日本歯周病学会会誌
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36 巻, 1 号
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  • 間接蛍光抗体法および嫌気培養法による徐放性ミノサイクリン局所投与前後の歯周病原性細菌の検出
    冨永 由美子
    1994 年 36 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎は一般に慢性炎症であるが急性症状を呈することがある。これまで急性症状時の歯肉縁下細菌叢についての報告は少なかった。そこで本研究では成人性歯周炎患者31名の急性症状時の細菌叢を蛍光抗体法および培養法を用いて検索した。さらに処置として, 局所に徐放性ミノサイクリン製剤を投与し, 臨床的, 細菌学的変化を調べた。
    その結果, 急性症状を呈する部位においては同一口腔内の急性症状を呈していない部位に比べ総菌数およびPorphyromonas gingivalis, Campyrobacter rectusの糸盆菌数にしめる割合が高く, 薬剤投与後1週においては, 臨床的改善と共にそれらの菌の割合が有意に減少した。このことから成人性歯周炎の急性症状の出現に総菌数の増加およびPorphyromonas gingivalis, Campyrobacter rectusの総菌数にしめる割合の増加が関与している可能性が示唆された。
  • とくにイヌの3級根分岐部病変について
    関口 一実
    1994 年 36 巻 1 号 p. 18-35
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    3級根分岐部病変にGTR法を応用した歯根膜組織の治癒について検索を行った。イヌを用い, 骨欠損3 mmのthrough-and-throughの根分岐部病変を作製し, 実験群はGTR法, 対照群はフラップ手術を施し, 病理組織学的観察, 組織学的計測を行った。その結果, 対照群では全期間を通して上皮侵入を生じ, 骨新生は殆ど起こらなかった。実験群では結合組織性の完全閉鎖例と上皮組織侵入例が認められ, 前者では歯根膜と連続した結合組織で満たされた範囲は著しい白亜質の新生と根面に沿った骨の新生を生じた。組織学的計測より, 新生組織量と根分岐部残存組織量とに正の相関を認めた。以上より, 歯根膜組織の治癒の特徴として, (1) 歯根膜組織由来の豊富な血管の存在下で白亜質と骨の新生がみられること, (2) 歯齪組織によって歯根膜由来の新生組織が阻止されること, (3) 病変部の結合組織による完全閉鎖の範囲は根分岐部根管中隔部に対する病変部の高さと病変底部の幅の比率で現されることが示唆された。
  • アテロコラーゲン複合体膜を用いた歯周組織再生に関する実験的研究
    伏見 肇
    1994 年 36 巻 1 号 p. 36-55
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 生体内でハイブリッド化した乳酸・グリコール酸共重合体アテロコラーゲン複合体膜 (LGA膜) の歯周組織再生誘導法 (GTR法) への有用性について検索することを目的に行った。イヌ12頭の第3, 4前臼歯近心根に水平性骨欠損 (circumferential defect) を作製した後, 1) 歯肉剥離掻爬術のみ2) LGA膜を応用したGTR法3) ハイブリッド化LGA膜を応用したGTR法の3群を設定し, 治癒経過を病理組織学的に評価した。その結果, ハイブリッド化LGA膜を応用した群において新生セメント質および新生骨の形成が著明に認められた。骨および骨膜の由来組織や細胞を膜内に取り込んだハイブリッド化LGA膜群では, 術後早期から新生セメント質, 新生骨の著明な再生が認められたことから積極的な歯周組織再生を図る一方法であることが示唆された。
  • リコンビナントBMP配合コラーゲン膜による骨形成の観察
    伊藤 豊, 加藤 熈, 久保木 芳徳
    1994 年 36 巻 1 号 p. 56-66
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, リコンビナントヒトBMP-2 (rhBMP-2) を歯周治療に応用するため, 担体としてウシ真皮より抽出しテロペプチドを除去したコラーゲンより作製した強化コラーゲン線維膜 (FCM3) を用いた場合の有効性を検討する目的で, 12週齢成体ラットの背部皮下と口蓋部に移植実験を行い, 病理組織学的に評価した。その結果, 移植3週後背部皮下では骨形成はみられなかったが, 口蓋部ではrhBMP-2を1.0μgと2.0μg配合した群で骨形成が観察された。またその骨形成の過程は, 1週目頃担体の外側部で盛んになり, 3週目には母骨と連続し担体周囲を覆い, その後は担体内部へと向かい6週後には母骨とほぼ一体化していた。炎症反応はほとんどみられなかつた。以上の結果より, FCM3を担体としてrhBMP-2を歯周治療へ応用できる可能性が高いと考えられた。
  • 安部 恒
    1994 年 36 巻 1 号 p. 67-78
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎における免疫担当細胞に及ぼす間質細胞の影響を知る目的で, T細胞に抗CD3抗体の活性化刺激を加え, その際の歯肉線維芽細胞培養上清 (FB sup) の抑制効果をインターリュウキン2レセプターCD25: IL-2R) の発現を指標としてフローサイトメトリーにて検索した。健常者の末梢血T細胞で解析した 結果, 線維芽細胞にIL-1を添加後, 培養して得られたFB supはT細胞の活性化を抑制した。この抑制は, CD8+ T細胞とCD 45 RO+T細胞でそれぞれ, CD4+T細胞及びCD 45 RO-T細胞より有意に大きかった。また, 歯周炎罹患歯肉より抽出したCD 45 RO+T細胞の活性化はIL-1刺激FB sup添加で有意に抑制されたが, 末梢血のCD 45 RO+T細胞に比べ, 抗CD3抗体, IL-1刺激FB supに対する応答性は低下していた。今回の所見から, 歯肉線維芽細胞によるT細胞活性化の抑制は, PGE2の産生によって起こると考えられる。
  • とくにPorpyromonas gingivalis, Pnvotella intermedia, Actinobacillus actinomycetemcomitansについて
    岡 秀彌
    1994 年 36 巻 1 号 p. 79-92
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎の進行に伴う歯周組織の破壊とポケット内細菌の関係を明らかにする目的で, サルの臼歯部に実験的歯周炎を誘発し, 咬合性外傷を合併させ, 16週間にわたり臨床的変化, 採取試料中の総菌数および間接蛍光抗体法による採取試料中のPorphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Actinobacillus actinomycetemcomitansの菌数と総菌数に対する割合を観察した。Soft dietを与えたのみのI群はattachment lossは生じず歯肉炎にとどまり, 総菌数は約2倍に増加したが, 上記の3菌種は増加しなかった。綿糸を結紮したII群はattachment lossと骨吸収が生じて歯周炎が発生し, 総菌数は約10倍に, 上記の3菌種はI群より有意に増加した。綿糸結紮と外傷力を付与したIII群はII群よりattachment lossと骨吸収が有意に増加したが, 総菌数と各細菌はII群と有意差がなかった。この結果から, 総菌数と上記の3菌種は歯周炎の進行に関与するが, 咬合性外傷を合併させても大きな影響を受けないことが示唆された。
  • 西垣 満, 西村 和晃
    1994 年 36 巻 1 号 p. 93-101
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    我々は先に, 歯肉剥離〓爬手術の根面処理として表層セメント質一層〓爬法が良好な歯肉付着をもたらすことを示した。半面, 表層セメント質〓爬後でさえ, 深い吸収窩が時折残存した。本研究では, セメント質一層〓爬法がどのような歯周疾患罹患歯に適用されるか調べるため, 各種根管状況 (1. 有髄歯, 2. 既根充歯, 3. 変色既根充歯, 4. 未処置感染根管歯, 5. 変色未処置感染根管歯) を有するヒト歯周疾患罹患歯の吸収窩の分布, 面積, 深さを調べた。その結果, 吸収窩の面積については各種根管状況を有する疾患歯間に有意差は認められなかった (p<0.05) 。吸収窩の深さは15.2μm (有髄歯) から61.42μm (変色未処置感染根管歯) の範囲であった。変色未処置感染根管歯以外の被験歯群では, 吸収窩の深さは40μm以内であった。本研究は, 変色未処置感染根管歯以外の疾患歯では, 表層一層〓爬法によって, 吸収窩の残存することなく健全深層セメント質を露出させうることを示した。
  • 伊佐津 克彦
    1994 年 36 巻 1 号 p. 102-113
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, ヒト歯根膜由来線維芽細胞およびヒト歯肉由来線維芽細胞の細胞増殖, コロニー形成, コラーゲン合成に対するTGF-β とLPSの影響を検討するために行った。LPSは, P. gingivalis, P. intermedia, E. coliより抽出した。コロニー形成はEGF含有軟寒天培地内でTGF-β とLPSを添加, 非添加の条件で14日間培養した後, 1cm2あたりのコロニー数を計測した。コラーゲン合成能は, TGF-β とLPSを添加, 非添加の条件で14C-prolineをラベルした後, 培養上清, 細胞外基質別々にSDS-PAGEで分離フルオログラフィーにて評価した。細胞増殖に影響のない濃度で, TGF-β はコロニニ形成, コラーゲン合成を促進させるが, LPSは有意な差を示さなかった。しかし, TGF-β とLPS同時添加では, TGF-β 単独添加に比較して, コロニー形成, コラーゲン合成に有意な抑制を示した。
  • 壱岐 晃一
    1994 年 36 巻 1 号 p. 114-128
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    黒色色素産生性嫌気性桿菌の内毒素性リボ多糖 (LPS) が示す特異な活性を担う画分を求めて, Prevotella intemnedia ATCC 25611の熱フェノール・水 (PW) 抽出物から, 非蛋白性で, リムルス活性をほとんど欠き, LPSに不応答性のC3H/HeJマウス脾細胞にマイトジェン活性を示す―Prevotellam itogen (PM) 画分を調製した。pM画分は, 通常のLPSとは異なりC3H/HeJマウス腹腔マクロファージやヒト歯肉線維芽細胞にも作用してIL垂6活性を誘導し, C3H/HeNマウス細胞への作用はポリミキシンBで阻害されなかった。一方, 同菌から石油エーテル・クロロホルム・フェノール混液 (PCP) 抽出したLPSは通常のLPSの作用を示したのに対し, PW抽出したLPSは, PM画分とPCP抽出LPSの両方の性質を示した。よって, 従来P. intermediaのLPSに特異的と考えられてきた活性が, 混入した非内毒素性の物質によることが示唆された。
  • 中馬 雅彦
    1994 年 36 巻 1 号 p. 129-148
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周ポケット由来のActinomyces odontolytidusを分離同定し, その生理学的性状の特徴, および歯周病関連細菌のPorphyromonas gingivalisとの異種菌体間凝集反応の特性について調べた。
    本菌の検出率は52.5%で, また, 全培養菌数に占める割合は最高で9.3%であった。生理学的性状の特徴としては, esculin, starchの加水分解がそれぞれ90.5%と61.9%, xylose発酵が85.7%陽性と, 従来の報告よりも高い数値であった。P. gingivalisとの共凝集はlactose非阻害性で, A. odonto砂ti6us上の凝集因子は耐熱性でtrypsin, pronaseE, および過ヨウ素酸耐性であったのに対して, Pgingivalis上のそれは, trypsin, pronase Eには耐性であったが, 易熱性, 過ヨウ素酸感受性であり, さらに, シアル酸が重要な役割を果たしていると考えられる。
  • 第2報成体ラットの口蓋部および歯槽骨欠損部における観察
    松本 敦至, 伊藤 豊, 齋藤 彰, 川浪 雅光, 加藤 熈, 久保木 芳徳
    1994 年 36 巻 1 号 p. 149-161
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    第1報で, Bone morphogenetic protein (BMP) の担体として強化コラーゲン線維膜 (FCM) が有効であることを報告した。しかし, FCMは吸湿すると強度が低下し, 操作が難しいという欠点があったため, この点を改良した強化コラーゲン線維膜第3号 (FCM3) を新たに開発した。まず, FCM3のBMP担体としての有効性について検討する目的で, 成体ラットの背部皮下と口蓋部骨膜下に移植した結果, 背部皮下で異所性骨形成が, 口蓋部骨膜下で母床骨に連続し, 隆起した骨形成が観察された。次に, BMP配合FCM3が歯周組織再生に及ぼす影響について検討する目的で, 成体ラットの人工的歯槽骨欠損に移植した結果, 移植してない群に比べて早期 (1週) から骨芽細胞様細胞の増殖が見られ, 3週では移植材をとり囲むように骨が新生し, 6週では移植していない群に比べて歯槽骨頂が高く, 幅も広い傾向が見られた。このことから, BMP配合FCM3は歯周組織の再建に有効である可能性が示唆された。
  • ラット口蓋歯肉欠損部におけるコラーゲンマトリクスの上皮再生反応に-ついて
    児玉 利朗, 堤 弘治, 伏見 肇, 渕田 恒晴, 堀 俊雄, 小園 知, 池上 和仁, 小出 幹夫
    1994 年 36 巻 1 号 p. 162-169
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    皮膚欠損用グラフトを歯肉欠損創に応用するため, コラーゲンマトリクス (線維化アテロコラーゲンと熱変性アテロコラーゲンの複合体) をラット口蓋歯肉欠損部に移植して, 上皮再生反応について検討した。上皮の再生過程については5-bromo-2'-deoxyuridine (BrdU) を用いた酵素抗体法にて行い, コラーゲンマトリクスを移植した実験群と何も移植しない対照群を設定した。そして, BrdU標識細胞率を術後1, 3, 5, 7, 14日について統計学的に分析した。その結果BrdU標識細胞率は術後1日例で実験群16.6%, 対照群28.7%で, 対照群で高い値を示したが統計学的に有意差は認められず, それ以後3~14日にかけて両群ともほぼ同値で減少傾向を示した。以上のことより今回使用したコラーゲンマトリクスは, 移植された創傷部において阻害因子とはならず, 複合体の吸収ならびに結合織の置換過程においてスムーズな上皮の再生を促す材料であることがわかった。
  • 堀木 到, 澁谷 俊昭, 塚田 英治, 柴田 麻紀, 岩山 幸雄
    1994 年 36 巻 1 号 p. 170-176
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    破骨細胞性骨吸収に対する歯根膜細胞の影響を検討するために牛大腿骨骨片上でヒト歯根膜細胞を培養後, 兎の分離破骨細胞を重層し, 更に48時間培養した。骨片上に形成された吸収窩を抗コラーゲンType-I抗体を用いた免疫染色で可視化して吸収窩の定量を行い破骨細胞性骨吸収における歯根膜細胞の影響を調べた。また歯根膜細胞の破骨細胞性骨吸収能に対する影響が細胞接触によるのか産生物質によるのかを検討するために破骨細胞と歯根膜細胞を隔絶した状態で培養し検討した。
    1) 吸収窩数, 面積および破骨細胞の活性度は, 歯根膜細胞107細胞群において有意に抑制された。
    2) 隔絶した状態では破骨細胞性骨吸収に影響を及ぼさなかった。
    以上の結果より, 歯根膜細胞は直接破骨細胞に接することにより骨吸収活性を抑制するものと考えられた。
  • 遠藤 弘康, 増永 浩, 田原 洋, 松江 美代子, 松江 一郎
    1994 年 36 巻 1 号 p. 177-187
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    キチンの創傷治癒に対する作用を, ラットを用いて検索した。まず, キチン膜およびPTFE膜を取り付けたチャンバーを皮下に埋入し, 膜へ付着した細胞およびチャンバー内へ浸潤した細胞を観察した。PTFE膜では, 細胞の付着, 浸潤はほとんど認めなかつたが, 部分脱アセチル化キチンであるキチンシートでは初期より多数の細胞がチャンバー内に浸潤しており, その細胞はキチン周囲にも付着していた。次に下顎骨骨体部に骨欠損を作成し, 骨組織を含む創傷部にキチンシートおよびPTFE膜を被覆した。膜を挿入しない対照群に比べると, PTFE膜の使用により, 骨再生と結合組織再生はそれぞれ隔離され進行していた。一方, キチンシートでは, 結合組織の治癒が著明で, 14日目にはキチン繊維間を通して骨欠損部内までほぼ完全に結合組織が形成されていた。以上の結果より, キチンは創傷部において多数の結合組織由来の細胞を誘導することにより組織の修復に関与し, 結合組織の治癒が促進されることが認められた。
  • 伊藤 龍, 寺井 明子, 林 聰, 金子 憲司
    1994 年 36 巻 1 号 p. 188-196
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ブラッシング圧が歯ブラシ毛を介して, 口腔内組織に伝達される応力分布を定量的に明らかにするために, 非線形有限要素法を用いて2つのケースの歯ブラシ毛の挙動を動解析し, 次の結果を得た。
    1. 歯肉モデル上のブラッシング運動の解析
    毛先形態が新規な形状である高度テーパード毛とラウンド毛の2種類の歯ブラシについて, 毛の強制変位量が1mmとなるように歯肉に押しつけ, 水平方向に6mmの振幅の運動を加えた。この時, ラウンド毛歯ブラシでは, 歯肉に発生する応力は300~600g/cm2であったのに対し, 高度テーパード毛歯ブラシでは, 130~200g/cm2となり, かなり小さかった。
    2. 歯周ポケットモデルへの毛先侵入の解析
    毛先形態が高度テーパード毛とテーパード毛の2種類について, 各々2本の歯ブラシ毛を歯周ポケットに侵入させた。この時, 高度テーパード毛は容易に歯周ポケットに侵入するが, テーパード毛では容易に侵入せず, 周辺歯肉に対し高度テーパード毛の6~7倍の高い応力を発生させた。また, 高度テーパード毛の滑らかな侵入は, 角度を変えてもほぼ同じ結果であった。
  • 第二報: 適応患者, 適応部位の検討
    佐藤 香, 川俣 晴海, 高居 欣治, 深井 浩一, 長谷川 明
    1994 年 36 巻 1 号 p. 197-205
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 2種類の電動歯ブラシと従来の手用歯ブラシのプラーク除去効果を比較し, さらに部位別, 歯面別に検討することによって, その適応患者, 適応部位を考察することである。実験対象は歯周治療科医員および歯学部の学生11名で, 臨床的健康歯肉または軽度歯肉炎の者とした。方法としては各歯ブラシでそれぞれ2週間つつブラッシングを行い, Plaque Index (Silness & Löe: PlI) を用いて全顎および, 歯面別, 部位別に検討した。その結果, 3種類の歯ブラシの全顎でのPlIには統計学的有意差は認められなかつたが, 手用歯ブラシで著しくPlIの高い被検者は, 電動歯ブラシの使用が有効であった。また, 特定の部位, および歯面では電動歯ブラシが手用歯ブラシに比較し, 高い効果を示した。従って, 手用歯ブラシで十分な効果が得られず, 特定の部位にプラークが残存しやすい患者が電動歯ブラシの適応であることが考えられた。
  • 藤川 謙次, 佐藤 秀一, 吉沼 直人, 音琴 淳一, 太田 典子, 田中 憲二, 辻 康雄, 村井 正大
    1994 年 36 巻 1 号 p. 206-214
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    毛の先端を高度テーパード毛にした新形態の歯ブラシを作製したものを使用し, プラーク除去効果を検討した。年齢23~52歳の男女75名を被験者に1日2回, 3分間以上, スクラップ法およびゴットリーブの垂直法を併用したブラッシング法を行わせた。すなわち, テスト期間を2週間とし被験者をスタート時のプラーク付着率および歯間空隙の大きさによって2群に分け, 被験者のプラークを除去した後, 高度テーパード毛歯ブラシおよびラウンド毛歯ブラシを用いて1週間ずつクロスして使用させた。それぞれ1週間後のブラッシング後のプラーク付着歯面数からプラーク付着率を算出しグループ間での比較検討を行った。その結果, 高度テーパード毛歯ブラシはラウンド毛歯ブラシよりプラーク除去効果は統計的に有意 (p<0.05) に高いことが認められた。
  • 池田 克已, 渡辺 幸男, 下島 孝裕, 栗原 徳善, 中嶋 啓次, 辰巳 順一, 市村 光, 穴井 恭市, 大塚 秀春, 藤田 幸司, 小 ...
    1994 年 36 巻 1 号 p. 215-222
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 0.1%トリクロサン, 0.05%トラネキサム酸および0.05%グリチルリチン酸ジカリウム配合の液状歯磨剤のプラーク抑制効果と歯周疾患予防効果を検討した。被検者は, 重度の歯周炎または全身的疾患に罹患していない健康成人60名を対象とした。そして被検者を均等に2群に層別し, 試験歯磨剤または有効成分を含まない対照歯磨剤を各々1日2回ずつ4週間使用させた。
    その結果, 試験歯磨剤は対照歯磨剤と比較して有意に高いプラーク抑制効果と炎症改善効果を示した (P<0.01) 。また, 観察期間中いずれの歯磨剤群においても, 為害作用は認められなかった。
  • 歯根付着性プラークの免疫組織学的検索
    野杁 由一郎, 松尾 敬志, 中江 英明, 尾崎 和美, 恵比須 繁之
    1994 年 36 巻 1 号 p. 223-232
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉縁上プラークとそれに連続した歯肉縁下の歯根付着性プラークにおけるプラーク細菌の局在傾向を免疫組織学的手法により検索した。重度歯周炎に罹患し保存不可能と診断され抜去された歯9歯より調製した連続薄切切片に対し, Brown-Brenn染色, および15種類のプラーク細菌種に対する抗血清を用いた酵素抗体法染色を施し, 光学顕微鏡にて観察した。その結果, 全ての試料において供試したほとんどの抗体で陽性反応が認められ, その染色パターンは多型性を示した。Porphyromonas gingivalisは, 歯根付着性プラークの全域で歯面から距離を隔てたプラーク中層から表層部に顕著に認められた。その他の菌は, 歯肉縁上あるいは歯根付着性プラークにおいてある程度特徴的な局在パターンを示した。また, 試料により初期プラーク構成細菌と考えられているActinomyces viscosusStreptococcus sanguisがポケット中央部から深部においても検出され, 歯肉縁下プラークの形成にも関与していることが示唆された。
  • 佐野 浩史, 山本 瑞哉, 寺井 明子, 菅沼 信夫, 金子 憲司, 栗山 純雄
    1994 年 36 巻 1 号 p. 233-241
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 液状歯磨剤と練歯磨剤のトリクロサンの歯肉溝内濃度と, 歯肉溝内の殺菌効果を比較検討することである。トリクロサン濃度は, 臼歯部をブラッシングし前歯部歯肉溝に移行したトリクロサンを液体クロマトグラフィーにて測定した。また, 殺菌効果は, ブラッシング開始60秒後に歯肉溝細菌を滅菌ペーパーポイントで採取後, 総菌数は血液平板培地で, actinomyces viscosusA. naeslundiiはCFAT培地にて評価した。その結果, 液状歯磨剤は練歯磨剤に比ベブラッシング開始10, 20秒後に有意に高濃度のトリクロサンを歯肉溝iへ移行させた (p<0.05) 。また, 両歯磨剤はコントロール細菌数に比べ, 総菌数, Actinomyces (A. viscosusA. naeslundii), およびA. viscosusを有意に減少させた (p<0.05, p<0.01) 。また, 液状歯磨剤は練歯磨剤に比べ有意に上記細菌数を減少させた (p<0.05) 。以上の結果より液状歯磨剤は, 練歯磨剤に比べ歯肉溝内を清潔に保つ効果の高いことが示唆された。
  • 二重盲検試験
    鴨井 久一, 岩崎 直弥, 伊藤 弘, 仲谷 寛, 村井 正大, 吉沼 直人, 藤岡 均, 赤間 尚子, 池田 克已, 渡辺 幸男, 市村 ...
    1994 年 36 巻 1 号 p. 242-253
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    前報で成人性歯周疾患患者に対するアセス®Aの希釈水溶液による歯周ポケット内洗浄が有用な治療法であることを報告したが, 今回はアセス®Aの希釈水溶液の濃度を20培, 40倍および80倍に設定し, 二重盲検試験法により0週から2週, 4週の各週毎に各濃度の臨床パラメータおよび細菌叢の推移について観察した。
    臨床研究には4mm以上のポケットを有する中等度成人性歯周炎の患者145名を対象に試験内容について説明し, 同意を得てから行った。歯周ポケット内洗浄にはPerioPik™を用いて行った。
    その結果, 各臨床所見では各濃度とも効果があり, 特に, 40倍希釈液が若干効果が高かった。細菌叢の推移では各濃度とも効果があったが, 特に20培, 40倍希釈液が効果が高かった。副作用はいずれも認められなかった。
    以上, アセス®Aの希釈水溶液による歯周ポケット内洗浄は20~40倍の希釈液が最も有用であることが示された。
  • CPITNによる評価
    石川 烈, 杉山 榮一, 木下 淳博, 佐々木 好幸, 大野 純一, 矢野 和子, 荒蒔 まや, 飯田 雅博, 小田 茂, 萩原 さつき, ...
    1994 年 36 巻 1 号 p. 254-260
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    1983年から1992年までの9年間にわたり都内2つの銀行の行員に対し歯科検診を実施した。同一集団の長期にわたる歯周疾患の状況および歯周治療の必要性を調べるために, 1983年, 88年, 92年の3カ年分のCPITNのデータを, 歯周疾患の有病者率および一人平均有病分画数について検索した。
    各年度の受診者は83年が616名 (平均年齢32.2歳), 88年が615名 (33.2歳), 92年が613名 (34.1歳) であった。統計学的に年度による年齢分布, 平均年齢に差は認められなかつた。有病者率, 一人平均有病分画数の分析により, 1983年, 88年, 92年と, 年と共に歯周治療の必要な割合は減少し, また, 必要な場合でもより簡単な処置ですむ割合が増加していた。これは両行の口腔衛生管理システムの成果に加えて社会一般の口腔衛生意識の向上を反映したものと思われる。
  • 金子 憲章, 木村 重信, 小田 瑞恵, 藤村 哲之, 井上 雅之, 田中 靖彦, 森 滋康, 栢 豪洋
    1994 年 36 巻 1 号 p. 261-270
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    塩化アルミニウムと硫酸亜鉛を主成分とする象牙質知覚過敏症治療剤 (BMD) の臨床応用を行い, その臨床的効果を市販の塩化亜鉛を主成分とする象牙質知覚過敏症治療剤と比較検討した。
    試験群および対照群の群内比較からは, 冷水痛, 冷気痛, 擦過痛のいずれの症状に関しても, ともに有意の改善が認められた。しかし, 群間比較では両群間で著明な差は観察されなかった。各症状の平均スコアーからの検討では, いずれの症状に関してもBMD塗布の試験群で塗布直後からより改善傾向が強いことが示唆された。薬剤塗布1週後に症状が消失した症例としなかった症例にわけて行った検討からも, 試験群でより改善傾向が強いことが示唆された。さらに臨床的有効性の検討から, 対照薬と比較してBMDでは冷水痛および冷気痛に対してより効果の高いことが示唆された。
    以上の成績より, BMDは象牙質知覚過敏症治療剤として臨床的に有効であることが強く示唆された。
  • 高橋 潤一, 齋藤 淳, 中川 種昭, 大串 勉, 佐和 正彦, 島 信博, 山田 了, 町田 幸雄, 大多和 由美, 重松 知寛, 齋藤 ...
    1994 年 36 巻 1 号 p. 271-278
    発行日: 1994/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本論文は顆粒球減少症を併発した前思春期性歯周炎を発症した6歳児の治療経過に関する報告である。患者は顆粒球減少症を合併し, 血液検査において好中球が白血球数のうち0~4%であった。細菌検査では, P. intermediaが検出された。初期治療ではスケーリング, ルートプレーニングに加え, 動揺度3の第1, 第2乳臼歯を抜歯した。また, ポビドンヨードを用いて毎日の洗口と週に1回の割合で歯周ポケット内の洗浄を行った。処置後6カ月の現在, 永久歯の歯齦の状態, 歯齦溝の深さは正常で, X線写真では歯周疾患の徴候は認められなかった。
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