日本歯周病学会会誌
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
41 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 伊藤 太一
    1999 年 41 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 1999/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 咬合性外傷における歯周組織の修復過程を検索することである。そのため, アクチンフィラメントと増殖細胞核抗原を中心に検討を行った。実験にはニホンザル9頭を用いた。実験歯は上顎左右側第二小臼歯とし, 対照歯は上顎左右側第二大臼歯とした。咬合性外傷は北村の方法 (1990) により発症させた。すなわちサル上下顎左右側犬歯の歯冠を除去し, ブラキシズムを生じさせた後に上顎左右側第二小臼歯頬側咬頭内斜面に, 咬頭嵌合位には変化を与えないような鋳造物を装着した。動物は実験開始後2, 4および8週で安楽死させた。標本の半分はヘマトキシリン-エオジン染色を施した。残り半分の標本はアクチンと増殖細胞核抗原 (PCNA) の免疫組織化学染色を行った。病理組織学的および免疫組織化学的検索の結果, 咬合性外傷は3期に分けられた。すなわち, 実験開始後2週は歯周組織の損傷期, 実験開始後4週と8週は, 歯周組織の修復期と順応期に相当した。免疫組織化学的には, 実験開始後2週でのPCNA陽性反応は, 骨吸収窩付近の血管周囲の細胞に認められた。4週後では, PCNA陽性反応とアクチンフィラメントは歯根膜組織内の血管周囲の細胞に多く認められた。8週後では, PCNA陽性反応とアクチンフィラメントが歯根膜組織のセメント質表面や歯槽骨表面周囲に認められた。本研究の結果により, 咬合性外傷における歯周組織の細胞活性は, 最初に改築された血管周囲の細胞より始まり, その後セメント質や歯槽骨周囲の細胞に発現し, 歯周組織の修復をもたらすことが示唆された。
  • 太田 幹夫
    1999 年 41 巻 1 号 p. 16-27
    発行日: 1999/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はプラークを沈着させるため結紮糸を施し, インプラント周囲組織と歯周組織の組織破壊を病理組織学的に検索することにある。実験には雑種成犬8頭を使用した。P3を抜歯, 3カ月後に8本インプラントを埋入, その3カ月後にアバットメントを装着した。インプラントと天然歯は実験開始前1カ月間プラークコントロールを行った。リガチャーは, プラークを蓄積するために8本のインプラントと天然歯の歯肉縁下部に設置した。3カ月間プラーク蓄積後, インプラントと天然歯を含む顎骨を摘出した。パラフィン標本を作製し, 病理組織学的および免疫組織学的検索を行った。T細胞のマーカーとしてCD45Ro抗体, B細胞のマーカーとしてCD20cy抗体を用いた。また, 炎症性細胞浸潤の範囲, 付着上皮の位置, 歯槽骨頂部の位置を組織計測を用い検索した。1) インプラント周囲組織における根端側への炎症性細胞浸潤の範囲は, 天然歯の歯周組織におけるよりも明らかに拡大していた。2) 骨吸収は天然歯で認められず, インプラントで顕著であった。3) インプラント周囲粘膜は天然歯の歯肉に比較してT細胞とB細胞の総和が, 炎症性細胞に占める割合およびT細胞, B細胞の割合には有意な差がなかった。本研究結果からインプラント周囲組織は天然歯の歯周組織より炎症インプラントと天然歯の周囲組織破壊に関する病理組織学的研究 17が急速, かつ深部組織に波及することが示唆された。
  • 南 睦美
    1999 年 41 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 1999/03/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    歯肉溝滲出液 (gingival crevicular fluid: GCF) 中のsecretory leukocyte protease inhibitor (SLPI) 量, α1-protease inhibitor (α1-PI) 量を知るために歯周病罹患部位と健康な部位の酵素活性とインヒビター量を比較検討した。成人性歯周炎患者15名 (男性7名, 女性8名) を対象とし, plaque index (PII), gingival index (GI), probing depth (PD), clinical attachment level (CAL) の測定を行い歯周病罹患部位と健康な部位を各15部位ずつ選択した。採取したGCF中に含まれるα1-PI量, SLPI量をsandwich ELISA法にて測定し, NE (neutrophil elastase) 活性をS-2484試薬を基質として測定した。その結果, α1-PI量, SLPI量, NE活性は歯周病罹患部位の方が健康部位に比較して有意に上昇しており, PDと有意な正の相関があった。さらにα1-PI量, NE量はCALと有意な正の相関があった。以上より, SLPI量, α1-PI量, NE活性は歯周組織の炎症と関連があると考えられる。また, 歯周病罹患部位ではインヒビターが多量に検出されているにも関わらず, NEの活性を抑制することができない可能性が示唆された。
  • 永井 伸頼, 福田 光男, 箕浦 伸吾, 山田 泰生, 多湖 準, 三輪 晃資, 野口 隆, 林 潤一郎, 和久田 志賀司, 祖父江 尊範, ...
    1999 年 41 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 1999/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, Nd: YAGレーザーとフッ化物を併用し, 根面の耐酸性が増加することが可能であるかを検討することにある。矯正治療にて便宜抜去された健全な34本の小臼歯を被験歯として用いた。そのうち20本をセメント質用に, 14本を象牙質用に分けた。セメント質用においては, 歯根面に付着した残存歯根膜線維を5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて除去した。象牙質においては, カーボランダムポイントによりセメント質を除去後さらにサンドペーパーを用いて歯根面を平坦にした°各被験歯の歯根面に (比較的平坦なセメント質と象牙質) 実験部位 (A, B, C, D, E) を設定した。Aをコントロール群 (Negative control), Bを30mJレーザー照射群, c, D, Eをそれぞれ50mJレーザー照射群, 酸性フッ素リン酸溶液群 (以下APF群と略す) (Positive control), 50mJレーザー照射+APF群 (以下併用群と略す) とした。レーザー照射条件は10ppsで30mJ30秒, 50mJ30秒の2条件で行った。この条件で被験歯にレーザーを1回照射しその後, 併用群においては, APF溶液を塗布後, 2分間放置した。コントロールに相当するAPF群も同様にAPF溶液塗布後2分間放置した。各被験歯の実験部位に1mm×1mmの正方形になるように1カ所ずつネイルバーニッシュを用いてウインドウを作成した。脱灰液には, 酢酸ナトリウム-塩酸緩衝液 (酢酸1.4M, pH2.3) を用いた。脱灰液中に溶出したカルシウム量の測定は, 原子吸光分光分析装置を用いた。耐酸性は, 溶出されたカルシウム量をウインドウ面積で割ることで単位面積あたりのカルシウム溶出量として算出した。セメント質においてはレーザー照射群, APF群においてコントロール群と比較して, 有意な差が認められたもののレーザー照射群とAPF群との併用においては有意な差は認められなかった。一方, 象牙質においてはレーザー照射群, APF群において有意な差が認められ, さらにレーザー照射群とAPF群との併用においても有意な差が認められた。以上より露出根面のう蝕予防にNd: YAGレーザ照射とフッ化物の併用の有効性が示唆された。
  • 八巻 恵子, 依田 正信, 長坂 浩, 川村 仁, 菅原 準二
    1999 年 41 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 1999/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    折年. 歯周治療の一環として矯正治療がよく行われるようになった。その目標は, 審美性の改善だけでなく, 機能的かつ咬合性外傷を誘発しない歯列・咬合関係を構築することである。したがって骨格性不正咬合が歯周炎を増悪させている場合, 外科的矯正が必要となる。ここに骨格性下顎前突症を伴った重度歯周炎患者の治療経過を報告する。下顎が左右非対称で, 主訴は左側大臼歯部喪失に起因すると思われる左側顎関節部の疹痛である。外科的矯正による上下顎問関係の是正を要し, 病態が広領域に及ぶことより, 歯内・歯周専門医1名, 矯正専門医1名, 口腔外科医2名, 補綴専門医1名のチームで対応することにした。まず歯周治療を優先し, 口腔清掃指導と保存不可能歯の抜歯から着手した。全残存歯を徹底的にルートプレーニングし, 治癒した数歯を除き歯周外科手術 (歯肉剥離掻爬術) を行った。並行して歯内治療と暫間補綴1も進めた。患者は動機づけが強く治療に協力的で, 歯周治療に対する組織の応答も迅速かつ良好であった。初診から19カ月後に矯正治療を開始し, SPTを継続した。マルチブラケット装置による矯正移動後, 下顎枝垂直骨切り術を実施した。矯正治療により歯の動揺と軽度の歯肉炎が惹起されたため, 保定期間中に歯周治療をやり直した。初診から4年後, 永久補綴物および局部床義歯により機能的に強固な咬合支持が付与された。こうした複数の専門医による包括的医療で患者のプロフィールが改善され, 当初脆弱だった支持歯周組織も安定した。また, クリッキングや関節の痛み, 患側の頭痛といった顎関節関連症状も全て消失した。多様な病因の絡む症例を成功裡に治療するには, 緻密な分析に基づいた正確な診断と周到な計画立案が必須条件であると思われる。
  • 白木 雅文, 石原 常男, 岩永 寛司, 長澤 信五, 岩山 幸雄
    1999 年 41 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 1999/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    この報告は重度な歯槽骨吸収を伴った上顎切歯のスペースクロージングを固定性の小矯正装置を用いて改善した長期臨床例である。
    患者は47歳の女性であり, 重度な骨吸収を伴う上顎前歯部の病的移動を主訴として来院した。口腔内診査の結果, 大部分の歯に歯周支持組織の破壊が認められた。歯周初期治療後にエラステイック材料を用いた簡易な固定性小矯正装置によってスペースクロージングを行った。スペースクロージング後, 上顎前歯部の残存する深い歯周ポケットに対してフラップ手術を行い, さらに金属性舌面板を接着し永久固定を施した。スペースクロージングならびにフラップ手術後1年間は1カ月の1回, その後は3~6カ月の1回のメインテナンスケアーを行い, 約13年間のプロービングデプスと歯槽骨は良好な状態で安定している。以上の治療経過から, 歯周支持組織が骨破壊を伴う上顎切歯部のスペースクロージング 53著しく減少した患者に対して簡易な固定性矯正装置で上顎前歯の病的移動を改善することができた。この改善された位置はプラークコントロールを容易にし, 長期間の予後も良好である。
feedback
Top