日本歯周病学会会誌
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39 巻, 2 号
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  • 岡田 宏
    1997 年 39 巻 2 号 p. 166
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
  • 磯部 秀一
    1997 年 39 巻 2 号 p. 167-183
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はイヌを用いてGTRによる再生結合組織性付着の特性を微細構造レベルで検索することである。
    前臼歯の近心根部の歯槽骨をセメント-エナメル境界部から根端側に約5mm除去した。骨再生を阻止する目的で, ゴム質印象材を同部位の骨欠損部に填入, 4週間置いた。実験開始時にフラップ手術を行い, ゴム質印象材を除去, スケーリング・ルートプレーニングした。GTRはe-PTFE膜を各歯に固定し, 歯肉弁を縫合した。e -PTFE膜は術後6週で除去した。対照群は無処置歯とした。膜応用後14, 22, 30週で屠殺, 標本を作製し, 光学顕微鏡, 透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
    ルートプレーニング後の象牙質の削去量はそれぞれ異なっていたが, その領域では全ての試料で新生セメントの形成が認められた。象牙質と新生セメント質の境界部では新生セメント質と象牙質の各々の基質コラーゲン線維が互いに連絡していた。
    新生セメント質に埋入するコラーゲン線維束はその由来から3群に分けられ, 歯冠側1/3では歯肉組織のコラーゲン線維束, 中間側1/3では歯肉および歯根膜のコラーゲン線維束, 根端側1/3では歯根膜のコラーゲン線維束から構成されていた。
    以上の結果より, GTRで得られた再生組織はセメント質の新生を伴った特徴的な結合組織性付着を有することが示された。
  • 北谷 修一, 仲谷 寛, 鴨井 久一
    1997 年 39 巻 2 号 p. 184-191
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 象牙質の脱灰処理がフィプロネクチンの吸着に与える影響を検索する目的で, ルートプレーOングした象牙質片 (無処理群), ルートゾレーニングに加え象牙質表面をクエン酸処理したもの (クエン酸処理群), テトラサイクリン処理したもの (テトラサイクリン処理群) の各群へのフィプロネクチンの吸着量の定量と, 走査電子顕微鏡による免疫組織化学的方法により形態学的観察を行った。象牙質表面へのフィプロネクチンの吸着量は, 無処理群, クエン酸処理群, テトラサイクリン処理群とも経時的に増加した。クエン酸処理群およびテトラサイクリン処理群は, 無処理群よりも象牙質表面へのフィプロネクチンの吸着が多かった。しかし, クエン酸処理群とテトラサイクリン処理群の間にはフィプロネクチンの吸着に差がなかった。象牙質表面に吸着したフィプロネクチンの走査電子顕微鏡による免疫組織化学的観察では, 無処置群は, 象牙質表面はスメア層に覆われていた。一方, クエン酸処理群およびテトラサイクリン処理群は, 象牙質表面には線維様構造物が観察され, その表面にはフィプロネクチンの吸着を示す金コロイド粒子の付着が観察された。以上の結果より, 象牙質表面の脱灰処理は, フィプロネクチンの吸着を促進することが明らかとなり, 歯根面ヘフィプロネクチンを吸着させるには, 歯根表面の脱灰処理によりコラーゲン線維を露出させることが有効であることが示唆された。
  • 共焦点レーザ顕微鏡を用いた観察
    鴨井 久博
    1997 年 39 巻 2 号 p. 192-204
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    器官・組織を構成している各種要素の立体的な位置関係を形態学的に観察することは, 正常組織の発生や歯周組織の病変を解析するのに重要である。しかしながら, 従来の2次元的組織標本を用いた観察法では, 立体的に観察するのは困難な場合が多い。また, 細胞外基質ラミニンの生体に対する機能は多種多様であり, 歯周組織におけるラミニンの局在については, 様々な見解が報告されている。
    本研究は, 共焦点レーザ顕微鏡を用いて正常マウス歯周組織におけるラミニンの3次元的な局在を観察すると共に, 実験的歯周炎の発症過程におけるラミニンの局在についても検討を加えたものである。
    研究方法は, 共焦点レーザ顕微鏡を用いマウスの正常歯周組織および実験的歯周炎の発症過程における推移を歯周組織学的の立場から検討を加えた。観察方法は, ヘマトキシリン・エオジン染色による観察とともに, 細胞外基質ラミニンの局在を間接蛍光抗体法を用い3次元的に解析し, 次の結果を得た。
    1) 共焦点レーザ顕微鏡を用い, マウス正常歯周組織におけるラミニンの局在を形態学的に3次元的構造から解析した。
    2) マウス正常歯周組織においてラミニンは, 歯肉上皮の基底膜および歯肉固有層の血管や神経に局在した。ラミニンの局在を立体的に観察し, 基底膜の走向, 粘膜固有層における乳頭の形態や分布, 血管や神経の走行などの3次元的な構築像を得られた。
    3) マウス正常歯周組織の内側基底板にもラミニンの局在が見られた。
    4) マウス実験的歯周炎の発症過程では, 歯肉上皮, 歯肉固有層への炎症の波及に沿って基底膜部でラミニンの局在が見られた。
    これらの結果は, 共焦点レーザ顕微鏡による正常歯周組織, 実験的歯周炎の発症過程における細胞外基質ラミニンの局在に対して, 3次元的観察の有用性を示し, 正常マウス歯周組織においては, ラミニンの局在する基底膜の走向, 粘膜固有層における乳頭の形態や分布, 血管や神経の走行などを構築像により明らかにしている。さらに, 歯周炎の進行に伴い歯肉上皮, 歯肉固有層への炎症の波及によるラミニンの局在が確認された。
  • 偏性嫌気性グラム陰性菌の超音波破砕菌体抽出物による影響
    中田 和彦, 佐藤 是孝, 岩田 隆広, 吉田 勉, 鈴木 一吉, 山崎 雅弘, 中村 洋, 山下 京子, 藤本 昇, 早川 太郎
    1997 年 39 巻 2 号 p. 205-216
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 根尖部歯周組織に常在の非炎症性細胞である歯根膜細胞が, 根尖性歯周炎において果たす役割について明らかにすることである。根尖性歯周炎関連細菌として, Porphyromonas endodontalis (PE), Porphyromonas gingivalis (PG), Prevotella intermedia (PI), Fusobacterium nucleatum (FN) の4種の偏性嫌気性グラム陰性菌を用いて, 超音波破砕菌体抽出物 (SBE) を調製し, ヒト歯根膜 (PL) 細胞による細胞外マトリックス (ECM) 成分分解系に対する影響について検索した。実験には新鮮抜去歯の歯根膜組織から分離培養した5-9継代細胞を使用した。コンフルエントに達した後, 各SBE (終濃度: 10μg protein/ ml) を添加して48時間培養し, 回収した培養液上清中のマトリックスメタロプロテアーゼ (間質コラゲナーゼ: MMP-1, ゼラチナーゼA: MMP-2) 活性およびTIMPs (TIMP-1, TIMP-2) 量を測定した。
    その結果は以下のとおりである。
    1. MMP1に関しては, 全ての菌種のSBEで活性型の産生促進は認められなかった。一方, 総MMP-1については, PGとPIで軽度な産生抑制が認められたのに対して, FNの場合有意な産生促進が認められた。
    2. MMP-2に関しては, PEとPGで活性型の顕著な産生促進が認められた。一方, 総MMP-2については, PIで軽度な産生抑制が認められた。
    3. TIMP-1については, PGとFNで有意な産生促進が認められた。
    4. TIMP-2については, 全ての菌種のSBEで顕著な産生促進が認められた。
    これらのことから, 今回用いた4菌種のSBEは, PL細胞のMMPsとTIMPs産生に対して, それぞれ異なった影響を及ぼすことが明らかとなった。従って, 今回の実験結果から, 種々の根尖性歯周炎関連細菌の影響によって, PL細胞が根尖性歯周炎の発症に関連している可能性が示唆された。
  • 尾崎 幸生, 國松 和司, 田尻 公一, 原 宜興, 加藤 伊八
    1997 年 39 巻 2 号 p. 217-225
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    代表的な薬剤誘発性歯肉増殖症の一つであるニフェジピン (NF) 歯肉増殖症における線維芽細胞の増殖能の変化ならびに歯肉増殖のメカニズムを解明する目的で, NF歯肉増殖症罹患歯肉 (R群), NF非感受性歯肉 (NR群), 歯肉の増殖を来す可能性のある薬剤を全く服用していないプラークに起因する増殖性歯肉炎罹患歯肉 (ND群) および臨床的健康歯肉 (対照群) に対して抗増殖細胞核抗原 (PCNA) 抗体を用いた免疫組織学的検索を行い, その保有細胞の組織内分布ならびに存在密度を比較検討した。各群からそれぞれ5名ずつ被検者を任意に選択し, 歯周外科時あるいは抜歯時に試料を採取してパラフィン包埋連続切片を作製した。これらの切片にマウス抗PCNAモノクローナル抗体を用いて免疫染色を施した。その結果, 各群の線維芽細胞および上皮細胞にPCNA陽性所見が見られ, なかでも単位面積あたりの線維芽細胞の総数に対するPCNA陽性線維芽細胞の百分率はR群>ND群>NR群の順に高く, R群とND群との間, R群とNR群との間およびND群とNR群との間にそれぞれp<0.05, p<0.01およびp<0.05で有意差を認めた。なお, NR群と対照群との間には有意差は認められなかった。また, 結合組織内の炎症性細胞浸潤密度の低い領域と高い領域での陽性線維芽細胞の比率を各群で比較したところ, NR群歯肉においてのみ有意差が認められたが, R群, NR群ではこれらの領域問で有意差を認めなかった。これらのことから, NF歯肉増殖症では線維芽細胞の増殖能が増強されている可能性が示唆されたが, 炎症性細胞浸潤数と増殖線維芽細胞との関連は明らかにはできなかった。
  • 藤城 治義, 大島 康成, 浅井 勇吾, 川瀬 仁史, 柳楽 たまき, Marie Grace S. Poblete, 吉成 伸夫, 稲垣 ...
    1997 年 39 巻 2 号 p. 226-233
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症と歯周病の関係を把握する一助として, 閉経後成人歯周炎患者の骨粗鬆症所見を調査した。対象は, 愛知学院大学歯学部附属病院歯周病科通院患者で, 本研究の主旨に同意の得られた閉経後成人女性38名 (58.6±18歳) である。被験者は, 腰椎X線写真により, 骨萎縮の認められない骨萎縮正常群18名 (N群, 57.0±12歳) と骨萎縮群20名 (A群, 60.0±15歳) に区分し比較した。骨密度は, 二重エネルギーX線吸収法により測定した。腰椎骨密度, 若年成人平均値に対する比率および同年代平均値に対する比率は, それぞれN群0.902±0.029g/cm2, 83.2±2.7%, 105.6±3.4%, A群0.763±0.030g/cm2, 69.2±2.6%, 90.8±3.4%で, A群の腰椎骨密度は低下していた (p<0.05) 。身体所見と生活習慣は, 両群に顕著な差異はなかった。現在歯数と処置歯率は, N群26.0±0.6歯, 46.3±4.2%, A群23.0±10歯, 56.8±5.3%であった。プロービングデプスとアタッチメントレベルの平均は, N群2.6±0.2mm, 3.3±0.2mm, A群2.7±0.1mm, 3.5±0.2mmであった。しかし, プロービング時の歯肉出血率は, N群19.2±3.9%, A群30.8±4.3%で, A群が高値を示した (p<0.05) 。また, 歯槽骨吸収歯率と高度歯槽骨吸収歯率は, N群53.1±7.5%, 22.7±4.4%, A群63.5±6.5%, 29.6±5.4%で, A群が高い傾向を示した。本研究の結果, 腰椎の骨萎縮所見が認められた被験者においては, 歯周病活動度が高く, 歯槽骨吸収が高度な傾向にあることが判明した。
  • 宮田 隆, 小林 之直, 申 基テツ, 元村 洋一, 荒木 久生
    1997 年 39 巻 2 号 p. 234-241
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    我々は, いわゆる骨接合型インプラント周囲組織に発症するペリ・インプランタィティスの病態を解明する目的で, 実験的な咬合性外傷がインプラント周囲組織に与える影響について病理組織学的に検討してきている。その第1報では, カニクイザルに実験用IMZインプラントを埋入し, インプラント周囲に炎症のない状態を設定した上で, 約100μm過高な上部構造物を装着し, 舌側から頬側へ実験的な咬合性外傷をそれぞれのモデルに1週間から4週間に亘って負荷した。その結果, 1週間から4週間にかけて咬合性外傷を負荷した全てのモデルにおいてインプラント周囲骨の破壊や骨接合部の喪失といった所見は認められず, むしろ負荷時間を経るに従い, 咬合力の負荷側, すなわち頬側において旺盛な新生骨の添加が認められたことを報告した。本報告では, 第1報の結果を踏まえ, インプラント周囲に人為的な炎症状態を惹起させた上で, 第1報の方法に準じ約100μm過高な上部構造物を装着し, 舌側から頬側へ実験的な咬合性外傷を負荷した。
    その結果, 外傷性の咬合力の負荷期間が長くなるに従い, 著しいインプラント周囲骨の垂直的吸収をはじめとするインプラント周囲組織の顕著な破壊が認められた。この結果から, インプラント周囲組織の炎症に外傷性の咬合力が加わることによって, インプラント周囲組織の破壊が著しく助長されることが示唆され, ペリ・インプランタィティス成立過程の一端が明らかにされたものと考える。
  • デンタルプレスケール法とブラックシリコン改良法との比較
    荒木 久生, 申 基テツ, 元村 洋一, 小林 之直, 宮田 隆
    1997 年 39 巻 2 号 p. 242-249
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    デンタルプレスケール法と, ブラックシリコン改良法による咬合接触面積の測定精度を臨床的に比較することを目的に検討した。被験者は今回の検討に必要な条件を満たし, しかも臨床的に歯周疾患に罹患していない5名 (平均年齢25.6±0.8歳) で, 被検部位は左右臼歯部である。同一被験者について咬頭嵌合位での咬合採得をデンタルプレスケール (50H, Rタイプ) とブラックシリコン (バイトチェッカー) で3回ずつ行った。咬合接触面積の測定は, NIH imageおよびパワーマッキントッシュ7500 (アップル) を用いた。デンタルプレスケールについては, オクルーザー (FDD 703) も併用した。そして以下の結果を得た。1. デンタルプレスケール法とブラックシリコン改良法では咬合接触形態が異なって観察された。2咬合接触面積は, デンタルプレスケールの測定値 (オクルーザー; 17.6±7.2mm2, NIHimage; 12.1±4.5mm2) が, ブラックシリコンの測定値 (39.8±13.9mm2) と比較して小さな値を示した (P<0.05) 。3. 歯種別咬合接触面積は, 第一小臼歯で2つの方法の差が大きく, 以下第二小臼歯, 第一大臼歯, 第二大臼歯の順に差が小さくなる傾向が認められた. 4. 左右第二大臼歯間の距離は, デンタルプレスケール法がブラックシリコン改良法および考究用模型での測定結果と比較して長かった (p<0.05) 。以上の結果から, 測定方法によって咬合接触面積が異なることが示唆された。
  • 下島 孝裕, 廣井 美紀, 多武保 弓江, 須藤 洋太郎, 池田 克已
    1997 年 39 巻 2 号 p. 250-263
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    この調査の目的は, 食生活に関する質問表を介して成人性歯周炎患者の習慣的な食品摂取状況を把握し, 食品のとり方と本疾患との関係, さらに食品のとり方に影響する要因 (食習慣や生活習慣) を明らかにすることである。調査は, 中等度成人性歯周炎と診断された患者44名を対象に実施した。各食品群の摂取頻度については, 摂取状況を総合的に評価するためバランススコア (12の食品群を厚生省策定の6つの食品群に分類し, 食品摂取のバランスが好ましいかを評価するスコア) を求め, バランススコアと食習慣あるいは生活習慣との関連性を調べた。その結果, 被験者の平均バランススコアは, 12.5 (女性13.1, 男性10.6) であり, 女性の方がわずかに高かった。バランススコアと個々の食品群との関係については, 特に魚類, 豆類, 野菜類および果物類の摂取頻度とバランススコアとの間で関連性を示した。すなわち, バランススコアの好ましくない群 (13≧バランススコア≧0) では, これら食品の摂取頻度は少なかった。食習慣との関連においては, 朝食を毎日食べる, 食事を楽しんで食べている者ほどバランススコアは高く, 逆に, 食事に費やす時間が速い, 食事時間が不規則である, あるいは濃い味を好む者ほど, バランススコアは低い傾向を示した。一方, 生活習慣との関連では, 喫煙者群は非喫煙者群に比較して有意にバランススコアの低下が認められた。以上の結果から, 成人性歯周炎患者の多くで食品のとり方に偏りがあること, そしてこの偏りが食習慣や生活習慣と関連していることが示唆された。
  • 樋口 豊, 滝川 雅之, 新井 英雄, 鷲尾 憲文, 大江 丙午, 西村 英紀, 清水 秀樹, 野村 慶雄, 高柴 正悟, 村山 洋二
    1997 年 39 巻 2 号 p. 264-272
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    腫瘍壊死因子 (TNF) -αは, 初期の炎症反応として産生される炎症性サイトカインのひとつで, 炎症病巣の成立に関与していると考えられている。我々は, 歯肉結合組織におけるTNF-αの役割を理解するために, ヒト歯肉線維芽細胞のDNA合成, コラーゲン合成, および非コラーゲン蛋白合成に対するTNF-αの作用を, 線維芽細胞自らが産生するプロスタグランジン (PG) E2, および血小板成長因子 (PDGF) のオートクラインな影響を考慮して調べた。
    結果は以下の通りである。
    1) TNF-αはヒト歯肉線維芽細胞におけるDNA合成, コラーゲン合成, および非コラーゲン蛋白合成を促進した。2) TNF-αはヒト歯肉線維芽細胞におけるPGE2産生を著明に促進した。3) インドメタシンを用いてPGE2産生を阻害することにより, TNF-αがヒト歯肉線維芽細胞におけるDNA合成, コラーゲン合成, および非コラーゲン蛋白合成を促進する効果を増強した。4) TNF-αはヒト歯肉線維芽細胞におけるPDGF-A鎖mRNAの発現を促進した。
    以上の結果から, TNF-αはヒト歯肉線維芽細胞のDNA合成および細胞外基質蛋白合成に対し促進的に作用することが明らかとなった。また, これらの作用は, TNF-αが産生を誘導するPGE2によって抑制を受けていた。さらにTNF-αがDNA合成を促進する作用には, 内因性PDGFが関与している可能性が示唆された。
  • ペルオキシダーゼ試験紙法との比較
    大島 光宏, 鈴木 邦治, 江田 昌弘, 佐藤 慶伴, 伊藤 公一, 村井 正大, 大塚 吉兵衛
    1997 年 39 巻 2 号 p. 273-280
    発行日: 1997/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    唾液の簡易潜血試験に, 免疫学的にヘモグロビンを検出するモノクローナル抗体試験紙法 (抗体試験紙法) の応用を試み, 従来法であるヘモグロビンのペルオキシダーゼ様作用を利用したペルオキシダーゼ試験紙法 (酵素試験紙法) との比較検討を行った。その結果, 抗体試験紙法のヘモグロビン検出感度は0.1μg/mlと酵素試験紙法の約100倍高い感度を示した。また, 酵素試験紙法では, 3U/ml以上のミエロペルオキシダーゼおよび100U/ml以上のラクトペルオキシダーゼによって陽性を示したが, 抗体試験紙法ではいずれの酵素に対しても陰性を示した。さらに, 健康・無歯顎患者群と歯周疾患罹患者群の唾液を用いて抗体試験紙法と酵素試験紙法との比較を行ったところ, 両試験紙法間の陽陰性判定一致率は77.6%であった。特に, 抗体試験紙法ですべて陰性を示した健康・無歯顎患者群において, 酵素試験紙法で陽性を示すことが多かった。このことから, 酵素試験紙法の陽性判定中には, 唾液中に存在するペルオキシダーゼによる偽陽性判定が含まれている可能性が示唆された。従って抗体試験紙法は唾液潜血試験の精度を向上させ, 潜血試験を歯周病のスクリーニングテストの有効な手段にできる可能性が示唆された。
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