この研究の目的は,Nd:YAGレーザーの照射を併用したフラップ手術における術後の臨床パラメーターの変化を検索することにより,術後の歯周組織の治癒についてを臨床的に評価することである。
今回の研究は10名52歯を対象とした。フラップ手術は通法に従って歯肉弁翻転後,ルートプレーニングおよび骨欠損の掻爬を行った。実験群は10名26歯でNd:YAG レーザーを歯根面,骨欠損内部,歯肉弁内面におのおの3.0w,30秒,3回照射した。さらに,術直後に歯肉歯槽粘膜境周囲に対し,1.5w,1分,3回照射した。対照群は10名26歯でレーザー照射を行わなかった。
臨床パラメーターは,Probing depth (PD),Plaque index (PLI), Gingival index (GI), Bleeding on probing (B.O.P)とした。さらに臨床的およびレントゲン的観察を行った。臨床的パラメーターと臨床的およびレントゲン的観察は術前,術後3ヶ月,術後6ヶ月で行い,臨床パラメーターはWilcoxon signed-ranks testによる統計学的分析を行った。
統計学的分析の結果,術後において実験群と対照群の間に各臨床的パラメーターの統計学的有意差を認めなかった。さらに歯肉や骨の壊死,および骨吸収などの臨床的異常所見は認めなかった。
今回の研究はNd:YAGレーザー照射を伴うフラップ手術は,歯周組織に対して臨床的に為害作用がなく安全であり,なおかつ歯肉の炎症の改善が可能であることが示された。
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