 (50%), CA処理歯根面で10面中9面 (90%) に細菌侵入を認めた。
    3. RP処理歯根面はCA処理歯根面と比較すると細菌侵入距離 (9.5±24.1μm vs 84.6±136.3μm) および細菌侵入細管率 (0.8±2.1% vs 20.3±17.3%) は小さかった。
    4. 歯肉縁上に相当するRPおよびCA処理の歯根象牙細管中に連鎖状の球菌あるいは短桿菌様細菌を認めた。
    5. CA歯根面に細菌が侵入しやすくなることから, プラークコントロール不良の患者に対するクエン酸処理は為害性をおよぼすことが示唆された。
  • 白木 雅文, 田中 龍男, 堀 敏子, 水野 清, 村橋 慶宣, 岩山 幸雄, 譚 鉄錚
    1989 年 31 巻 2 号 p. 667-674
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    イヌの歯肉溝に外科用縫合糸を結紮して実験的歯周炎を惹起し, 結紮0日, 7日, 21日, 60日, 90日目の歯肉をそれぞれ採取し, グリコサミノグリカン (GAG) の直接的な前駆物質である3H-グルコサミンをトレーサーとしてin vitroで歯肉組織を培養し, オートラジオグラム標本を作製後, 3H-グルコサミンの取り込みを示す銀粒子の局在性を光顕的に検索した。その結果, 銀粒子は各時期とも, 口腔上皮, 歯肉溝上皮, 接合上皮すべてにおいて上皮に多数認められ, その局在性は主として細胞間隙に存在していたが結合組織では微量であった。以上のことから, 上皮は結合組織に比して3H-グルコサミンのGAGへの取り込みが高く上皮のGAGは結合組織のそれよりも代謝回転が著しく速いことが示唆された。
  • 第1報: CPITNを用いたスクリーニングと集団治療の効果
    田原 洋, 李 鍾賀, 山口 進也, 石川 一郎, 佐藤 博, 増永 浩, 吉本 哲, 松江 美代子, 松江 一郎
    1989 年 31 巻 2 号 p. 675-690
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    集団を対象とした歯科疾患, 特に歯周疾患の予防と治療を目的に, パン工場従業員473名を対象に集団検診, 集団治療を行った。CPITNによりスクリーニングされた有疾患者228名にプライマリーケア, アンケート調査, 診断指導書の配布などの集団治療を実施した結果, 137名が9ヵ月後の再評価検査まで治療を継続した。
    全対象者473名中, 100%の患者で何らかの歯周治療が必要と判定された。喪失歯数とウ蝕歯数は40歳代から急激な増加を示し, 歯周疾患は20歳代後半と50歳代前半に有病者の増加する傾向が見られた。治療対象者に行った問診, 精密検査では, CPITN個人コードとブラッシング習慣, 歯肉出血の自覚, PMAindex, 歯周ポケット値との間に正の相関が認められた。検診終了時には, ブラッシング習慣, PCR値の改善, 歯周疾患に対する認識の向上が認められ, その傾向はCPITN個人コードの高い群で著明だった。
  • 第1報歯周疾患診断プロセスへの形態学的計測値の応用
    松江 美代子, 佐藤 博俊, 田原 洋, 山口 進也, 李 鍾賀, 増永 浩, 松江 一郎
    1989 年 31 巻 2 号 p. 691-703
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の病因因子として, あるいは進行を増悪させる因子としての歯と歯槽骨の形態的特徴をとらえることを目的とし, 顎模型を用いて咬合平面を基準とした下顎切端咬頭頂連続曲線, およびその低下幅, 第一小臼歯から第二大臼歯部における頬舌的歯冠径, 歯槽幅を三次元座標測定機を用いて測定し, 健常者における平均値的数値を求め, その計測結果を指標にそれぞれの分類法を確立した。
    その結果, 通常の臨床診査にこの分類法を応用すれば, 患者のタイプを簡便に分類することができ, 治療方針の決定あるいは予後の推測に有用であることが示唆された。
  • 第2報初期の歯周疾患患者の病変の進行と形態学的特徴について
    佐藤 博俊, 田原 洋, 山口 進也, 李 鍾賀, 石川 一郎, 増永 浩, 西堀 雅一, 広田 泰有, 松江 美代子, 松江 一郎
    1989 年 31 巻 2 号 p. 704-716
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    The morphological characteristics of periodontal tissue in periodontal disease have been interpreted differently by a number of clinical observers. Many have reported that the malposition and functional malocclusion of teeth is injurious to the periodontium. We reported in Part I that a system for evaluating periodontal status was developed for the diagnosis and management of the interproximal area at the initial stage of bone resorption. The patient group consisted of 36 adults, from 21 to 55 years of age. The severity score represented the calculated loss of periodontal support tissues: loss of alveolar bone, evaluated roentgenologically, bone level and pattern in vertical and horizontal form, periodontal pocket and gingival inflammation. Because poor oral hygiene and other factors caused swelling by gingival inflammation, we obtained study specimens from patients with chronic periodontal disease after a few tooth brushing instructions, and scalings during initial therapy in order to detect initial and established pathological changes in periodontal tissue.
    The purpose of this study was to clarify the relationship between periodontal disease status and morphological diagnostic indicators and different degrees of harmony and disharmony in the lower jaw. In all age groups the average percentage of bone loss and intraosseous defects tended to be higher in the groups categorized as Type III and Type F, and in the area that showed a very deep concave Spee curve to the occlusal plane in Pattern D.
    We considered that these morphological characteristics might be of secondary importance for diagnosis. Oral local factors were the primary extrinsic factor in the pathogenesis of horizontal and vertical interproximal bone absorption in the area of the premolars and molars.
  • 松永 信, 瀬戸口 尚志, 中村 睦美, 横田 誠, 末田 武
    1989 年 31 巻 2 号 p. 717-723
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    O'Learyのプラークコントロールレコード (PCR) を用いその変化が初期治療に及ぼす影響を調べる目的で, 30名の被検者 (男18名, 女12名, 平均年齢46.7H歳) を用いて本研究を行なった。初期治療により歯周ポケットの深さの平均は初診時3.19mmから再評価時2.11mmに減少した。そのうち初診時3mm以上であったものは, 4.09 mmから2.43mmに減少した。PCRが10%以下になるまでに要した平均のプラークコントロールの指導の回数は3.8回であり, これが4回以下のグループは5回以上のグループと比較してポケットの減少量が有意に大きかった。またPCRが10%以下になった時点から再評価時までの平均のPCRが10%以下であったグループは, 20%以上のグループと比較して, ポケットの減少量が有意に大きかった。しかし, 初診時のPCRおよびX線写真より得られた骨吸収度とポケットの減少量との間には関連は見られなかった。
  • 上田 雅俊, 稲田 芳樹, 英保 武志, 寺西 義浩, 山岡 昭, 筒井 淳, 西村 泰典, 田中 昭男
    1989 年 31 巻 2 号 p. 724-735
    発行日: 1989/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 急性壊死性潰瘍性歯肉炎の3例を経験し, その臨床所見, 光顕ならびに電顕所見, 治療法およびその経過について観察した結果つぎのような結論を得た。すなわち, 臨床的には, 3症例ともに, 歯肉に潰瘍形成が認められ, 症例1のみその部が陥没していた。一方, 光顕所見では, 3症例ともに, 歯肉組織に潰瘍形成があり, その表面にはフィブリンの析出, 好中球の浸潤が観察できた。また, 潰瘍部より深部の結合組織には血管の拡張や好中球の浸潤がみられた, 他方, 電顕所見では, 3症例ともに, 潰瘍面には多くの微生物, フィブリン, cell debrisなどが存在し, また, 上皮組織の細胞間隙は拡大していた。さらに, 治療法としては, プラークコントロールを中心とする積極的な局所療法を行い, 臨床的にも, 病理組織学的にもその効果が明らかに認められた。
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