日本歯周病学会会誌
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33 巻, 2 号
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  • 齊藤 隆嗣
    1991 年 33 巻 2 号 p. 217-231
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉溝滲出液中のタンパク質の分析は歯周組織の病態変化を客観的に捉えるために, 臨床上極めて価値あることと思われる。本研究では真鍋らの2次元電気泳動法がその分析に応用可能であるか否かを検討した。さらに, 本法を臨床的に分類した歯周病患者の歯肉溝滲出液や全唾液ならびに血清の分析に応用すると共に滲出液成分の由来を知るためwestern-blot法を用いて, 抗ヒト全血清, 抗ヒト全唾液および抗ヒトS-IgAに対する反応性を検討した。
    その結果, 滲出液中のタンパク質の多くが血清由来で歯周疾患の存在により増加する傾向が示された。IgA付近には由来の不明な滲出液に特有と思われる, 線状の分画が示された。また, 遊離Hbは病態群で, Hp-Hbcomplexは全ての症例で高頻度に認められた。
    さらに, 病態群の滲出液中に抗ヒトS-IgAに対する反応が高い頻度で認められたことから局所免疫応答の関与が示唆された。
  • 阿久津 功
    1991 年 33 巻 2 号 p. 232-244
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    T細胞の歯周病病態への役割を考察することを目的に, 歯周病患者48名を含む被験者72名の末梢血を用いて単核球サブセットの割合, およびT細胞機能を調べた。結果は, いずれも個体差が大きく歯周病の臨床所見や病型とは相関し難いというものであったが, CD3分子への刺激でinterleukin-2 (IL-2) 産生能が亢進あるいは低下した被験者4名が検出された。これら被験者についてIL-2産生能の発現様式を細胞内シグナル転送の点から調べた。その結果, 1名の被験者にみられたIL-2産生能亢進に細胞内Ca2+濃度の上昇に関わる過程が関与し, 被験者3名のIL-2産生能低下にはこの過程は関与しないことが示唆された。なお, 以上の4名のうち3名は若年性歯周炎患者であり, 残る1名はこの中のある患者の妹であった。以上から歯周病の発症と進行の様式は多様で, それらの様式は個体レベルで明確にされなけれぼならないことがうかがわれた。
  • 石川 一郎, 松江 美代子
    1991 年 33 巻 2 号 p. 245-260
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯周外科治療において歯根周囲にハイドロキシアパタイト (HAP) を填入した場合, 初期の治癒過程で歯に加わる力が歯槽骨, 歯根膜の再生にどのような影響を与えるかを解明することである。HAPを歯頸部に填入して30日目から30日間歯を移動させると, 欠損のみを作成して移動させた場合と同様に歯は大きく傾斜した。根尖部にHAPを填入た場合は, 欠損のみを作成した場合に歯の移動が小さいのに比べて大きく傾斜した。ただし, 圧迫側では直接的な骨吸収が認められる像はなかった。根尖部では骨形成量が少なく, また歯根膜を含む結合組織, HAP周囲の骨形成が圧迫側ではさらに遅延していた。歯が, 力を受けることによって, まずHAP周囲の骨の新生が遅延し, またHAP粒子問にも力が伝達されて, 結合組織の形成の遅延が生じ, それが固有歯槽骨の形成を遅延させる原因と考えられた。
  • 沼崎 光
    1991 年 33 巻 2 号 p. 261-269
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周ポケット内滲出液 (滲出液) のpHを測定するためにビートロード電極に改良を加えたpH測定器を用いて, 歯周初期治療およびその処置内容が滲出液のpHにおよぼす影響を, 臨床症状の変化とともに経時的に検討するために, 37名の被験者の歯周疾患罹患歯125歯に対し, ブラッシングのみの群, 歯肉縁下洗浄のみの群, スケーリング・ルートプレーニングのみの群, スケーリング・ルートプレーニングと歯肉縁下洗浄の併用群に分け, 4週間にわたり滲出液のpH, 滲出液量および臨床所見の変化を観察した。さらに歯周初期治療を施し, その処置効果が確実に表れた患者25名の41歯に対し, 初診時と再評価時で各項目の変化を観察した。その結果, 歯周炎患者の滲出液のpHは, 歯周初期治療による歯周炎症状の改善に伴って上昇し, 処置内容としては, 歯肉縁下洗浄, スケーリング・ルートプレーニングおよびその両者の併用が滲出液のpHを上昇させるために有効であった。
  • -cottonpellet肉芽腫に及ぼすニフェジピン投与の影響-
    小林 雅実
    1991 年 33 巻 2 号 p. 270-279
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ニフェジピンの炎症組織におよぼす影響を検索した。60匹のウィスター系ラットの背部に滅菌綿球を挿入してcotton pellet肉芽腫を形成し, 24時間後よりニフェジピン投与 (100mg/kg) を開始し, 投与期間別に次の4群に区分した。1, 2, 4週間投与 (1, 2, 4週群) および, 4週間のニフェジピン前投与を行った後に綿球を挿入し, 術後さらに4週間投与 (前投与群) とし, 各群についてコントロールは同匹数とした。実験期間終了後, 屠殺, 肉芽腫を摘出し, 湿重量, タンパク質, ハイドロキシプロリンの定量ならびに組織学的検索を行ったところ, 次の結果を得た。すなわち, 肉芽腫の湿重量, タンパク質量は1週間目に増加し, その後経時的, または薬剤投与による変化はなかったが, ハイドロキシプロリン量は経時的にも, 薬剤投与によっても増加する傾向があり, 前投与により, さらに増加が認られた。また, 組織学的所見では, 著明な炎症性細胞浸潤と肉芽組織の増生がみられ, 膠原線維は経時的に増加し, ニフェジピン投与によって束状の線維が増加する傾向が認られた。
  • -特にbFGF, PDGFおよびTGF-β 局所投与による影響-
    市村 光
    1991 年 33 巻 2 号 p. 280-296
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ラットにおける歯周外科手術後の創傷治癒過程において, 細胞成長因子basic fibroblast growth factor bFGF), platelet-derived growth factor (PDGF) およびtransforming growth factor beta (TGF-β) の (局所での影響を, 特に組織構築の維持に不可欠な細胞外基質であり接着性蛋白質の一つであるfibronectinとlamininを指標に, その局在の推移を観察した。
    すなわち, ラットの上顎口蓋側歯肉に歯肉剥離〓爬術に準じた手術を施し, 歯肉弁を復位した後, 第一臼歯近心部より口蓋側2mmの位置の口蓋粘膜に各細胞成長因子を一部位当たり10ng/3μlをマイクロシリンジにて投与した。対照群には, 希釈液のみ同量投与した。手術後1, 3, 5および7日後, にパラフィン切片を作製, 病理組織学的にはH. E. 染色にて観察し, fibronectinとlamininの局在の観察には間接蛍光抗体法にて行った。
    その結果, 各細胞成長因子bFGF, PDGFおよびTGF-β が歯周組織の創傷治療過程において, 再生される歯肉結合組織へのfibronectinの増加を促すものと考えられ, またその再生される歯肉溝上皮と歯肉結合組織間へのlamininの産生および局在部の広さに影響を与えるものと考えられる。特にTGF-β 投与群では, 歯肉剥離部からの結合組織の増生に伴うfibronectinの広範な局在および多数の血管壁へのlamininの強陽性所見等が認められたことから, TGF-β は歯周組織の創傷治癒過程に強く関与することが示唆された。
  • - とくに全層歯肉弁剥離創について-
    西川 義公, 信藤 孝博
    1991 年 33 巻 2 号 p. 297-313
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 全層弁により歯肉を剥離したのち, その治癒過程にかかわる創傷周囲組織の微細血管構築を立体的組織関係を損なうことなく詳細に観察することにある。本実験には, 健康な歯周組織を有する雑種成犬48頭を用い, 上顎左側前歯の一定の位置を実験領域とし, 全層歯肉弁剥離を行った。術後5, 7, 14, 21, 28, 42日の各期間における微細血管鋳型標本をOhtaら (1990) の方法に従って作製し, 走査電顕により観察するとともに, 病理組織学的検索を加え, 比較検討を行った。その結果, 創傷治癒初期過程において, 歯肉骨膜血管網と歯根膜血管網との循環路は, 歯肉骨膜血管網側からよりもむしろ歯根膜血管網側から積極的な回復機序が行われていた。そして, このような循環路の回復過程に起因して, 一時的に歯の支持機能が低下するため, 術後の治癒過程にある組織保護に対して, 慎重な臨床的対応が必要であると考えられる。
  • -歯周治療の影響について-
    高良 憲明
    1991 年 33 巻 2 号 p. 314-330
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の治療の際, 歯槽骨の変化を知ることは臨床的に重要な位置を占めている。殊に歯槽骨頂部での変化を知るためには, 一般的な方法として, X線フィルムの濃度変化を指標としている。しかし, この方法は撮影したフィルム上で変化を調べるために様々な制約がある。
    そこで, 歯周炎を有する患者においてフィルムを介さないで直接, 歯槽骨の変化を調べるために線源に133Baを用い, 歯槽骨頂部を透過する30keVのγ線の減弱をアナライザーで分析し, 骨の微細な変化量をより正確に測定することを試みた。
    その結果, 最初の顕著な骨変化はスケーリング後, ないしは再評価時のいわゆるインストルメンテーション後に観察され, 治療期間の経時的変化では治療開始後, 2ヵ月から7ヵ月目に起こっていることが分かった。
  • 第2報接触型半導体レーザーメスの創傷治癒に関する実験病理学的研究
    西山 俊夫, 佐藤 雅人, 井桁 麗子, 富井 信之, 町田 裕哉, 浜口 茂雄, 長谷川 明, 渡辺 宣孝, 渡辺 是久
    1991 年 33 巻 2 号 p. 331-339
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Contact Type Semiconductor Laser Scalpel, Wound Healing, Periodontal Surgery要旨: 口腔領域, 特に歯周外科手術への応用を目的として, 出力4Wの接触型半導体レーザーメスと, 比較検討のため電気メス, 鋼刃メスを用い, モルモット8匹の背部皮膚にそれぞれ同一条件で, 長さ20mm, 深さ2mmの切開を行い, 直後, 3, 7, 14日後の創傷治癒過程を肉眼的および病理組織学的に観察した。肉眼的観察では, 切開直後の出血は, 電気メス, 鋼刃メスの順で大であり, レーザーメスの場合は, 全く認められなかった。治癒経過は, 鋼刃メスが最も早くレーザーメスと電気メスはほぼ同様であった。組織学的検索では, レーザーメス, 電気メスではほぼ同様の治癒経過を示したが, 鋼刃メスでは3日後で一次治癒を示した。今回の実験結果からレーザーメスによる切開創の治癒過程が電気メスとほぼ同様であること, 切開後の出血防止に有効であること, また, 照射による周囲組織の器質的変化もないことが確認され, 歯周外科手術への応用に有用であるという結論を得た。
  • 泉福 英信, 栗田 智子, 泉 廣次, 落合 邦康
    1991 年 33 巻 2 号 p. 340-348
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病で認められる複雑な宿主の免疫応答についてCaPnocytoPhagaの菌体抽出物を用いて検討を行った。供試菌株を超音波処理して得た可溶性抽出物 (SE) をC3H/HeNマウス尾静脈より接種し, 1時間後および3日後に異種抗原として, ヒツジ赤血球 (SRBC) を同部より接種した。接種10日後に脾細胞の抗SRBC抗体産生細胞数を算定した。また特異的免疫応答を検討する目的で, ELISPOT法も併せて行った。供試したCapnocytohagaのSEは, 接種時期に関係なく特異的, 非特異的に免疫応答を抑制した。SEの熱処理およびpronpase処理により, 抗SRBC抗体産生細胞で認められた抑制は回復した。またC3H/HeJマウスにおいても抑制が認められたことから, CaPnocytophagaにより誘導される抑制においては, 蛋白様物質が深く関連していると示唆された。
  • 山地 矢須子, 渡辺 清子, 梅本 俊夫, 今泉 貞雄, 飯田 正人, 福島 久典, 佐川 寛典
    1991 年 33 巻 2 号 p. 349-355
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    表層多糖の抗原性がBacteroides (Porphyromonas) gingivalis 381株とは異るB. gingivalis SU 63株から線毛を分離し, その性状を381株線毛と比較検討するとともに患者血清との反応性について検討した。
    SU 63株線毛はDEAE Sepharose CL-6BカラムクロマトグラフィーにおいてNaCl濃度0.5Mで溶出し, SDS-PAGEでは約70KDaの位置に1本のバンドとして認められた。また, 電子顕微鏡観察では, 幅約5nmの線維状の構造物として認められ, Immunoblott法及びELISA法においては, 抗381株線毛モノクローナル抗体との反応性は認められなかった。歯周炎患者血清との反応性は, SU 63株線毛に対する反応の方が, 381株線毛に対するよりも約2.5倍高く, 12例中10例がSU63株線毛により強い反応を示し, 1例のみが381株線毛に強く反応した。
    以上の結果からSU 63株線毛は381株線毛とは, 分子量や抗原性が異なっており患者血清の多くはSU63株線毛とより強く反応することが明らかになった。
  • 浜田 信城, 石川 恵里子, 梅本 俊夫, 竹内 佳世, 堀 俊雄, 三辺 正人, 飯田 正人, 井上 純一, 福島 久典, 佐川 寛典
    1991 年 33 巻 2 号 p. 356-363
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎病巣におけるBacteroidesgingivalisおよびその血清型の分布状況について検討する目的で, 神奈川歯科大学付属病院保存科に来院した歯周炎患者6人の歯周ポケットから黒色色素産生性Bacteroides及びB. gingivalisの検出率を検索すると共に, B. gingivalisの血清型の分布について他研究機関より分与された21菌株と合わせてELISAにより検索した。その結果, 歯周炎患者6人の14部位の歯肉縁下細菌叢から分離された黒色色素産生性Bacteroidesの比率は23.3%, それらのうちB. gingivalisの占める割合は37.8%であった。またB. gingivalisの血清型は, A型が1名 (2部位), B型が5名 (12部位) から分離された。尚, 同一人からはいずれか一方の血清型のみが検出された。他研究機関で分離された菌株を合わせると, 分離されたB. gingivalisの血清型比率は, A型が9株 (33.3%), B型が18株 (66.6%) とB型株の分離頻度がA型株の2倍であった。これらの結果から成人性歯周炎とB. gingivalisの関係はB型株においてより強いものと考えられる。
  • 林 崇韜, 村橋 慶宣, 澁谷 俊昭, 白木 雅文, 岩山 幸雄
    1991 年 33 巻 2 号 p. 364-370
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ヒトの健常および炎症歯肉組織中のコンドロイチン硫酸異性体 (コンドロイチン4硫酸, コンドロイチン6硫酸, デルマタン硫酸) プロテオグリカン (PG) の局在性を比較検討するために, 2種類のモノクローナル抗体2-B-6, 3-B-3) を用い免疫組織化学的に検索した。その結果健常歯肉結合組織中に広く見られたコンドロイチン4硫酸, デルマタン硫酸PGが炎症による組織破壊に伴い染色性が減弱した。またコンドロイチン6硫酸PGは健常歯肉組織中の血管周囲ならびに上皮と上皮下結合組織の境界部に限局して認められたが, 炎症組織ではその染色性が減弱した。以上の結果から, コンドロイチン硫酸異性体PGが歯肉炎症と密接に関係していることが示唆された。
  • -プラークコントロール中止後の超微形態の変化について-
    小川 哲次, 河内 美穂, 寿賀野 泰司, 廣畠 英雄, 河口 浩之, 藤谷 百合, 佐藤 裕紀, 白川 正治, 岡本 莫
    1991 年 33 巻 2 号 p. 371-384
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    実験的に形成したlong junctional epithelium (LJE) におけるプラークコントロール中止後の変化を超微形態学的に検討した。実験的LJEは, ビーグル犬2頭の小臼歯およびその頬側歯周組織に対して歯肉切開・剥離と歯槽骨削除を行い, 裸出歯根面のラミニン (1mg/ml, EYラボラトリーズ社) 塗布法と歯根周囲の裸出骨面をポリカーボネートメンブレン (孔径3μm, ヌクレポア社) で被う骨遮断法を併用し, 術後4週間経過することにより形成した。プラーク付着実験では, LJEを形成した実験群とLJEを形成しない対照群に対して, ソフトダイエットでの飼育とブラッシングの中止によりプラークの付着を促し, 4週までの変化を電顕的に観察した。
    その結果, 実験群では, プラークコントロール中止後, 対照群と同様に1~4週でLJE細胞間に裂隙が生じて, 次第に深くなり初期ポケットが形成された。超微構造では実験期間を通じて上皮付着構造に変化はなかったが, 2~4週の歯冠側部のLJEには細胞剥離や変性像および細胞間隙の拡大と好中球浸潤がみられたが, 根尖側部のLJEにはこれらの変化は及んでいなかった。
  • -その成立と結合組織性再付着との関係について-
    河内 美穂, 小川 哲次, 藤谷 百合, 寿賀野 泰司, 廣畠 英雄, 河口 浩之, 佐藤 裕紀, 白川 正治, 岡本 莫
    1991 年 33 巻 2 号 p. 385-395
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周外科治療後の歯根面に生じる長い付着上皮と結合組織性再付着の関係について組織学的に検討した。実験には, 1~2歳のビーグル犬4頭の小臼歯とその頬側歯周組織を用いた。Widman改良法と歯槽骨削除により裸出させた歯根のセメント質を完全に除去した。これらの歯根を2群にわけ, 一方には骨遮断群として骨面をポリカーボネートメンブレンで被い, 他方にはメンブレン未処置の非遮断群とし, 歯肉弁を復位して縫合した。処置後8週経過時までの光顕標本を作製して観察した。その結果,
    1. 骨遮断群では, 4~8週で裸出象牙質面のほぼ全域を再生付着上皮が被い, 新生セメント質の形成はほとんどみられなかった。
    2. 非遮断群では, 4週で骨遮断群と同様に裸出象牙質面に長い再生付着上皮が接していたが, その根尖側部には新生セメント質が形成され, 8週には再生上皮の歯冠側移動に伴って新生セメント質が歯冠側に伸展していた。
  • 山田 了, 松本 恭宜, 高橋 敬人, 山之内 一也, 青木 栄夫, 佐藤 徹一郎, 石川 達也, 玄 丞烋, 筏 義人
    1991 年 33 巻 2 号 p. 396-405
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 骨欠損を形成し, その根表面に生体内吸収性膜, 乳酸― グリコール酸共重合体膜を応用した実験群と, 膜を応用しない対照群を比較し, GTR法における保護膜として生体内吸収性膜が有効であるか否かを検索した。実験には5匹の雑種成犬の下顎P3, P4を用いた。実験期間は8週とし, 実験終了後, 標本を作製し, 病理組織学的に検索し, 以下の結果を得た。
    1. 上皮の根端側方向への侵入は, 実験群で0.25mm, 対照群で0.39mmであった。
    2. 新生セメント質形成量は, 実験群で1.68mm, 対照群で0.41mmであった。
    3. 新生骨形成量は, 実験群で0.84mm, 対照群で0.46mmであり, 実験群では欠損部の42%を覆っていた。
    4. アンキローシスと著しい根面吸収は実験群では, 認められなかった。
    以上の結果より, 乳酸― グリコール酸共重合体膜は, GTR法において有効な保護膜であることが証明された。
  • 第2報14C-Proline標識コラーゲン性タンパク質について
    鈴木 邦治, 遠藤 克典, 北島 達成, 宮内 仁江, 藤川 謙次, 村井 正大, 前野 正夫, 鈴木 直人, 大塚 吉兵衛, 鈴木 貫太郎
    1991 年 33 巻 2 号 p. 406-415
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ヒトの歯槽骨由来の骨芽細胞様細胞の特性を調べるために, 細菌性コラゲナーゼで処理した歯槽骨片から増殖してくる細胞群 (E-AB) と無処理の骨片から増殖してくる細胞群 (N-AB) とに分けて培養し, 両細胞群のタンパク質合成を14C-prolineの取込みで比較検討した。両細胞群の培養上清に分泌するタンパク質に占めるコラーゲン性タンパク質の割合は, E-ABで12.5%, N-ABで10.4%と異なり, その結果放射能 (14C) の取込量はE-ABの方がN-ABよりわずかに高い値を示したが, 両細胞群の全タンパク質合成能には差異を認めなかった。両細胞群の分泌タンパク質をコラゲナーゼあるいは臭化シアンで処理したものをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離して比較すると, 両細胞群が合成する各タンパク質の量的比率には相違はあるが, 種類は類似していた。また, 両細胞群ともにI型コラーゲンの他に少量のIII型コラーゲンを分泌し, 型別合成比率もほぼ同程度であった。索
  • 小高 博, 笹本 幸資, 小延 裕之, 扇 正一, 鴨井 久一
    1991 年 33 巻 2 号 p. 416-426
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    日本人の糖尿病を有する成人型歯周炎患者の歯肉縁下プラークよりActinobacillus actinomycetemcomitans 38菌株を分離培養した。分離培養した菌株の生化学的性状および血清学的性状をATCC29523, Y4, NCTC9710を標準として検索した。
    分離培養した菌の生化学的性状として8種類の糖をPY培地に添加し糖発酵パターンを検索した。血清学的性状検査として3種類の抗血清型特異血清と, オートクレープ処理して得られた抗原を用いて, オクタロニー法を応用した血清型分類を行い, Rap ID NH systemを用いた同定を行った。
    D-Mannose, Levurose (D- (-) Fructose), Galactose, D (十) -Xyloseの4種の糖について発酵能を示し, Rap IDNHsystemによりCodeNumber“2102”を示した。血清型については, 全ての菌株がa型であった。以上のことから全ての菌株は同様の性状を有していることが明らかとなった℃
  • 上田 雅俊, 稲田 芳樹, 寺西 義浩, 中垣 直毅, 山岡 昭, 上村 参生, 熨斗 秀光, 神原 正樹, 小西 浩二
    1991 年 33 巻 2 号 p. 427-432
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    露出根面にスケーリング (S群) およびルートプレーニング (R群) を施したものと露出根面 (EC群) および非露出根面 (IC群) を多角的に観察した結果, つぎのような結論を得た。すなわち, X線分析計によるCa, PおよびCa/P比の平均値は, 各数値ともにEC群, S群, R群, IC群の順に数値は低値を示していた。また, 走査型電顕像の, S群では, キュレットタイプスケーラーによる条痕が明白に認められ, それがプレーニングすることにより, その条痕が浅くなる傾向が観察できた。さらに, X線光電子分光分析法による観察における, カルシュウム, リン, 酸素, フッ素, および窒素の相対濃度は, S群とR群とを比較すると, 酸素以外の各成分において, R群が低値を示していた。また, カルシュウム, リンおよびフッ素の結合エネルギーは, 各実験群間ではほとんど差が認められなかった。接触角の観察結果において, S群およびR群は, IC群とほぼ同様の値を示していた。
  • 松村 政昭, 深井 浩一
    1991 年 33 巻 2 号 p. 433-447
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Interdental brush, Interdental space, Interdental brushing, Plaque removal, Plaque control要旨: 歯間ブラシの効果的な使用法を明らかにするためにモデル上で歯間ブラシの径や刷掃方向と歯間空隙との関係を検討した。また健常者でこの関係の追試と歯間空隙量の分布を調査した。さらに歯間空隙量や刷掃方向によるプラーク除去効果を検討した。その結果, 1. 歯間ブラシと歯間空隙量の関係は歯間ブラシの毛束傾倒時直径A2) で示せた。2. 歯間ブラシを1方向刷掃する場合はA2の1. 3~1. 6倍, 歯肉縁に沿った4方向刷掃ではA2 (の1. 6~2. 0倍の歯間空隙量を必要とした。3. 健常者の歯間空隙量は0. 8±0. 22mmで, 顎の上下・左右で差はなく, 小臼歯部, 前歯部, 大臼歯部の順に狭くなった。4. 健常者で歯間ブラシに求められる最小径は0. 3~0. 4mm A2) と推定された。5. プラーク除去率は刷掃方向が増すほど向上した (1方向: 49. 5%, 2方向 : (76. 9%, 4方向: 92. 7%) 。6. 刷掃方向別では1方向は狭い空隙に, 4方向は広い空隙に適した。7. ほぼ同一の歯間空隙では「きつめ」の1方向より, 「ゆるめ」の4方向刷掃の効果が高かった。
  • 岩崎 直弥, 伊藤 弘, 原 良成, 蟲明 徹, 小延 裕之, 沼部 幸博, 鴨井 久一, 杉原 邦夫
    1991 年 33 巻 2 号 p. 448-457
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患患者において, 塩化セチルピリジニウムを用いて歯周ポケット内を洗浄し, 歯周疾患罹患部位の臨床パラメータおよびポケット内細菌叢の変化について検索を行った。その結果, 臨床所見では, 塩化セチルピリジニウムによる洗浄群 (CPC), 滅菌蒸留水による洗浄群 (DW), プラークコントロールのみの群 (Cont) においてPlaque Index, Gingival Indexに改善傾向がみられた。細菌叢の変化では, CPC群において持続的に総菌数および運動性桿菌数が減少したが, DW群では, その効果は低く不安定で, Cont群においてはほとんど変化がなかった。以上のことより, 歯周ポケット内洗浄が歯肉縁下細菌叢の総菌数を減少させ, さらに洗浄液としてのCPCの使用が, 歯周疾患の病原性細菌と考えられる運動性桿菌を減少させるのに有効な手段であることが示された。
  • 第1報毛の長さの異なる歯間ブラシのプラーク除去効果について
    瀬戸口 尚志, 内田 博文, 松永 信, 中馬 雅彦, 浜田 義三, 末田 武
    1991 年 33 巻 2 号 p. 458-468
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯間ブラシの仕様の違いがプラーク除去効果に及ぼす影響を調べるために, 毛の長さ (毛丈) の異なる3種の歯間ブラシ (3mm, 5mm, 7mm) を試作し検討を行った。成人性歯周炎と診断された初診の患者13名を被験者とし上記の歯間ブラシを3週間使用させ, 臨床状態の変化 (Probig Depth, Attachment Level, Gingival Index, Bleeding on Probing), およびプラーク付着量, プラーク付着率の変化を調べた。
    その結果, いずれの毛丈の歯間ブラシを使用した場合も臨床状態の改善がみられ, プラークの付着状態も経時的に改善を示した。歯間空隙が狭い部位では指導後1週間後, 2週間後では, 毛丈の短いブラシ (毛丈: 3mm) のプラーク除去効果が高かったが, 3週間後では, 歯間空隙の大きさにかかわらずいずれの毛丈の歯間ブラシでも高いプラーク除去効果が見られた。また, 歯間空隙の大きな部位でも毛丈の短いブラシで十分に清掃可能であった。
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