器官・組織を構成している各種要素の立体的な位置関係を形態学的に観察することは, 正常組織の発生や歯周組織の病変を解析するのに重要である。しかしながら, 従来の2次元的組織標本を用いた観察法では, 立体的に観察するのは困難な場合が多い。また, 細胞外基質ラミニンの生体に対する機能は多種多様であり, 歯周組織におけるラミニンの局在については, 様々な見解が報告されている。
本研究は, 共焦点レーザ顕微鏡を用いて正常マウス歯周組織におけるラミニンの3次元的な局在を観察すると共に, 実験的歯周炎の発症過程におけるラミニンの局在についても検討を加えたものである。
研究方法は, 共焦点レーザ顕微鏡を用いマウスの正常歯周組織および実験的歯周炎の発症過程における推移を歯周組織学的の立場から検討を加えた。観察方法は, ヘマトキシリン・エオジン染色による観察とともに, 細胞外基質ラミニンの局在を間接蛍光抗体法を用い3次元的に解析し, 次の結果を得た。
1) 共焦点レーザ顕微鏡を用い, マウス正常歯周組織におけるラミニンの局在を形態学的に3次元的構造から解析した。
2) マウス正常歯周組織においてラミニンは, 歯肉上皮の基底膜および歯肉固有層の血管や神経に局在した。ラミニンの局在を立体的に観察し, 基底膜の走向, 粘膜固有層における乳頭の形態や分布, 血管や神経の走行などの3次元的な構築像を得られた。
3) マウス正常歯周組織の内側基底板にもラミニンの局在が見られた。
4) マウス実験的歯周炎の発症過程では, 歯肉上皮, 歯肉固有層への炎症の波及に沿って基底膜部でラミニンの局在が見られた。
これらの結果は, 共焦点レーザ顕微鏡による正常歯周組織, 実験的歯周炎の発症過程における細胞外基質ラミニンの局在に対して, 3次元的観察の有用性を示し, 正常マウス歯周組織においては, ラミニンの局在する基底膜の走向, 粘膜固有層における乳頭の形態や分布, 血管や神経の走行などを構築像により明らかにしている。さらに, 歯周炎の進行に伴い歯肉上皮, 歯肉固有層への炎症の波及によるラミニンの局在が確認された。
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