日本歯周病学会会誌
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33 巻, 4 号
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  • -高周波電気メスおよび外科用メスによる歯肉切除後のフィプロネクチンの-局在-
    西澤 和利, 仲谷 寛, 鴨井 久一
    1991 年 33 巻 4 号 p. 751-766
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    外科用メスと高周波電気メスとによる創傷治癒過程におけるフィプロネクチンの局在を比較する目的で, ラットに外科用メスおよび高周波電気メスにより歯肉切除を行い, 経時的なフィプロネクチンの局在を間接蛍光抗体法により観察した。外科用メスでは, 術後12時間, 1日たおいて, 線維素性滲出物に一致してフィプロネクチンが強陽性に認められた。高周波電気メスでは, 同時期において, 伸展, 増殖する上皮直下の結合組織にフィプロネクチンの強陽性所見が観察された。創傷の閉鎖は高周波電気メスの方がわずかに遅延する傾向にあった。外科用メスでは, 術後5日, 高周波電気メスでは術後7日に肉芽組織におけるフィプロネクチン陽性のピークが認められた。以上の結果より, 高周波電気メスによる創傷では, フィプロネクチンが創傷面に存在しないため, 上皮の再生が遅延し, さらに, 結合組織の治癒にも影響をおよぼすことが示唆された。
  • 扇 正一, 浅木 信安, 青木 護, 中島 茂, 松下 正博, 長弘 謙樹, 鴨井 久一
    1991 年 33 巻 4 号 p. 767-781
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    血糖値のコントロールされていない糖尿病患者100名を対象にアンケート調査を行い, その内から有歯顎者50名を選択し, 血液検査, 歯科臨床診査および細菌検査を行った。50名の糖尿病患者の内, NIDDMは44名88%, IDDMは6名12%であった。血糖値は88%, フルクトサミンは78%が正常値以上を示し, LDLは90%が正常値以下を示した。しかしながら, 総コレステロールは88%, 中性脂肪は68%, HDLは78%が正常値を示した。
    糖尿病, 成人性歯周炎, 難治性歯周炎の臨床結果を比較したところ, PlIはNIDDM1.4±0.1, IDDM1.3±0.4, 成人性歯周炎0.3±0.1, 難治性歯周炎1.0±0.2であった。GIは, NIDDM1.7±0.1, IDDM1.8±0.2, 成人性歯周炎0.7±0.2, 難治性歯周2.0±0.0であった。PDは難治性歯周炎が最も深く6.9±0.5mm, 次いで成人性歯周炎6.0±0.6mm, IDDM5.2±0.2mm, NIDDM4.7±0.3mmであった。
    細菌検査結果からNIDDMはAaが25.0%, Pgが54.5%, Piが4.5%の病原性を示し, IDDMは、Aaが16.7%, Pgが50.0%, Piが0%の病原性を示した。これに対し, 成人性歯周炎はAaが0%, Pgが70.0%, Piが0%の病原性を示し, 難治性歯周炎はAaが58.3%, Pgが66.7%, Piが0%の病原性を示した。
    NIDDMに関して臨床診査結果と細菌検査結果とを統計学的に解析したところ, 4≦PD<7mmでAaPgが, 1%以下の危険率で有意に多く検出された。GIにおいてもGI2の被験部位よりAaPgが, 1%以下の危険率で有意に多く検出された。
    以上の事から, 血糖値がコントロールされていない糖尿病患者は, 高率に歯周疾患に罹患しており, 難治性歯周炎と類似している事が示唆された。
  • 今井 洋
    1991 年 33 巻 4 号 p. 782-798
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ラット実験的歯周炎にて歯周組織内への細菌侵入状況を調べた。無菌飼育 (GF) ラットと普通飼育 (CV) ラットを用い, ゴム輪による機械的刺激を歯周組織に与え, P. gingivalisを投与し, 細菌侵入と炎症反応を病理組織学的に観察した。その結果, 1) 潰瘍形成と多形核白血球 (PMN) の集積が認められたCV― ゴム輪挿入群では歯周ポケット潰瘍面直下のPMN層に細菌が認められ, PMNは多数の細菌を貪食し, 深部では細菌侵入は認められなかった。2) CV― ゴム輪非挿入群では細菌侵入は認められなかった。3) GF群ではゴム輪挿入の有無にかかわらず細菌侵入は認められなかった。4) 本実験では, 組織内細菌は上皮の断裂部位付近のみに認められ, 集積したPMNによる貪食のために深部組織への侵入は阻止されていることが推測された。
  • -その微細構築と透過性について-
    李 繁良
    1991 年 33 巻 4 号 p. 799-823
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ラット歯槽部骨膜血管の加齢変化を検索する目的で, Wistar系雄性ラット生後1, 3, 6, 12および24ヵ月の下顎第一臼歯部の舌側歯槽部骨膜を詳細に観察した。すなわち, その部の微細血管鋳型を走査電顕で, また血管内皮の透過に関する超微構造とtracerによる透過性との関係を透過電顕で比較検討を行った。その結果, 加齢に伴う骨膜, とくに骨芽細胞の形態変化に対応して骨膜毛細血管の分布密度および内皮細胞の透過性が加齢的に低下していた。つまり, 骨芽細胞が活発な骨基質産生を行っていた生後3ヵ月までは, 毛細血管は骨芽細胞の外側面に密に分布し有窓型を呈し, 窓からtracerが透過していたが, 生後6ヵ月以降, 骨芽細胞の骨基質産生がほとんど認められない休止期には毛細血管は減少傾向を示し, 連続型を呈していた。その時期, tracerは主に形質膜小胞から透過して, 透過経路が変化していることが明らかになった。
  • 玉木 修
    1991 年 33 巻 4 号 p. 824-839
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    慢性辺縁性の炎症性病変が波及しにくい前庭開窓部では, 遊離歯肉移植後の修復過程が移植床の骨膜の有無によってどのように影響されるのかを歯周組織の破壊と再生という見地から検索した。実験動物としてビーグル成犬9頭を用い, 上下顎切歯部と上顎左右前臼歯部に, 右側には骨膜上, 左側には骨面上の遊離歯肉移植を試み, 術後1, 2, 4週, 2, 3, 6ヵ月, 1, 2年の実験期間で肉眼的, 並びに組織学的に観察した。
    骨面上移植では術後早期に高度の骨吸収が生じ, 治癒は骨膜上移植よりも1週程度遅れたが, 術後3ヵ月を経る頃から歯根膜細胞の存在する根面に沿って新生骨梁が形成され, 組織複合体としての修復が得られた。また, 術後の審美性では, 切歯部の骨面上移植部で周辺組織との境界が目立たずに優れている例があったが, 移植床の狭い前臼歯部では移植部は盛り上がった形状を呈していた。
    歯周組織の破壊は外科的侵襲の小さい骨膜上移植部では移植床の歯槽骨表層に留まっていたのに対して, 侵襲の大きい骨面上移植部では深部歯周組織に及び, 歯槽骨の完全な消失を起こした。その結果, 破壊後の組織修復は, 前者では主に歯肉領域で行なわれるのに対して, 後者では歯周組織全体で行なわれることが多かった。組織修復の過程における歯周組織の再生という点では, 直接的には歯根膜細胞が歯周組織複合体としての再構成に大きく関与していることが示唆された。
    今回の検索の結果, 歯周組織の破壊には炎症性病変が, 再生には歯根膜が大きく関与していることが示され, 移植部の可動性, 後戻り現象, さらには審美性などは, 破壊後の再生が歯周組織複合体として再構成し得るか否かに関連すると思われた。
  • 北村 浩之
    1991 年 33 巻 4 号 p. 840-863
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    GTR法による選択的細胞誘導下での種々な根面性状に対する付着様式を超微構造学的に検討した。実験には, 人工的歯周炎を惹起させたサルの上下顎左右側中切歯, 側切歯および犬歯に歯肉剥離掻爬手術を施した。そして, 各歯の露出根面に対し, 1) ルートプレーニング, 2) ルートプレーニング後クエン酸塗布3) セメント質一層掻爬, 4) セメント質一層掻爬後クエン酸塗布のいずれかの根面処理をサル1頭ずつに行った。そして, 上下顎左側中切歯, 側切歯および犬歯の処理根面と歯肉弁間には, Mi1lipore®フィルターを挿入し, 実験群とした。一方, 上下顎反対側中切歯, 側切歯および犬歯の根面と歯肉弁間には, フィルターの挿入を行わず, 対照群とした。観察期間は1, 2, 4および8週とした。その結果, 各根面性状において, 実験群と対照群は同様の付着様式を示した。すなわち, 掻爬象牙質根面では, セメント質形成を示す新生線維の密な集積がみられた。これに対し, 掻爬セメント質根面では, 新生線維が根面に垂直に進入する線維性付着がみられた。そして脱灰掻爬象牙質根面ならびに脱灰掻爬セメント質根面では, 新旧線維の嵌合がみられた。以上のことから, GTR応用の如何に関わらず, 付着様式は根面性状によって決定されることを示唆した。
  • 熱田 勤, 加藤 熈, 奥口 真澄, 久保木 芳徳
    1991 年 33 巻 4 号 p. 864-871
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    現在GTR法に用いられている生体内非吸収性の膜に代わり, 生体内吸収性のGTR用コラーゲン線維膜を開発する目的で, コラーゲン膜を試作し, 生体内吸収状態についてラットを用いて基礎実験を行った。まず, コラーゲン線維膜の吸収速度を遅くするためにヘキサメチレンジイソシアネート (HMDIC) による人工的架橋を導入し, 処理濃度により吸収速度の調節を試みた。その結果, ラット背部皮下においては10% HMDIC処理コラーゲン線維膜は4週まで吸収されなかった。しかし, 上顎第1臼歯口蓋側歯肉に埋入し, 歯肉内での吸収状態を観察した結果, 2週間以内で吸収されていた。そこで, さらに4℃, 48時間透析により太い線維からなる強化コラーゲン線維膜を作製し, その吸収性を検討した結果, 背部皮下で4週間, 歯肉内で2週間吸収されないことが確認された。以上から, 著者らの作製した強化コラーゲン線維膜はGTR法への応用の可能性が高いと考えられた。
  • 熱田 勤
    1991 年 33 巻 4 号 p. 872-885
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 第1報で報告した強化コラーゲン線維膜を根分岐部病変部のGTR法に応用した場合の効果を評価する目的で行なった。カニクイザル上下顎臼歯部の根分岐部にII級とIII級の外科的骨欠損を作り根面のセメント質を取り除いた後, 実験群は強化コラーゲン線維膜によるGTR法を行い, 対照群はそのまま弁を戻した。観察期間は2, 4, 8週とし, 臨床診査と病理組織学的観察および組織学的計測を行った。臨床診査結果では, 2週後のみprobing depthとclinc alattachment levelの根尖側移動量が実験群でやや大きかったが, 他は両群間に差はなかった。病理組織学的観察結果では, 実験群は治癒初期に上皮の侵入が抑制され, その後は対照群に比べて歯槽骨とセメント質の再生状態がよくなる傾向が見られた。特に上皮侵入の無かった歯を比較すると, この傾向はより顕著であり, 強化コラーゲン線維膜のGTR法への臨床応用の可能性は大きいと思われた。
  • 中島 啓介, 冨永 由美子, 石川 烈
    1991 年 33 巻 4 号 p. 886-896
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    著者らの教室で行ってきた血清IgG抗体価測定法を迅速かつ検体処理能力の高いものとすることを目的として測定法の改良を試みた。標準血清を連続希釈して標準血清曲線を描き, すべての被験血清はこの標準曲線上にのるものとして, 単一希釈した被験血清からその抗体価を算出した。24名の患者血清についてPorphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Actinobacillus actinomycetemcomitansおよびFusobacterium nucleatum 4菌種に対する抗体価を10回ずつ測定した結果, 改良した測定法では測定時間は短縮できなかったが単位時間当りの検体処理数が約6倍に改善された。しかし, 比較的抗体価が低い場合は今までの抗体価より高く算出されるため, 改良型血清抗体価測定法は比較的高い抗体価を示す血清をスクリーニングする際には有効であると考えられた
  • 本田 準虎, 吉村 昌敏, 森本 淳史, 小出 修身, 白木 雅文, 岩山 幸雄
    1991 年 33 巻 4 号 p. 897-906
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    イヌ下顎骨より歯槽骨と非歯槽骨を摘出, プロテオグリカンを抽出し, これをゲル濾過カラムを用いたHPLCとSDS-PAGEにより検索した。さらにプロテオグリカンから分離, 精製したグリコサミングリカンを定性, 定量分析し, 歯槽骨プロテオグリカンの特徴を非歯槽骨プロテオグリカンとの比較において検討し, 次の結果を得た。骨組織中のプロテオグリカンは脱灰条件 (0.25MEDTA) 下で, 効率よく抽出された。しかし, 歯槽骨のプロテオグリカン量は非歯槽骨に比べて1/2以下であった。CsC1沈降平衡遠心で得られた粗精製プロテオグリカンは分子量76kDaと70kDaの2種類の低分子型プロテオグリカンと推察された。一方, プロテオグリカンから分離精製したグリコサミノグリカンは, 歯槽骨, 非歯槽骨ともにコンドロイチン硫酸が主要成分であった。
  • 松江 美代子, 小方 頼昌, 横田 祐司, 遠藤 弘康, 松江 一郎
    1991 年 33 巻 4 号 p. 907-920
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Transforming growth factor-β (TGF-β) の創傷治癒における役割に注目し, 実験的にラット皮下に埋入したチャンバー (テフロン, 内径8mm, 長さ20mm) 内にTGF-β の投与を行い, 3, 5, 9, 12日目までの結合組織修復における影響を検索した。また, TGF-β とEGFを併用した場合, I型コラーゲンを投与した場合と比較を行った。
    TGF-β を単独投与すると, チャンバー内に滲出した単核細胞, 特に線維芽細胞がコラーゲンを顕著に産生するのが認められ, 形成された肉芽組織中のDNA量の増加を認めたことから, 細胞の分裂増殖が活発であると考えられた。しかし, その後, コラーゲン合成の抑制が観察された。TGF-β とEGFを併用した場合は, 初期のコラーゲン合成, および細胞の分裂増殖は少なく観察された。コラーゲン投与群では, コラーゲン量は多く観察されたが, DNA量の減少, 細胞増殖の抑制が認められた。
    総合的に見て, TGF-β (使用濃度0.5, 1.5ng/ml) を単独で使用した場合, 組織の修復に有利に働くと考えられた。
  • 菅谷 彰, 杉山 裕一, 辻上 弘, 田村 利之, 渕田 恒晴, 堀 俊雄, 熊田 秀文, 梅本 俊夫
    1991 年 33 巻 4 号 p. 921-928
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周治療用骨補填材 (TCP) に抗生物質の効果を付加する目的で, テトラサイクリン (TC) 固定化コラーゲン-TCP複合体を試作し, 本材の歯周治療における有用性について検討した。その作製法はアテロコラゲン溶液中に100mg/mlの割合でTCを溶かし, アンモニアガスで中和後, TCPにコーティングしUV照射により架橋処理を行った。本材からのTCの徐放性については経時的に溶出するTC濃度を吸光度及び抗菌活性により測定した。またin vivoにおける組織反応についても検索を行った。その結果徐放性に関しては抗菌活性を示すTC濃度の溶出が測定開始後5日まで認められた。組織反応についてはTC未使用群とほぼ同様, 良好な歯周組織再生を示した。
    以上の結果より, TC固定化コラーゲン-TCPは有効なTCの徐放性を有する有用な歯周治療用骨補填材であることが示唆された。
  • 國松 和司, 田中 秀高, 峯 直子, 村上 浩典, 加藤 伊八
    1991 年 33 巻 4 号 p. 929-935
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患における歯肉溝滲出液 (GCF) のタンパク濃度の臨床パラメーターとしての有用性を検討した。対象は成人型歯周炎患者 (23名) で, 平均年齢は52.7歳であった。被検部位はレントゲン写真上で明らかな歯槽骨破壊の認められる歯周ポケット93ヵ所を任意に選択した。本研究に用いたパラメーターは, Plaque Index (PlI), GCF量, probing depth (PD), attachment level (AL), Gingival Index (GI) および動揺度 (Mo) の6種類であった。GCFは, ペリオペーパー ®を 歯肉縁下約1mmに3分間保持, 採取し, ペリオトロン (®6) 0 00にて液量を測定した後, Lowry法を用いてタンパク濃度を算出した。その結果, タンパク濃度と6種のパラメーターとの相関係数は, 上記の記載順に0.41, 0.70, 0.31, 0.29, 0.60および0.39であり, Spearmanの順位相関ですべて有意であった (p<0.01) 。この中で, タンパク濃度は特にGCF量と高い相関を示した。以上より, タンパク濃度もまた歯周疾患の有効なパラメーターとなりうる可能性が示唆された。
  • 木村 三右衛, 三辺 正人, 飯田 正人
    1991 年 33 巻 4 号 p. 936-942
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ミノサイクリンの投与方法および投与部位の局所環境の差異によって, 歯周ポケット内ミノサイクリン貯留性がどの程度影響を受けるのかについて, 臨床的検討を行った。
    方法は, ミノサイクリンの経口投与法, イリゲーション法および徐放性軟膏注入法の各投与法における経日的なポケット内ミノサイクリン濃度および残留率の比較検討を行った。また徐放性軟膏注入法については, 投与前のポケットの深さ, および歯肉の炎症程度の差異が, ポケット内ミノサイクリン貯留性に及ぼす影響についても検討した。ポケット内ミノサイクリン濃度の測定には, HPLC法を用いた。
    結果として, 経口投与法においてはミノサイクリンの残留率は100%であった。イリゲーション法および徐放性軟膏注入法はともに投与後3日目から5日目にかけてミノサイクリンの貯留性は低下した。また, 徐放性軟膏注入法においては歯肉炎症の認められない深いポケットにおいてミノサイクリンの貯留性が良好であった
  • 西岡 千春, 木島 研, 橋本 武典, 米田 栄吉, 堀内 博
    1991 年 33 巻 4 号 p. 943-949
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    若年の女子生徒の歯周疾患の状態を評価し, CPITNによる集団へのスクリーニング法の正確さを評価した。仙台市内の女子中高生1444人を対象に一次診査を行った。対象歯は上下顎両側第一大臼歯, 上顎右, 下顎左側中切歯とした。CPITN値が13以上, または一歯以上code4を有する43人の被験者を二次診査に選んだ。東北大学歯学部附属病院にて歯周ポケット, BI, 歯石の有無を診査した。三次診査は36人の全顎X線写真から歯槽骨吸収を計測した。code1と2の有病者率は全学年で約80%であった。code2は学年が増すにつれ, codeOと1の減少に伴い増加した。code0で100%, code1で65.5%, code2で71.1%, code3で61.1%, そしてcode4では33.3%が二次診査結果と一致した。三次診査を受けた全員に骨吸収が認められ, 軽度から中等度の辺縁性歯周炎が存在した。CPITNは一次スクリーニング法として信頼性があると結論づけられた。
  • 上田 雅俊, 寺西 義浩, 中垣 直毅, 山岡 昭, 井上 純一, 久米 満, 尾上 孝利, 福島 久典, 佐川 寛典, 田中 淳司, 田中 ...
    1991 年 33 巻 4 号 p. 950-958
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    慢性剥離性歯肉炎患者について, 臨床的, 病理組織学的および細菌学的に検討した結果, つぎの結論を得た。すなわち, 臨床的には, 歯肉の上皮が剥離し, 光沢をおび鮮紅色を呈する増悪期と, 比較的その症状の軽減した緩解期とを, ある周期をもって繰り返していた。病理組織学的に, 上皮突起は扁平化をきたし, 錯角化を呈した上皮組織は薄くなり, 上皮細胞間隙に炎症細胞, そして上皮下には著しいリンパ球の浸潤が認められた。基底細胞層に水症性変化が, そして上皮下に微小水庖の形成がみられた。電顕的に, 上皮細胞間隙および基底細胞と基底板が分離した問に, amorphous substanceが認められた。また, 基底板の断裂やデスモソームの数の減少がみられた。細菌学的には, 唾液, 歯肉溝滲出液, 舌苔およびポケット内の歯垢の緩解期と増悪期における細菌数, 酸素要求性および細胞形態による細菌分布を比較すると, 両時期の問に一定の傾向はみられなかった
  • -第1報K-6ダイアグノスティックシステムを用いた咬合診査について-
    坂上 竜資, 樋口 幸男, 平中 良治, 坂上 千佳子, 田西 和伸, 戸田 郁夫, 川浪 雅光, 加藤 熈
    1991 年 33 巻 4 号 p. 959-965
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    病変の進行した歯周炎患者において, 咬合性外傷を引き起こす可能性のある咬合異常がどの程度に存在するかを知る目的で, 正常者18人および中等度と高度の歯周炎患者37人を選び, アンケート診査と臨床的咬合診査, およびK-6ダイアグノスティックシステムを用いて下顎運動と咀囑筋の筋電図を記録し分析した℃その結果, 歯周炎患者群では, 終末位速度すなわち閉口時の咬合i接触直前の速度が有意に低下している者が多く, さらにガム咀囑時にも顎運動の経路が安定せず顎運動の終末が一定位置に収束していない者がより多く認められた。これらの結果は, 歯周炎患者では, 咬頭嵌合位が不安定な者が多いことを示すものと考えられる℃一方, 筋活動を分析すると, 歯周炎患者には強い咬みしめた時の筋活動時の電圧値が低い者が多くみられたが, 安静時の筋電図には差は認められなかった。
  • 池田 克巳, 下島 孝裕, 辰巳 順一, 細谷 淳一, 真喜屋 睦子, 大塚 秀春, 黒沢 憲士, 佐藤 敦子, 椿 佳代子, 栗原 徳善, ...
    1991 年 33 巻 4 号 p. 966-976
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉炎・歯周炎および口内炎用治療薬として, グリチルリチン酸ニカリウム, アラントイン, ヒノキチオールおよび塩化セチルピリジニウムを含有する水溶性ゲル軟膏 (PMG) の臨床効果を確認した。治験は歯肉炎あるいは歯周炎を有する患者93例および口内炎患者42例を対象に, 歯肉炎・歯周炎は3施設, 口内炎は2施設で実施し, 以下の結論を得た。
    1) 歯肉炎・歯周炎の全般改善度は, 著明改善で32%, 中等度改善までの累積パーセントでは76%に達する効果を示し, 有用性においても有用以上が73%を示した。一方, 口内炎の全般改善度は, 中等度改善以上で100%の効果を示し, 有用性においても有用以上が98%を示した。
    2) 歯肉炎・歯周炎において局所的な副作用が4例認められた。一方, 口内炎の症例では2例に副作用を認めたが, 歯肉炎・歯周炎の4例を含めこれら症例は, 一過性の刺激および偶発的なものであった。なお, 全身的副作用は全く認められなかった。以上の成績から, 本治験薬は医薬品として歯肉炎・歯周炎および口内炎に対し, 有用性の高い薬品と考える。
  • ニューラルネット型エキスパートシステムによる検討
    中島 啓次, 渡辺 幸男, 池田 克已
    1991 年 33 巻 4 号 p. 977-988
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    若年者の歯周疾患の実態とその意識との関連性について, ニューラルネット型エキスパートシステムを用いて, 認知科学的側面から検討を行なった。すなわち, すでに日本歯周病学会会誌に掲載済みの若年者の歯周疾患とその意識に関する地域の若年者 (12~18歳) 3, 886名を対象とした疫学的研究1) の調査データから, 問診表において歯周疾患と関連の認められた項目 (歯磨き回数, 口腔清掃指導を受けた場所, 歯肉の腫れ, 歯磨き時の出血, 歯科医院で歯周疾患を指摘された経験) の結果をニューラルネット型エキスパートシステム“網力太”にパターンとして学習させることによって, プロービングデプスを予測し, これを実際のプロービングデプスと比較検討した。その結果, 学習に用いなかった個人のデータにおいて, 問診表の結果のみを学習させた場合の正当率の平均値は70±8%, また歯肉の炎症状態を加えて学習させた場合の, 平均値は88±7%が実際の調査データと一致した。
  • 原賀 義昭, 藤村 哲之, 冨安 太郎, 田中 靖彦, 小川 英造, 松尾 繁, 栢 豪洋
    1991 年 33 巻 4 号 p. 989-994
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    塩化アルミニウムと硫酸亜鉛を主成分とした象牙質知覚過敏症治療剤の臨床的効果について, 二重盲検法により検討し, 次のような結果を得た。
    1. 患歯別にみた本剤の有効率はi擦過刺激に対し89.2%, 冷水刺激に対し76.3%, 冷気刺激に対し71.6%であり, いずれも対照群との間に有意の差が認められた。また, 患者別にみた有効率でも同様の結果が得られた。
    2. 有効率の経日的変化は実験群において, 冷水刺激に対し3日後30.3%, 1週後で45.8%, 2週後では76.3%, 冷気刺激に対しては3日後20.8%, 1週後33.3%, 2週後71.6%であった。擦過刺激に対しては3日後の有効率は実験群がわずかに上回る程度であるが (実験群21.7%, 対照群20.8%), 1週後, 2週後と実験群の有効率が上回り, その差も大きくなった。
    3. 副作用は何ら認められず, 使用感のアンケート調査結果で, 良いと答えた術者の割合は実験薬で46.7%, 対照薬で39.3%であった。以上の結果より, 本剤は象牙質知覚過敏症に対して有効であると思われる。
  • 木村 三右衛, 三辺 正人, 飯田 正人
    1991 年 33 巻 4 号 p. 995-1002
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究ではlocaldurgdeliverysystem (LDDS) と, rootplaning (RP) を併用する際の有効なLDDSの使用時期を明らかにするための臨床的検討を行った。
    方法はRP前, RP後, RP前後にミノサイクリン徐放性軟膏の局所投与 (1回/Week×4) を行った。臨床診査は初診時, RP直前, RP2ヵ月後にplaque index, gingival index, bleeding on probing (; BOP), probing attachment levelの測定を行った。
    RP前にミノサイクリン徐放性軟膏の局所投与を行うことにより, BOP率の減少および臨床的付着獲得量の増加が認められた。また, RP前にBOPが認められない部位においてはRP後に, 臨床的付着量の増加を示す率が高くなることが解った。
  • 5年後の推移
    佐藤 雅人, 三上 格, 長谷川 明
    1991 年 33 巻 4 号 p. 1003-1031
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    平成2年1月から12月までの1年間に, 当科で施行された歯周外科手術について臨床集計による観察を行い, 5年前の臨床集計の結果と比較し検討を加えた。
    その結果, 歯周外科手術数は, 176症例, 男性107例, 女性69例, 平均年齢47.3歳であった。手術部の疾患の進行度は, 重度63.5%, 中等度36.6%, 軽度0%であった。手術目的別では, 歯周ポケットの除去を目的とした手術が全体の65.1%を占め, 次いで根分岐部病変の改善を目的とした手術が多かった, 手術別分類では, フラップ手術が159例と最も多く, 次いで歯周歯槽骨外科手術57例, 根分岐部病変外科手術38例の順に多かった。また, 85.5%が再評価後に手術され, 手術前プラークコントロールレコードは, 0-20%が全体の58.6%, 歯肉出血指数は0-20%が全体の74.2%占めていた。フラップ手術においては5mmの歯周ポケットに対して最も多く手術が施行された。また, ポケットが深いほど歯石の残存率は高かった。
  • 瀬戸口 尚志, 高良 憲明, 松永 信, 中山 清貴, 竹内 敏郎, 田方 義弘, 樋渡 京子, 立石 基高, 内田 博文, 南 睦美, 上 ...
    1991 年 33 巻 4 号 p. 1032-1039
    発行日: 1991/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    慢性辺縁性歯周炎と診断され初期治療を終了した52名の60歯にEPTFE (expanded polytetrafluoroethylene) メンブレン (Gore-Tex® periodontal material) を用いた組織再生誘導法 (GTR法) を行った。60歯のうち根分岐部病変を有するものが21歯, 垂直性骨欠損を有するものが39歯であった。粘膜骨膜弁を剥離後, スケーリング・ルートプレーニングを行い, メンブレンを試適, 縫合固定し, 歯肉弁を戻し縫合した。メンブレンの除去は1ヵ月後に行った。術後6ヵ月目の診査で, 根分岐部病変では3.36±2.08mmのポケットの減少および2.64±2.55mmの臨床的アタッチメントの獲得が認められた。垂直性骨欠損部ではポケットの深さの減少量は3.45±1.43mm, 臨床的アタッチメントの獲得量は1.77±1.77mmであった。いずれも手術前に比べ術後6ヵ月では有意の改善が認められた。このことより, 歯周外科治療においてEPTFEメンブレンを用いたGTR法は有用な処置法であることが示唆された。
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