本研究の目的は, 歯肉炎症状態の自動評価を行うデジタル画像処理プログラムの作成を行う最初のステップとして, 画像中より軟組織領域を自動認識するアルゴリズムを開発するための基礎データを得る事である。DC420 (デジタルヵメラ; コダック社, USA) で撮影した男性14名, 女性13名の前歯部唇側面の51画像 (上顎25, 下顎26) を解析対象とした。各画像は, 約160万画素のRGB画像 (8Bits/Channel) であり, 画 像の取り込み・保存処理には, Photo shop 3.0J® (画像処理ソフト; アドビー社, USA) を, 画像解析処理プログラムの作成には,
IPLab Spctrum™ (画像処理プログラミングソフト; Signal Analytics社, USA) を用いた。各画像についてRGB系, HSV系, YIQ系, RsGsBs系の4系列・12色の色成分毎のヒストグラム (約8,000万ピクセル/色) を作成し分析した。また, 空隙部の分離閾値を自動算出させる方法を得るため, 各画像におけるR値の最頻値であるMO値 (Modal Value) と空隙部を分離するR値の閾値 (Vacant Threshold Value; VT値) を求め, その回帰式を算出した。このデータは, 51画像のうち明らかに空隙を画像内に有する41画像より得た。この結果, Gs値のヒストグラムの65前後の値による画像分離が最も効果的に歯の領域と歯肉領域の分離に適している事が確認された。また, MO値とVT値の回帰式は, VT=0.527×MO+16.05で, 相関係数0.763, 危険率は0.0001未満であった。MO値とこの回帰式より算出された値で分離した場合, 軟組織領域の輝度の低い部分の誤認識や空隙部の認識漏れがあり修正が必要であることが判明した。今後, 歯肉発赤状態及び歯肉の形態, 特に歯間乳頭頂部の歯肉形態の自動認識アルゴリズムの構築を行う予定である。
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