日本歯周病学会会誌
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50 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 佐藤 宏和, 伊藤 弘, 村樫 悦子, 関野 愉, 沼部 幸博
    原稿種別: 原著
    2008 年 50 巻 4 号 p. 231-237
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    今回キシリトール含有ガム摂取の効果を臨床的, 細菌学的, 生化学的見地から検討した。被験者は臨床的に歯周炎の徴候がなく, 実験開始前の少なくとも3ヵ月以内に抗生物質を使用していない7名(平均年齢31.3±8.5歳)を対象とし, またすべての被験者は非喫煙者とした。実験はsingle-blind, cross-over designにて行われた。実験開始後3日間すべての被験者に口腔清掃を禁じ(trial 1), 次の2日間はwashout periodとして口腔清掃を再開させたのち, さらに3日間口腔清掃を禁じ(trial 2), キシリトール含有ガムをtrial 1もしくはtrial 2のどちらかの期間に摂取させた。このときtrial 1もしくはtrial 2で, キシリトール含有ガムを摂取した時期をキシリトール期, しなかった時期をコントロール期とした。trial 1,2のそれぞれ開始時および終了時に臨床パラメータとしてQHIを, 唾液検査項目として唾液量および唾液pH, LDH, ALP, F-Hb, S.mutans菌数を測定し, コントロール期とキシリトール期それぞれのday 0からday 3にかけての変化量を計算し, 各パラメータを統計処理した。キシリトール期はQHIスコア増加量が1.08±0.08となり, コントロール期の増加量が1.52±0.23と比較し統計学的有意差が認められた。唾液検査に関してはコントロール期, キシリトール期の両期間について統計学的有意差は認められなかった。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)50(4) : 231-237, 2008
  • 西口 榮子, 鈴木 幸江, 金子 和美, 塗々木 和男, 増水 章季, 槻木 恵一, 川瀬 俊夫
    原稿種別: 原著
    2008 年 50 巻 4 号 p. 238-249
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    歯周疾患のリスクファクターであるたばこ煙とたばこ煙に含まれる毒性成分の一つであるニコチンのヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)の形態におよぼす影響を観察した。播種直後の歯根膜線維芽細胞にたばこ煙とニコチン溶液を作用させた場合, 両刺激により細胞はプレートへ接着せず増殖は観察されなかった。十分増殖した細胞にたばこ煙, ニコチン溶液を作用させた場合, 細胞・プレート間, 細胞間の接着がゆるみ細胞間に隙間を生じ, 次第に細胞が細くなって溶解した。この現象は, たばこの葉に含まれるニコチン含有量, ニコチン溶液濃度に依存した。歯根膜線維芽細胞に種々の濃度のニコチン溶液を作用させたときのサイトカインの発現状態をRayBioTM Human Cytokine Arrayキットを用いて観察した結果, ニコチン低濃度の場合, IL-6, IL-8など炎症性サイトカインの発現が観察された。ニコチン刺激による細胞死の状態をTUNELの変法を用いて観察した結果, 細胞が溶解する寸前に, アポトーシスが認められた。ニコチンレセプター阻害剤であるhexamethoniumを作用させた後ニコチン溶液を作用させると, ニコチン刺激のみによる形態変化と同様の形態変化が観察された。ニコチン溶液から発生するフリーラジカル種をESRで観察した結果, スーパーオキシドアニオンラジカル(O2・-)とヒドロキシラジカル(・OH)の発生が観察された。以上の結果より, 喫煙による歯根膜線維芽細胞の破壊は, たばこの煙に含まれるニコチンから発生するフリーラジカルによって引き起こされることが推測できる。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)50(4) : 238-249, 2008
症例報告
  • 豊永 久美
    原稿種別: 症例報告
    専門分野: -ベストハイジニスト賞受賞-
    2008 年 50 巻 4 号 p. 250-254
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本報では, 広汎型重度慢性歯周炎患者を超音波スケーラーによる根面のデブライドメントで治療した一症例について報告する。
    患者は54才男性で数年前より歯肉の発赤・腫脹及び出血と口臭を自覚していた。
    臨床所見は全体的に歯周ポケットが深く, プロービング時の出血と排膿および動揺を認めた。
    又, 全顎的に重度の水平型骨吸収と部分的に垂直型骨吸収そして多量の歯石沈着を認めた。
    歯周基本治療において, ルートプレーニングの代わりに超音波スケーラーを用いて根面をデブライドメントすることで, ポケットが浅くプロービング時の出血もなくなった。結果的に, 徹底的に歯周基本治療を行ったことで, 歯周外科を行わずに治療を終了することができた。
    患者はSPTのため, 月1回来院している。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)50(4) : 250-254, 2008
  • 佐藤 ゆかり
    原稿種別: 症例報告
    専門分野: -ベストハイジニスト賞受賞-
    2008 年 50 巻 4 号 p. 255-260
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本報では, 歯周治療で消失した歯間乳頭が, セルフケア用具の使用時期を術者が入念にコントロールすることにより, 回復してきた過程を報告する。患者は43歳の女性で, 45の修復物の脱離を主訴に来院した。主訴への対応後, 全顎的な歯周治療が必要と判断し, 歯周基本治療を開始した。当初はモチベーションも低く, 上顎前歯部の歯間乳頭は消失し審美性も失われていたが, 治療が進むにつれモチベーションが上がり, 歯間空隙を気にするようになった。そこで, 歯肉の回復の時期に合わせて歯間乳頭の回復を妨げないように歯間ブラシの使用を中止したところ, 歯間乳頭の回復がみられた。その後サポーティブペリオドンタルセラピー(以下SPTと略す)に移行し, 全顎的に良好な状態を維持している。歯間乳頭を回復させることは審美性の追求だけでなく, 隣接面の清掃性の向上や患者負担の軽減につながる。また, 患者も満足するためにモチベーションの維持としても効果が期待できる。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)50(4) : 255-260, 2008
  • 石黒 一美, 関野 愉, 沼部 幸博
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 50 巻 4 号 p. 261-268
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本報では, 慢性歯周炎と診断された59歳男性に対し, フラップ手術を含む歯周治療により深いくさび状骨欠損が改善した症例について報告する。患者の主訴は下顎左側第二大臼歯の動揺であった。歯周精密検査及びエックス線検査の結果, 顕著なくさび状骨欠損と根分岐部病変の存在が確認された。特に両側下顎犬歯遠心には深いくさび状骨欠損を伴う10-14mmの歯周ポケットが存在した。下顎左側第二大臼歯の抜歯, プラークコントロール及び全顎的なスケーリング・ルートプレーニングなどの歯周基本治療終了後, くさび状骨欠損を伴う歯周ポケットや根分岐部病変の部位に対してフラップ手術を行った。その後, 欠損部位に対してブリッジを装着し, サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)に移行した。SPT開始後6か月経過時の歯周精密検査及びエックス線検査の結果, 歯周ポケットの著しい減少と深いくさび状骨欠損部への骨の添加が認められた。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)50(4) : 261-268, 2008
教育賞受賞
歯科衛生士コーナー
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