日本歯周病学会会誌
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43 巻, 1 号
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  • 西口 栄子, 鈴木 幸江, 山口 和美, 神部 芳則
    2001 年 43 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯磨剤, 洗口剤の安全性を検討する目的で, 市販されている歯磨剤, 洗口剤の多くに含まれているラウリル硫酸ナトリウム (SLS) とglycerineの各種ヒト細胞に及ぼす影響を検討した。ヒト歯肉上皮細胞に各種濃度のSLSを作用させて細胞の形態を観察した結果, 細胞は, SLSの濃度依存的に変化した。0.01% SLSを作用させた場合, 作用直後細胞が小型化し, 1分後にはほとんどの細胞が溶解した。0.001% SLSを作用させた場合,作用後3分で細胞が小さくなり始めたがその程度は弱かった。ヒト赤血球に各種濃度のSLSを作用させると,赤血球は,SLSの濃度依存的に形態が正常の円盤型から外方突出型の金平糖状に変化し, 0.004%以上では作用後1分で溶血した。ヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)に各種濃度のSLSを作用させると, 0.0022%以上では作用後1分で変化が起こり, 5分ではほとんどの細胞が溶解した。諸細胞にglycerineを作用させた場合, glycerineによる細胞の障害は低濃度, 短時間では大きいものではなかった。ヒト赤血球を用いてSLSの作用点を観察した結果, 膜蛋白質の関与が観察された。
    これらの結果から, SLSやglycerine, 特にSLSは, 微量で, 短時間の作用でも諸細胞に障害を与えるため,使用に際しては十分な注意が必要と考える。
  • 音琴 淳一, 渡邊 英俊, 大野 美知昭, 日垣 孝一, 佐藤 哲夫, 椎名 直樹, 伊豫田 比南, 温 慶雄, 上條 博之, 坂本 浩, ...
    2001 年 43 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周病患者のパノラマX線写真パラメーターを臨床パラメーターと比較することにより, 歯周病と骨粗症の関係を明らかにし, さらにパノラマX線写真パラメーターを用いて骨粗鬆症の診断を試みた。被験者は歯鬆周治療経験, 全身疾患のない20歯以上を有する歯周病患者 (男性群113名, 女性群113名) とした。パノラマX線写真パラメーターとして歯槽骨吸収量, 下顎下縁皮質骨量 (MCW), Central panoramic mandibular index (C-PMI) を計測した。臨床パラメーターとして現在歯数, プラークコントロールレコード, 臨床的アタッチメントレベル, GingivalIndex, GingivalBleedingIndex, 動i揺度を測定した。被験者は男性群と女性群, 女性群を閉経前群と閉経後群 (閉経後1~5年群, 閉経後6~10年群, 閉経後11年以上群) に分類し, 年齢は20代から70代の各年代群に分類した。年齢および閉経後年数と各パラメーターとの相関関係, 各パラメーター間の相関関係を各群間で評価した。さらに, MCWを用いた骨粗霧症の診断を試みた。その結果, 男女群問にはMCWを除いて全ての計測値に有意差を認めなかった。女性群においては, 閉経後6年を越える群に歯槽骨吸収量の有意な増加およびMCWの有意な減少を認めた。閉経後群は現在歯数の減少, 閉経後11年以上群には臨床的アタッチメントレベルの有意な増加を認めた。男性, 女性群において年齢と歯槽骨吸収量, 女性群において年齢と現在歯数および歯槽骨吸収量, MCWと歯槽骨吸収量, 閉経後群において閉経後年数と歯槽骨吸収量, MCWと臨床的アタッチメントレベルは相関関係を認めた。またMCWから2名の女性被験者において骨粗霧症を発見することができた。この結果から歯周病と骨粗鬆症との関連が示され, MCWを用いた女性歯周病患者の閉経後骨粗霧症診断の可能性が示された。
  • 鬼塚 得也, 永井 淳, 森 滋康, 力丸 哲也, 原田 実佳, 栢 豪洋
    2001 年 43 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    根分岐部病変は, 複根歯の根分岐部の歯周組織が崩壊している病的な状態を言う。複根歯は, 単根歯と比較すると形態が複雑であり, 歯周治療が困難となっている。
    これら根分岐部病変の原因は, 慢性辺縁性歯周炎の進行に伴うポケット形成, エナメル突起などの歯冠形態の異常, 歯髄疾患に起因する髄床底孔および側枝,不完全な歯内治療, 二次的な原因とされる咬合性外傷などが挙げられ, これらが単独あるいは複合することによって発症するとされている。
    根分岐部病変の原因の一つとされるエナメル突起は, 結合組織性付着を阻害し, そのためプラークが蓄積し歯周炎の進行によりアタッチメント・ロスが生じやすくなることから, Master & Hoskinsが3段階に分類した。
    また, 様々な原因によって引き起こされた根分岐部病変は, その進行状態をLindhe & Nymanが3段階にGrickmanが4段階に分類を提唱した。
    そこで, 今回臨床30%の高頻度に出現するエナメル突起が原因によって発症した両側下顎第一大臼歯の根分岐部病変に対して, モチベーション・初期治療を行い, 下顎左側第一大臼歯の根分岐部病変については, Lindhe & Nymanの分類2度であったため, Lindhe & Nymanの分類2~3度に基づいた処置を行った。一方, 下顎右側第一大臼歯の根分岐部病変については, Lindhe & Nymanの分類3度ではあるが, Lindhe & Nymanの分類1度を中心とした処置を行った結果, 良好な治癒経過が得られたので報告する。
  • 遠藤 憲行
    2001 年 43 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    種の線毛タイプのPorphyromonas gingivalisを含む歯周病原性細菌の病変部歯肉における存在を検討する目的で, 成人性歯周炎患者の病変部歯肉を採取し, PCR法を用いて各線毛タイプのPgingivalis, Tre-onema denticola, Bacteroides forsythus, Prevotellaintermedia, Actinobacillus actinomycetemcomitansにP ついて検索した。また, 歯周外科処置前後での歯肉縁下プラーク中の各歯周病原性細菌の動態についても検討した。その結果, 今回調べたいずれの歯周病原性細菌も, 病変部歯肉サンプルから検出された。特にP.gingivalis (100%),T.denticola (81.4%), B.forsythus (64.3%) が高い検出率を示した。また,歯肉縁下 プラークのそれと類似していたことから, 特異的に歯肉組織から検出される細菌種のないことが示唆された。P.gingivalisの線毛タイプ別では,TypeII線毛を有するP.gingivalisの検出率が最も高く, ついでTypeIとTypeIIの共存例の率が高く, TypeII線毛のP.gingivalisが単独で,あるいはTypeI線毛との共存下で成人性歯周炎の病変部歯肉組織に存在する可能性の高いことが強く示唆された。
    メインテナンス期の歯肉縁下プラーク中では, 今回調べた全ての歯周病原性細菌の検出率も歯周外科処置前と比較して有意に低下する事が明らかとなった。P.gingivalisの線毛タイプ別ではType II単独例の検出率が歯周外科処置後著明に低下していた。この成績からもType II線毛を有するP.gingivalisが成人性歯周炎の発症・進行に密接に関連することが示唆された。
  • 岸 好彰, 高橋 好文, 東 分吉, 松尾 雅斗, 高橋 和人, 長谷川 二郎
    2001 年 43 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    インプラント界面骨と微小循環について, 実験的にビーグル犬下顎骨にチタン・インプラント (ADSインプラント) を植立, 上部構造を装着して9カ月間咬合させた後, 主に骨付き微細血管鋳型法を用いて試料を作製, これを走査型電顕で観察した。その結果, インプラントと接する界面組織は骨ならびに小塊状の線維性結合組織であった。この小塊内には特異な分布形態・走行を示す毛細血管が小数分布し, この毛細血管と近接する界面骨には骨吸収窩 (ハウシップ窩) が観察された。これに対して血管の存在しない界面骨の表面には, ハウシップ窩は観察されなかった。いずれにせよ, インプラント界面全体に分布する毛細血管は極めて少なかった。一方, 界面骨の裏側, すなわち骨髄側には近接して特異な毛細血管網が密に分布する箇所があり, この部位の骨表面には無数のハウシップ窩が観察された。
    以上のことから, 界面骨の厚さは骨髄側でコントロールされ, 一度形成された界面骨の代謝活性は極めて低く, 環境変化に素早く対応することが出来ない状態にある, ということが微小循環の面から示唆された。
  • 五味 一博, 金指 幹元, 江夏 一彰, 柳沢 隆, 小林 一行, 菅原 信一, 新井 高
    2001 年 43 巻 1 号 p. 52-64
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はラット骨髄細胞の継代1代目の細胞を用いたハイブリッド体のラット皮下における異所性の骨形成におよぼす塩基性線維芽細胞増殖因子 (b-FGF) の効果を調べることである。また, 3種類の担体についても併せで評価を行った。まず, ラット骨髄細胞が骨芽細胞へと分化するための適切なb-FGFの濃度について調べるために細胞数, ALP活性およびカルシウム濃度を2.5ng/mlと25ng/ml b-FGFの添加下で0, 2, 4, 6, 8, 14日間培養後に細胞を回収し測定した。この結果, 2.5ng/ml b-FGFを添加した場合ALP活性, カルシウム濃度共に25ng/mlb-FGFを添加した場合よりも活性が上がっていた。この結果に基づき, 骨原性細胞と3種類の担体 (HAP, TBC, BioOss®) とにより作られたハイブリッド体を, 2.5ng/ml b-FGF添加あるいはコントロールとして非添加の状態で2週間培養した。移植3時間前にPBSで洗浄し, 移植に用いるまでインキュベートした後ラット皮下に移植した。移植後5週と8週に取り出し, 組織学的に観察した。HAPとのハイブリッド体ではコントロール群より実験群に良好な骨形成と骨の成熟が認められた。しかしながら, TBC, BioOss®とのハイブリッド体では実験群, コントロール群共に骨の形成はわずかであった。この結果より, HAPを担体とし2.5ng/mlb-FGFを添加して作製したハイブリッド体は骨形成活性が上昇することが示された。
  • 岡本 公彰, 長谷川 直樹, 菅原 信一, 前田 伸子
    2001 年 43 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    絹糸を歯頸部に結紮し, Porphyromonas gingivalisの感染および蔗糖含有飼料 (D2000) で飼育する実験的歯周疾患モデルを作成し, 骨吸収量, 破骨細胞数, 細菌叢を比較検討した。実験開始3週前にハムスターの下顎第1臼歯歯頸部に絹糸を結紮し, 実験開始とともに絹糸を切除, 再結紮した後, 通常飼料 (CE-2) 飼育群, CE-2で飼育しP.gingivalisを感染させた群, D2000飼育群, およびD2000で飼育しP.gingivalisを感染させた群の4群に分けた。その結果, 実験開始後4週の歯槽骨吸収量は, P.gingivalis感染群あるいはD2000飼育群では, 対照としたP.gingivalis非感染群あるいはCE-2飼育群より大きく, D2000飼育P.gingivalis感染群が最も大きかった。各群の歯槽骨周辺の破骨細胞数は実験期間を通じてCE-2飼育群が最も少なく, D2000飼育P.gingivalis感染群が最も多かった。各群の実験開始後1週の歯肉縁下プラークからはグラム陰性桿菌と共にグラム陽性球菌およびグラム陽性桿菌が認められたが, 実験開始後4週ではグラム陰性桿菌が大部分を占めた。CE-2飼育あるいはD2000飼育したP.gingivalis感染群から回収されるP.gingivalisの菌数は, 実験開始後1週では培養可能な細菌の約3~5%を占めたが, 実験開始後4週では約35~37%に増加した。
  • 東海林 良彦, 金指 幹元, 新井 寿欧, 渡辺 一郎, 五味 一博, 新井 高
    2001 年 43 巻 1 号 p. 72-79
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    外科手術を行う上で手術時間を短縮することは, 患者の身体的負担を軽減するために重要である。また, 歯周外科手術の手術時間は種々の要因により影響されることが考えられるので, 社会経済的観点からも歯周外科手術に対する適正な評価が必要である。そこで本調査では, フラップ手術 (歯肉剥離掻爬手術) の平均的な手術時間を調べるとともに, 併用する処置, 手術部位, 術者の臨床経験によって手術時間に違いがあるかどうかを検討した。
    1996年4月1日から1999年3月31日までの3年間に, 鶴見大学歯学部附属病院保存科手術室で行われたフラップ手術459例 (男性157名, 女性302名, 平均年齢47.4歳) の平均手術時間と1歯あたりの平均手術時間を調査した。その結果, フラップ手術の平均手術時間は96±23分, 1歯あたりの平均手術時間は34±19分であった。フラップ手術の手術時間を併用処置別に調べた結果, 1歯あたりの平均手術時間は, 併用処置のない場合が31±18分, 併用処置として歯槽骨整形・切除を行った場合が31±18分, ヘミ・トライセクションが39±17分, 抜歯が39±20分, GTRが44±23分であり, 併用処置なしとGTR, 歯槽骨整形・切除とGTRとの間に統計学的に有意差 (p<0.05) が認められた。
    また, 併用処置のないフラップ手術180症例 (男性66名, 女性114名, 平均年齢47.4歳) の手術時間を部位前歯部, 小臼歯部, 大臼歯部) 別, 術者の臨床経」験年数 (3年未満, 3年以上6年未=満, 6年以上) 別に調 べ(た。その結果, 1歯あたりの平均手術時間は前歯部が24±17分, 小臼歯部が35±9分, 大臼歯部が58±24分で, 前歯部と小臼歯部, 前歯部と大臼歯部, 小臼歯部と大臼歯部との問に統計学的に有意差 (p<0.05) が認められた。一方, 術者の臨床経験年数の違いによって手術時間に差は認められなかった。
  • 伊藤 公一, 五味 夢大
    2001 年 43 巻 1 号 p. 80-82
    発行日: 2001/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本症例報告では,矯正治療後下顎前歯31の唇側に生じた限局型歯肉退縮に対して露出歯根面被覆が完遂できるような一方法を紹介している。歯肉退縮の原因を把握し, 周囲歯周組織の診査, 診断さらに歯,歯肉および歯槽骨の関係を改善するために必要な矯正治療や歯周形成外科手術を含む歯周治療の選択が不可欠である。この症例報告では, 再矯正治療によって31の歯列不正の改善を図ったのち歯周形成外科手術を行い露出歯根面はほぼ100%被覆され,審美的にも改善されることを実証している。
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