日本歯周病学会会誌
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42 巻, 2 号
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  • 島 信博, 北村 秀和, 山田 了
    2000 年 42 巻 2 号 p. 71-81
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯槽骨欠損部にコラーゲン膜と多孔性骨移植材の併用による組織再生誘導法が新生セメント質および新生骨の形成に及ぼす効果を検索することである。まず, 下顎第三前臼歯 (P3) を抜去し, その後, 下顎第二 (P2), 第四前臼歯 (P4) に歯槽骨欠損部を形成, 同部位に炎症を惹起させるために結紮用ワイヤーを歯頸部に結紮し, 4週後に除去した。実験群は, コラーゲン膜と多孔性骨移植材を併用し, 対照群には, コラーゲン膜のみとして組織再生誘導法を行った。実験開始後8週で安楽死させ, 病理組織標本を作製した。その結果, 骨の形成量は, 実験群のコラーゲン膜と多孔性骨移植材を併用した群が明らかに対照群のコラーゲン膜のみの群に比較して統計学的に有意に大であった。しかし, 実験群, 対照群ともに新生セメント質形成量は, 統計学的に有意な差を認めず, 露出歯根表面にコラーゲン線維の侵入を伴う新生セメント質の形成を認めた。これらの結果は, 組織再生誘導法に多孔性骨移植材および吸収性膜を併用した場合, 新生セメント質形成ならびに歯槽骨の形成を惹起させる療法であることを示唆した。
  • 大塚 秀春
    2000 年 42 巻 2 号 p. 82-91
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は, 強い消炎 (清熱) 解毒作用を有する生薬, 黄連の歯周病に対する局所薬物療法剤としての有用性を評価することを目的とした。黄連の抗炎症能は, 活性酸素消去能および血管透過性試験から評価した。さらに, 黄連の抗炎症能を臨床的に評価する目的で, 10名の成人性歯周炎患者の歯周ポケットに黄連を局所投与した。評価項目は, 投与直前, 投与1日, 7日および14日後における歯周炎の臨床指標 (gingival index: GI, bleeding on probing: BOP), gingival crevicular fluid volume: GCF量) およびGCF中のInterleukin-1 (IL-1) α およびIL-1β 量の変動様態である。その結果, 黄連は強い活性酸素消去能を有した。また, 黄連は投与直後に一過性に血管透過性を亢進させたが, その作用は3時間以内に消失し, この機序にはヒスタミン遊離の影響が示唆された。臨床評価において, 黄連は, GIおよびBOPを投与後14日目まで有意に低下させP<0.005), GCF量を7日目まで有意に低下させた (P<0.01)。また, 黄連は, GCF中のIL-1α 量を投与1 4 (日目まで有意に低下させ, IL-1β 量を14日目後に有意に低下させた (p<0.01)。これらの結果から, 黄連は, 活性酸素およびインターロイキン1産生を抑制することで, 歯周組織の炎症反応を抑制する事が示唆された。
  • 庵原 英晃
    2000 年 42 巻 2 号 p. 92-103
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Campylobacter rectusは, 一端に鞭毛を有する微好気性のグラム陰性桿菌で, ヒトの歯周病と深く関わっていると言われている。本菌には表層構造物としてS-layer, 細胞毒性物質などの病原因子が存在する。本研究では, C. rectusに対するモノクローナル抗体を作製し, その検出を行うと共にprobing depth (PD), bleeding on probing (BOP), gingival index (GI) との関連性を解析した。作製したモノクローナル抗体のうち, 150kDaのS-layerタンパク質を認識するものをCRT-1, CRT-2と命名した。CRT-2はC. rectus ATCC 33238 S-layer保有株と反応したがS-layer非保有株とは反応しなかった。CRT-3と命名したモノクローナル抗体は60kDaタンパク質と反応し, Campylobacter showae ATCC 51146およびCCUG 11641と交差反応した。CRT-2モノクローナル抗体を用いたdot-blot法におけるC. rectusの検出限界は103個であった。歯周炎患者プラークサンプルからのC. rectusの検出率は, PD (p<0.001), BOP (p<0.001), GI (p<0.001) と統計学的に正の相関関係が認められ, C. rectusの感染が臨床症状と強い関わりがあることが示された。
  • 池戸 大, 淺原 洋士, 澤 孝賢, 大石 慶二, 山内 規進, 清水 保樹, 大石 美佳, 二宮 雅美, 片岡 正俊, 篠原 啓之, 木戸 ...
    2000 年 42 巻 2 号 p. 104-113
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    フェニトイン (ジフェニルヒダントイン, DPH) はてんかん治療に用いられている抗けいれん薬であり, 副作用の一つとして骨形成促進現象が確認されている。しかしながら, DPHが骨芽細胞に及ぼす影響に関する細胞レベルでの詳細な現象および作用機序は十分に明らかにされていない点が多い。本研究では, DPHが骨芽細胞の分化機能発現に及ぼす影響をMC3T3-E1細胞培養系を用いて, 石灰化骨様結節 (BN) 形成, アルカリフォスファターゼ (ALPase) 活性, DNA量, およびオステオカルシン (OCN) とオステオポンチンOPN) のmRNA発現を指標として検討した。培養開始からDPHを連続的に20日間作用させた場合, BN形 (成, ALPase活性はそれぞれ10~50μM, 10~100μMの範囲で濃度に依存して増加した。細胞増殖に及ぼす影響として, 50μMDPHは, 5, 10, 15日目で細胞DNA量を増加させたが, 最終的な細胞飽和密度には影響を及ぼさなかった。培養期間を変化させてDPHを作用させると, 培養前期 (細胞増殖期) に添加した場合よりも培養中期 (基質合成期) に添加した場合にBN形成の促進が著明に現れ, 200μMDPHで最大効果が認められた。OCN, OPNmRNA発現は200μMDPHを培養開始から20日間連続的に作用させた場合に著明に増強され, その作用はBN同様に培養中期に添加した場合に効果的であった。以上の結果から, DPHはMC3T3-E1細胞においてALPase, OCN, OPNといった骨芽細胞分化指標の発現促進を経てBN形成を増加させることが明らかとなり, この作用は主に基質合成が活発な培養中期にDPHが効果を発揮した結果であることが示唆された。
  • 坂上 竜資, 小田島 朝臣, 加藤 熈
    2000 年 42 巻 2 号 p. 114-121
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    「付着歯肉の獲得を目的とした低侵襲歯肉結合組織移植術」を考案し, その臨床応用を試みた。新たに開発した手術器材は3種類で (1) 14ゲージ吸上針の先端をシャープニングした歯肉採取器, (2) 小型ディスポーザブルメスに, 把持用のプラスチック板を取り付けた移植片切断用メス, (3) 18ゲージの注射針を改造した移植. 床形成剥離子である。
    術式は, (1) まず供給側の口蓋部に歯肉採取器を回転しながら10mm程度押し進め, (2) 次に移植片切断用メスを口蓋歯肉に刺入して歯肉採取器の中に入った結合組織を周囲の組織から離断する。 (3) さらに受容側の歯肉歯槽粘膜境にメスで小切開を加えた後, そこから移植床形成剥離子を骨膜上に挿入して, 歯肉歯槽粘膜境に並行にトンネル状の移植床を形成し, (4) 採取した移植片を小型ピンセットを用いて挿入し, 小切開部を縫合する。本術式を臨床応用した症例では,
    (1) 術中と術後の出血や, 患者の疼痛はわずかで, 創傷の治癒も早く, 外科的な侵襲はきわめて少なかった。
    (2) 手術は短時間で終わり, 手技も簡単であった。
    (3) 新術式は付着歯肉と角化歯肉を獲得できた。 付着歯肉は術後2週で観察されたが, 上皮の角化は初期には起こらず術後6週頃から観察され始め, 1年後には角化が明確になったことから, 上皮の角化充進には時間が必要であった。
    以上より, 従来の上皮下結合組織移植術等の歯肉歯槽粘膜手術に比較して, 新術式は低侵襲で付着歯肉と角化歯肉をともに作製できる有効な手術方法であることが示唆された。
  • 坂東 薫, 新田 浩, 笹生 宗賢, 野口 和行, 誉田 栄一, 植松 宏, 石川 烈
    2000 年 42 巻 2 号 p. 122-128
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は閉経後女性における歯の存在が全身骨および下顎骨の骨密度と関連を有しているか否かについて検討することである。25歯以上の健康な歯周組織を持つ有歯顎者10名および無歯顎者8名の閉経後女性を被験者とした。腰椎骨密度 (第2~4腰椎) を二重エネルギーエックス線吸収法で, 下顎骨骨密度を皮質骨領域と海綿骨領域に分けて定量的コンピューター断層撮影法により測定した。両群の差の検定にはt-検定を, 腰椎骨密度と下顎骨骨密度との関係の検定には相関分析を用いた。その結果, 有歯顎者群の腰椎骨密度および下顎骨皮質骨領域の骨密度は無歯顎者群に比べて有意に高い値を示した。一方, 下顎骨海綿骨領域の骨密度においては両群問に有意差は認められなかつた。無歯顎者群では腰椎骨密度と下顎骨皮質骨領域の骨密度との間に有意な相関が認められたが, 有歯顎者群では有意な相関のある測定項目の組み合わせは認められなかった。
    本研究により, 閉経後女性において, 健康な歯の存在が全身骨と下顎骨皮質骨の骨密度の維持に貢献していることが示唆された。下顎骨皮質骨の骨代謝は天然歯を介した直接の咀囑力により影響を受けるが, 歯が喪失すると, その代謝は全身骨の骨代謝に類似してくることが示唆された。
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