日本歯周病学会会誌
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
46 巻, 4 号
December
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 山本 龍生, 下野 順子, 神社 亜生, 恒石 美登里, 渡邊 達夫
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    歯周疾患と肥満や血圧との関連性が報告されているが, 対象者が歯周治療を受けたか否かは不明である。治療により歯周組織の状態が改善した集団においてもその関連性が見られるならば, 両者の関係は強固であると考えられる。本研究では, 歯周治療のメインテナンス期にある患者の歯周状態がbody mass index (BMI) や血圧と関連するか否かを調べた。
    歯周治療のメインテナンス期にある男性60名, 女性88名を対象とした。口腔内所見として, 現在歯数, 平均歯周ポケットの深さ (PD), 平均アタッチメントレベル (AL), プロービング時の出血部位の割合 (BOP), 歯垢指数 (PCR) を診査した。喫煙, 身長, 体重を質問し, 自動血圧計で最高血圧, 最低血圧, 脈拍を測定した。各指数について男女間で比較すると, PD, AL, PCR, 最低血圧, 身長, 体重, BMIに有意差がみられた。喫煙者は全て男性であった。
    男女別にPD, AL, BOPをそれぞれ従属変数とし, 年齢, 現在歯数, PCR, 最高血圧, 最低血圧, 脈拍, 身長, 体重, BMI, 喫煙の有無を説明変数として重回帰分析 (逐次選択法) を行った。その結果, PDは男性のBMIと関連がみられたが, 女性ではいずれの指標とも関連がなかった。ALは男性では現在歯数, 最低血圧, 喫煙と, 女性では現在歯数および年齢と関連がみられた。BOPは男性の体重, 女性のBMIとの間に有意な関連性がみられた。PDやBOPは歯周組織の状態と関連していることから, 歯周疾患とBMIとの関連性は, 歯周状態が治療により改善し, 安定した集団においてもみられることが示唆された。
  • 友藤 孝明, 東 哲司, 草野 弘揮, 山本 龍生, 多田 徹, 森田 学, 渡邊 達夫
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 4 号 p. 253-258
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    プロービングデプスとアタッチメントレベルは, 臨床指標としてよく用いられる。本研究では, メインテナンスに移行した歯周病患者における, プロービングデプスとアタッチメントレベル計測の臨床的な意義を検討した。メインテナンス期にある193名の歯周病患者 (平均年齢 ; 61.7歳, 男性77名, 女性116名) を対象にした。プロービングデプスとアタッチメントレベルを, 1歯6点法で計測し, 年齢, 性別, プロービング時出血および動揺の有無との関連を評価した。1人あたりの平均プロービングデプスとアタッチメントレベルは, それぞれ1.89mmと2.75mmであった。アタッチメントレベルでは年齢との相関 (r=0.36, p < 0.001) が認められたが, プロービングデプスと年齢の間には, 相関はなかった。また, 出血のある部位のプロービングデプスとアタッチメントレベルの平均値は, 出血のない部位よりもそれぞれ大きな値となった (p < 0.001)。さらに, 重回帰分析から, 歯の動揺度に対するアタッチメントレベルの影響力が, プロービングデプスより大きいことも示された。これらの結果は, プロービングデプスは歯周病の活動性を, アタッチメントレベルは歯周病の重症度を示す指標であることを示唆している。歯周状態の把握は, 活動性と重症度の両面から考慮されるべきなので, プロービングデプスとアタッチメントレベル双方の測定がメインテナンス時に不可欠である。
  • 夫馬 大介, 稲垣 幸司, 石原 裕一, 小出 雅則, 林 潤一郎, 田中 繁寿, 祖父江 尊範, 伊藤 貴志, 岩田 武久, 鈴木 万里代 ...
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 4 号 p. 259-265
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    エストロゲンの欠乏は, 閉経後骨粗鬆症に関連し, エストロゲンは, 骨吸収抑制作用があると考えられている。閉経および卵巣摘出により, 骨吸収性サイトカインの産生が増加する。そこで本研究では, 閉経後女性の歯肉溝滲出液 (gingival crevicular fluid, GCF) 中のIL-1濃度を, 閉経前女性との間で比較した。IL-1α, IL-1β, IL-1ra濃度および総IL-1/IL-1ra比 (IL-1活性度, IL-1 AI) は, 閉経前女性 (Pr群, 44.2±2.2歳) 12名の72歯, 閉経後女性 (Po群, 57.8±1.3歳) 12名の72歯, 合計144歯から測定した。IL-1α, IL-1βおよびIL-1ra濃度の測定には, サンドウィッチ酵素免疫測定法 (enzyme linked immunosorbent assay, ELISA) を用いた。GCF採取時に, 歯周病所見 (プロービングポケット深さ, クリニカルアタッチメントレベル, プロービング時の歯肉出血, 歯の動揺度, 歯肉炎指数, 歯槽骨吸収率) を診査した。歯周病所見は, 両群間に差はなく, 辺縁歯肉の炎症はコントロールされていた。Po群のIL-1α, IL-1ra濃度は, Pr群に比べ高く (P < 0.01), また, IL-1β濃度, IL-1AIも高かった (P < 0.05)。したがって, 閉経は, GCF中のIL-1産生の増加に影響することが示唆された。
  • 岩坂 憲助, 根岸 淳, 山路 公造, 川浪 雅光
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 4 号 p. 266-277
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, streptozotocin (STZ) 誘発糖尿病態下でのリコンビナントヒトBone Morphogenetic Protein-2 (rhBMP-2) 投与による骨形成を検討する目的で, 担体としてポリ乳酸グリコール酸共重合体/ゼラチンスポンジ複合体 (PGS) を用い, 正常ラット, STZ誘発糖尿病ラットおよびインスリンを投与したSTZ誘発糖尿病ラットの口蓋部骨膜下を実験部位 (N=54) として, PGSのみを埋入した群 (nonDM-PGS群, DM-PGS群, INS-DM-PGS群), rhBMP-2配合PGSを埋入した群 (nonDM-BMP群, DM-BMP群, INS-DM-BMP群) に分けて実験を行った。6週後に病理組織学的観察を行うとともに, 新生骨の厚さを組織学的に計測した。その結果, いずれの群においても既存骨とほとんど一体化して新生骨の形成が観察されたが, 新生骨の厚さに違いが見られた。骨新生厚さを比較すると, PGSを埋入した3群間では, DM-PGS群が有意に小さかった。rhBMP-2を埋入した群とPGSを埋入した群を比較した場合, nonDM-BMP群, DM-BMP群, INS-DM-BMP群は, それぞれnonDM-PGS群, DM-PGS群, INS-DM-PGS群より有意に大きかった。rhBMP-2を埋入した3群間を比較した場合では有意差は見られなかった。以上の結果から, STZ誘発糖尿病状態では創傷治癒時の骨新生は低下するが, rhBMP-2の骨新生増加作用は影響を受けず, 既存骨と連続して新生骨を添加・増生させることが示唆された。
  • 伊部 敬介, 宮治 裕史, 菅谷 勉, 川浪 雅光
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 4 号 p. 278-287
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, BMP-2を歯根象牙質表面に塗布することが, 歯周組織再生に与える影響を検討することである。
    イヌ上下顎前臼歯歯根頬側部を部分層弁剥離して骨膜を除去した後, 裂開状骨欠損を作成して歯根膜, セメント質を除去した。象牙質表面を処理しないものを未処理群, 象牙質表面を24% EDTAで脱灰処理後, さらに0, 100, 400, 1000 μg/mlの濃度に調整したBMP-2を塗布したものをそれぞれ0群, 100群, 400群, 1000群とし, 4, 8週後に病理組織学的観察と組織学的計測を行った。
    その結果, セメント質新生率は8週の1000群が62.6±15.0%で0群の39.6±13.7%と比較して有意に大きい値を示した。またBMP-2を塗布した群では既存のセメント質と連続しないセメント質様硬組織が観察された。骨性癒着率は4週の400群, 1000群でわずかに観察された。また, 8週の骨性癒着はごくわずかで, すべての群間に有意差は認められなかった。新生骨はすべて既存の歯槽骨と連続して形成され, 8週後の400群と1000群の歯槽骨新生率はそれぞれ59.4±15.7%, 62.4±11.1%で未処理群21.3±16.8%, 0群39.7±16.1%と比較して有意に大きかった。接合上皮深部増殖率は, 8週において400群と1000群が0群と比較して有意に小さかった。
    これらの結果から歯根象牙質表面にBMP-2を塗布することは歯周組織の再生に有効であることが示唆された。
  • 入江 一元, 坂倉 康則, 敦賀 英知, 細川 洋一郎, 矢嶋 俊彦
    2004 年 46 巻 4 号 p. 288-293
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    閉経後骨粗鬆症における下顎骨および歯槽骨の変化を解明するために, 卵巣摘出ラットの下顎骨と歯槽骨の3次元的な構造変化を検討した。25週齢雌性ウィスター系ラットに卵巣摘除術 (卵摘群) あるいは, 偽手術 (対照群) を施した。手術後9週で下顎骨を取り出し, マイクロCTを用いて検索した。その結果, 卵摘群の下顎骨では対照群と比べ, 骨量と骨梁幅が有意に低値を示し, 骨梁間距離は有意に高値を示した。第一臼歯根間中隔部の下顎骨を再構築した3次元像でも卵摘群では対照群と比較して下顎骨骨体内部および根間中隔内部の骨量が少なかった。下顎切歯周囲の歯槽骨に注目し, 骨髄に隣接する部分と骨髄に隣接しない部分の歯槽骨で卵摘群と対照群を比較した。骨髄に裏打ちされた部分の歯槽骨幅は卵摘群で有意に減少していたが, 骨髄に隣接しない部分の歯槽骨幅は対照群と変わらなかった。これらの結果は卵巣摘除後の下顎骨の骨量の減少は骨髄に隣接した部位で著明であることを示し, 閉経後の骨粗鬆症において, 下顎骨における骨量の減少は骨内膜表面で起こる可能性が示唆された。
  • 吉田 昌弘, 鴨井 久博, 佐藤 聡, 鴨井 久一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 4 号 p. 294-305
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, イヌの露出歯根面に対して歯根面被覆法を行い, 歯周組織再生に対する治癒形態を組織学的, 形態学的に検討を行った。血小板由来因子を添加したアテロコラーゲンを実験群, アテロコラーゲンのみをコラーゲン群, 上皮下結合組織移植術を対照群として, 以下の結果を得た。実験群の歯根面被覆は, 経日的に著しい新生セメント質, 新生骨の形成がみられ, 露出歯根面との間に結合組織性の付着様式が認められた。さらに, 計測結果では, 新生骨, 新生セメント質および結合組織性の付着は, 経日的に有意に増加した。コラーゲン群の歯根面被覆は, 実験群より少ないものの経日的に新生セメント質, 新生骨の形成が起こり, 露出歯根面との間に結合組織性の付着が認められた。対照群の歯根面被覆は, 経日的に新生セメント質, 新生骨の形成がほとんど起こらず, 上皮の進入も著しく, 露出歯根面との間に長い上皮性の付着が認められた。以上の結果より歯肉退縮のある露出歯根面の被覆において血小板由来因子の応用は, 予知性の高い有効な術式であることが示唆された。
症例報告
  • ―包括的治療による審美性と機能性の改善―
    内田 剛也, 吉田 拓志, 柏木 恒毅, 伊藤 公一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 46 巻 4 号 p. 306-314
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    近年, インプラントは単独歯から多数歯の欠損に適用される予知性の高い歯科治療のひとつとなってきた。しかしながら, インプラント植立にあたり, 歯の喪失や歯周疾患によって十分な歯槽骨量が残存していないことがしばしばある。特に, 咬合性外傷をともなう歯周炎の患者の歯の喪失は, 抜歯部位での利用可能な骨外形に影響を及ぼすものであり, このような患者においては垂直的な高さや頬舌的な幅径が不足していることも多い。その解決法は, 失われた骨量を骨移植により再建することである。下顎骨から採取したブロック骨移植は, 不足した顎堤の垂直的な高さと同時に幅も増大するための有効な治療法のひとつである。
    今回, 両側下顎大臼歯部の欠損による咀嚼障害を主訴とし, 上顎前歯部に審美障害を有する57歳女性の症例に対して歯周外科治療, ブロック骨移植による歯槽骨の増大, インプラント補綴, 部分矯正治療を行い歯周組織の炎症のコントロールと安定した咬合を確立した。その結果, 審美および咀嚼障害が回復した症例を報告する。
  • 梅田 誠, 牛田 由佳, 野口 和行, 石川 烈
    2004 年 46 巻 4 号 p. 315-324
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/09/30
    ジャーナル フリー
    乳歯列期から急速な歯周組織破壊を示すPapillon-Lefèvre症候群患者 (PLS患者) の歯周治療を10年余りにわたって行い, 良好な経過を示している。患者は初診時6歳の女性で, 歯肉の腫脹を主訴に来院した。混合歯列の口腔内の残存乳歯において, 深い歯周ポケット, 高度の歯槽骨吸収, 歯の動揺, 歯肉の発赤, 腫脹が見られ, 口腔から, Actinobacillus actinomycetemcomitansおよびTannerella forsythensisが検出された。歯周病原性細菌の感染源を除去するために歯周ポケットを有する残存乳歯を抜歯した。その後, 頻繁な口腔ケアによって歯周病原性細菌の再定着の防止を試みたが, 12|12に始まる再発から全顎にわたる炎症および急激な歯周組織破壊を示し, 局所から歯周病原性細菌が検出された。急激な症状の悪化に対し, 歯周外科手術および塩酸ミノサイクリンの投与は有効でなかったことから, 10歳時, レボフロキサシンを投与した。また, 家族の歯周治療を行って歯周病原性細菌の家族内感染を防ぐことによって, 口腔内から歯周病原性細菌が取り除かれ, 臨床症状は急速に改善し, 16歳の現在において歯周組織の改善が見られ, 良好な経過を示している。難治性のPLS患者において歯周病原性細菌を検出し, モニターしながらそれを取り除き, 家族からの感染を防ぐことによって, 良好な治癒が見られた。
feedback
Top