日本歯周病学会会誌
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48 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 石塚 良介, 宮治 裕史, 菅谷 勉, 川浪 雅光
    原稿種別: 原著
    2006 年 48 巻 4 号 p. 255-266
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,BMP-2とコラーゲンハイドロゲルを歯根象牙質表面に塗布し,歯周組織再生に与える影響を検討することである。
    実験動物にはビーグル犬8頭を使用し,被験部位は上下顎前臼歯歯根(128部位)とした。頬側歯肉粘膜を部分層弁で剥離して骨膜を除去した後,高さ6mmの裂開状骨欠損を作製して歯根膜,セメント質を除去した。根表面を24%EDTAで脱灰処理後,4群に分け,未塗布群では何も塗布せず,Gel群では歯根象牙質表面にコラーゲンハイドロゲルのみ塗布,BMP群ではBMP-2(1000μg/ml)のみを塗布,BMP-Gel群ではBMP-2(1000μg/ml)を塗布後,コラーゲンハイドロゲルを塗布した。1,2,4,8週後に病理組織学的観察と4,8週後の標本について組織学的計測を行った。
    その結果BMP-Gel群の8週後において,歯槽骨新生率は87%で,未塗布群 : 29%,Gel群 : 41%,BMP群 : 65%と比較して有意に大きく,セメント質新生率は45%で,未塗布群 : 29%と比較して有意に大きかった。骨性癒着率は6.4%で未塗布群 : 0%と比較して有意に大きく,上皮深部増殖率は0.3%で,未塗布群 : 22%と比較して有意に小さかった。
    これらの結果から歯根象牙質表面にBMP-2とコラーゲンハイドロゲルを塗布することは,歯周組織再生を高めることが示唆された。
  • 澤口 政治
    原稿種別: 原著
    2006 年 48 巻 4 号 p. 267-275
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    手用スケーラーの基本的な使用技術を検討する一助として,鎌型スケーラーおよび鋭匙型スケーラーを用いて歯石除去を行った場合,被験歯が直接受ける歯石除去力を3方向(水平力,側方力,垂直力)から定量的に測定し,この測定結果に基づいて経験者群と未経験者群間でどのような差があるかを比較検討した。臨床経験年数が4年以上の術者6名を経験者群,歯科専門知識のない術者6名を未経験者群とした。なお,被験歯には規格化された人工歯石が付着した人工歯を使用した。水平力および歯石除去総合力(3分力の合力)は,歯石除去用器具のいずれにおいても,経験者群と未経験者群間で有意に大きかった。側方力と垂直力および歯面平行力(側方力と垂直力の合力)は,歯石除去用器具のいずれにおいても,経験者群と未経験者群間で有意差が認められなかった。また,鋭匙型スケーラーでは,経験者群と未経験者群のいずれにおいても,水平力と垂直力間ならびに水平力と歯面平行力間で有意な相関が認められ,水平力の増加に伴い垂直力や歯面平行力が増加した。以上のことから,水平力は歯石除去用器具のいずれにおいても,他の2分力に比べて歯石除去の操作に影響し,効率の良い歯石除去を行うためには水平力を最小限に留める歯石除去法や歯石除去用器具の必要性が示された。
  • 吉川 昌幸, 尾形 顕
    原稿種別: 原著
    2006 年 48 巻 4 号 p. 276-284
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    我々は以前にヒト歯槽骨由来細胞を用いて,3次元構造を持った移植片(スフェロイド)のI,III型コラーゲンの産生や細胞増殖能について報告した。しかし,スフェロイド内における骨芽細胞の存在や分化の程度は解明されておらず,スフェロイドの機能についても未知なる部分があった。本研究はスフェロイドの経日的な性質について評価するために,組織学的,免疫組織化学的な手法を用いて検討した。研究にはヒト歯槽骨由来細胞を用いてスフェロイドを形成し,Ki-67,I型コラーゲン(Col-I),オステオポンチン(OPN),オステオカルシン(OC)の発現についてモノクローナル抗体を用いて観察した。またアルカリフォスファターゼ(ALP)染色により細胞分化の検索も行った。その結果, Ki-67の陽性反応所見は1,3,7,21日間のすべての観察期間で核内に認められた。21日間の観察期間の中でCol-Iの陽性反応は時間とともに反応部位が多くなり,ALP陽性反応は弱くなっていった。スフェロイドを形成後,21日のみにOPN,OC陽性反応が認められた。これらの結果は,スフェロイド内には骨芽細胞が存在し,in vitroにおいて骨芽細胞が分化し,このスフェロイドの石灰化する可能性を示した。
  • 本郷 哲也, 宮治 裕史, 菅谷 勉, 川浪 雅光
    原稿種別: 原著
    2006 年 48 巻 4 号 p. 285-296
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ビスフォスフォネートを投与して破骨細胞様細胞の機能を抑制することでBMP-2処理した象牙質表面における硬組織の形成や象牙質吸収がどのような影響を受けるかを検索することである。
    象牙質片を24%EDTA(pH7.0)に3分間浸漬後,0,100,400μg/mlのリコンビナントヒトBMP-2に10分間浸漬処理した。ラットを2群に分け実験群はインカドロネートを1μg/kg /day,3回/週を腹腔より投与し,観察期間終了まで継続した。対照群は生理食塩水を同様に投与した。各群のラット口蓋結合組織に象牙質片を埋植して,2,4,8週後に組織標本を作製し,象牙質吸収率と硬組織形成率を計測した。
    象牙質吸収率は実験群が対照群に比較して有意に低かった(p<0.01)。硬組織形成率も同様に実験群が対照群に比較して有意に低かった(p<0.01)。硬組織形成のうち80%程度が吸収面に形成され,20%程度が非吸収面に形成されていた。また,TRAP陽性細胞率はBMP-2濃度0,100,400μg/mlの全実験期間で両群間に有意差はなかった
    以上の結果から,ビスフォスフォネートを投与すると,BMP-2処理した象牙質片において,破骨細胞様細胞の機能を抑制し,象牙質の吸収が減少するとともに,硬組織形成も抑制することが明らかになり,BMP-2による象牙質表面への硬組織形成には破骨細胞様細胞が重要な役割を有することが示唆された。
  • 八島 章博, 五味 一博, 佐藤 淳一, 前田 伸子, 新井 高
    原稿種別: 原著
    2006 年 48 巻 4 号 p. 297-306
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    酸化チタンの光触媒作用は緑膿菌や大腸菌に対し抗菌作用があり,医科領域において広く応用されている。歯科領域においても材料に酸化チタンを用いることで,二次齲蝕や歯周疾患の予防につながることが考えられる。
    そこで我々は,酸化チタンを歯科用金属である金銀パラジウム合金表面にコーティングした場合の抗菌作用について検討した。Porphyromonas gingivalisStreptococcus mutansを用い,寒天培地上に形成された阻止円,および浮遊細菌を直接合金表面に播種した場合の残存細菌数を測定することにより抗菌力を測定した。その結果,酸化チタンのコーティング面を培地上に静置した実験群では,阻止円形成が認められたのに対し,培地をアルミ箔で遮光した遮光群,非コーティング面を静置した非コーティング面群では阻止円形成は認められなかった。また,直接菌液をディスクに滴下し,照射後菌液を寒天培地で培養して残存細菌数をカウントした実験では,照射時間に依存して菌数の減少が認められた。一方,遮光群,非コーティング面群では照射時間に関係なく,菌数の変化は認められなかった。以上の結果より,金銀パラジウム合金にコーティングした酸化チタンはPorphyromonas gingivalisおよびStreptococcus mutansに対し,抗菌作用があることが示唆された。
  • 松井 康太郎, 湯浅 茂平, 吉田 拓正, 福田 貴久, 明石 学, 新井 高
    原稿種別: 原著
    2006 年 48 巻 4 号 p. 307-314
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,Nd:YAGレーザーの照射を併用したフラップ手術における術後の臨床パラメーターの変化を検索することにより,術後の歯周組織の治癒についてを臨床的に評価することである。
    今回の研究は10名52歯を対象とした。フラップ手術は通法に従って歯肉弁翻転後,ルートプレーニングおよび骨欠損の掻爬を行った。実験群は10名26歯でNd:YAG レーザーを歯根面,骨欠損内部,歯肉弁内面におのおの3.0w,30秒,3回照射した。さらに,術直後に歯肉歯槽粘膜境周囲に対し,1.5w,1分,3回照射した。対照群は10名26歯でレーザー照射を行わなかった。
    臨床パラメーターは,Probing depth (PD),Plaque index (PLI), Gingival index (GI), Bleeding on probing (B.O.P)とした。さらに臨床的およびレントゲン的観察を行った。臨床的パラメーターと臨床的およびレントゲン的観察は術前,術後3ヶ月,術後6ヶ月で行い,臨床パラメーターはWilcoxon signed-ranks testによる統計学的分析を行った。
    統計学的分析の結果,術後において実験群と対照群の間に各臨床的パラメーターの統計学的有意差を認めなかった。さらに歯肉や骨の壊死,および骨吸収などの臨床的異常所見は認めなかった。
    今回の研究はNd:YAGレーザー照射を伴うフラップ手術は,歯周組織に対して臨床的に為害作用がなく安全であり,なおかつ歯肉の炎症の改善が可能であることが示された。
  • 松岡 隆史, 菅野 直之, 瀧川 智子, 高根 正敏, 吉沼 直人, 伊藤 公一, 古賀 泰裕
    原稿種別: 原著
    2006 年 48 巻 4 号 p. 315-324
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    乳酸菌Lactobacillus salivarius TI2711(LS1)が歯肉縁下プラーク中のPorphyromonas gingivalis菌数を減少させ,かつ臨床症状を改善した第1報の臨床試験の結果をふまえ,長期服用時のLS1の効果の持続性と服用中止後の菌数の変化を調べるために,試験期間,被験者を拡大した臨床試験を実施した。総数87名(開始時103名,途中脱落者16名)の被験者にLS1含有の錠菓 (1日当たりのLS1菌数2.0×108) またはプラセボ錠菓を1日3錠12週間服用させ,歯肉縁下プラークを採取して試料とした。試料中に含まれる歯周病原菌とL. salivariusの菌数はリアルタイムPCRで測定した。歯肉縁下プラーク採取時に,臨床所見としてPD,BOP及びPCRを記録した。その結果,12週間のLS1服用により,LS1服用群ではP. gingivalis菌数は平均で1.12×105から2.97×104へと有意(P<0.05)に減少し,服用中止すると菌数は増加した。逆にL. salivarius菌数はLS1を服用すると増加し,服用中止すると減少した。P. gingivalis L. salivariusの菌数の関係は逆相関の傾向があり,LS1が実際に歯肉縁下プラークに移行し,プラーク内のP. gingivalisを減少させているものと考えられた。臨床症状の改善はLS1服用群,プラセボ服用群の両者に見られた。従って12週間服用時においてもLS1はP. gingivalis菌数抑制効果を持ち,服用中止により服用前と同レベルに菌数が回復することが示された。本研究においてもLS1のプロバイオティクスとしての有用性が示された。
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