日本歯周病学会会誌
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41 巻, 4 号
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  • 江連 雅孝, 稲田 全規, 橋本 尚詞, 石川 博, 河村 博, 鴨井 久一
    1999 年 41 巻 4 号 p. 371-379
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究はジヒドロピリジン系の第三世代Ca拮抗薬であるアムロジピンが培養ヒト歯肉線維芽細胞に及ぼす影響を検討した。アムロジピンは歯肉線維芽細胞の増殖を濃度依存的に抑制した。アムロジピンによって歯肉線維芽細胞の細胞分裂, DNA合成, 酸素消費が抑制された。アムロジピンによって細胞の大きさが小さくなり, 形態も紡錘形から円形に変化した。アムロジピンの存在下で細胞の接着率は低下し, これに伴って生細胞率が減少した。以上のことより, アムロジピンは培養ヒト歯肉線維芽細胞の代謝を抑え増殖を抑制することが明らかとなった。これらより, Ca拮抗薬による歯肉増殖の発症は, Ca拮抗薬の歯肉線維芽細胞への直接作用による増殖促進が引き起こされた結果として生じるのではない可能性を示唆している。
  • 山路 公造, 松本 敦至, 加藤 熈
    1999 年 41 巻 4 号 p. 380-391
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 免疫原性が少なく臨床応用の可能性が高いリコンビナントヒトBMP-2 (rhBMP-2) による骨形成が加齢によりどのような影響を受けるかを知る目的で, 担体としてポリ乳酸グリコール酸共重合体/ゼラチンスポンジ複合体 (PGS) を用い, 10週齡, 30週齡, 70週齡のラット (計36匹) の左右側の口蓋部骨膜下を実験部位 (N=72) とし, 何も移植しない群 (CN群), PGSのみを移植した群 (CI群), rhBMP-2配合PGSを移植した群 (E群) に分け移植実験を行った。6週後に病理組織学的観察を行うとともに, 新生骨の厚さを組織学的に計測した。その結果, いずれの週齢のCN群, CI群, E群とも新生骨の形成が観察され, 既存骨とほとんど一体化していた。各週齡の骨新生量は, CN群, CI群, E群のいずれの群も10週齡が最も多く, 次いで30週齡, 70週齡の順で加齢に伴って減少していた。各週齢における各群間の骨新生量は, いずれの週齢もE群の方がCN群およびCI群に比べ有意に多かった。以上の結果から, 中高齢で骨代謝が低下したラットにおいてもrhBMP-2配合PGSを移植することにより, 既存骨と連続して新生骨を添加, 増生させることが可能であり, その量は加齢に伴い減少することが示された。
  • -イヌ開窓状歯槽骨欠損モデルを用いた検討-
    小田島 朝臣, 本郷 興人, 加藤 熈
    1999 年 41 巻 4 号 p. 392-408
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, rhBMP-2を, 担体にポリ乳酸グリコール酸共重合体/ゼラチンスポンジ複合体 (PGS) を用いてルートプレーニングした根面に移植した場合のセメント質, 歯根膜, 歯槽骨の誘導再生, および歯根吸収と骨性癒着の発現の危険性を検討する目的で, イヌに開窓状歯槽骨欠損 (5×5mm) を作製し骨欠損周囲のセメント質と歯根膜に電気メスを用いて損傷を与えた後, 対照群には担体のみを移植し, 実験群にはrhBMP-2を配合比率0.4μg/mm3で移植し, 病理組織学的観察と組織学的計測を行つた。観察期間は13~16週とした。対照群では術後4週に2部位に炎症を伴う腫脹が生じたが, 実験群は観察期間終了時まで良好であった。骨の再生率は, 実験群約97%, 対照群約81%で統計学的有意差 (p<0.05) がみられ, 骨が再生した部位には歯根膜様軟組織が生じていた。一方, セメント質の再生率は約54%と約44%で統計学的有意差はみられなかった。歯根吸収は表面吸収型のみが観察され, 歯根吸収率は実験群約29%, 対照群約'41%であった。骨性癒着は両群ともに観察されなかった。以上の結果から担体にPGSを用いてrhBMP-2を根面に移植すると, 担体のみの移植に比べ歯槽骨と歯根膜様軟組織の再生は明らかに多くなり, セメント質の再生も多くなる傾向を示し, 骨性癒着は生じないことが示唆された。
  • 瀬戸 康博
    1999 年 41 巻 4 号 p. 409-416
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Expanded polytetrafluoroethylene (ePTFE) membnane (Gore-Tex® periodontal material) を用い組織再生誘導法 (GTR法) を行い, 根面の滑沢化と骨面の不良肉芽組織の除去を行った場合の歯周組織の再生への影響について検索した。実験動物として雑種成犬5頭を用い, 骨欠損は頬側方向に抜ける幅3mm, 深さ5 mmの2壁性骨欠損とした。実験部位を4つの群に分け, それぞれの処置を施した後根面処理を行い, 実験群は膜を使用し, 対照群は膜を使用せず, 歯肉弁を元に戻し縫合した。膜の除去は4週後に行い, 屠殺は膜の適用から24週後に行い, 組織学的に比較検討を行った。その結果, 膜を使用した群において根面の滑沢化のみを行った群は骨面の不良肉芽組織の除去のみを行った群よりも新生セメント質, 新生骨の再生量が多かった。また, 両方の処置を行った群と根面の滑沢化のみを行った群との間に歯周組織の再生量において有意差は認められなかった。以上の実験結果からGTR法においては根面の滑沢化は骨面の不良肉芽組織の除去よりも歯周組織の再生に影響を与える重要な因子であることが示唆された。
  • 三上 正人, 加藤 千穂美, 斎藤 和子
    1999 年 41 巻 4 号 p. 417-428
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病関連細菌であるFusobacterium nucleatumと好中球の相互作用の解析のために, 本研究では菌体表層物質による好中球機能の活性化について検討した。F. nucleatum ATCC 25586株のヘプチルチオグルコシド抽出物 (HE) および細胞エンベロープ (CE) を調製し, 血清非存在下でヒト末梢好中球を刺激して, スーパーオキサイドの産生をケミルミネッセンス (CL) 法にて測定した。HEのCL誘導活性はCEより高く, プロテイナーゼKの影響を受けなかった。そこでプロテイナーゼK処理HEを陰イオン交換カラム, 続いてゲル濾過カラムにより分画し, CL誘導表層物質 (CSM) を得た。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動の結果, CSMはポリペプチド, リボ多糖体 (LPS) およびその他の多糖体成分を含む複合体であった。F. nucleatumのLPSは好中球CLを誘導しなかったが, CSMのCL誘導活性はポリミキシンBの添加や, 熱およびフェノール処理により抑制された。この結果はLPSと蛋白質性因子が好中球CLに関与することを示している。さらにCSMの好中球に対するインターロイキン (IL) -8誘導活性がELISA法により, また遊走刺激活性がボイデン法により認められた。これらの活性はポリミキシンBおよび熱処理の影響を受けなかったが, CSMをフェノール処理した場合には, IL-8誘導活性はフェノール抽出画分に, また遊走刺激活性は水溶性画分に認められた。以上の結果から, F. nucleatum初表層物質はヒト好中球の活性化や遊走の充進を引き起こし, 歯周組織における炎症の惹起や進行に関与している可能性が示唆された。
  • -軟組織領域分離のための画像分析-
    飯山 正夫, 井川 資英, 庄司 茂, 堀内 博
    1999 年 41 巻 4 号 p. 429-435
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯肉炎症状態の自動評価を行うデジタル画像処理プログラムの作成を行う最初のステップとして, 画像中より軟組織領域を自動認識するアルゴリズムを開発するための基礎データを得る事である。DC420 (デジタルヵメラ; コダック社, USA) で撮影した男性14名, 女性13名の前歯部唇側面の51画像 (上顎25, 下顎26) を解析対象とした。各画像は, 約160万画素のRGB画像 (8Bits/Channel) であり, 画 像の取り込み・保存処理には, Photo shop 3.0J® (画像処理ソフト; アドビー社, USA) を, 画像解析処理プログラムの作成には, IPLab Spctrum™ (画像処理プログラミングソフト; Signal Analytics社, USA) を用いた。各画像についてRGB系, HSV系, YIQ系, RsGsBs系の4系列・12色の色成分毎のヒストグラム (約8,000万ピクセル/色) を作成し分析した。また, 空隙部の分離閾値を自動算出させる方法を得るため, 各画像におけるR値の最頻値であるMO値 (Modal Value) と空隙部を分離するR値の閾値 (Vacant Threshold Value; VT値) を求め, その回帰式を算出した。このデータは, 51画像のうち明らかに空隙を画像内に有する41画像より得た。この結果, Gs値のヒストグラムの65前後の値による画像分離が最も効果的に歯の領域と歯肉領域の分離に適している事が確認された。また, MO値とVT値の回帰式は, VT=0.527×MO+16.05で, 相関係数0.763, 危険率は0.0001未満であった。MO値とこの回帰式より算出された値で分離した場合, 軟組織領域の輝度の低い部分の誤認識や空隙部の認識漏れがあり修正が必要であることが判明した。今後, 歯肉発赤状態及び歯肉の形態, 特に歯間乳頭頂部の歯肉形態の自動認識アルゴリズムの構築を行う予定である。
  • 梅田 誠, 萩原 さつき, 魚島 マリコ, 冨永 由美子, 高森 由季子, 矢野 和子, 小島 丈尚, 野口 和行, 木村 真太郎, 本郷 ...
    1999 年 41 巻 4 号 p. 436-449
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    急速な歯周組織破壊につながると考えられる歯周炎急性症状 (急性歯周膿瘍) に対する, 塩酸ミノサイクリン歯科用軟膏の歯周ポケット内局所投与の効果について, 対照群と比較した臨床的, 細菌学的な評価を行った。被験者は, 口腔内の単一部位において急性歯周膿瘍を有し処置が必要な患者100名を対象とした。被験者の急性歯周膿瘍を示すポケットに2%塩酸ミノサイクリン歯科用軟膏を1回投与し, 0日目 (処置前), 3日目および7日目に臨床診査を行った。0日目および7日目においては, 細菌サンプルの採取も行った。被験者に対し, 基本処置群 (C群: ポケット内洗浄処置のみ) と試験薬剤群 (T群: ポケット内洗浄処置+2%塩酸ミノサイクリン歯科用軟膏ポケット内注入) の2群を, 盲験的な方法で比較した。本研究を行うに当たり, 医薬品の臨床試験の実施に関する基準 (GCP) を遵守した。
    術前術後において両群とも痛み等の臨床症状の改善が認められたが, T群の方がC群と比べ, より高い改善が見られた。プロービング深さや, アタッチメントレベルの変化に関してもT群の方が, 高い改善が見られた。歯肉縁下プラーク細菌の総菌数に対しては, 両群とも減少したが, T群の方がより大きな減少が見られた。歯周病原性細菌の検出率に関しては, T群のみ, B. forsythus, P. gingivalis, T. denticolaの減少がみられた。T群は臨床的にも細菌学的にもC群以上に改善がみられた。以上の結果から, 塩酸ミノサイクリン歯科用軟膏は急性歯周膿瘍の改善に有効であることが示された。
  • 新井 高, 五味 一博, 渡辺 一郎, 鈴木 丈一郎, 野村 典生, 国分 美和子, 大橋 明石, 楠 憲治, 斉藤 義夫, 吉田 紀昭
    1999 年 41 巻 4 号 p. 450-460
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    口腔内の細菌吸着剤配合歯磨剤と無配合歯磨剤のプラーク除去効果について, 二重盲検法クロスオーバーにて比較検討した。被験者は歯学部学生80名 (男性42名, 女性38名, 年齢18歳~42歳, 平均年齢21.7歳) を用いた。被験歯は修復物の無健全歯噛 (62 4 4 26) を用い, 各灘歯の歯頸部のプラークの付着量を測定した。被験者80名に乱数表に基づき無作為に各歯磨剤を割り付け, 1週間のブラッシングの慣れの期間を経て, それぞれプラセボ歯磨剤を4週間, テスト歯磨剤を4週間使用後にプラークの付着量を測定した。その後, ウオッシュアウト期間を1週間おき, クロスオーバーさせ歯磨剤を交換して同様に4週間ブラッシングを行い, プラークの付着量を測定した。被験者には10週間の実験期間中, 指定の軟毛歯ブラシと歯磨剤以外のすべての口腔清掃用具を使用しないように指示した。実験終了後, 各歯磨剤の割り付け開錠し実験データの統計解析を行った。さらに各歯磨剤の副作用について, 口腔内診査, および唾液中細菌叢の変化を位相差顕微鏡を用いて検討し, 以下の結果を得た。1) 細菌吸着剤配合歯磨剤では無配合歯磨剤よりも有意 (p<0.05) に高いプラーク除去効果を示した。2) 細菌吸着剤配合歯磨剤では口腔内軟組織, 歯, および修復物に対して副作用は認められなかった。3) 細菌吸着剤配合歯磨剤はプラークコントロールを行う上で有用である。
  • 小島 丈尚, 冨永 由美子, 石川 烈
    1999 年 41 巻 4 号 p. 461-468
    発行日: 1999/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周治療におけるA. actinomycetemcomitans, P. gingiualisに対する血清IgG抗体価測定の有用性を検討する目的で, 初診時に両菌に対して高い抗体価を示した16名 (AaPg群) とP. gingiualisのみに高い抗体価を示した36名 (Pg群) について, 初診時の1歯あたりの平均骨吸収率を比較した。また, 同じ処置を行って初診から3年以上経過したAaPg群11名, Pg群13名について年平均の喪失歯数と悪化率を算出し, 良好WM群, 悪化 (D) 群, 急速悪化 (ED) 群に分類し, 比較した。初診時にAaPg群 (44.6%) はPg群 (36.2%) より有意に高い骨吸収率を示した。3年以上経過例では, 初診時骨吸収率 (44.2%, 31.0%), 喪失歯数 (0.96%, 0.17%), 悪化率 (4.0%, 1.0%) でAaPg群で有意に高い値を示した。また, AaPg群11名中7名がED群であったのに対し, Pg群13名中9名がWM群であった。さらに, 重症度が同程度の患者群を想定し, 初診時骨吸収率が20%以上50%未満の患者を選択し比較した。喪失歯数, 悪化率は統計学的に有意ではなかったが, それぞれ0.67vs0.14, 2.5%vs1.1%と, AaPg群で高い平均値を示し, AaPg群6名中4名がD群またはED群, Pg群9名中7名がWM群であった。このように, 両菌に対する抗体価が高い患者は重篤な骨吸収と予後不良の傾向を示し, 歯周治療における抗体価測定の有用性が示唆された。
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