日本歯周病学会会誌
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34 巻, 4 号
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  • 小高 博, 沼部 真理子, 沼部 幸博, 鴨井 久一
    1992 年 34 巻 4 号 p. 717-740
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    老化に伴う組織変化を本質的老化との区別を念頭におき捉えることと, コラーゲンの型別変化を形態学的に捉えることを目的に, 生後8週齢から96週齢のウィスター系ラットの上顎近遠心的歯周組織を, H-E染色ならびにpicrosirius-polarization methodにより検索した。その結果, 96週齢に至るまで, 歯の生理的遠心移動および萌出が継続して観察され, それに付随する歯周組織の改造現象が観察された。上皮は48週齢から72週齢の間に根面への深行増殖が観察され, 細胞性セメント質の添加増生形態より72週齢以降, 各歯冠を中心に近心傾斜していることが示唆された。本質的な老性変化がみられたのは, 細胞数の減少であり, 24週齢から48週齢で減少傾向を示した。コラーゲン線維の型別変化として, 老化に伴いI型コラーゲンを示唆する赤色偏光が増加した。骨頂部と分岐部直下には短いIII型コラーゲンを示唆する緑色偏光が多く観察され, 萌出に対する改造を示唆した。
  • ミノサイクリンおよび塩化リゾチーム含有コラーゲンペレッ-トの局所投与に関する臨床的検討
    竹内 佳世
    1992 年 34 巻 4 号 p. 741-758
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周治療における薬剤徐放化担体を用いた抗生物質と抗炎症剤の併用局所投与法の有効性を明らかにすることを目的として臨床的, 細菌学的および生化学的検査を行いその治療効果にについて検討した。その結果, ミノサイクリン含有コラーゲンペレットの投与により歯周ポケット内細菌の量的および質的変化が生じ, 臨床症状の改善が認められた。その効果は, ルートプレーニング処置と同程度で, 塩化リゾチーム含有コラーゲンペレットの併用投与により増強された。ざらにミノサイクリンとリゾチームペレットの併用効果は, 細菌学的おょび生化学的パラメーターを用いた総合評価によっても確認された。
  • 佐伯 訓子
    1992 年 34 巻 4 号 p. 759-771
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病の発症及び進行おける各種細菌及び細菌由来物質の歯周組織構成細胞に対する作用機序や, サイトカインを介した細胞間相互作用について, 種々の報告がなされている。本研究では特に歯根膜由来線維芽細胞様細胞 (PDL) について, 微小電極を用いて膜電位測定を行い, 本細胞の変化を電気生理学的に解明することを試みた。7名の被験者より得た新鮮抜去歯より採取したPDL 8株を対象に, その静止膜電位と細菌由来毒素 (E. coli, LPS), またはIL-1β 刺激に伴う電位分布変化を検索した。その結果, PDLの静止膜電位は-15mV付近に分布し, 細胞のドナー, あるいは継代数によりその分布に差が生じないこと, LPS刺激により分布は過分極方向に移行すること, IL-1β 刺激は著明な過分極を示し, その変化は濃度依存性であることなどの知見を得た。本研究によりPDLの辺縁性歯周炎における変化の様相を電気生理学的側面から追求しその機序を解明しうる可能性が示唆された。
  • 根岸 淳
    1992 年 34 巻 4 号 p. 772-778
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    口腔内に露出した歯根象牙質に歯周組織を付着させる場合の適切な歯周治療法を知る目的で, まず根面をセメント質が被っている歯周病罹患歯の歯根象牙質と健全歯の歯根象牙質の細胞付着に対する差を知るため, ヒト歯肉由来培養線維芽細胞の付着の様相を比較検討するとともに, 病理組織学的観察を行った。ヒトの歯周病罹患歯と健全歯の歯根象牙質より作製した試験片上でヒト歯肉由来線維芽細胞を培養し, 付着・増殖した細胞数を計測した。その結果, 歯周病罹患歯の歯根象牙質は健全歯の歯根象牙質に比べて, 付着・増殖細胞数には有意差はなかったが, わずかに少ない傾向がみられた。病理組織所見でも両者にほとんど差はなかったが, 歯周病罹患歯の歯根象牙質のごく一部に細菌の侵入がみられた。この結果より, 歯周病罹患歯には, 歯根象牙質の一部に付着を阻害する物質が侵入しているものや, 細菌が侵入しているものがある可能性も考えられた。
  • 根岸 淳, 佃 宣和, 松本 敦至, 伊藤 豊, 岡 秀博, 田中 直人, 堤 洋比古, 川浪 雅光, 加藤 熈
    1992 年 34 巻 4 号 p. 779-788
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    口腔内に露出した歯根象牙質に歯周組織を付着させる場合の象牙質に対する適切な治療法を知る目的で, 歯周病羅患歯より切り出した歯根象牙質を0, 1, 2, 4週間口腔内に露出させた後, (1) 無処置群と (2) キュレットタイプスケーラーでスケーリング・ルートプレーニングを表層一層のみ行う群と (3) 徹底的に行う群の3群に分け, 各処置を行った後ヒト歯肉線維芽細胞を根面上で培養し付着細胞を調べるとともに, 病理組織学的観察を行い比較検討した。その結果, 象牙質を口腔内へ1週間以上露出すると, (1) 無処置群は付着細胞がほとんどなく, 4週後に一部に細菌の侵入もみられた。 (2) 表 層一層処置群も付着細胞が少なく, 象牙質面にプラークが残存していた。 (3) 徹 底処置群は多くの細胞が付着・増殖し, 象牙質面に細菌はほとんど観察されなかった。以上より, 口腔内露出歯根象牙質に歯周組織を付着させるには, 露出が1週間以上になれば徹底したスケーリング・ルートプレーニングが必要であると思われた。
  • 久保 浩二, 上稲 葉隆, 神田 千恵子, 岡本 博之, 瀬戸 康博, 長野 恭子, 末田 武
    1992 年 34 巻 4 号 p. 789-798
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Porphyromonas (Bacteroides) gingivalis 381, Prevotella (Bacteroides) intermedia ATCC25611, 歯周炎患者の口腔内より採取, 培養したPorphyromonas gingivalis wild typeのlipopolysaccharide (LPS) とインターロイキン-1 (IL-1) がヒト培養線維芽細胞のコラーゲン代謝にどのような影響をおよぼすのかを知るために本研究を行なった。線維芽細胞を健康歯肉および炎症歯肉, 健康歯根膜から分離, 培養した後, LPSあるいはIL -1, LPSとIL-1と共に48時間培養し, 培養上清中のコラーゲン量をプロコラーゲンタイプ1測定キットにて測定した。培養線維芽細胞はLPSあるいはIL-1の刺激にてコラーゲンを多く産生することがわかった。またその効果はLPSあるいはIL-1単独刺激よりLPSとIL-1との同時刺激の方が, より増加することがわかった。
  • 鴨井 久一, 青木 護, 浅木 信安, 浅木 英理, 沼部 幸博
    1992 年 34 巻 4 号 p. 799-809
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    生体親和性の優れたアテロコラーゲンおよび組織内吸収が緩やかで, また創傷治癒促進作用があるキトサンを用いて, GTR法の吸収性膜を開発する目的で本実験を行った。A. (キトサン: コラーゲン7: 3) B. (5: 5) の2種類の複合膜 (A, B, -CSK膜) およびキトサン100%の膜 (K-SK膜) を作製して実験に用いた。それらの歯周組織内における, 吸収過程・生体親和性・その混合比の差による生体内溶解時期の違いを明らかにするためにウイスター系雄性ラットに実験的フラップ手術を行い, 各膜を挿入し, 術後1, 3, 5, 7, 14日目に病理組織学的観察を行った。その結果, キトサンの含有量が多い膜ほど著しい炎症性細胞浸潤が術後早期に認められた。しかしキトサン含有量が多いほど膜周囲の結合組織は成熟を促進し, また吸収が遅延する傾向が認められ, 混合比を変えることにより膜の溶解時期を調節できる可能性が示唆された。
  • 土田 有宏, 長島 節志
    1992 年 34 巻 4 号 p. 810-819
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患に起因した動揺歯がどの位の荷重で動揺を終了するのかを知ることを目的として, いくつかの測定装置を試作し, その結果をもとに独自で荷重量測定装置を考案した。これを用い歯周疾患 (慢性辺縁性歯周炎) 罹患患者を対象に動揺歯の荷重量を測定して動揺度との関係, 歯槽骨吸収度との関係について検索した。
    その結果, 日常臨床で用いられている動揺度の分類との関係において, 動揺度1度では約43.2gの荷重で動揺を示し, 動揺度2度では約32.6gの荷重で動揺を示し, また動揺度3度では約21.1gの荷重で動揺を示した。また, 歯槽骨吸収度との関係では, 骨吸収度2度では約38.0gの荷重で動揺を示し, 骨吸収度3度では約29.6gの荷重で動揺を示し, また骨吸収度4度では23.7gの荷重で動揺を示した。
  • 大川 由一, 村松 淳, 高橋 義一, 石井 俊文
    1992 年 34 巻 4 号 p. 820-828
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では工場従業員を対象とし, 歯周疾患迅速診断テスト (Perioscantr05) の結果と特定歯面の歯周組織の状態を比較し, 集団検診における有用性を検討した。上顎右側および下顎左側の第一大臼歯頬舌面のprobing depth, bleeding on probing, プラーク・歯石の付着状態について診査後, 診査歯面より縁下プラークを採取しBANA加水分解酵素活性をBANAテストを用いて評価した。主な結果は以下の通りである。1. テスト陽性歯面率は73. 8%と高い値を示した。2. テスト結果と臨床所見との間には有意な関連性が認められた。しかし, テストの感度は比較的高い値であったが, 特異度は低く, 集団スクリーニングのためには特異度ならびにサンプリングテクニックを改善する必要性が示唆された。
  • 北村 秀和, 日高 庸行, 高橋 敬人, 青木 栄夫, 佐和 正彦, 島 信博, 山田 了
    1992 年 34 巻 4 号 p. 829-835
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Guided tissue regeneration (GTR) 法による治癒形態に対するプラークによる炎症の影響を評価するためイヌを用いて以下のような実験を行った。イヌの根面に対照群ではフラップ手術, 実験群ではGTR法を施し, 術後プラークコントロールを行わずに24週間経過後に実験部位の標本を作製し, 病理組織学的に検索した。その結果, 対照群では多量のプラークの沈着, アタッチメントの喪失を伴う深い歯周ポケットの形成, 広範囲に渡る炎症性細胞浸潤, 歯槽骨の吸収を生じていた。実験群では-歯銀辺縁部に限局した炎症性細胞浸潤を認めたが, ルートプレーニングされた根面には白亜質, 歯槽骨の新生を伴う新付着治癒が観察され, 全く炎症性細胞浸潤は認められなかった。以上のことよりGTR法後の治癒で獲i得した新付着はプラークに対する強い防御機構を有していることが示唆された。
  • 上皮性付着と結合組織性付着境界部の超微形態について
    小川 哲次, 吉野 美穂, 藤谷 百合, 加納 利文, 河口 浩之, 廣畠 英雄, 佐藤 裕紀, 白川 正治, 岡本 莫
    1992 年 34 巻 4 号 p. 836-845
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, long junctional epithelium (LJE) と結合組織性再付着との境界部の超微形態について検討した。
    1歳ビーグル犬2頭の小臼歯部頬側にフラップ手術を行い, 歯槽骨とセメント質の削除により象牙質面を裸出させた。これらを2群に分け, M群では歯根膜および歯槽骨由来肉芽組織の侵入を抑制するために歯根周囲の骨表面をポリカーボネートメンブレンで覆い, N群では同被覆を行わなかった。術後4, 8週経過時に1%グルタルアルデヒドの灌流を行い, EDTA脱灰, 1%オスミウム酸固定後, 樹脂に包埋し, 透過型電顕にて観察した。
    その結果, N群では, 8週時に最根尖側部のLJE下の象牙質面には内側基底板と連続性を有する層状構造が存在し, それらに近接して新生セメント質基質が形成されていた。一方, M群では, 4および8週のLJEは裸出象牙質面のほとんど全域と接し, LJEより根尖側の歯根面には結合組織性再付着の様相は観察されなかった。
    本研究結果から, LJEの歯冠側移動と新生セメント質形成とが密接に関連している可能性が示された。
  • 小川 哲次, 藤谷 百合, 河口 浩之, 廣畠 英雄, 吉野 美穂, 加納 利文, 佐藤 裕紀, 白川 正治, 岡本 莫
    1992 年 34 巻 4 号 p. 846-856
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, 塩酸脱灰象牙質基質に対する新生セメント質形成過程の超微形態について検討した。
    1歳ビーグル犬2頭の小臼歯とその頬側歯周組織に対してフラップ手術を行った。裸出象牙質面を骨削除とセメント質除去により形成し, その根尖側半分に0.3N塩酸を5分間塗布し, 術後8週までの透過型電顕試料を作製して観察した。
    1. 非脱灰象牙質面では, 術後4週に破歯細胞による吸収がみられ, 8週までに新生されたセメント質基質線維と露出した象牙質基質線維とが互いに絡み合っていた。2. 塩酸脱灰象牙質面では, 2および4週時に脱灰象牙質面上に電子密度の高い層状構造を介して新生セメント質基質が形成され, 両基質線維は互いに絡み合っていた。
    本研究結果から, 塩酸脱灰象牙質基質には直接新生セメント質が形成されることが示された。
  • 三辺 正人, 斉藤 数宏, 木村 三右衛, 鈴木 史彦, 竹内 佳世, 田村 利之, 堀 俊雄
    1992 年 34 巻 4 号 p. 857-862
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    未処理の歯周病罹患歯根面に対するミノサイクリン塩酸塩の抗菌活性の持続効果 (継続性) についてP. gingivolisおよびH. actinomycetemcomitansを検定菌とした感受性テストを用いて検討を行った。その結果, ミノサイクリン濃度の増加に伴い, 根面における歯周病罹患歯根面に対する抗菌活性の持続効果が向上した。特に局所投与を想定した場合のミノサイクリン濃度や作用時間で, 経口投与を想定した場合を上回る抗菌活性の持続効果が期待できることが明らかとなった。
  • 金澤 篤, 梶本 忠保, 森本 淳史, 小西 美千佳, 小出 修身, 白木 雅文, 岩山 幸雄
    1992 年 34 巻 4 号 p. 863-870
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    自己硬化型アパタイトセメントの骨補填材としての可能性を評価するために雑種成犬を用いて検討した。イヌ下顎骨に3カ所の骨窩洞を作製し, それぞれの窩洞に自己硬化型アパタイトセメント, 顆粒状Hydroxyapatiteを充填し, 残りの骨窩洞をコントロールとして未充填にした。1カ月, 2カ月後のコントロールを含む組織が, 光学顕微鏡下にて観察された。自己硬化型アパタイトセメントの周囲組織に目立った異物反応はほとんど観察されず, 線維性被膜の形成も観られなかった。2カ月後の所見において, セメント硬化体上に骨の新生が観察された。術後2カ月の骨再生の高さは, 顆粒状Hydroxyapatite群とコントロール群よりも自己硬化型アパタイトセメント群の方がより回復していた。これらの結果から, この自己硬化型アパタイトセメントは, 骨組織親和性と骨形成能を有しているだけでなく, 歯周疾患における複雑な骨欠損に対して容易に適応できることが示唆された。
  • 岩本 雅章, 野中 愼之, 荒川 義浩, 太田 紀雄, 赤羽 章司, 鈴木 和夫
    1992 年 34 巻 4 号 p. 871-882
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    1970年にSelvigが人露出セメント質表層に過石灰過帯の存在を報告して以来, 多くの報告が成されている。しかしながら, まだ多くの疑問点がある。そこで我々は歯周炎罹患歯を, 臨床症状別に高度6本, 中等度6本, 軽度6本の計18本を症状別に分類し, 抜歯を行った後我々はアタッチメントロスと他の臨床項目別に過石灰過帯について研究を行った。石灰化帯の状態はコンタクトマイクロラジオグラフィーとエレクトロンプローブマイクロアナライザー (EPMA) にて, CaとP濃度測定の両方を露出セメント質の最表層面において行った。システムはEPMA又は走査電顕 (SEM-日本電子JCXA733型) と, それに装着したKevex-700EDS装置を使用した。その結果, アタッチメントロスとG.I. , G.B.I. 指数, 動揺度数の上昇に伴い過石灰過帯の出現の増加を認め, 高度歯周炎罹患歯の露出セメント質の周辺では小さな隆起と顆粒の出現を認めた。過石灰過帯のコンタクトマイクロラジオグラフィーとVon Kossaカルシュウム検出染色法の観察では2~3μm, 平均で10.4μmの幅を認めた。更にセメント質最表層面のシャーピー線維の間には大小, 球状の石灰化帯を認めた。
  • 石川 烈, 岡田 宏, 鴨井 久一, 宮下 元, 上野 和之, 原 耕二, 長谷川 明, 山田 了, 村井 正大, 池田 克己, 中村 治郎 ...
    1992 年 34 巻 4 号 p. 883-900
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎に対する塩化リゾチーム270mg/日×4週間 (L群) の臨床的有用性をプラセボ (P群) を対照とする二重盲検試験で検討した。
    311例 (L群159例, P群152例) を対象に, プロービング時の出血, 歯肉の炎症, 歯の動揺, ポケットの深さ, ポケット内滲出液量, 滲出液中PGE2量, 縁下プラーク細菌について検討し, 全般的改善度, 概括安全度, 有用度の評価を行った。
    全例に薬剤投与開始前にスケーリングを, 投与期間中ブラッシングを実施した。
    出血, 炎症, 歯の動揺, ポケットの深さおよび滲出液中PGE2量の改善度についてはL, P両群間に差をみなかったが, ポケット内滲出液量はL群でのみ有意に減少するのを認めた。また, 縁下プラークの細菌数はL群で有意に減少, P群で有意に増加し, 両群の変化量に有意の差を認めるとともに全細菌のうち, 運動性桿菌の占める比率はL群でのみ有意に低下するのを認めた。
    全般改善度 (4週後) および有用度については, L群がP群に優るのを認めた。
    なお, 副作用はL群に13件, P群に19件発現したが, 両群の概括安全度には差をみなかった。
    これらの成績から, スケーリングならびにブラッシングと併用するとき, 塩化リゾチームは辺縁性歯周炎の治療に有用な薬剤であると考えられる。
  • スクラビング方式について
    中川 種昭, 池上 暁子, 鷺 二郎, 伊藤 幸高, 林 智子, 大島 みどり, 島 信博, 山田 了
    1992 年 34 巻 4 号 p. 901-906
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, スクラビング方式の電動歯ブラシを用い, 刷掃時間, 振動数などの違いによるプラーク除去効果および手用歯ブラシとの比較検討を行った。被験者は本大学保存科医局員10名とした。
    プラークの付着状態を各条件のブラッシング前後で比較した結果, スクラビング方式の電動歯ブラシのプラーク除去効果は手用歯ブラシと同程度であり, 短時間で高い刷掃効果は得られなかった。刷掃時間は電動歯ブラシ, 手用歯ブラシともプラーク除去効果に与える影響が大きく, 刷掃時間が短いと刷掃効果は著しく低下し特に隣接面におけるプラーク除去効果の低下が認められた。
  • 各種電動歯ブラシのプラーク除去効果
    中川 種昭, 島田 篤, 宮下 博行, 坂下 顕照, 北村 秀和, 大島 みどり, 島 信博, 角田 正健, 山田 了
    1992 年 34 巻 4 号 p. 907-915
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 各種電動歯ブラシを用い, ヘッド部の動きの違いによるプラーク除去効果および手用歯ブラシとの比較検討を行った。被験者は東京歯科大学学生 (平均23.6歳) 10名とし, 刷掃時間は3分とした。プラークの付着状態を各条件のブラッシング前後で比較した結果, 毛束反復回転式の電動歯ブラシが最も高いプラーク除去効果を示し, 特に隣接面部, 舌面部において高い刷掃効果を示した。円形植毛部反復回転式も手用歯ブラシと比較して統計学的に有意に高い除去効果を示し, 隣接面における刷掃効果も比較的高かった。他の電動歯ブラシも手用歯ブラシと同程度以上のプラークの除去効果を示した。本研究の結果, 各種電動歯ブラシは手用歯ブラシと同程度かそれ以上のプラーク除去率を示し, プラークコントロールの一手段として有効であることが示唆された。
  • 沼部 幸博, 岡部 俊秀, 長弘 謙樹, 鴨井 久一, 吉成 伯夫, 山田 隆久, 園山 昇
    1992 年 34 巻 4 号 p. 916-928
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    日本歯科大学歯学部附属病院歯周病科および口腔外科において経験した, 極めて希な特異的歯肉炎が初発症状と考えられる全般性Wegener肉芽腫症 (Wegener's Granulomatosis) の症例 (43歳男性) に関し, 特に発症初期における歯周組織の状態, 病態の推移に関して報告すると共に, 免疫学的見地からその発症機構について考察を加えた。
    本症例で特徴的なのは, (1) 顆粒状歯肉炎が全ての病的変化に先だち, それが初発症状であると考えられたこと, (2) 電撃的かつ激烈な歯肉および口腔粘膜の壊死の進行, (3) 病変の進行に伴う急速な歯牙の脱落, (4) 急激な全身の臓器への肉芽腫性病変および血管炎の波及, (5) T細胞の比率の減少, B細胞の比率の上昇, (6) NK細胞の比率の上昇等であった。
    以上のことより, 本症例の発症の背景因子として歯周疾患があり, 未知の因子の介在により自己免疫系が賦活されたことで急速かつ高度な歯周組織破壊が進み, 局所から全身に血管炎および壊死性肉芽腫性病変が波及し, 死の転帰をとったものと考えられた。
  • 鈴木 丈一郎, 清水 伸宏, 千 錫男, 曽 振江, 藤井 美弥, 伊藤 嘉彦, 関 規子, 渡辺 孝章, 新井 高, 中村 冶郎
    1992 年 34 巻 4 号 p. 929-938
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 代表的な電動歯ブラシ4種と手用歯ブラシ1種のプラーク除去効果とブラッシング圧について比較検討した。実験は, 被験者に本学保存科医局員15名を用い, ブラッシングを行わせ, 前後のプラークのスコアーを測定し, プラーク除去率を算出した。ブラッシング圧は渡辺のブラッシング圧測定装置を一部改良し測定した。また, 術前術後の0'Learyらのプラークスコアーと為害作用などについてのアンケート調査を行い以下の結果を得た。 (1) プラーク除去率は, 各種歯ブラシ間に統計学的に有意差は認められなかった。 (2) ブラッシング圧は, パワーハブラシ (®と) INTERPLAK ®, プロクトレギュラー (®と) INTERPLAK ® 間に, 有意差が認められた (P<0.05) 。 (3) 電動歯ブラシでも, 隣接面のプラーク除去は不十分であった。 (4) 振動型の電動歯ブラシに比べ反転型のほうが歯肉に擦過傷を起こし易かった。
  • 佐藤 香, 高居 欣治, 深井 浩一, 長谷川 明
    1992 年 34 巻 4 号 p. 939-948
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    2種の電動歯ブラシと1種の手用歯ブラシを用いて, 正常模型, および病態模型上におけるプラーク除去効果の比較を行った。
    これらの歯ブラシの形態や, 電動, 手用歯ブラシの動きの違いにより, 基本的なプラーク除去能力にどの様な差があるかを知るため, ブラッシングは, 方法や時間を特に規定せず, 最もプラークが除去されたと思われる時点まで行い, 模型上におけるプラーク除去効果の限界を求めた。また, プラーク除去率は歯肉縁部の全周長のうち, プラークが除去された部分の長さを求め, これを百分率で示した。
    その結果, 2種の電動歯ブラシ, 手用歯ブラシのプラーク除去効果の限界には差を認めなかった。また, いずれの歯ブラシにおいてもプラーク除去率は正常模型より, 病態模型で低い値を示した。また, プラーク除去率は前歯部より, 臼歯部で低い傾向を示した。
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