日本歯周病学会会誌
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33 巻, 1 号
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  • -Hydroxypropylcellulose を用いた骨形成因子のDrug delivery systemについて-
    梅村 昌孝
    1991 年 33 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 歯周病により失われた骨欠損部を回復させることを目的として, 骨形成能を有する植込み型生体材料にdeliverysystemを応用した場合, 骨形成能が高まるか否かをマウスを用いて検討した。骨形成因子BMP) をより効果的に作用させるには, 何らかの担体を応用することが有効である。そこで, 本実験では薬物 の持続的徐放効果に応用されているHydroxypropylcellullose (HPC) を用いてBMP-HPC複合体ペレットを作製し, BMPの持続的徐放効果を検討し, その骨形成能を検索した。
    BMPは牛皮質骨より抽出, 精製し, その骨形成能をマウス大腿部筋膜上に移植して確認した。BMPHPC複合体ペレットとコントロールとしてBMP単体を同部位に移植し, 7, 14, 21日後に屠殺し骨形成能を比較, 検討した。軟X線写真においてBMP-HPC複合体, コントロールともに異所性に骨の新生が観察され, 組織所見より軟骨, 骨の新生が認められた。しかし, 軟X線写真像の画像解析による新生骨量の定量ではBMP-HPC複合体ペレットはBMP単体に比べて強い骨形成能を示した。このことより, HPCを担体としたBMPの持続的徐放効果はBMPの骨形成能を高めるという点において効果的であり, BMPのdeliverysystemとして応用できることが示唆された。
  • -歯周治療への応用の可能性について-
    古郷 辰二
    1991 年 33 巻 1 号 p. 14-34
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    歯周外科手術後の歯周組織再生を促進する方法として, 化学的に架橋処理を施されたatelocollagen膜を歯周組織再生誘導法 (Guided tissue regeneration technique; GTR法) に応用するための基礎的検討を行つた。実験方法は, 雑種成犬28頭を用い, 下顎左右側第4前臼歯の頬側に人工的に裂開型骨欠損を作製し, ルートプレーニング後, 化学的架橋度の異なる合計3種類のatelocollagen膜移植を行つた群 (Col.×0, Col.×0.5, Col.×10) および非移植群 (Control) について, 術後4週, 6週における創傷治癒反応を病理組織学的に検索した。その結果, 歯周外科手術時に化学的に架橋処理されたatelocollagen膜 (Col.×0.5, Col.×10) を応用することにより, 1) 膜移植後の局所の炎症反応を持続させることなく, 膜の生体内溶解時期を遅延させることが可能であった。2) 歯冠側領域における過度の歯根吸収を伴うことなく上皮深部増殖は抑制され, 新生セメント質および新生骨形成量の増加が認められた。すなわち, 化学的に架橋処理されたatelocollagen膜を用いたGTR法が有効な歯周外科処置法となりうる可能性が示唆された。
  • 村橋 慶宣
    1991 年 33 巻 1 号 p. 35-55
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    イヌの実験的歯周炎 (結紮0日, 3日, 7日, 21日, 60日) 組織中のコンドロイチン硫酸異性体 (コンドロイチン4硫酸, コンドロイチン6硫酸, デルマタン硫酸) プロテオグリカン (PG) の局在性の変化をモノクローナル抗体 (2-B-6, 3-B-3) を用い免疫組織化学的に検討した。その結果, 結紮0日目では, 歯肉結合組織および歯根膜にコンドロイチン4硫酸PGとデルマタン硫酸PGが組織中に広く認められ, 特にデルマタン硫酸PGは組織中のコラーゲン線維に沿って強い染色性を示した。コンドロイチン6硫酸PGは口腔上皮と上皮下結合組織の境界部, 結合組織性付着部の一部及び歯肉や歯根膜の血管周囲に限局していた。歯槽骨ではコンドロイチン4硫酸PG, コンドロイチン6硫酸PGおよびデルマタン硫酸PGがハーバース管, フォルクマン管, 骨小腔の内縁のみに認められた。急性期 (結紮3, 7日目) において, 小範囲であるが組織破壊が生じた歯肉結合組織でコンドロイチン4硫酸PG, コンドロイチン6硫酸PG及びデルマタン硫酸PGの染色性が減弱していた。また, 活発な骨吸収窩の破骨細胞様の細胞周囲や吸収窩周囲の疎な結合組織にコンドロイチン4硫酸PG, コンドロイチン6硫酸PG及びデルマタン硫酸PGの陽性所見が認められた。慢性期 (結紮21, 60日目) では組織破壊がさらに進行し, コンドロイチン4硫酸PG, コンドロイチン6硫酸PG及びデルマタン硫酸PGの歯肉結合組織での染色性が広範囲にわたり減弱した。骨吸収は進行していたが, コンドロイチン4硫酸PG, コンドロイチン6硫酸PG及びデルマタン硫酸PGの吸収窩の染色性は急性期と比較して減弱していた。以上の結果から, 歯肉結合組織ではコンドロイチン4硫酸PG, コンドロイチン6硫酸PG及びデルマタン硫酸PGが炎症による組織破壊に伴い消失することが示された。またコンドロイチン4硫酸PG, コンドロイチン6硫酸PGおよびデルマタン硫酸PGが初期の骨吸収時に重要な役割を担っている可能性が示唆された。
  • 成田 信
    1991 年 33 巻 1 号 p. 56-68
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はヒトの30顎骨91歯牙129隣接面歯周組織の準連続非脱灰標本を用いてBiological width (歯周ポケット底部と歯槽骨頂の間の歯軸に平行な距離) および新しく設定したPathobiological width (歯周ポケット底部と歯槽骨のシャーピー線維付着部歯冠側端の間の歯軸に平行な距離) を計測し, 炎症の進展に伴った歯周組織各部位の破壊の相互関係を明らかにすることである。
    炎症の進展と年齢には関連性が認められた。炎症の進展に伴ってPathobiological widthは有意な変化を示さなかったが, 歯槽骨々髄内への炎症の波及に伴ってBiologicalwidthは短縮した。この結果から炎症の進展に伴って歯周ポケット深化, 歯根膜の破壊, 歯槽骨頂の吸収および接合上皮の深行増殖などの組織破壊が異なった早さで進行すると推定された。
  • 培養歯周組織における細胞の初期動態について
    重山 洋一郎
    1991 年 33 巻 1 号 p. 69-89
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉剥離掻爬手術後の新付着成就に, 従来から歯根膜由来細胞の関与が示唆されているが, 新付着形成細胞の起源については, 未だ明確にされていない。そこで本研究では, 新付着形成細胞の起源解明の一助として, 移植片培養したサル歯周組織における細胞動態を検索した。
    実験動物には, 健康歯肉を有するニホンザルを用い, 臼歯部頬側歯肉から上皮除去後, 歯肉弁を剥離, 歯槽骨を骨頂から根尖方向へ約3mm削除した。次いで, 歯一歯根膜一歯槽骨一歯肉結合組織を一一塊として取り出し, 移植片培養を行った。培養開始後1, 3, 7, 10, 14日目の各移植片を位相差顕微鏡的, 光顕的, 電顕的に観察した。その結果, 移植片内での細胞増殖は骨髄腔で最初に生じることが示された。骨髄腔に続いて, 歯根膜血管周囲組織および歯根膜骨側に細胞増殖が観察された。骨髄腔や歯根膜血管周囲, 歯根膜骨側での活発な細胞増殖に対して, 歯根膜セメント質側では細胞の増殖能は低かった。また, 歯槽骨頂から歯冠側へ派生した細胞が, 歯根膜上を分化しながら根面へ移動したが, 歯根膜から歯冠方向への細胞派生はみられなかった。以上の所見から, 術後, 根面へは, 歯槽骨, 歯根膜血管周囲組織, 歯根膜骨側由来の各細胞が集積するものと考えられ, これらの細胞群が新付着形成に関与するものと思われた。
  • I. ヒト歯肉由来培養線維芽細胞の付着・増殖による評価
    佃 宣和
    1991 年 33 巻 1 号 p. 90-100
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患罹患セメント質に対する適切な治療法を知る目的で各種根面処置を行い, ヒト歯肉培養線維芽細胞の付着. 増殖状態の観察により比較検討した。その結果, 1) 超音波scalingした群 (Sc群) では, 付着細胞数が少なく, バラツキも大きく, 細胞形態は突起の発達が不十分であった。2) scaling+polishing群 (Sc+Po群) は, 罹患根面無処置のP群と比べ付着細胞数はやや多いものの少なく, バラツキが大きかった。3) scaling+罹患セメント質20μm削除群 (Sc+20μRp群) の付着細胞数は多く, 健全歯根面無処置のC群と類似し, 細胞はよく発育して数多くの突起が伸びていた。4) scaling+rootplaning群 (Sc+Rp群) の付着細胞数はC群やSc+20μRp群よりわずかに少ないが, その形態もよく発育しており多くの突起が見られた。以上より, Sc+20μRp群とSc+Rp群は両者とも治療処置として有効であると考えられた。
  • 第1報ホスファターゼ活性および14C-Prolineの取り込みについて
    鈴木 邦治, 藤川 謙次, 岸田 修, 高橋 健作, 村井 正大, 鈴木 直人, 前野 正夫, 大塚 吉兵衛, 鈴木 貫太郎
    1991 年 33 巻 1 号 p. 101-109
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ヒトの歯槽骨に由来する骨芽細胞様細胞の特性を調べるために, 歯槽骨片をコラゲナーゼ処理した後に増殖してくる細胞群 (E-AB) と, 無処理の骨片から増殖してくる細胞群 (N-AB) とに分け, 両細胞群の細胞特性を比較検討した。細胞数当りのアルカリホスファターゼ活性値は, E-ABの方がN-ABの約7倍高い値を示した。一方, 両細胞群の酸性ホスファターゼ活性値は同程度の値であり, N-ABのアルカリホスファターゼ活性値の50%以下の値を示した。また, 酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性値は, 両細胞群共に酸性ホスファターゼ活性値の約25%程度であった。両細胞群が合成・分泌するタンパク質を14C-proline標識して比較すると, 分子量200K以上およびプロコラーゲン・コラーゲンの分子領域に取り込みの多いタンパク質を認めたが, 28Kおよび34K付近のバンドはE-ABの方が明瞭であった。マトリックス層にはその他に40~50K領域に数種のバンドを認めた。
  • -走査型電子顕微鏡による観察-
    田中 宏司, 遠藤 克典, 北島 達成, 宮内 仁江, 伊藤 公一, 村井 正大
    1991 年 33 巻 1 号 p. 110-120
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周外科手術の際に用いられる縫合糸の種類が創傷治癒に与える影響を検索する一助として勿碗zo, 伽oにおいて縫合糸へのプラーク内微生物の付着状態をSEMを用いて観察した。in vitroではA. viscosus, S. viv sanguis, S. mutansの3菌種を使用し, 太さ5-0のマルチフィラメントである絹糸, ポリェステル糸, モノフィラメントであるナイロン糸の3種類の糸に対し静菌系, 増菌系において付着試験を行った。また歯周外科手術時に前述の3種の縫合糸を用いて縫合を行い, 抜糸時に試料として採取し, SEMを用いて観察を行った。その結果, 2種のマルチフィラメントの縫合糸はモノフィラメントの縫合糸に比較しプラーク内微生物が付着しやすく, またin vitroの系では毛細管現象によると思われる微生物の縫合糸上での移動も認められ, in vivoでは, 組織を貫通viしtてroいた縫合糸上にも細菌のコロニー形成が存在した。
  • 野口 吉廣, 西村 和晃, 下村 弘明, 深沢 英輔, 西垣 満, 山岡 昭
    1991 年 33 巻 1 号 p. 121-128
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    著者らは, ヒト歯周疾患歯に対し掻爬を表層セメント質にとどめる新根面処理法を施し, その結果, かなりの幅の結合組織付着を得た。半面, 表層セメント質の取り残しによるのか小さな膿瘍形成もみられた。そこで今回は, より完全に表層セメント質を除去するため, キュレットタイプのスケーラーで表層セメント質を掻爬後, air -powder abrasive system (Prophy-jet®) を使用し, この装置の新根面処理法への補完性を検討した。被験者は, 38歳と68歳の男性患者2名で, 過去にスケーリングの既往がなく, かつ深さ7mm以上の歯周ポケットを有する右側上顎側切歯2本を被験歯とした。被験歯の歯肉弁を翻転し, キュレットで20ストロークのセメント質掻爬を行った後, Prophy-Jet®を10秒間作用させた。術後2および3週に, 歯に歯肉を付着させたまま抜去し, 光顕, 電顕的に検索した。また, 顕微鏡下で新結合組織付着量も測定した。その結果, 2週で抜去した被験歯根面には, 70~120μmのセメント質の残存がみられ, 平均1.66mmの新結合組織付着が認められた。3週で抜去した被験歯には, 90~180μmのセメント質の残存がみられ, 平均1.60mmの新結合組織付着が認められた。電顕的には, 小器官の発達した細胞が, 残存深層セメント質上に多量の膠原原線維を形成していた。以上のことから, 表層セメント質掻爬後のProphy-Jet®使用は, セメント質吸収窩の細菌, ならびに, 取り残し表層セメント質の除去に有用であることが示された。
  • - とくに下顎大臼歯について-
    藤川 謙次, 荒井 法行, 東風 巧, 高野 研一, 木村 道孝, 鶴見 義信, 小嶋 太郎, 斎藤 祐一, 村井 正大
    1991 年 33 巻 1 号 p. 129-137
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉縁下歯根面および根分岐部に対する超音波スケーラーの器具i操作の効果を, Graceyのキュレット型スケーラーを用いた場合と比較し評価判定した。歯肉縁下歯石が付着している下顎大臼歯抜去歯の規格写真撮影を行った後に, Graceyスケーラーおよび各種チップ (SC-1, SC―5, SC-6, ダイヤモンド) をつけた超音波スケーラーを用いて歯肉縁下スケーリングを行った。処置終了後, 術前と同様に写真撮影を行い, 歯石の除去された面積を比較した。さらに抜去予定の下顎大臼歯に対し口腔内で器具操作を行い, 同様にその効果を評価した。あわせて各種器具使用後の表面性状をSEMおよび生物顕微鏡像で比較検討し, 以下の結論を得た°1) 超音波スケーラーのチップSC-1, SC-5はGraceyの場合と同様の歯石除去効果および根面の状態を示した。2) 実体顕微鏡, SEM観察ではSC-1, SC-5, Graceyで, それぞれ類似した平滑な面を示したが, 根尖部に近づくにつれ, チップの形態に一致した溝ができる傾向にあった。
  • 山田 了, 山之内 一也, 高橋 敬人, 青木 栄夫, 佐藤 徹一郎, 石川 達也
    1991 年 33 巻 1 号 p. 138-145
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 23歳から54歳で, 初期治療終了後の再評価時に6mm以上のポケットを有し, 歯周外科治療を必要とした患者16名を用いそれぞれ8名の垂直性骨欠損部にGTRとFOPを応用した。GTR法は, フラップ手術に準じ, 粘膜骨膜弁を剥離, 翻転後, スケーリング・ルートプレーニングを行い, 骨欠損部へGore-Tex® periodontal materialを試適, 縫合固定し, 歯齦弁を元に戻して縫合した。なお, Gore-Tex® periodontal materialは術後4~6週で除去した。臨床診査は, 術後3, 6及び12ヵ月目に行った。その結果, ポケットの深さの減少量は, GTR群で有意に大であり, 12ヵ月目では, GTR群5.1±1.6mm, FOP群で2.4±1.5mmであった。アタッチメントの獲得量もGTR群で有意に大であり, 12ヵ月目で, GTR群で2.8±1.6mm, FOP群で0.3±0.8mmであった。以上の結果より, 垂直性骨欠損に対するGTR法は有効な手術法であることが証明された。
  • 小林 雅実, 太田 典子, 高橋 健作, 小池 偉紀夫, 伊藤 公一, 村井 正大
    1991 年 33 巻 1 号 p. 146-153
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    高血圧・虚血性心疾患治療剤服用患者29名 (男性18名, 女性11名) について, 歯肉増殖症の発現, 残存歯数, プロービングデプス (PD), 歯肉出血指数 (GBI), プラークコントロールレコード (PCR), 歯肉炎症指数GI), 歯の動揺度 (TM), Bone Index (BI) の診査を行った。被験者は, カルシウム拮抗剤服用者群 (Ca群), (他の薬剤服用者 (非Ca群), また, 歯肉増殖症発現者群 (Hyp群), 非発現者群 (非Hyp群) に分類し, 比較検討を行った。被験者の平均年齢は55.44±8.79 (39~79歳) であり, Ca群は29名中16名であった。Hyp群は9名約56.3%) であり, これらはすべてCa群中に認められ, 1人を除いてそれらはニフェジピン服用者であっ た。また, Ca群は, 非Ca群と比較して, PDは深く, BIは小さい傾向が認められ, Hyp群は非Hyp群と比較してTM, BIが小さい傾向が認められた。また組織学的には角化亢進, 上皮突起の伸展, 慢性の炎症性細胞浸潤, 膠原線維の増生が認められた。
  • -臨床的特異性とSK-013のカットオフ値-
    大竹 徹, 高野 都喜子, 栗原 千佳子, 南崎 信樹, 宮下 元, 長谷川 紘司, 杉田 典子, 佐藤 悦子, 田井 秀明, 小林 哲夫, ...
    1991 年 33 巻 1 号 p. 154-163
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病原菌であるTreponema denticola, Bacterides属らのペプチダーゼ活性を特異的かつ迅速 (15分間) に測定可能な酵素活性測定キットSK-013を用いて歯周病検査薬としての臨床的特異性およびSK-013のカットオフ値について検索した。歯周炎, 歯肉炎, う蝕, 健常, 歯周組織炎罹患歯の歯肉溝から採取したプラークを用いたSK-013活性を検索した結果, SK-013は歯周炎罹患歯に特異的な活性を示した。スピロヘータ数を基準にSK -013のカットオフ値を検討した結果, 0 . 2 Try U/mlが最も高い診断率を示した。さらに, 段階的な標準色調を用いた肉眼判定を試みた結果, 分光光度計で測定した値と高い一致率 (Efficacy 93.3%) を得た。以上よりSK-013は, スピロヘータ数, 歯周炎の有無を計測機器を用いなくても簡便にかつ迅速に行なえ, チェアーサイドでの有用性が高いことが示された。
  • -歯周ボケツト掻爬術の効果判定への応用-
    杉田 典子, 佐藤 悦子, 田井 秀明, 小林 哲夫, 吉江 弘正, 原 耕二, 大竹 徹, 高野 都喜子, 栗原 千佳子, 南崎 信樹, ...
    1991 年 33 巻 1 号 p. 164-171
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯周病原菌が特異的に産生するペプチダーゼ活性を迅速に測定できる検査薬SK-013 kitを用いて, 歯周ポケット掻爬術の効果判定を行い, その有用性を評価することである。歯周炎患者64名のうち33名を歯周治療群 (T群), 31名を未治療群 (NT群) に分け, 1名につき1歯を被検歯として選択した。T群にはブラッシングによるプラークコントロール (初診時開始) および歯周ポケット掻爬術 (プラークコントロール後4週目) を行いその効果を臨床診査並びにSK-013kitによる酵素活性検査にて評価した (6, 8, 12週目) 。NT群については, 特に歯周治療は行わず初診時および12週目に臨床診査並びに酵素活性検査を行った。
    その結果, SK-013活性値は, プラークコントロールのみでは変化を示さなかったが, 歯周ポケット掻爬術後, GI, PD, AL, BOPと共に著しく減少した。NT群のSK-013活性は, いずれの検査時においても有意な変化は認められなかった。これらの結果よりSK-013kitによる酵素活性測定法は, 歯周治療効果をモニタリングするのに非常に高い有用性があることが示された。
  • 上田 雅俊, 中垣 直毅, 四元 忠久, 吉村 亨, 仲野 貴明, 小柳 良久, 金村 福寿, 山岡 昭, 川崎 昌英, 田中 昭男, 小谷 ...
    1991 年 33 巻 1 号 p. 172-181
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ニフエジピン服用の歯肉増殖症患者の歯周組織を臨床的に観察し, その歯周ポケット内微生物を位相差顕微鏡的に検索するとともに, 増殖歯肉を病理組織学的に観察した結果, つぎのような結論を得た。すなわち, 歯肉増殖量とプラーク指数, 位相差顕微鏡によるポケット内微生物の総微生物数および運動性桿状菌とスピロヘータの構成率との間には相関性が認められなかった。また, 増殖歯肉の光顕所見では, 上皮組織は肥厚し, 上皮突起は細くてやや長く, 密なコラーゲン線維束や血管, 中等度の炎症細胞浸潤が認められ, その炎症細胞のほとんどは形質細胞であった。さらに, コラーゲン線維束の間に著しく拡張した血管が認められた。一方, 電顕的には, 密なコラーゲン線維の間に豊富な粗面小胞体を有する紡錘形の線維芽細胞や顆粒状物質が認められ, また, 折れ曲がった多数のコラーゲン原線維を細胞質に含む線維芽細胞がみられた。
  • 上田 雅俊, 稲田 芳樹, 寺西 義浩, 白石 裕紀, 塩谷 真子, 山岡 昭, 上村 参生, 熨斗 秀光, 神原 正樹, 小西 浩二
    1991 年 33 巻 1 号 p. 182-189
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    非露出セメント質表面と露出セメント質表面とを多角的に観察した結果, つぎのような結論を得た。すなわち, X線分析計による観察のCa, PおよびCa/P比は, 群間による差がわずかに認められ, また, 走査型電顕所見では, 非露出セメント質にセメント質隆起が認められ, 一方, 露出セメント質は石灰化の様相を呈していた。さらに, X線光電子分光分析法による観察のカルシュウム, リン, フッ素, 酸素, 相対濃度およびCa/P比は, 非露出セメント質と露出セメント質の間にはほとんど差は認められなかったが, 非露出セメント質では, 窒素が有意に高い割合で存在した。また, 接触角についての観察では, 露出セメント質は非露出セメント質よりも, 数値が低く親水性を示した。
  • 小方 頼昌, 宮川 英祐, 松江 美代子, 松江 一郎
    1991 年 33 巻 1 号 p. 190-198
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    2頭のカニクイザルの硬口蓋部から部分層歯肉片を採取し, 開放創を作製後, 同部位に対して, 創傷治癒促進効果を期待した被覆保護材として, キチン膜または脳硬膜を応用した。また, 対照として, 露出部位および歯肉片を採取しないコントロール部位を設定した。術後1, 3, 5週目に術部を摘出し, 組織学的および生化学的検索を行った。生化学的検索は, SDS-PAGEによるコラーゲンのタイプおよびその合成量の検索, ケラチンに関しては, ELISA法およびウエスタンブロッテング法にて検索を行った。その結果, 組織学的には, キチン膜部位で, 上皮および結合組織の治癒状態が良好である所見が得られた。またキチン膜部位で治癒の初期にタイプ1およびIII型コラーゲンの合成の促進が認められた。ケラチンに関しては, 対照と比較して, キチン膜および脳硬膜部位で5週目に合成の促進を認め, キチン膜部位でその効果が大きかった。以上のことより, キチン膜は, 創傷治癒を促進させる被覆保護材として, 歯周外科処置に応用できる, 有用な材料であると考えられた。
  • 竹内 佳世, 三辺 正人, 斉藤 数宏, 矢沢 裕, 飯田 正人, 児玉 利朗, 茂木 信道, 堀 俊雄, 梅本 俊夫, 玄 丞焦, 筏 義 ...
    1991 年 33 巻 1 号 p. 199-206
    発行日: 1991/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    親水性ワセリンおよびアテロコラーゲン溶液を基材としたテトラサイクリン固定化ポリ乳酸マイクロスフェアー (TC―PLA―MS) を歯周疾患患者14名の4ミリ以上の歯周ポケットを有する57披検歯部位に1回局所投与し, その臨床的効果について検討を行った。その結果, プロービング時の出血, 培養可能な総菌数および黒色色素産生バクテロイデスの比率については, TC―PLA―MS投与群は, Control群 (アテロコラーゲン水溶液投与群) と比較して, 14日目迄有意な減少が認められたが, Probingdepth, SulcusBleedingIndex, スピロヘータの比率は, 試験期間中を通して, Contro1群との間に有意差は認められなかった。また, ポケット内微生物密度は, 7日目以降, Control群との間に有意差は認められなかった。基材の相違による明確な治療効果の差異は認められなかった。
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