日本歯周病学会会誌
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47 巻, 3 号
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巻頭言
A Memorial Writing "Professor Yusuke Kowashi"
原著
  • 森 豊一, 上崎 聖子, 田淵 由美子, 齊藤 徹
    2005 年 47 巻 3 号 p. 137-145
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    近年, 音波振動歯ブラシとして, 高い振動数の電動歯ブラシが多数開発されている。本研究の目的は, 高い振動数を含む前後振動型電動歯ブラシにおいて, 振幅と振動数, ブラシのかたさとブラッシング圧および動かし方が清掃性に与える影響を検討することである。評価は, 所定のブラッシング圧で歯を清掃する装置 (サンスター社開発ブラッシングシミュレーター) を用いて行った。清掃性の評価は, 顎模型に塗布した着色粉末の除去率を画像解析にて計測して行った。その結果, 歯面全体の除去率は, 振幅0.5mm, 振動数10,000cpmで最大値85%, 振幅1mm, 振動数7,000cpmで最大値79%, 振幅3mm, 振動数2,000cpmで最大値86% を示し, 0.5~3.0mmの振幅において, 清掃効果が最大となる振動数が存在することが示唆された。また, やわらかめのブラシ使用時, ブラッシング圧150gで最大値85%, ふつうのブラシ使用時, ブラッシング圧250gで最大値88%, かためのブラシ使用時, ブラッシング圧300gで最大値88% を示し, フィラメント径0.16~0.25mmのブラシのかたさにおいて, 清掃効果が最大となるブラッシング圧が存在することが示唆された。更に, ブラシの振動と同方向に電動歯ブラシを手用歯ブラシのように動かすことにより, 除去率85% が77% になり, 清掃効果が低減した。
  • 前田 亮, 石原 和幸, 穂坂 康朗, 中川 種昭
    2005 年 47 巻 3 号 p. 146-152
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    本研究では, 近年歯科領域において高い頻度で使用されている12種類の抗菌剤の歯周病関連細菌を含むバイオフィルム構成細菌13菌種23菌株に対する有効性についてin vitroにおける検討を行った。寒天平板希釈法に準じて各菌株に対する薬剤の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定した結果, βラクタム系抗菌剤は今回使用した全ての実験室株, 臨床株に対して優れた抗菌力を示した。とくに成人性歯周炎の病原性菌の1つであるPorphyromonas gingivalisをはじめFusobacterium nucleatum, Prevotella intermedia, Prevotella nigrescens, Tannerella forsythensisに対して0.002—0.5μg/mlと優れた抗菌力を示した。キノロン系抗菌剤は, Actinobacillus actinomycetemcomitansに対して0.008—0.03μg/mlと極めて高い抗菌力を示した。マクロライド系抗菌剤はP.gingivalisに対して0.03—1μg/mlと高い抗菌力を示したが, 他の歯周病関連細菌に対しては菌種によりMICに幅があった。これらの結果から現在広く使用されている抗菌剤は今回使用した歯周病関連細菌に対して有効であったが, その抗菌力にはそれぞれ特徴があり, 抗菌剤選択にあたり細菌叢の検索を行う必要のあることが示唆された。
  • 瀬戸 浩行, 和田 智恵, 堀部 ますみ, 永田 俊彦
    2005 年 47 巻 3 号 p. 153-160
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    ビスフォスフォネート製剤の一つであるアレンドロネートは強力な骨吸収抑制作用をもつことから骨粗鬆症等の臨床に応用されており, 歯周病に対する効果も期待できる。今回, 我々はラット実験的歯周炎におけるアレンドロネートの歯槽骨吸収抑制効果について形態学的な検索を行った。歯槽骨吸収を伴う歯周炎を惹起させる目的で, 8週齢ウィスター雄性ラット上顎右側第二臼歯の歯頚部にナイロン糸による結紮を行った。実験群は非結紮対照群 (非結紮+生理食塩水), 対照群 (結紮+生理食塩水), 低濃度群 (結紮+アレンドロネート0.01mg/kg), 高濃度群 (結紮+アレンドロネート0.1mg/kg) の4群とし, 薬剤は2日毎に皮下注射により投与した。実験5, 10, 20日目に上顎骨を採取し, マイクロCTにより3次元画像を構築し, 第二臼歯近心根の歯槽骨吸収について画像解析を行った。その後, 脱灰薄切切片を作成し, 破骨細胞の指標となる酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ (TRAP) 染色を行い, 光学顕微鏡下で観察した。マイクロCT解析の結果, 非結紮対照群では歯槽骨に何ら変化はなく, 結紮した3群では歯槽骨吸収が実験5~20日目に認められた。一方, アレンドロネート投与群では歯槽骨吸収は5日目から対照群と比較して有意に抑制され, 10日目および20日目においても抑制が認められた。組織切片分析では, 結紮によって起こった歯周結合組織, 歯槽骨を含む歯周組織の破壊が5日目に認められた。結紮した3群ではTRAP陽性破骨細胞が5日目で確認されたが, 10日目では確認されなかった。5日目における破骨細胞数は, 対照群と比較して低濃度, 高濃度群で有意差が認めらず, 10日目にはすべての群で破骨細胞が消失していた。これらの結果から, アレンドロネートは破骨細胞の数に影響を及ぼさずに, 破骨細胞の機能を抑制することにより歯槽骨吸収を抑制することが示唆された。以上より, 歯周病による歯槽骨吸収の予防にアレンドロネート摂取が有効である可能性が示された。
  • 上崎 聖子, 森 豊一, 田淵 由美子, 齊藤 徹
    2005 年 47 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    反転運動型電動歯ブラシは, 人にできない動作で効果的にプラークコントロールする手段として, 多数開発されている。本研究の目的は, 反転運動型電動歯ブラシにおいて, 反転角と振動数およびブラシのかたさが清掃性に与える影響を検討することである。評価は, 所定のブラッシング圧で歯を清掃する装置 (ブラッシングシミュレーター) を用いて行った。清掃性の評価は, 顎模型に塗布した着色粉末の除去率を画像解析にて計測して行った。
    反転角10°, 20°, 40°, 75° と振動数1,000, 2,000, 3,500, 5,000, 7,000cpmについて評価した結果, 歯面全体において, 反転角が大きくなるにしたがって除去率は高くなった。反転角10°, 75° では振動数により除去率は変化せず, 反転角20°, 40° では振動数1,000および7,000cpmで除去率が低下した。隅角部においても同様に反転角が大きい程除去率が高くなる傾向を示し, 振動数の影響は小さかった。
    ブラシのかたさに関して検討した結果, 歯面全体ではかたさの影響は少なく, 隅角部では, ブラシのかたさがやわらかい方が清掃性に優れていた。
    これらの結果から, 反転角は清掃性へ与える影響が大きく, ブラシのかたさは, 隅角部の清掃効果への影響が大きいことが示唆された。
  • 鈴木 進一
    2005 年 47 巻 3 号 p. 168-177
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    現在, コレステロール合成阻害薬として臨床応用されているスタチンは, 骨芽細胞において骨形成タンパク質-2 (bone morphogenetic protein : BMP-2) を誘導することが知られているが, 歯周組織に与える影響およびBMP-2以外の成長因子への関与については明らかにされていない。そこで本研究は, 歯周組織に対するスタチンの作用を明らかにすることを目的とし, 歯根膜 (HPDL) 細胞におけるスタチンの作用についてLuciferase assay, RT-PCR法, ALP assayを用いて解析した。
    その結果, simvastatin添加群においてBMP-2だけではなくトランスフォーミング増殖因子-β1 (transforming growth factor-β1 : TGF-β1) の誘導も促進され, これらの成長因子の誘導はHPDL細胞のみならず, ヒト骨芽細胞 (NHOst) においても認められた。さらに, 10−6 M simvastatin+1mMメバロン酸 (Mev) 添加群はコントロール群と同様であり, Mevはsimvastatinによるこれらの成長因子の誘導を解除した。また, HPDL細胞におけるALP活性はTGF-β1添加群で上昇し, BMP-2添加群で低下し, TGF-β1+BMP-2添加群で低下した。さらに, simvastatin添加群ではALP活性の濃度依存的低下が認められ, 10−6 MでTGF-β1+BMP-2添加群と同程度の低下を示した。
    以上のin vitroの結果から, スタチンは歯周組織再生に有効とされるTGF-β1とBMP-2の両方を誘導することが明らかとなり, 新たな歯周組織再生療法としての可能性が示された。本研究は臨床応用への第一段階であり, 今後さらにスタチンのin vivoでの成果を検討していく必要がある。
  • 杉原 薫
    2005 年 47 巻 3 号 p. 178-185
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    本研究では, 2型糖尿病患者における歯周疾患の有病状況, ならびに歯周病学的検査と糖尿病の内科的検査結果の相互関係を明らかにすることを目的として検討を行った。被験者は, 内科を受診している2型糖尿病患者46名 (平均年齢60.7±9.3歳) で, 過去に歯周治療を受けたことがない者とした。糖尿病に関しては, HbA1C, 空腹時血糖値, 空腹時インスリン濃度, インスリン抵抗性 (HOMA-IR), および体格指数 (BMI) を測定した。歯周病学的検査では, 現在歯数, プロービング深さ (PD), プロービング時の出血 (BOP) 歯率, および歯槽骨吸収度を調べ, 平成11年歯科疾患実態調査と比較した。糖尿病および歯周疾患の双方に関与すると考えられるパラメーターとして, 血清中の腫瘍壊死因子 (TNF)-α, および高感度C反応性タンパク (hs-CRP) の濃度をELISA法により測定した。ほとんどの被験者は, 内科的に血糖コントロールされており, 肥満度も低かった。HOMA-IRは, BMI, TNF-α, およびhs-CRPと有意な相関関係が認められた。歯科疾患実態調査と比較して, 現在歯数はどの年代もほぼ同数であったが, PDが6mm以上の歯を有する者の割合が高いことが認められた。血糖値およびHOMA-IRは, いずれの歯周病学的検査結果とも相関しなかったが, 糖尿病の有病期間は, 平均PD, PDが4mm以上の歯の割合, BOP歯率, および歯槽骨吸収度との間に有意な相関関係が認められた。これらの結果より, 糖尿病患者では, 糖尿病発症早期から歯周疾患の予防および治療を行っていくことが重要であると考えられた。
  • 安川 俊之, 大森 みさき, 両角 祐子, 馬場 玲子, 五十嵐 千里
    2005 年 47 巻 3 号 p. 186-193
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 口腔内の揮発性硫黄化合物 (VSC) の濃度を測定する口臭測定器ブレストロン® (ヨシダ, 東京, 以下ブレストロン) の有用性を検討することである。被験者は, 日本歯科大学新潟歯学部附属病院いき息さわやか外来を受診した患者52名に対して行った。われわれは, ブレストロン値と官能試験およびその他の口臭測定器による測定値とを比較検討し, さらに, ブレストロン値と口腔内状態の関連についても検討した。口臭は官能試験によって評価し, ブレストロンとその他の口臭測定器を用いて数値化した。その他の口臭測定器には, ガスクロマトグラフィとHalimeter RH-17® (Interscan Co., Cal. USA, 以下ハリメーター) を使用した。また, 同時に口腔内状態 (Plaque Control Record (PCR), Plaque Index (PlI), Probing Depth (PD), Bleeding on Probing (BOP), 舌苔付着度) を診査した。その結果,
    (1) ブレストロンによる測定値は, 官能試験とガスクロマトグラフィならびにハリメーターの測定値との間に相関が得られた。そして, ガスクロマトグラフィで測定したVSCのうち硫化水素, メチルメルカプタンとの間にも有意な相関が得られた。しかし, ブレストロンの測定値には若干のばらつきが認められ, 官能試験に対して必ずしも一致するとはかぎらなかった。したがって, ブレストロンはチェアサイドにおいて有効な口臭測定器であると考えられるが, 官能試験との併用が必要と考えられた。
    (2) ブレストロンによる測定値と口腔内状態の関連では, プラークと舌苔付着度において有意な相関が得られた。
  • 松岡 隆史, 菅野 直之, 伊藤 公一, 古賀 泰裕
    2005 年 47 巻 3 号 p. 194-202
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    乳酸菌Lactobacillus salivarius TI 2711 (LS 1) のプロバイオティクスとしての効果を検討するために, LS 1服用が歯肉縁下プラーク中の歯周病原菌および歯周組織の臨床症状に与える影響について検討した。
    総数30名の被験者にLS 1含有の錠菓またはプラセボ錠菓を1日3錠4週間服用させ (1錠当たりLS 1 6.6×107CFU), 服用期間前後の歯肉縁下プラークを採取し, 試料とした。試料中に含まれる歯周病原菌の菌数はリアルタイムPCRで測定し, 総菌数に占める割合を算出した。ついで, 試料中のL. salivariusをPCRで検出した。また, 歯肉縁下プラーク採取時に, 臨床パラメータとして歯周ポケット深さ (PD), プロービング時の出血 (BOP) およびプラークコントロールレコード (PCR) を記録した。その結果, LS 1服用により歯肉縁下プラーク中の総菌数中に占めるPorphyromonas gingivalisの割合は平均で1.1×10−2から1.3×10−3へと有意 (P=0.01) に減少した。歯肉縁下プラーク中のL. salivariusは, LS 1服用者の全員 (11名) から検出されたが, プラセボ服用者からは検出されなかった。また, LS 1服用群プラセボ服用群共にBOP, PD, PCRで有意な減少が認められたが, 各臨床パラメーターの減少率を比較するとLS 1服用群においては, BOP, 最大PDおよびPCRの減少率が大となる傾向が見られた。
    本結果から, LS 1は歯肉縁下プラーク中へと移行し, P. gingivalisを有意に減少させるとともに, 歯周病の臨床症状を改善する傾向が認められた。すなわち, LS 1は口腔内のフローラコントロールを可能とするプロバイオティクスであることが示された。今後, プロバイオティクスを用いた生物的プラークコントロールが新しい歯周病予防法になるものと期待される。
  • 石川 久美子
    2005 年 47 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    Vascular endothelial growth factor (VEGF) は血管透過性を亢進させる因子として知られているタンパク質である。歯周病患者の歯肉溝滲出液 (gingival crevicular fluid : GCF) 中のVEGFの量を測定し, 歯周局所におけるVEGFの変動を検索した。慢性歯周炎患者10名 (男性5名, 女性5名) より, 上顎前歯あるいは小臼歯部19部位を選択した。Baseline (SRP前), SRP 4日後, 1週間後, 2週間後, 1カ月後, 2カ月後にprobing attachment level (PAL), probing pocket depth (PPD), bleeding on probing (BOP), plaque index (PlI), gingival index (GI), GCF量を測定した。GCF中VEGFの定量はsandwich enzyme-linked immunosorbent assay法を用いた。Baseline時では, VEGF総量はPPDと相関が認められた。経時的変化では, 2週間後におけるVEGF濃度および, SRP後2カ月後におけるBOP (+) とBOP (−) 群に有意な差を認めた。VEGF総量は歯周炎の病態と相関を示し, VEGF濃度はSRP2カ月後に改善が認められた群で低い値を示すことが明らかとなった。
  • 澤 裕一郎, 新井 剛, 滝本 明, 真野 晃寿, 丸山 誠二, 原 禎幸
    2005 年 47 巻 3 号 p. 211-218
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    PRP (多血小板血漿) は, 細胞増殖促進作用や血小板中に含まれる細胞性成長因子の放出により, 骨や歯周組織治療などに用いられてきた。付着歯肉の喪失がインプラント周囲炎や歯周炎を進行させる可能性があることから, 付着歯肉は良好な歯周状態を維持するために必要である。そのため, 付着歯肉の獲得に口腔前庭拡張術を併用した遊離歯肉移植術が行われた。一方で, 供給部の創部は露出状態となり, 複数の不快症状や合併症を生じる可能性がある。本症例報告では, 創部治癒促進のために遊離歯肉移植後の供給部へPRPを使用した。
    研究方法 : インプラント体や永久歯周囲に付着歯肉の存在しない5例に遊離歯肉移植術による口腔前庭拡張術を行った。5例の内訳は, 4例のインプラント体周囲炎と1例の歯周組織炎であった。移植片の採取後に, 口蓋部の空隙にPRPペーストを充填し, レジンプレートにて被覆した。術後1, 2, 3, 4週間目に, 供給部を観察した。
    結果と考察 : 1週目に口蓋プレートを除去したときに, 供給部には肉芽組織が再生されていた。4週間後には供給側に完全な創部治癒が得られていた。まとめとして, 供給部へのPRPの使用は, 創部治癒促進と合併症を抑制するため, 有用な手段であると考えられた。
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