日本歯周病学会会誌
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35 巻, 1 号
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  • とくにマウス腹腔浸出多形核白血球のO2-産生能およびC3 biレセプターの発現量について
    曲 建香
    1993 年 35 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎症に伴う多形核白血球 (PMNs) の動態を究明するため, マウスの腹腔内に2%カゼインを投与し, 惹起させた腹腔炎症局所に浸出してくるPMNsを経時的に採取し, そのスーパーオキシド (O2-) 産生能, および細胞表面のC3 biレセプターの発現量を指標として検討した。腹腔浸出細胞数は, 炎症惹起後3時間から著しく増加し, 9時間で最高に達した。浸出細胞中のPMNsの割合は, 炎症惹起後3時間で約85%, 9時間では約95%を占めた。腹腔浸出PMNsの02産生はPorphyromoms (Bacteroides) gingivalis 381 (P. g) およびnucleatum (F. n) の菌体破砕上清あるいはホルボールミリステートアセテート (PMA) の刺激Fusobacterumにより誘起された。また, このO2-産生量は, 炎症惹起後6時間および9時間では3時間と比較して有意に高値を示した (P<0.05-0.01) 。フローサイトメトリー (FAcs) を用いた分析から, 腹腔浸出細胞にはC3 biレセプターが弱く発現している細胞集団 (弱陽性細胞, 55~65%) と極めて強く発現している細胞集団 (強陽性細胞, 10~20%) が認められた。C3 biレセプターの発現量は強陽性細胞では大きな経時的な変化は認められず, また, PMA, FMLP, E-coli-LPSの刺激によっても影響されなかったが, 弱陽性細胞では炎症惹起後細胞の採取時間の差によって変化し, PMA, FMLP, LPSによって変動することが示された。以上のことから, 炎症時に誘導され, homogeneousな細胞集団を形成すると考えられていたPMNsには, 異なる細胞集団が混在し, heterogeneityの存在することが示された。
  • 実験的フラップ手術後のテネイシンの局在
    宮里 明子, 仲谷 寛, 鴨井 久一
    1993 年 35 巻 1 号 p. 17-33
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, フラップ手術後の創傷治癒過程におけるテネイシンの局在について検索した。実験動物は, ウィスター系ラットを用い, 口蓋側歯肉に実験的フラップ手術を行った。テネイシンの観察は, 間接蛍光抗体法により行った。正常歯周組織において, テネイシンは, 上皮直下, 歯槽骨の骨膜部, 歯根膜部では, セメント質及び歯槽骨の近接部に認められた。術後3日では, テネイシンは, 増殖する上皮細胞の先端部よりわずかに離れた上皮直下の結合組織に観察された。術後5~7日におけるテネイシンの局在は, 線維芽細胞の豊富な肉芽組織に一致して強陽性に観察された。肉芽組織におけるテネイシンの局在は術後5日をピークとして, その後経時的に減少した。以上の結果から, 歯周組織の創傷治癒過程において, テネイシンは, 上皮細胞の直下, 線維芽細胞などの細胞活性の高い部位に発現し, 細胞の分化, 増殖に影響を与えていることが示唆された。
  • 小杉 禎久
    1993 年 35 巻 1 号 p. 34-47
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は白色家兎歯根膜由来線維芽細胞様 (RPDL) 細胞含有コラーゲン・ゲルを用いin vitroにおいて三次元的な歯周組織の構造と機能を再現し, 歯― 上皮結合の状態を検討したものである。白色家兎抜去歯歯根片をRPDL細胞含有のコラーゲン・ゲル中に植立し, さらに口腔粘膜上皮由来の上皮細胞をゲル上に培養した。培養3日後に上皮部分のみを空気に暴露し, さらに7日間培養を行い。光顕および電顕試料を作成した。その試料を白色家兎歯周組織と比較し, 組織学的に検討を加えた。その結果, 上皮細胞は歯面に沿ってゲル中に増殖し, 歯面とヘミデスモゾームにより付着していた。付着部中間層の上皮細胞は細胞間隙が拡大していた。なお, ゲル上の上皮細胞は重層化し, 最表層部で角化傾向を認めた。以上の所見は, in vivoで認める口腔上皮と類似した組織形態であり, コラーゲン・ゲルを用いた三次元培養法の有用性が示唆された。
  • 西方 純一
    1993 年 35 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    He-Neレーザー照射によるStreptococcus mutans (S. mutans) に対する殺菌効果を解明する目的で, Mitis Salivarius寒天培地に含まれる色素である, クリスタルバイオレット (CV) およびトリパンブルーTB) に着目し, 実験を行った。これらの色素をBrain Heart Infusion (BHI) 寒天培地に添加し, また, こ の (培地に重層するS. mutansの培養液を混釈したsoft agar (菌層) ならびに, この菌層上にさらに重層するhard agarを設定し, レーザー照射 (30, 60, 90秒間ならびに2, 5, 10分間) による, これら色素の殺菌効果への関与について検討した。その結果, レーザー照射後に菌層を重層しても殺菌効果は認められず, また, TB存在下でも殺菌効果は全く認められなかった。ただし, CVが存在する場合では殺菌効果を認めた。したがって, He -Neレーザー照射によって, CV分子が励起され, このCV分子がS . mutansに対して殺菌効果を発現したものと考えられた。
  • とくに細胞増殖, アルカリホスファターゼ活性およびnodule形成について
    氏家 久
    1993 年 35 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ヒト歯槽骨由来細胞を用いてin vitroでレーザー照射実験を行い, その細胞増殖, アルカリホスファターゼ (ALPase) 活性値およびnodule formationに及ぼす影響について検討することである。
    ヒト歯槽骨由来細胞に, 波長632.8nm, 出力10mWのHe-Neレーザーを照射した。細胞増殖, ALPase活性値に関しては, 種々のエネルギー密度 (0.1, 1.0および10.0J/cm2) で1, 2および3回レーザー照射を行い経日的な変化を検討した。また, noduleについては, 種々のエネルギー密度 (0.1, 1.0および10.0J/cm2) の3回照射を行い, その30日後にアリザリン赤染色を行った。さらに, レーザーの照射時の温度測定も行った。
    その結果, 細胞にレーザーを照射すると, エネルギー密度が大きいほど, また, 照射回数が多いほど細胞増殖は早くなり, また分化, 石灰化が促進されることが判った。また, レーザー照射による培養液の温度上昇はなかった。
  • 河井 敬久
    1993 年 35 巻 1 号 p. 63-83
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Porphyromonas gingivalisと歯周炎患者の宿主寄生体間関係に関する理解を深める目的で, イディオタイプ (Id) 調節機構の存在について基礎的検討を行った。P. gingivalisに反応する種々のマウスモノクローナル抗体 (MoAb) を作製し, それらのMoAbの中で患者血清に存在する抗体 (Ab 1) と同一のエピトープ特異性を有すると考えられたPF18のIdに対する抗Id抗体 (Ab2) の存在, およびPF18のIdに対するMoAbを用いてPF18-Id保有Ab1の存在を, ヒト血清においてELISAにて検討した。Ab2は被検患者10名中9名に検出されたが健常人には全く認められなかった。Id保有Ab1は, Ab2が検出された患者全員に検出され, また健常人でも弱陽性を示すものが2名いた。患者血清中においてAb2は, Ab1と可溶性免疫複合体を形成して存在しているものと推定された。以上のように歯周炎においてもIdによる免疫応答調節機構が存在することが示唆された。
  • 移植材周囲の接着性蛋白の経時的変化
    池田 賀剛
    1993 年 35 巻 1 号 p. 84-94
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    人工骨移植材の骨への直接的な作用の一端を明らかにしたいために, 骨芽細胞の特性を保持するMG63を用いて人工骨移植材: ハイドロキシアパタイトとMG 63との接着に伴う接着性蛋白の動態についてフィブロネクチンおよびI型, III型コラーゲンを指標にin vitroの系で免疫組織化学染色標本を介し, 蛍光画像解析装置を用いて検討した。その結果, MG 63がハイドロキシアパタイトと接着するにはフィブロネクチン, コラーゲンなどの接着性蛋白が働きハイドロキシアパタイト周囲の細胞の調節に関与していることが示唆された。また, MG 63が分泌するオステオカルシンについてはこの実験系ではハイドロキシアパタイトと親和性を示した。
  • 西山 均
    1993 年 35 巻 1 号 p. 95-112
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ラットの実験的歯周病変におよぼすフッ素の影響を組織学的および組織形態計測学的に検索することにあった。フッ素を投与 (1mg/kg, 5mg/kg, 1日1回) したラットの歯周組織にナイロン糸の挿入により軽度の炎症性病変を惹起し, さらにメソトレキセートの全身投与により高度の歯周組織の病変を引き起こしたところ, フッ素を投与していない動物と比較して, 1mg/kgのフッ素を投与した動物では歯槽骨の吸収量に変化はなかったが, 5mg/kgのフッ素を投与した動物では歯槽骨の吸収量は少なかった。また, 5mg/kgのフッ素を投与した動物の歯槽骨をフッ素濃度測定方法により検索したところ, フッ素を投与していない動物と比較して歯槽骨中のフッ素濃度は高かった。以上より, フッ素の投与はラットの歯周組織に惹起された高度の歯周組織の病変にともなう歯槽骨の吸収を抑制することが判明した。
  • 伏見 肇, 児玉 利朗, 堤 弘治, 田村 利之, 堀 俊雄, 東 一善, 佐々 昭三
    1993 年 35 巻 1 号 p. 113-121
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    付着上皮は外的要因に対して生体防御機構を示すことが知られているが, 炎症の初期段階における細胞応答に関して不明な点が多い。そこで従来より他の器官・組織でその存在が報告され, 感覚もしくは化学受容器と類推されている孤立線毛に着目し, 健康な付着上皮と炎症初期における付着上皮中の孤立線毛の動態を形態学的に観察し, 付着上皮の機能解明を試みた。ラットの上頸右側第1臼歯口蓋側歯肉溝に細菌性プロテアーゼを塗布し, 初期炎症を惹起させたものを実験群として用いた。対照群として, 上頸左側第1臼歯口蓋側歯肉溝に生理食塩水を塗布したものを用いた。実験期間は, 塗布1, 3, 5日間とし, それぞれ電子顕微鏡にて観察した。観察対照部位は付着上皮及び歯肉溝上皮とした。その結果, 付着上皮において対照群では孤立線毛の分布は全層にわたって認められたが, 実験群では漸次消失した。また歯肉溝上皮では対照群と実験群では差異は認められなかった。以上の結果より対照群と実験群では, 孤立線毛の分布に差異が認められた。これらのことから孤立線毛が感覚受容器もしくは化学受容器として初期炎症に何らかの関係を有していることが示唆された。
  • 浅見 浩之, 神田 隆行, 長谷川 明
    1993 年 35 巻 1 号 p. 122-132
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    フラップ手術を受けた143症例, 385歯, 3080歯面を研究対象とし, さらにこの中から, 手術後6カ月の40症例, 12カ月の50症例を追跡対象とし, 手術時, 手術後6カ月, 手術後12カ月の歯周ポケットの変化を近遠心中央部を加えた8点法によって検索した結果, 以下の結論を得た。1. 手術時における歯周ポケットの深さは, 3.8±2.0mmであり, 上顎において, また大臼歯部において深い歯周ポケットが存在していた。2. 手術後6カ月の歯周ポケットの深さは, 2.0±1.0mmで手術時のほぼ半分の値であり, 6カ月後の平均改善値は1.9±1.7mmで82.6%において1mm以上の改善をみた。3. 手術後12カ月の歯周ポケットの深さは, 2.2±1.1mmで手術後6カ月の値より上昇した。12カ月の平均改善値は, 1.5±1.9mmで68.2%において1mm以上の改善をみ, 手術後6カ月に比べると再発傾向にあった。4. Widman改良法に準じたフラップ手術と歯肉弁根尖側移動手術に準じたフラップ手術では, 手術後6カ月, 12カ月ともに, 後者の方が高い改善値を示した。
  • 岩崎 直弥, 伊藤 弘, 仲谷 寛, 鴨井 久一, 村井 正大, 吉沼 直人, 藤岡 均, 赤間 尚子, 野口 俊英, 福田 光男, 天埜 ...
    1993 年 35 巻 1 号 p. 133-144
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    成人性歯周疾患患者に対し, アセス®A希釈水溶液による歯周ポケット内洗浄を滅菌蒸留水と対比させながら実施し, 臨床パラメータおよび細菌叢の変化について観察した。その結果, 臨床所見では, Plaque Indexを除く項目においてアセス®A希) 釈水溶液群が滅菌蒸留水群を有意に上回った。細菌叢の変化では総菌数の減少率および総菌数に占める運動性桿菌の比率の減少の程度もアセス®A希釈水溶液群が滅菌蒸留水群より優つていた。副作用はいずれも認められなかった。以上, アセス®希釈水溶液による歯周ポケット内洗浄は, 有用な治療法であることが示された。
  • 5年後の推移
    神田 隆行, 大森 みさき, 長谷川 明
    1993 年 35 巻 1 号 p. 145-156
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    平成2年6月から平成4年2月までの間に来院した患者に対し, 初診時における歯周疾患患者質問調査表をもとに, (1) 主訴項目, (2) 習慣および嗜好品, (3) 過去の治療経験, (4) 口腔衛生観念, (5) 治療に対する熱意'について調査を行い, さらに初診時のプラーク付着状態について検討し, それらを5年前の臨床集計の結果と比較し検討を加えた。その結果来院患者は, 40歳代が最も多く5年前と比較し重度症例が増加していた。初診時のO'Learyらによるplaque control record (P. CR) の平均は61.1%で, 加齢に伴いP. C. R. が高くなる傾向を示した。主訴項目では動揺が最も高く, 歯列不正と咀嚼障害を自覚する患者のP. C. R. が高い傾向を認めた。過去の治療経験の有無は, 5年前より高い傾向を認め, ブラッシング回数が多く, ブラシの交換時期が短い程P. C. R. が低くなる傾向を認めた。全体的に, 5年前と比較し口腔衛生観念は, 日常生活内に深く浸透してきたと思われた。
  • 平野 泰之, 西方 純一, 汐見 登, 岸田 修, 小幡 純, 伊藤 公一
    1993 年 35 巻 1 号 p. 157-161
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, Strep tococcus mutans (S.mutons) に対するHe-Neレーザー照射による殺菌メカニズムについて検討し, 殺菌効果が発現される諸条件について検索した。クリスタルバイオレット (CV) を添加したBrain Heart Infusion (BHI) 寒天培地に, S. mtansの新鮮培養液を混釈したsoftagarを重層し, 嫌気条件下でレーザー照射を行った。またCVを添加した菌液に, 同様にレーザー照射を行い, S. mutans培養細胞の生存率に対する影響も併せて検討した。この結果, 嫌気条件下では全く殺菌効果は認められず, 殺菌効果の発現には酸素の存在が不可欠の条件であることが判明した。
    さらに, CV存在下のレーザー照射により照射時間に依存するS. mutans細胞の生存率の低下が認められたが, この生存率の低下はsuperoxide dismutaseおよびcatalaseの添加によって明らかに抑制された。したがって, 好気下でのCVのphotodynamic actionによって生成されるsuperoxide anion, およびH2O2等の殺菌物質によってS. mutansに対する殺菌効果が発現するものと結論された。
  • 伊藤 弘, 吉浜 敬, 仲谷 寛, 鴨井 久一
    1993 年 35 巻 1 号 p. 162-171
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 25%シュウ酸カリウム水溶液が, 露出した根面に出現する象牙質知覚過敏症に対する効果を検索する目的で, 生理食塩液を対照とし二重盲検法にて検討した。観察時期は, 初診時, 塗布直後, 塗布後1週, 2週として, 検索項目は, 擦過痛, エアー痛, そして冷水痛とした。その結果, 塗布直後において25%シュウ酸カリウム水溶液の効果は認められないが, 塗布後1週, 2週ではその効果が認められた。また, 擦過痛の症状が軽度, エアー痛の症状が重度の場合において効果がみられた。冷水痛においては, 症状が軽度から重度の場合において効果があり, とくに症状が軽度の場合では塗布直後より効果を示した。以上の結果より, 25%シュウ酸カリウム水溶液は, 歯周処置後において露出した根面に出現する象牙質知覚過敏症に対して効果の期待できる薬剤であることが示唆された。
  • 笠原 信治, 笠原 千佳, 西川 聖二, 山内 規進, 大石 慶二, 下保 恵子, 永田 俊彦, 石田 浩, 若野 洋一
    1993 年 35 巻 1 号 p. 172-178
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    メチルチオアデノシン (MTA) 代謝は種々の細胞の増殖や分化に関与しており, ジフルオロメチルチオアデノシン (DFMTA) はMTAホスホリラーゼの阻害剤, アデニンはMTAの代謝産物である。本研究では, ラット頭蓋冠由来細胞培養系における石灰化骨様コロニー中のオステオポンティン量に及ぼすDFMTAとアデニンの効果を, ポリアクリルアミドゲル電気泳動法とステインズオール染色法を用いることによって検索した。その結果, DFMTAは石灰化骨様コロニー中のオステオポンティン量を減少させたが, アデニンはそれを増加させた。さらに, DFMTAによって減少したオステオポンティン量は, アデニンの添加によって対照群に近いレベルにまで回復した。これらの事実から, MTA由来のアデニンはラット頭蓋冠由来細胞の石灰化過程に重要な役割を担っている可能性があることが示唆された。
  • 鈴木 安里, 葛城 啓彰, 斎藤 和子
    1993 年 35 巻 1 号 p. 179-191
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病原細菌に誘導される多形核白血球 (PMN) の, 培養ヒト歯肉線維芽細胞 (Gin-1) への傷害を観察し, 歯周疾患における歯肉の傷害細胞としてのPMNの役割を明らかにしようと試みた。このため51Cr標識したGin-1上で健常者PMNと, A. actinomycetemcomitans, A. viscosus, F. nucleatum, P. gingivalisを, それぞれ37℃ で反応させ, Gin-1傷害の指標として細胞崩壊と細胞剥離を測定した。この結果, 4時間までの反応ではどの系においても細胞崩壊は発現せず, Gin-1傷害は著明な細胞の剥離として観察された。PMN単独, P. gingivalisを除く菌単独での傷害作用はみられなかったが, 菌とPMNとの混合により, 細胞崩壊を伴わない著明なGin-1の剥離が発現した。この時のGin-1剥離は, 反応時間の延長と, Gin-1に対するPMNの割合の増加に伴って上昇した。P. gingivalisは菌単独でも, PMNとの反応によっても1時間でほぼ同等のGin-1剥離率を示した。また, 菌の浮遊液濃度が一定 (1mg/ml) ならば, 各菌種とPMNとの反応によるGin-1剥離率のあいだにはほとんど差はなかった。Gin-1剥離はα1-PI, PMSF, 5%ヒト血清によって抑制されたが, 酸性プロテアーゼインヒビターや活性酸素のスカベンジャーによる抑制はほとんど起らなかった。このとき, PMNから多量の活性酸素を誘導することが報告されているF. nucleatumをPMN刺激に用いると, α1-PIによるGin-1剥離の抑制率は他の菌を用いたときと比較して有意に低いものとなった。これらの結果は, この実験におけるGin-1の剥離が, おもにPMNから放出される中性プロテアーゼによることを示している。またPMNとF. nucleatumの反応により放出される活性酸素によるプロテアーゼインヒビターの不活化作用が観察された。
  • 尾崎 憲, 元村 洋一, 宮田 隆, 杉本 博宣, 申 基テツ, 荒木 久生, 池田 克已, 花澤 重正, 北野 繁雄
    1993 年 35 巻 1 号 p. 192-201
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 歯周疾患関連細菌の骨接合型インプラント周囲組織に対する影響を検索する目的で行った。被験者は, IMZ® インプラントを埋入した21名とし, その24部位のインプラントに付着したプラーク中から, Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia serotype I, Prevotella intermedia serotype II, Prevotella melaninogenicaおよびActinobacillus actinomycetemcomitans serotype bを特異的に認識するモノクロナール抗体を応用したimmunoslot blot法とimmunoblot法によるこれらの細菌の検出を試み, また両方法の結果の差異についても検討を加えた。
    さらに, 歯周疾患に関係する臨床的なパラメータを診査し, 歯周疾患関連細菌との関連性を検討した。
    その結果, 24部位中11部位の被験部位において、上述した細菌種が検出され, またprobing depthとbleeding on probingとの関連性が示唆された。
  • 内藤 徹, 横田 誠
    1993 年 35 巻 1 号 p. 202-208
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周治療に際して, 歯槽骨の形態を正確に把握することは, 診断・治療計画のために重要なことである。通常, 骨欠損の形態把握は, ボーンサウンディングやリエントリーによってなされる。しかしながら, このような方法は侵襲を伴い, 臨床的にはごく限られたケースでしか行われるにすぎない。レントゲン診断のような画像診断は, 非侵襲的に行うことのできる骨の形態診断法である。しかし透過型撮影の2次元的な性質のために, 歯周組織の3次元的な構造は描出することができない。
    今回の研究では, 従来のレンドゲン診査法の欠点を補うために, コンピュータ断層撮影 (CT) を利用した3次元画像診断を用いた。3次元CTの再現性と臨床像は, 以下のような結果が得られた。1) 高い精度の再現性 (平均誤差1.4±1.3%)
    2) 様々な方向からの立体的な骨形態像
    3) 根分岐部の観察が可能な歯牙の形態像
    3次元CTのもつ, 骨形態の正確な把握能力は, 臨床応用に際して少ないリスクで骨欠損の正確な測定が行われる可能性を秘めている。
  • 木暮 隆司, 北村 秀和, 日高 庸行, 島 信博, 青木 栄夫, 山田 了
    1993 年 35 巻 1 号 p. 209-218
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, HAP移植がGTR法の治癒にいかなる影響を及ぼすかを検索する目的で行った。実験には成犬6頭を用い, 下顎両側第4前臼歯抜歯3週後, 第1後臼歯近心部に3壁性の骨欠損を作製した。対照群にはフラップ手術のみを, 実験群はGTR法を応用した群とHAP移植及びGTR法を応用した群とした。観察期間は術後8週とし, 病理組織学的に検索した。その結果, 対照群では骨の再生はわずかで象牙質表面はコラーゲン線維が付着していた。GTR法応用群では, 骨の新生はほぼ術前の位置まで達し, 新生歯槽骨と根面の間には歯根膜組織の形成が認められた。また, 象牙質表面には白亜質の形成が認められた。HAP移植とGTR法併用群は, 応用したHAP顆粒は歯根膜由来のコラーゲン線維で被包され, さらに周囲の骨壁や根面に押しやられていた。骨の新生はわずかであり, 根面には白亜質の再生は認められなかった。以上の結果より, HAP移植はGTR法における治癒過程を遅延させることが示された。
  • 末田 武, 小野 智則, 瀬戸口 尚志, 中馬 雅彦, 神田 千恵子, 谷口 拓郎, 田島 みゆき, 原田 英子, 柴立 教子, 和泉 雄一
    1993 年 35 巻 1 号 p. 219-228
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    若年性歯周炎患者の歯周ポケット内に抗生物質を局所投与する歯周病治療法の効果を検討するために, 塩酸ミノサイクリン軟膏を局所投与し, その効果を検討した。臼歯部を4つの部位に分け, ブラッシングのみ, 塩酸ミノサイクリン軟膏局所投与のみ, 塩酸ミノサイクリン軟膏局所投与とスケーリングの併用, スケーリングのみの各処置を行った。
    Probing Depthはいずれの処置でも有意な変化がみられなかった。スケーリングと塩酸ミノサイクリン軟膏局所投与併用部位では, 処置後総菌数の減少がみられ, Spirochaeta, Black-pigmented Bateroides, Actinobacillns actinomycetemcomitansはいずれも検出されず, スケーリング単独あるいは塩酸ミノサイクリン軟膏局所投与単独に比べ効果的であった。したがって, スケーリングと塩酸ミノサイクリン軟膏局所投与を併用することによりその関連菌をより効果的に減少させることができると思われる。
  • DNAプローブ法を用いた検索
    堀口 優美, 山村 早百合, 澁谷 俊昭, 白木 雅文, 岩山 幸雄
    1993 年 35 巻 1 号 p. 229-235
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    この研究はDNAプローベ法を用いて, 日本人成人性歯周炎患者からのA. actinomcetemcomitansの検出率を調査するために行った。
    被験者は朝日大学歯学部附属病院歯周病科を受診した成人性歯周炎患者59名 (20~63歳) でプロービングデプスが5mm以上のポケット148部位を選択した。
    被験部位の平均PIIは1.1, GIは1.8, pdは6.9mm, Bopは87.8%であった。
    被験部位の46.6% (69部位) からA. actinomycetemcomitansが検出されたが, その78.3% (54部位) がlow level (>6, 000~60, 000 cells) であった。また50歳未満の被験者の検出率は50%以上であった。同時に同定されたPgingivalis, Pintermediaの検出率はそれぞれ83.8%, 77.8%であった。
    以上の結果から, 日本人の成人性歯周炎の患者からも高い頻度でA. actinomycetemcomitansが検出されることが示された。
  • 金子 高士, 原 宜興, 岩崎 由佳, 市丸 英二, 岩永 正憲, 加藤 伊八
    1993 年 35 巻 1 号 p. 236-242
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎罹患歯肉における抗ヒトIgG抗体保有細胞の存在を検索する目的で, まずヒトIgGで感作したラット脾臓から凍結切片を作製し, ペルオキシダーゼ標識ヒトIgGを用いた標識抗原法を行い, 抗ヒトIgG抗体保有細胞を観察するための手法を確立した。そして実際にヒト歯肉において同法を行った結果, 41人から採取した63部位中, 9人14部位に抗ヒトIgG抗体保有細胞が観察された。抗ヒトIgG抗体保有細胞は今回分類した成人性歯周炎, 早期発症型歯周炎, 増殖性歯肉炎のすべてのグループにおいて観察され, その割合は早期発症型歯周炎が最も高く, 以下成人性歯周炎, 増殖性歯肉炎の順であった。抗ヒトIgG抗体保有細胞はおもに口腔上皮近くのリンパ球や形質細胞が密集して浸潤した部位に存在していた。今回の検索では, 年齢, 種々の臨床パラメーターで抗ヒトIgG抗体保有細胞の存在の有無を分けることはできなかった。しかし, 早期発症型歯周炎の一部においてはその歯肉中に多数の抗ヒトIgG抗体保有細胞が確認され, IgGに対する特異的な抗体産生が起こっている可能性が示唆された。
  • 種々な根管状況の歯周疾患歯における統計学的分析
    高田 耕平, 西村 和晃, 寺野 弘徳, 山岡 昭
    1993 年 35 巻 1 号 p. 243-252
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    著者らは先に, 歯周疾患歯セメント質の形態的変化を統計学的に分析し, その深層部には何ら形態的変化がみられないことを示した。しかし, この報告で用いた被験歯のほとんどは有髄歯であり, 無髄歯セメント質の検索は行っていない。そこで今回は, 種々な根管状況の歯周疾患歯における露出セメント質の形態的変化を統計学的に分析するため, 以下の実験を行った。73本のヒト歯周疾患歯を被験歯とし, ポケットの深さが5mm未満の群と, 5mm以上の群とに分けた。さらに両群被験歯を, 1. 有髄歯, 2. 既根充歯, 3. 変色既根充歯, 4. 未処置の感染根管歯, 5. 変色した未処置の感染根管歯と, 5種類にそれぞれ分類した。被験歯は抜去後, 歯根を長軸方向に2分割し, セメント質割断面をSEMで観察, その形態的変化を数量化して統計処理を行った。その結果, ポケット5mm未満, 5mm以上の両群とも, 有髄歯ならびに既根充歯セメント質深層部には変化がみられなかったのに対して, 変色既根充歯, 未処置の感染根管歯および変色した未処置の感染根管歯では, 深層セメント質に基質線維の膨化, 板状化などの変化が認められた。これらの結果から, 有髄歯ならびに変色していない根充歯のポケット対応セメント質深層部の健全性が示唆された。
  • 鴨井 久博, 佐藤 聡, 岡部 俊秀, 岡田 裕香子, 吉田 聡, 鴨井 久一
    1993 年 35 巻 1 号 p. 253-262
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    正常歯肉を有する, 成人10名を対象とし, 実験群に1, 200~1, 300 gaussの歯ブラシ, 対照群に30 gaussの歯ブラシを使用させ, それぞれ歯ブラシ静置 (15秒・30秒・60秒), ブラッシング (15秒・30秒・60秒) 後の歯肉表層における血流の変化を, レーザースペックル血流計を用いて観察した。血流量の測定は, 上顎中側切歯の唇側中央部付着歯肉部とし, 測定を行った。実験群・対照群とも, 5分間経時的に測定を行い, 血流量の変化を比較観察し, 以下の結果を得た。
    1) 15, 30, 60秒静置群では, 全ての測定期間を通じ各対照群に比較して, 有磁気群では高い値を示し, 統計学的有意差が認められた (p<0.05, p<0.01) 。
    2) 15, 30, 60秒動置群では, 全ての測定期間を通じ各対照群に比較して, 有磁気群では高い値を示し, 15, 30秒ブラッシング群においては, 統計的有意差が認められた (p<0.05, p<0.01) 。
  • 伊藤 弘, 原 良成, 仲谷 寛, 沼部 幸博, 鴨井 久一
    1993 年 35 巻 1 号 p. 263-270
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯周炎の急性症状における, ペリオクリン (単®) 独 投与群およびポケット内洗浄と抗生物質経口投与による従来療法の有効性を比較することである。
    臨床症状の改善において, 両治療法ともに, 疼痛, 腫脹, および排膿で改善が認められたが, 発赤に関しては, ペリオクリン (単®) 独 投与群で 「 有効 」 , 従来療法は 「 無効 」であった。総合的な効果判定では, 両治療法間に有意差は認められなかったものの, 主治医判定では, ペリオクリン (単®) 独 投与の方が優れていた。また, ペリオクリン (単®) 独 投与は従来療法に比べて, より早く臨床症状の改善が見られる傾向があった。
    以上より, ペリオクリン (単®) 独 投与は歯周炎の急性症状に対し, 十分な臨床効果が期待でき, 更に, 即効性, 患者の負担, 加療に要する時間などを考慮すると, 極めて有効な治療法であることが示唆された。
  • ペリオクリン (とR) 歯 石除去の併用効果について その2ペリオクリン (のR) 投 与間隔
    上田 雅俊, 寺西 義浩, 中垣 直毅, 井坂 美保, 甲斐 敬幸, 本郷 雅子, 荒木田 哲 二, 谷田 雅弘, 谷 真理, 山岡 昭, ...
    1993 年 35 巻 1 号 p. 271-276
    発行日: 1993/03/27
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    スケーリングと併用するペリオクリン (の®) 投 与間隔を決定するためと同時に, それら実験群とルートプレーニング群ともあわせ比較検討するために, 以下のような実験を行った。すなわち, スケーリングとペリオクリン (を®) 1 週1回, 4回連続投与する群, スケーリングとペリオクリン (を®) 2 週1回, 2回投与する群および歯石を除去するとともにルートプレーニングを行った群の3つの群を設定し, 臨床的および歯周ポケット内微生物の動態を比較検討した結果, つぎのような結論を得た。すなわち, 各実験群ともに, 臨床的パラメーター5項目および位相差顕微鏡による歯周ポケット内総微生物数ならびに総微生物に占める運動性微生物の構成率は, 概して経週的に改善傾向を示したが, 群間には有意の差は認められなかった。
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