日本歯周病学会会誌
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46 巻, 1 号
March
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総説
原著
  • 今井 純人, 菅原 香, 大森 みさき, 長谷川 明
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    開業歯科医院における歯周治療と歯の喪失との関係を知ることを目的とし, 歯周治療の過程における歯の喪失について, 病因, 抜歯時期を含め検討し, 併せて, その結果を歯科大学附属病院の歯周専門診療科 (歯周治療科) と比較し検討した。対象は成人性歯周炎と診断され, 歯周治療が行われてメインテナンスに移行し, その後5年が経過した92名で, 歯周治療科では38名である。その結果, 歯周治療開始よりメインテナンス5年後までの抜歯数は, 歯周治療対象歯の3.3%であった。歯周治療科では6.2%で, 抜歯された割合は倍であった。抜歯を病因別にみてみると歯周疾患に起因したもの (P) が61%だったが, 歯周治療科では89.7%であった。歯周治療科ではPの抜歯が約90%を占めていたのに対し, 開業歯科医院では, 齲蝕または根尖性疾患に起因したもの (C) が40%近くを占めていた。Pで抜歯されたもののうち, 歯周治療時に抜歯されたのは32.5%であったが, 歯周治療科では77.6%と倍以上であった。メインテナンス移行後抜歯されたのは28.6%であったが, 歯周治療科では大部分が歯周治療時に抜歯され, メインテナンス移行後は少なかった。メインテナンス対象歯のうちPで抜歯されたのは1.0%であり, 歯周治療科では0.8%と両方とも低い値で, メインテナンスを含んだ歯周治療が効果的に行われていることを示した。
  • ―手用スケーラーとの比較 (模型上における検討)―
    荒川 今日子, 伊藤 正満, 吉成 伸夫, 川瀬 仁史, 三谷 章雄, 松岡 成範, 杉石 晋, 尾藤 睦, 野口 俊英
    2004 年 46 巻 1 号 p. 20-30
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    エアスケーラーによる歯肉縁下のスケーリング, ルートプレーニングの有効性を知る一助として, その到達度, 除去率について模型上にて手用スケーラーと比較検討した。
    人工着色剤 (ポスカ®, 三菱鉛筆株式会社, 日本) を着脱可能な人工歯の歯根面に塗布し, マネキンに装着した学生実習模型P15D-AC22 (株式会社ニッシン, 日本) を使用して, スケーリング, ルートプレーニングを施行した。エアスケーラーには歯肉縁下用エアスケーラーチップのSONICflex® paro (Kavo EWL, Germany) を装着したエアスケーラーSONICflex® LUX2000L (Kavo EWL, Germany) (以下, エアスケーラー) を使用し, 手用スケーラーと比較検討した。手用スケーラーはグレーシーキュレットのミニファイブ®(Hu-Friedy, U.S.A.) (以下, キュレット) を使用した。被験部位は, 下顎左右中切歯, 側切歯, 上顎左側第一小臼歯, 下顎左側第二大臼歯の6歯を選択した。術者は, 当講座に入局後, 臨床経験年数が1年未満の10名を初心者群, 臨床経験年数が8年以上の10名を経験者群とした。到達度および除去率は, 人工着色剤除去部分に対するコンピューター上の画像解析により算出し, 器具別, 術者の経験年数別に比較した。
    器具別による到達度の比較では, 初心者群のほとんど全ての被験歯根面においてキュレットと比較して, エアスケーラーの方が到達度が深かった。経験者群では全ての被験歯根面でエアスケーラーの方が到達度が深く, 上顎左側第一小臼歯口蓋側面と下顎左側第二大臼歯遠心面においては統計学的に有意な差が認められた (p<0.01)。
    器具別による除去率の比較では, 初心者群, 経験者群ともにキュレットと同程度か, キュレットの方が除去率が高かった。しかしながら, 下顎左側第二大臼歯においては, ほとんど全ての歯根面においてエアスケーラーの方が除去率が高く, 経験者群の遠心面で統計学的に有意な差が認められた (p<0.01)。
    経験年数別による到達度の比較では, ほとんど全ての被験歯根面で経験者群の方が深かった。経験年数別による除去率の比較では, 全ての被験歯根面において経験者群が初心者群より除去率は高かった。
    以上のように, 今回使用したエアスケーラーチップは到達度の深いことが確認された。さらに, 下顎左側第二大臼歯遠心面のように深い骨内欠損を有する部位においては, エアスケーラーの方がキュレットより到達度・除去率ともに高く有効であった。経験年数別による比較で, エアスケーラーが到達度・除去率ともに初心者群が経験者群より低かったことから, エアスケーラーは初心者にとって易しい手技ではなく, 充分な訓練の必要があると思われた。
  • 小林 孝雄, 中島 啓介, 葭原 明弘, 宮崎 秀夫, 小鷲 悠典
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    これまで, 多くの研究者により血清IgGサブクラス量と歯周炎の病態との関連が報告されてきた。本研究では, 人種, 年齢, 喫煙の影響を取り除いた状態つまり高齢日本人の非喫煙者を対象とし, 血清IgGサブクラス量と歯周組織の状態に関連があるかを明らかにすることを目的とした。1999年4月の時点で新潟市に住民票を有する71歳の高齢者451名から、 無歯顎者および喫煙者を除外し340名の有歯顎の非喫煙者を被験者とした。有歯顎の非喫煙者を残存歯の少ない群 (19本以下) と多い群 (20本以上) の2群に分け, 歯周組織状態と血清データの比較を行った。その結果, 残存歯の少ない群では残存歯の多い群に比べて, アタッチメントロス量が4mm以上の部位の割合, 血清IgG1量が有意に高く, 血清IgG2-4量は有意に低かった。また, 残存歯数と血清IgGサブクラス量との相関を調べた結果, 残存歯数と血清IgG1量の間に有意な負の相関が認められた。これらの結果から, 高い血清IgG1量と残存歯の減少の間に何らかの関連がある可能性が示唆された。歯周組織破壊における血清IgG1の役割をさらに詳細に解明するためには, 縦断的研究が必要となるであろう。
  • 茂田 圭弘, 佐藤 悦子, 鴨井 久博, 石川 博, 鴨井 久一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 1 号 p. 39-50
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    同種血液由来因子 (Platelet releasate : PR) はヒト血小板より濃縮・調整され, 歯周組織再生に有効とされるPlatelet-derived growth factor (PDGF) およびTransforming growth factor-β (TGF-β) などの細胞増殖因子を含み, 再生医療に応用されている。PRを用いた臨床症例は多く報告されているが, 細胞に対する生物学的効果は不明な点が多い。そこで本研究はPRの歯周組織由来培養細胞に及ぼす影響を検討するために, 単層培養法および三次元培養法を用いた細胞増殖活性, さらにRT-PCR法とELISA法を用いたTGF-β1発現について解析を行った。
    その結果, PRに対するヒト歯周組織由来の歯肉線維芽細胞 (HGF), 内皮細胞 (HVEC), 上皮細胞 (HEC) および歯根膜線維芽細胞 (HPLF) の細胞増殖作用はPR非添加の対照群と比較して, 細胞増殖作用の促進を示した。次にPRに対するHGFおよびHPLFの細胞増殖作用を, コラーゲンマトリックスを用いた三次元培養で検討した結果, PR非添加群と比較し, PR添加群において細胞増殖率の上昇 (HGF : 2.66倍, HPLF : 4.37倍) が認められた。さらにHPLFにPRを添加した結果, HPLFにおけるTGF-β 1 mRNA発現量 (3.38倍) およびTGF-β1産生量 (24, 48, 72h PR FCM : 10.76, 12.15, 13.02ng/ml) が増加を示した。以上の結果より, PRは喪失した歯周組織を構成する細胞の増殖を促進させ, さらにコラーゲンマトリックスという足場を得る事でさらに安定した細胞増殖を示した。また, 歯周組織再生に重要な細胞増殖因子であるTGF-β1を発現させる事で組織再生に必要な条件を十分に満たすことからin vitroにおける歯周組織再生への有用性が示された。
  • 米田 栄吉, 眞柳 弦, 伊川 桂次, 国井 亮太郎
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    10歳代における初期の歯周疾患進行を阻止するため, Professional Tooth Cleaning Instruction (PTCI) を行い, その効果を評価した。平成12年から平成15年まで, 女子中学・高校の歯科検診において生徒全員のCPIを測定した。Index Teeth 6歯のTotal CPIスコアが10-14の生徒を抽出し, PTCIの対象者とした (平成13年は39名, 平成14年は26名)。対象者に対して, Index Teethの歯周ポケット深さを測定した。5分間, 各自の方法で自由にブラッシングを行わせた後にO'LearyのPCRを記録した。次に歯科医師によりDent EX slim head#33とone-tuft M (ライオン (株), 東京) を用いて一週間に1回, 計10回のPTCIを行った。O'LearyのPCRはPTCI前と10回後を比較すると, 平成13年と14年の2年とも有意に減少し, ブラッシングテクニックが向上したことが示唆された。Index Teethの平均歯周ポケット深さは10回のPTCIによって, 減少する傾向が認められ, 最大歯周ポケット深さは平成13年, 14年とも有意に減少した。Total CPIスコアと6歯のMaximum CPIスコアはそれぞれ, 次年度の検診時には有意に減少した。本研究の対象者は全体の2~3%であったが, PTCIにより, 母集団のTotal CPIの分布はスコアの小さいものが有意に多くなった。徹底的にPTCIを繰り返すと, ブラッシングテクニックの向上, 歯周病の進行阻止および, 改善にも有効であった。さらに, 小集団に対するPTCIは, 母集団に対しても波及効果があることが示唆された。このプログラムは10歳代の生徒に対して, 歯周病の予防に有効であることが示唆された。
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