日本歯周病学会会誌
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40 巻, 3 号
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  • 苗代 明, 沼部 幸博, 鴨井 久一
    1998 年 40 巻 3 号 p. 279-291
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周治療と, 咬合力および咬筋筋活動量の変化との関連について検討した。
    研究1として, 健常者および中等度歯周炎患者各20名に対し, デンタルプレスケール® 50 H・RタイプおよびマッスルバランスモニタBM-II®を用いて咬合力と咬筋筋活動量との同時測定を行い, その関連について検索した。
    次に, 研究2として, 中等度歯周炎患者に対し, 歯周治療の前後における咬合機能および咬筋筋活動量の変化とその関連について検索した。研究1から, 健常者, 中等度歯周炎患者ともに, 咬合接触面積および咬合力と咬筋筋活動量との間で有意な強い相関関係がみられた。研究2においては, 歯周組織は治療後に有意に改善された。咬合機能評価においては咬合接触面積および咬合力でそれぞれ有意に増加した。一方, 平均咬合圧力および最大咬合圧力はそれぞれわずかに減少した。咬筋筋活動量は有意に増加した。咬合接触面積および咬合力と咬筋筋活動量との間には, 歯周治療の前後ともに統計的に有意な相関関係が認められた。
    本研究の結果から, 歯周組織, 咬合力および咬筋筋活動量は深く関連しており, 歯周治療を行うことにより, 咬合力や咬筋筋活動量が増加することが確認された。このことから, 今後は, 歯周治療の評価として咀嚼機能の回復を考える際に, 咬合力や咀嚼筋筋活動量などを十分考慮に入れることの重要性が示唆された。
  • - インテグリンβ1サブユニットの発現について-
    長内 麻子, 鴨井 久一
    1998 年 40 巻 3 号 p. 292-305
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    現在の歯周治療の目標は, 付着を失った根面に結合組織性付着を獲得させることであり, 歯根膜由来線維芽細胞の根面への接着性が重要視されている。本研究では, 歯周治療後の根面に対する細胞接着のメヵニズムを調べる目的で, 根面処理による根面コラーゲンの露出や接着分子インテグリンのリガンド結合部位 (RGD配列) の存在が, 細胞接着形態およびインテグリンの発現に及ぼす影響について検討を行った。免疫組織学的検索として, クエン酸処理・未処理の象牙質片, ガラス板およびコラーゲンコートガラス板上に歯根膜由来線維芽細胞を播腫し, 細胞一基質間の接着部位 (focal adhesion) におけるインテグリンβ1サブユニット (以下インテグリンβ1) の発現について, 透過型電子顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行った。生化学的検索として, 細胞表面におけるインテグリンβ1遺伝子発現を検討するためRT-PCR (reverse transcriptase polymerase chain reaction) を行った。
    その結果, 歯根面への細胞接着の促進に根面処理の有用性が示され, RGDS (-) では, 主としてインテグリンβ1が接着に関与し, RGDS (+) では, 細胞表面にインテグリンβ1は発現するものの, 細胞一基質間の接着, すなわちfocal adhesionの形成への関与は減少した。
    以上のことから, 細胞は多くの接着様式の中から, 環境の変化に応じて接着の対象であるリガンドを認識して接着することが示された。
  • 長弘 謙樹, 鴨井 久博, 長内 麻子, 浅木 信安, 鴨井 久一
    1998 年 40 巻 3 号 p. 306-314
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周外科処置後の根面に歯根膜由来線維芽細胞を誘導付着させることが, もっとも理想的な治癒形態を示す。そのため, 根面の脱灰処理やフィプロネクチン (以下FN) 処理など様々な根面処理が行われている。本研究は, FNとcollagenの結合に大きく関与する血液凝固第XIII因子 (以下第XIII因子) の存在が, 歯根膜由来線維芽細胞の基質への初期接着動態にあたえる影響を観察する目的で行った。実験方法は, 第XIII因子処理した象牙質面およびcollagenコートされたガラス板上での歯根膜由来線維芽細胞の初期接着動態を, 細胞形態を司る細胞骨格およびフィプロネクチンの局在に焦点を当てレーザー顕微鏡にて観察を行った。その結果, XIII因子処理により, 初期において, 歯根膜由来線維芽細胞のcollagenおよび象牙質面への接着が促進された。しかし培養開始12時間では, ほぼ同様な接着形態を示した。また, 歯根膜由来線維芽細胞の初期接着には, 象牙質面もしくはcollagenという基質の性状による差が認められなかった。これらのことから, 第XIII因子は, 歯根膜由来線維芽細胞の根面への初期接着促進に有用であることが示された。また, 歯根膜由来線維芽細胞の初期接着には, collagenの露出の有無などの基質の性状より, 基質と細胞間に介在する接着因子が大きく関与することが示された。
  • 小川 真喜子, 竹内 宏
    1998 年 40 巻 3 号 p. 315-329
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    清掃停止後1日から7日にわたるヒト歯肉縁上プラークを急速凍結置換法によって標本作製し, プラーク細菌の細胞壁表面から出る微細線維状構造物 (線毛) による細菌凝集 (線毛性凝集) の様相を電顕的に観察した。
    線毛は分布様式から周毛性線毛 (細胞壁全周から出るもの), 局在性線毛 (細胞壁の一部から限局性に出るもの), 混合性線毛 (細胞壁の数カ所から出るもの) に大別され, プラークの各時期に現われた優位菌のほとんどはこのいずれかの型の線毛を有していた。1日から3日のプラークでは, 優位菌のみならずほぼ総ての細菌に線毛を認め, これに伴ってcorn-cobを含めて同種および異種菌体間で密度の高い線毛性凝集が行われていた。4~5日では菌叢変化に伴って局在性および混合性線毛を有する細菌による同種菌体間凝集に変化し, 6~7日では, 疎らな周毛性線毛を有するか, 線毛を有さない細菌が増加し, 線毛を有する細菌では同種菌体間凝集, あるいは細胞壁表面に小胞を有する細菌との異種菌体間凝集を認めた。
    以上の所見は, 初期プラークでは線毛性凝集がプラーク中のコロニー形成に深く関わり, 古いプラークになるに従って, この傾向が減少することを示すものである。
  • 斎藤 洋一, 沼部 幸博, 鴨井 久一
    1998 年 40 巻 3 号 p. 330-339
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Lipopolysaccharide (LPS) は, 歯周病原菌などのグラム陰性細菌の細胞外膜に存在するリボ多糖類で, 歯周病の進行にも関与している。本研究はLPSの多形核白血球 (PMN) の貪食作用に与える影響を共焦点レーザー走査顕微鏡にて形態学的に観察することを目的とした。健常者の抹消血より分離したPMNをEserichia coli由来のLPS (最終濃度0, 0.1, 1, 10, 50μg/ml) で前処理した後にヤギ抗ウサギchIgG抗体結合カルボキシレートビーズを (0, 10, 30分) 貪食させ固定後, N.B.D. -Phallacidinを添加した。スライドガラスに封入後, 共焦点レーザー走査顕微鏡で, 細胞骨格であるF-アクチンの局在と, 細胞内外でのビーズの位置との関係を経時的に断層観察し, 透過像, 蛍光像, それらの合成像を得, 以下の結果を得た。1) F-アクチンは, 貪食過程でビーズを取り囲むように観察され, 蛍光像と透過光像との合成像から, ビーズ貪食時の偽足形成部位内にF-アクチンの局在が観察された。2) PMNを0.1μg/mlの濃度のLPSで処理すると貧食作用は亢進するが, 濃度が増加するにしたがい, 貪食作用は低下することが示された。3) LPS濃度が増加すると, 貪食作用は遅延し, 細胞表面のビーズは細胞内には取り込まれない傾向が示された。以上の結果から共焦点レーザー走査顕微鏡によりPMNの貪食作用を詳細に観察可能であることが考えられた
  • 孔 祥忠, 川畑 仁克, 白木 雅文, 岩山 幸雄
    1998 年 40 巻 3 号 p. 340-349
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    グリコサミノグリカン (GAG) は歯周組織の炎症や歯槽骨の吸収, 再生などの代謝活性が上昇したときに, 歯肉溝滲出液中に増加することが知られており, 歯周病変活性のマーカーとしての可能性が示唆されている。
    しかし, 用いた分析法によって滲出液GAG量が異なるため混乱が生じている。本研究は生物学的試料として歯肉ホモジネート上清液, 関節液, カラゲニンからの滲出液の三種類を用い, GAGとGAG-プロテオグリカン (PG) を三方法の定量分析によって比較したものである。
    抽出したGAGは電気泳動法によりセルロースアセテート膜上で分離を行い, アルシアンブルーで染色を行った。染色された部分はデンシトメーターにより評価した。抽出したGAGからコンドロイチナーゼ消化を行ったコンドロイチン硫酸の不飽和二糖は, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC法) で定量を行った。一方, 少量のGAG-PGはモノクローナル抗体と特定の酵素消化を組み合わせたELISA法で定量を行った。
    その結果, 電気泳動法とHPLC法ではGAGのレベルは近似していたが, ELISA法によるGAG-PGのレベルは前二者と比較して3~80倍を示した。また, 生化学的手法によってデルマタン硫酸は関節液と嚢胞液において検出されなかった。このことは, ELISA法によって得られたGAG-PG値は生化学的手法で得られたGAG値とは著明に異なり, ELISA法は生化学的方法の代用に必ずしもならないことを示している。
    これらの結果は, GAGの分析方法を選択するのに役立ち, また, 生物学的試料を異なった定量法で得た結果を考察する上での一助となることを示唆している。
  • 波多江 久実, 末田 武, 横田 誠
    1998 年 40 巻 3 号 p. 350-357
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    中等度から重度の成人性歯周炎罹患症例の歯周ポケット内の機械的洗浄による長期臨床経過を報告する。1986年6月に右側上顎中切歯の動揺を主訴として来院した46歳男性。全顎的に急性炎症が認められ, 歯周診査後, 中等度から重度の成人性歯周炎と診断された。週1回の割合で出力を最小に設定した超音波スケーラーのチップにて1週間に2回, ポケット内の徹底的な機械的洗浄を行った。約1カ月後に一回目の評価を行い, その後, 引き続き, 1週間に1回の割合で機械的洗浄を継続し, 7カ月目に再評価を行いハンドインストゥメントを使用したスケーリング, ルートプレーニングによる治療を開始した。その間プラークコントロールレコードは10%を維持するようモチベーションを行った。初診時に歯周ポケットは平均2.7mmを呈しており, BOPは82%であった。最初の再評価で歯周ポケットは平均2.5mm, BOPは31%であった。二回目の再評価, つまり8カ月間のポケット内洗浄後は2.0mm, BOPは22%へと改善した。最終的にスケーリング, ルートプレーニングを終了した時点で, 平均1.9mm, BOPは9%となった。本症例において, 超音波スケーラーのチップを用いたポケット内洗浄により臨床的に著しい歯周ポケットの改善が認められた。以上の結果より, 歯周治療に超音波のチップを用いたポケット内の機械的洗浄の有効性についてのさらなる研究の必要性が示された。
  • Kazuhiro Okuda, Masashi Murata, Megumi Sugimoto, Takashi Nomura, Chung ...
    1998 年 40 巻 3 号 p. 358-370
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は (1) 垂直性骨欠損と下顎根分岐部II級病変を有する部位に対して施術した歯周組織再生誘導法 (GTR法) の臨床効果を対照群として設定したフラップ手術の効果と無作為割付した系で比較検討すること, (2) GTR法の臨床効果に影響を及ぼす因子について多変量解析法を用いて包括的に評価することにある。被験者は, 35歳から60歳までの成人性歯周炎と診断され, 各人につき1部位, 垂直性骨欠損または下顎根分岐部II級病変を有する80名を対象とした。従って被験部位は, 全部で垂直性骨欠損を有する60歯, 下顎根分岐部II級病変を有する20歯となった。歯周基本治療を完了後, これらの被験部位は年齢, 性別, 歯種, 欠損形態を考慮した上で, 実験群 (GTR群) と対照群 (フラップ手術群) に無作為に割付けられた。術後, 創傷部の安静と徹底的な感染のコントロールを行い, 6カ月目および1年目に臨床評価を行った。その結果, 垂直性骨欠損を有する部位では, GTR群, フラップ手術群ともにベースラインと比較して6カ月目および1年目で, 歯周ポケット深さ, 垂直的付着の獲得量, 辺縁歯肉の退縮量, X線上の骨再生量に有意に改善が見られた。さらに, GTR群はフラップ手術群よりも術後6カ月目, 1年目の垂直的付着の獲得量, 辺縁歯肉の退縮量, 骨再生量で統計学的に有意な差をもって改善した。根分岐部II級病変を有する部位では, GTR群においてのみ, ベースラインと比較して6カ月目および1年目の評価で, 歯周ポケット深さ, 垂直的付着, ならびに水平的付着の獲得量に有意に改善が見られた。またGTR群はフラップ手術群と比較して術後6カ月目, 1年目の水平的付着の獲得量に有意な改善が見られた。
    膜の露出は垂直的付着獲得量, 骨再生量, 水平的付着の獲得量と負の関係を示した。GTR法の結果に及ぼす因子について多変量解析を行った結果, ベースライン時の歯周ポケット深さ, 骨吸収量, 水平的付着の喪失量が, 術後6カ月目の垂直的付着獲得量, 骨再生量, 水平的付着の獲得量の予測値となることが示された。さらに術後6カ月目の垂直的付着の獲得量, 骨再生量, 水平的付着の獲得量が, 術後1年目の垂直的付着の獲得量, 骨再生量, 水平的付着の獲得量の予測値であることが示された。故に, 垂直性骨欠損を有する部位ではベースライン時の歯周ポケット深さと骨吸収量が, また根分岐部II級病変を有する部位では, ベースライン時の水平的付着の喪失量が歯周組織再生量を予測する因子であり, 術後6カ月間で最終的な組織再生量が予測し得るものと考えられる。
  • 松江 一郎
    1998 年 40 巻 3 号 p. S1-S9
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
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