歯肉退縮による審美障害を主訴として来院した患者10名 (男性3名, 女性7名) の42部位を対象に, 上皮下結合組織移植術により根面被覆を行った。術前に, 退縮の深さおよび幅, アタッチメントレベル, 角化歯肉の幅の臨床診査を行った。臨床所見ならびに術後6カ月の臨床パラメーターの推移を統計学的に検索した。また, 上皮下結合組織移植術後の治癒形態を知る目的でイヌを用い, 下顎左右第2, 3, 4前臼歯部に上皮下結合組織移植術, または遊離歯肉移植術を行い病理組織学的に観察し, 以下の結論を得た。
1) 露出根面の被覆率 (術前のVR一術後のVR) /術前のVR×100 (%) は, 全体で73.95±32.27%であった。
2) 歯種別では, 上顎が下顎に比べて有意に高い根面被覆率を示した。また, 前歯部が臼歯部に比べ根面被覆率が高かった。
3) 歯肉退縮の幅における根面被覆率は有意差が認められず, 歯肉退宿の深さにおける根面被覆率では有意差が認められた。
4) イヌにおける上皮下結合組織移植術後の治癒形態は, 遊離歯肉移植術後と同様の長い上皮性の付着が見られた。以上より, 歯肉退縮のある露出根面に対する上皮下結合組織移植術は, 移植片を骨膜と歯肉弁とで挟み込むことができるため, 生着および根面被覆に有効であった。また, 本術式は供給側が閉鎖創となるため, 術後の痺痛が少なく, 日常臨床に有効な方法であることが示唆された。
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