日本歯周病学会会誌
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48 巻, 1 号
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巻頭言
総説―日本歯周病学会学術賞受賞
原著
  • 杉石 泰, 稲垣 幸司, 黒須 康成, 夫馬 大介, 坂野 雅洋, 山本 弦太, 吉成 伸夫, 野口 俊英, 森田 一三, 中垣 晴男
    2006 年 48 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    歯周病と骨粗鬆症の関係を明らかにするために, 閉経後女性歯周病患者の歯周病態と骨粗鬆症所見の関連性を検討した。対象は, 本研究の主旨に同意の得られた慢性歯周炎の閉経後女性81名 (59.1±6.6歳) で, 腰椎骨萎縮度から, 腰椎骨萎縮正常群26名 (N群, 58.4±6.1歳), 腰椎骨萎縮群55名 (A群, 59.4±6.8歳) の2群に分けて比較した。評価した口腔内所見は, 現在歯数, プロービングデプス (PD), クリニカルアタッチメントレベル (CAL), プロービング時の歯肉出血 (BOP) 率および歯槽骨吸収率 (ABL) である。さらに, 各口腔内所見の平均から2群に分け, 腰椎骨萎縮度に対するオッズ比を算出した。PD7 mm以上部位率とCAL7 mm以上部位率はA群が高値であった (p<0.05)。腰椎骨萎縮度に対するPD平均, PD4 mm以上部位率およびBOP率の年齢補正したオッズ比は, それぞれ, 3.1 (95%信頼区間 (confidence interval (CI) ) 1.1—8.7), 3.0 (95%CI 1.0—8.7) および3.1 (95%CI 1.1—9.3) であった。したがって, 閉経後女性における歯周病の進行と, 腰椎骨萎縮との関係が示唆され, 骨粗鬆症所見に留意して閉経後女性の歯周病治療を行う必要性があると考えられた。
  • 八島 章博, 五味 一博, 大島 朋子
    2006 年 48 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    歯周疾患は歯周病関連細菌が引き起こす感染症疾患であり, 治療法として最も有効なのはブラッシングやスケーリング·ルートプレーニング (SRP) である。特にSRPは歯肉縁下プラークをコントロールする上で重要な位置を占める。しかし, SRPは通常数回に分けて行われ, SRPを終了した部位にまだSRPを行っていない部位から歯周病関連細菌が伝播し, 処置した部位が再細菌感染を起こし, 歯周疾患の再発を招く危険性が考えられる。そこで我々は, 抗菌内服薬としてアジスロマイシンを術前投与することで細菌数を減少させ, 薬剤濃度が維持された状態で, 全顎のSRPを1回で行うone-stage full-mouth SRPを行い, 通法に行なわれる1/3顎ずつのSRPと検出可能な総菌数, 黒色色素産生グラム陰性桿菌数 (BPRs) および各種臨床パラメーターを術後3カ月まで比較検討した。その結果, 総菌数の変化に差は見られなかったが, one-stage full-mouth SRPを行った群ではBPRsが検出されなかったのに対し, 1/3顎ずつのSRPを行った群では術後3カ月以内に検出された。また, 臨床パラメーターは術後3カ月まで, one-stage full-mouth SRPを行った群が1/3顎ずつのSRPを行った群よりも良好な状態を示した。以上の結果から, アジスロマイシンを用いたone-stage full-mouth SRPは臨床的にも細菌学的にも優れた術式であることが示された。
  • —歯周組織の健康状態の把握, 口腔衛生指導による介入の効果, 歯周検査項目の検索—
    長谷川 梢, 古市 保志, 志野 久美子, 四元 幸治, 吉元 剛彦, 児島 正明, 和泉 雄一
    2006 年 48 巻 1 号 p. 28-39
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    鹿児島県の某高等学校の学校歯科健診時に, 歯周組織健診を3年間実施することにより, (i) 歯周組織健康状態の把握, (ii) 口腔衛生指導, および健診結果と受診勧告の配布効果の検討, (iii) 健診に適した検査項目の検索を行った。平成 (H) 14年度は156名, 平成 (H) 15年度は135名, 平成 (H) 16年度は118名を対象に歯周組織健診を行った。H15, H16年度は, 全ての生徒にブラッシング指導と健診結果の配布を, 歯周組織健康状態不良が疑われた生徒に歯科受診勧告を行った。結果, 同校の生徒は, プラークの付着部位が多く, 大部分の生徒が歯肉炎に罹患していること, 歯周組織の精密検査が必要と考えられる生徒が存在することが明らかになった。縦断分析結果から, プラークスコア, 歯肉炎の程度, および歯周ポケットの深さの2年時平均値が3年時では, それぞれ, 0.95が0.50へ, 0.67が0.50へ, 2.31 mmが2.14 mmへと有意に減少した。これにより, 2年時の健診後に行った口腔衛生指導, および健診結果と受診勧告の配布が有効であることが示された。さらに, Community Periodontal Index (CPI) 最大値と, その他の歯周組織診査項目との間に有意な正の相関 (相関係数0.264―0.636) が認められたことから, 時間的制約のある学校歯科健診におけるCPIの有用性が示唆された。
症例報告
  • 林 丈一朗, 武田 宏幸, 申 基吉吉
    2006 年 48 巻 1 号 p. 40-49
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    限局型侵襲性歯周炎は, 全身的には健康であり, プラークや歯石の付着がほとんど見られないにも関わらず, 第一大臼歯および切歯に急速な歯周組織破壊が生じる稀な疾患である。本報は, 限局型侵襲性歯周炎と診断された患者に対して, 種々の歯周組織再生療法を行った症例を報告する。患者は20歳の女性で, 臨床診査およびX線診査によって, 上下顎左右第一大臼歯, 上下顎切歯, および上顎右側第一小臼歯に高度のアタッチメントロスが認められた。multiplex polymerase chain reaction法により, 歯肉縁下細菌叢からPorphyromonas gingivalis, Actinobacillus actinomycetemcomitans, およびTannerella forsythensisが検出された。歯周外科治療として, 自家骨移植, 組織再生誘導 (GTR) 法, エナメルマトリックスデリバティブまたは多血小板血漿 (Platelet-Rich Plasma ; PRP) を併用した自家骨移植を行った。その結果, 術後の歯肉退縮を最小限に抑えた状態で2—4 mmの臨床的アタッチメントゲインが得られ, 歯周組織を再生することができた。術後2年間観察を行っているが経過は良好である。
調査・報告
  • 大森 みさき, 雫石 聰, 埴岡 隆, 沼部 幸博, 青山 旬, 石井 正敏, 吉江 弘正, 新井 高
    2006 年 48 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    日本歯周病学会会員の現在の喫煙状況および喫煙に関する考えを把握するために評議員を対象として質問調査を行なった。質問票を郵送し回答の上同封の封筒による返送を求め, その結果を分析した。
    回答が返送されたのは231名中145名で返送率は63%であった。年齢は40—50代が多く74%を占めた。所属は大学教員68%, 開業医25%, 勤務医4%, その他3%であった。喫煙状況については現在喫煙者13%, 元喫煙者39%, 非喫煙者48%であった。ニコチンの依存性については90%が肯定的であった。多くの疾患に喫煙が関連していると認識されており, 喫煙と歯周病との関連については94%が肯定的な考えを示した。歯科医師は禁煙指導をすべきという意見に80%以上の賛成が得られたが, 一方で禁煙指導の知識は十分とは言えないとする回答が43%であった。歯周病専門医の資格要件を非喫煙者とすることに賛成が79%を占めた。臨床医の約半数が患者の喫煙状況についての把握をしていた。喫煙状況は初診時に確認していることが多かった。また, 80%が重症な歯周病患者に喫煙者が多いと感じており, 88%が喫煙者は歯周治療で治りにくいと感じていることが示された。
    以上より, 回答が得られた集団では喫煙の歯周病への為害性を認識しており, 現在の喫煙率は比較的低いことが示された。また, 歯周病患者への禁煙指導の必要性を認識しつつも, 指導のための知識が不足している可能性が示唆された。
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